はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

文字の大きさ
上 下
41 / 95
第三章 大陸統一

第41話 知らぬ間に……

しおりを挟む
「はっ? 何だあやつら、国の守りを放棄して逃げおったぞ」
 もうすでに、一歩踏み込んでいるから躊躇は無い。
 彼らは堂々と、侵攻をしてきた。
 その姿は、旗を掲げて威風堂々。

「エー敵、第五防衛ラインを越えてきました。どぞ」
殿しんがりがラインを越えたら落とせ。どぞ」
 通信機、魔導儀開発の優先順位トップだった。
 なぜか……

 第二王妃である、森 澪もり みおが怒ったから。
「龍ちゃんてば、目を離すとすぐ浮気するんだから、格好が良いからモテるのはしかたないけどぉ、無線機を作って、なんなら居場所が分かる奴」
 龍一の見張り用であった。

 だが安全上、王の居場所が分かるのは確かに重要だと言う事になり、最優先で開発が始まった。

 まあ、ダイモーン王国にも魔導具ギルドは有り、大まかな構図と原理が判れば、基本設計は出来る。

 一日目、話を聞いて、アレクサンダー・グラハム・ベルの電話機を試作。
 スピーカーをクロス。
 喋ると口元のスピーカーから、向こうの耳側へ声が届く。
 逆も同じ。

 スピーカーは、磁石とコイルがあれば、フレミングの左手の法則で電気が流れる。ジョン・フレミングとアレクサンダー・フレミングがたまに混同されるが、アレクサンダー・フレミングはペニシリンでございますぅの発見者。

 二日目、配線部分を魔導波に変換、この時点で魔導具師と錬金術師が一割オーバーヒート。机やら床に爆睡中の連中が転がる。
 クリスタルを使い、対となる対応周波数を決めて一対一のみで繋がるように改造。
 クリスタルは魔力を流すと固有の振動を行うため、それをコイルでピックアップ。
 その周波数の魔導波に音声データを乗せる。
 原理は簡単振幅変調。
 基準周波数から外れたベースラインだと、多少ピーク部分が聞こえるがまあ実用的には問題ない。

 電気と魔力、その融合作品が出来上がった。
 うやうやしく献上……
「かっこわるい」

 澪様のお言葉により、みんな泣きながら、かわいくて格好いいという要望を満たすため、受話器型からヘッドセットタイプのセパレート型に改良。
 これが三日目。
 イヤフォン部分に、龍一の象徴、ドラゴンをかたどった薄いブルーのクリスタルをあしらい髪飾りのように見せる。
 無論髪留め機能のおかげで、耳への負担が少ない。

 マイク部分には、風が吹いても大丈夫なように、かわいくぽわぽわしたウインドスクリーンを装着。よく見れば、兎さんがあしらわれている。
 きっとこの毛は、兎さんが犠牲になったのだろう。

 四日目。
「やっぱり、ナニをしているのか見たーい」
 ここで、魔導具師と錬金術師がごっそりと脱落、四割が過労で倒れる。

 だーが、新技術。それも見たことがない発想で楽しく、考えれば考えるほど民の役にもたちそうだと彼らは張り切った。
 そう彼らは、技術者として、おのれの限界を超えるまで楽しんだ。
 国として魔導具開発で優先されるのは、国の機関として当然だが軍事に関わる物。

 憧れて、魔導具作製に携わったが、就職をすれば優先して開発するのは、人殺しやモンスターの討伐道具、彼らはそれを知って愕然とする。それでも生活のために、いやいや仕事をしていた。
 例の病気騒ぎの時だって、いかに効率的に攻撃をするのかということで、筒から杭が高速で出入りするものを作っていた。

 それは現在、用なしとなり、小型化されて杭の素材は柔らかくなり、奥様方が密かに買い求めているらしく、開発費はもう稼いだようだ。
「いやあ、討伐の時に見たとか言って、あれは貴族からの依頼が最初で、素材を柔らかくして突出部位の長さは十六センチほど、太さは三センチほどが良いと、かなり細かな注文でしたね。先端部にはくぼみを作って、ああ無論防水です。何に使うかは知りませんが、それから後、貴族から次々に注文が入りました。わっはっは、本当に…… ナニに使うんでしょうね」
 技術主任はそう言って、力なく笑っていた。

