はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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第三章 大陸統一

第44話 黄昏時のサンドウ皇国

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 彼らは歩みを進めるに従い、その数を増していく。

 農民達は彼らの言葉に、夢と思いを乗せる。
「もういやだ、徴兵のために、収穫が出来ず、そのおかげで税のために嫁も子どもも失った。国のために働き、何もかも失うなっておかしい」
「そうだそうだ、うちらの村だけじゃない。人が居なくて世話が出来ない」
 そのおかげで、二組の奴らは助かったようだが。

 村人といえ、勝手に増やすことは本来出来ない。
 だが、そんな事を言っていられない状況だったのだ。

 機械も、肥料を与える知識も無い、土中のpHなど、何それ状態なのだ。
 二組の連中は、堆肥を思いつき、山から腐葉土を持って来て、土作りを行っていた途中だった。

 だが落ち葉混じりの、まだ新しいものをすき込んでいた。
 腐葉土も、掘り返して堆積して熟成された土でなければいけないのに、そんな事は知らない。
 まあ高校生なら、そんなものだろう。

 だが派手な一組の行進で、彼らは救われた。
 ドンドン膨らむ人数。
 どんどん減っていく食料。

「げっ? やばくないか?」
「昨日、早馬は送った」
「無くなったら、暴動の矛先は俺達に来るぞ」
 流石に、島原の乱などの史実は知っている。

 あれは計略だったが、俺達は豊かな暮らしをスローガン、こんな所で食い物が無いとなったら、暴動を起こした事実は消えないから、皇国からの弾圧が始まる。

 そう、そうなれば、俺達のせいだとなるだろう。
 まあ他国に攻め込んだ時点で俺達は、敵だが。

 長くなった補給路。優秀な指揮官なら、とっくに分断されるだろうが、そこに気がつく奴は居なかったようだ。

 気がつけば、皇都前。
 町を囲む壁が見えてくる。

「次は皇都前、次は皇都前……」
 誰かが、アナウンスをする。
 
 なのだが、手前の開けた所に。敵が並んでいる。

 そして、その左翼に陣取るのは、見たことのある装備。
「あれってさあ、インセプトラ―王国の兵装だよな」
 インセプトラ―王国では、私兵との区別を付けるため、国軍は決まった装備がある。
 国の紋章が入った盾とか、すごく目立つ。

「旗は、どこかの貴族らしく、国の旗じゃ無いな」
 だが、国から兵が派遣されているところは、そんなに多くはないはず。

「まあ見知った顔は居ないようだし、敵なら殺るしかない」
「そうだな」
 俺達は、近寄るのも面倒なので、運搬車の上に乗り相手に聞く。

「そこの連中、サンドウ皇国の連中かぁ。再三の警告を無視して、我が国ダイモーン王国へ踏み入ったこと、責任を取ってもらう。素直に国王?? いや皇王を差し出せ」
「何を言う、人さらいめ、あげく我が国の懲罰軍を滅したくせに、おまえらこそ、その賠償を行え。嫌だと言っても滅ぼすことは決定しているがな」
「じゃあ交渉は決裂、まあ頑張ってくれ。皆、戦闘準備、奴ら死にたいようだ」

 向こうは、まだ距離があるのに矢を撃ちながら、進軍し始めた。

「おい、シートをめくれ、戦闘準備」
 荷台を回転させて固定。
 ぺたんと倒れている通称、二〇ミリ魔導砲。

 そいつを、四人がかりで持ち上げて、三脚をロック。
 荷車も動かないようにロック。

 伸びた紐を持ちながら俺は叫ぶ。

「射線を開けろ」
 その言葉は、都合五箇所から聞こえる。

 近寄ってくる、敵。

「何だあいつら、なんだあれは」
 普通なら、盾を装備して進軍。
 その後ろから弓隊が攻撃。
 近くなれば槍へと、攻撃は変化をするもの。
 だが敵は、あわてて逃げ出す。

 逃げた後、そこには台の上にのせられた、奇妙なものが残っている。
 それがこちらを向く。

「おそらくは矢の類い、新兵器か?」
 ボウガンとか原型はあるが、重くて意外と不便なため使われていなかった。

 だがそれが火を噴いたとき、世界が変わった。
 バラバラになって吹き飛んでいく兵達。
 盾など役にはたたない。
 そして、射程距離も圧倒的。

 アウトレンジからの一方的な殺戮。
 甘言に乗せられてやって来た、コーガネー=スキー侯爵家の連中も、あっという間に人の形を失う。
 その光からは、逃げることも出来ない。

 そう曳光弾も普通より少ないが、一〇〇発に一発くらい入っている。

 騒がしく聞き慣れない音が響く度に、敵はいなくなっていく。
 
「これが戦争?」
「サンドウ皇国はなんていう所と、戦争をしていたんだ……」
「ダイモーン王国だろ」
「ちがうちがう、そうじゃ、そうじゃない。そうだけど、そうじゃないんだ……」

 農民達は、今は味方となっている国の力に驚く。
 今まで思っていた兵など、何の意味も無い。
 見ているのは、新しい戦い。

 今動いているのは、たった五人。
 その光景に、皆愕然とする。

 実際は向きを調整するのに二人と、弾込め用にもう一人、実際は二〇人が動いているが、きっとそう言うことじゃないのだろう。

 静寂が戻ってくるのに、そんなに時間がかからなかった。

「おら足元に注意して、進軍。目標皇城。皇都に向けて進め」
「「「「「おおっ」」」」」
 なぜかこちらの鬨の声が、控えめになっていた。

 皇都の城門もあっという間に粉砕。
 壁の上にいた弓兵や魔法師も瞬殺。
 射線は一応考えた。

「さあ、行くぞ」

 黄昏時のサンドウ皇国、周囲が赤いのは、夕日のためだけではない。
 その日皇都は、真っ赤に染まった。
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