はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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第三章 大陸統一

第52話 都合

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 魔王が起きないからと言って、魔人族にも都合というものがある。
 過去から延々と言われている大陸の統治。
 彼らは、そのために色々と手を尽くしていた。

 こんな事では、魔王様、そして、魔神様に申し訳が立たない。

 人に対して、とんでもない恨みを魔神様は持っているらしい。
 きっと魔神様も目覚めが近い。

「それでだ、今回の魔神様が憑依をする器は用意できたのか?」
「うんまあ、候補は幾人か用意してある。気まぐれだから性別はバラバラで十五歳を中心に集めてある。全員魔力量は多い」

 魔人達は、色々な種族がおり、一番多いのがコウモリ系。
 次が鬼系。
 その他、不定形まで存在をする。

 人間からすると、竜が人化したものも魔人だが厳密には違う。
 彼らは中立なのである。

 インセプトラ―王国とダイモーン王国の中間、そびえる山脈の中に竜の村がある。
 そこから、一人の若者が見聞を広めるために村を出ようとしていた。

「それでは行ってきます」
「ああ人間どもはひ弱いが、数が多くて面倒だ気を付けろ。なにかあるとすぐに軍とか言って徒党を組んでくる。倒せば良いが面倒じゃでな」
 ナーガは、四百五十歳。メス。人間換算で十五歳くらい。

 人化をして、山へと入って行く。
 彼女は、道を使わずまっすぐに山へと登っていく。

 十五度ほど転落をしてから、標高差がない方に歩けば楽だと理解をする。
 せっかくあつらえた服は、すでに結構ボロボロ。
 だが気にせずに、彼女は歩いて行く。


「おじょうちゃん、どうしたんだ、そんなボロボロで」
 盗賊である。
 崖から落ちて、服が破けて、色々が見えている女の子。
 出会ってしまえば、声はかけるだろう。

 そう、通常そんな格好だと、レイプの事後である。
 じゃあ俺達もおこぼれを、そんなことをこいつらは考えた。

「何だ貴様ら、我と番いたいのか? では力を示せ」
 女の子だが、随分男らしくそう宣言をする。

「何だそりゃ? とりあえず行くぜ」
 その時、軽快な破裂音がした。

 そう今襲いかかった男。
 パンチがあたった部分の三倍くらいが有効エリアらしく、その部分が吹っ飛ばされた。

「ひっ、なんだこいつ」
 残りの盗賊四人は逃げ始めるが、逃がしてもらえない。

 色々巻こうとしたが、巻くことが出来ず村へと案内をしてしまう。
 武器を持ち、集まってくる仲間達。

 だが、武器は刺さらず、剣すらコンと言って止まってしまう。

「奇妙なものを使う、だが、意味が無いようだな」
 盗賊の村は大騒ぎ。

 そんな中で、同族と思える者を殺し、穴に捨ててあるのを見かける。
「何だこいつら、同族を殺しているのか?」

 奇妙な感じを受ける。
 同族殺しはしてはいけない。
 それは絶対の定め。

 竜は絶対的に数が少なく、喧嘩などしてしまえば死に絶えてしまう。
 だがこいつらは…… そうかバカみたいに数が多いから命が軽いんだな。
 
 ギャアギャアと騒ぎをしながら、屑どもを殺していく、そんな事をしていると別の気配が膨らんでくる。

 そいつらは、こいつ達と違う。
 魂が重い?

 謎の集団は、盗賊狩りに来たクラスの連中だった。

「何だ、もうやっているのか?」
 そこいら中に転がる盗賊達の死体。

 なんだか殴って、爆散をさせている。
「こんな事が出来るのは誰だよ。バケモンか」
「王様じゃないのか?」

 そう盗賊の掃討に、王が自ら出陣。
 おかげで、貴族達も大騒ぎ。
 事務だけをやっていれば、仕事が出来ても目立たない。
 共に戦わなくてはいけないと。
 なんだか妙な流れが出来て、日々王城が汗臭い。

 そして彼らが言ったように、龍一を信じる者が増えることにより義の玉が力を発する。

 そして今まさに、二人が邂逅を果たす。
「君の名は?」
 龍一が問いかける。
 そうそれは、運命とも言える出逢い。

「そんな格好で逃げてきたのか。頑張ったな」
 そう言って、兵から毛布を受け取りかけてくれる。

 いやそれは良い。彼女は驚き声が出なかった。
 問題は、人間の格好をしているが、こいつ人間ではない。
 ただにじみ出す光は、純白であり闇の者では無い。

 噂に聞いた神、上位者なのか?
 エンシェントのじっちゃんが言っていた、この世界には上位世界がありこの世を司るお人が住んでおる。

「あれであるか?」
「王様」
 やって来た者達が、頭を下げる。
 やはり上位者。

「そなた、神か?」
「いや神じゃ無い、俺は神野 龍一じんの りゅういち…… あーいや、リュイチー=ジンノーだ。もう安心していい、盗賊達は俺達が倒すから」

 そう言ってにっこり笑う。

「ふむ、そう言って出された手を取ったとき、何かが流れ込んでくる。やはりこの神々しいエネルギーは神だな」
「うん? なにか言ったか」
「力を入れろ」
 彼女は、危険な賭に出る。

 龍一の腹へボディを打ち込む。
 人化しているとはいえ、成人の竜。
 力を乗せて、打ち込んだ。
 ドンと……

 うん、打ち込んだ。
 だが平然とされる。
 先ほどまでのザコなら、上半身がなくなるレベル。

 だが……
「ああそうだな、怖かったんだな。来るのが遅くなって申し訳ない。もっと早く来れば良かったな」
 そう言って抱きしめられて、背中をなでられる。

 その温かかさと、優しさ。

「こんなん、ほれてまうやろー」
 そう言って、彼女は付いてきた。
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