 今喜んで作っている通信機は、最凶の武器だとも知らずに……

 映像はまだ未搭載だが、彼らが知らぬ間に、それらは有効に使われる。
 司令官から遠く離れた位置で、兵達は迷いなく動く。
 サンドウ皇国の兵達が、第五防衛ラインを越えた瞬間、検問までの広範囲、つまりサンドウ皇国側の地面が消えた。
 いや、二メートルちょっと落下した。
 時間と人手が無かったんだよ。
 五千人の内、騎乗をした貴族などは数百、そこから兵達が数千、半数以上は農民だとしてもかなり大きな穴なんだ。
 途中で、魔法に気がつきブロック状に切り出し投げるという力業を見つけるまでは結構大変だった、お互いに掘っては埋め合いという、拷問のような状態になったしな。

「なっ」
 部隊の後尾を歩いていた兵達が異変に気がつく。
 だが、先頭の騎馬達は歩みが早い。
 歩兵は、ずっと小走りなのだ。

 声をかけようとしたが、騎馬集団が消えた。
 そう、これで前後の道が無くなった。

 残るは歩兵達、身なりからも分かるが、徴用された農民達。
 細くなった両側、つまり前後の道が無くなったため、側面にしか道は無い。

 当然の様に、ダイモーン王国兵がやって来る。
 彼はメガホンを取り出すと、語り始める。
「あーそこの、サンドウ皇国徴用兵の諸君。君達、耕し苦労して作った麦をすべて持って行かれる生活などもういやだろう。聞けばそれでも足りず、女房、子どもまで売ったそうじゃないか。それに比べれば、ここは天国だ、新王であらせられるリュイチー=ジンノー様は仰った。税は二割で良いと。いいか、二割だ。素晴らしいだろう。それに少し、年を取ったり体が動かなくなったときにもらえる保険、これが二割加わり、それでも四割、その内二割分は、自分の元に帰ってくる積み立てだ、それも自身が困ったときに返ってくるどうだ素晴らしいだろう。住んでみないか?」
 保険部分は、状態に会わせて金額が決まるが、そんな事は言わない。

 それを聞いて、雑兵達はざわざわとざわめき始める。
 言われていない項目に、国内復興支援金などが、物を購入する際に取られたり、地方税として領内復興特別資金や領内緊急整備費用が別で天引かれたりするが、元よりは安い。

 どこかの国が悪い見本を見せるから、高校生でもそれを取り入れてしまう。
 税金と判らない税金、それは密かに、知らぬ間に……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~

月江堂
ファンタジー
― 後から俺の実力に気付いたところでもう遅い。絶対に辞めないからな ―  “賢者”ドラーガ・ノート。鋼の二つ名で知られる彼がSランク冒険者パーティー、メッツァトルに加入した時、誰もが彼の活躍を期待していた。  だが蓋を開けてみれば彼は無能の極致。強い魔法は使えず、運動神経は鈍くて小動物にすら勝てない。無能なだけならばまだしも味方の足を引っ張って仲間を危機に陥れる始末。  当然パーティーのリーダー“勇者”アルグスは彼に「無能」の烙印を押し、パーティーから追放する非情な決断をするのだが、しかしそこには彼を追い出すことのできない如何ともしがたい事情が存在するのだった。  ドラーガを追放できない理由とは一体何なのか!?  そしてこの賢者はなぜこんなにも無能なのに常に偉そうなのか!?  彼の秘められた実力とは一体何なのか? そもそもそんなもの実在するのか!?  力こそが全てであり、鋼の教えと闇を司る魔が支配する世界。ムカフ島と呼ばれる火山のダンジョンの攻略を通して彼らはやがて大きな陰謀に巻き込まれてゆく。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...