はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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第三章 大陸統一

第40話 浅い考え

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 徳川家康を祀る日光東照宮、神厩舎の長押なげし上に施された八態の彫刻は、猿の子供から大人に成長する姿が描かれ、それは、人の一生を物語っていると言われている。

 なかでも子供時代を表した三猿の彫刻が有名である。幼き頃には悪いことを、見ざる、言わざる、聞かざるという意味が込められている。

 そして、サンドウ皇国も……

「ツータエル=イトーヲ伯爵が、追い返されたようです」
「ほうー…… 奴らなかなか、未だに混乱をしておるのか?」
「いえ、ついて行った兵からの報告では、他は不明ですが、王都の治安は良かったそうでございます」
 ふむふむと頷く王。

 ダイモーン王国において発生をした事柄。
 承知している、前王が統治していた時の国力、そこから疫病、王の暗殺。
 国はきっと疲弊しているだろうという推測のもと、計画は進み始めた。
 
「せっかく向こうが振り出してくれた札、有意義に使わんとなあ」
「そうでございますな、して、初手は五千程度でよろしいかと」
「そうだな、それ以上出すと兵糧とかも厳しい折だ、そういえば親から家督を継いだ跳ねっ返りがおったな」
 王からそう聞かれて、宰相ツカサドールゼ=スベテーオは、嘆願書の内容を脳内で検索をする。

「ワーガマー=マーイヴエル侯爵、二二歳。家督を継ぐ折、見目の良い臣下の娘を、婚約者がいるというのに強引に我が物とした。初夜を元婚約者の目の前で行った変態。ずいぶんと我が儘放題で育てられて、臣下や周辺貴族からも嫌われている男でございますな」
「そうそいつだ、ダイモーン王国懲罰軍として、出征させろ。無論経費は自領でまかなえと。上手く行けば…… どこぞの僻地でも褒美に与えろ」
「御意」

 そうは言っているが、何かと叱責をして褒美は無くなるだろう。
 いや…… そうか、僻地を開墾整備をさせて、使えるようになったら……

 皇王も悪いお方だ。

 まあ嘆願を出した者達は、意図を理解して喜ぶだろう。

 日々謀略に明け暮れて、先日まで隆盛を誇っていた家がある日突然無くなる。
 その資産は、国庫へと納められる。

 この国では、皇王家以外で秀でたものは、育てられ刈り取られる。
 元々成り上がり奪い取った土地、その血は脈々と受け継がれパワーアップしているようだ。
 公国として起ち上げたとき、従っていた貴族家は早々に謀略により滅した。

 自分がやったことだから、他者が信じられない、いつ成り代わろうと手ぐすねを引いているのかと不安を感じて手を打つ。
 謀略に生きた者の定め。


「いよーし、皇王様から直々のご命令だぁ。手柄を立てればマーイヴエル侯爵家の領土は倍になる。今は亡き父上も喜んでくださるだろう。では皆ども出立だぁ」
 父上は喜んでいるだろうとも、毒殺された無念、家を手に入れたのに、浅はかにも皇王の口車に乗せられて、私財をなげうち出兵。

 浅い浅いぞぉ、現世で十分苦しみ、嘆きながらこちらへ来るが良い。
 父は待っておるぞぉ……
 この世ではない、川の畔で石を積み上げながら、父と母二人中睦まじく、自身の息子が苦しみ死んでいくのを願っていた。
 血の涙を流しながら……


「敵、おおよそ五千。いかがなさいますか?」
「うん? そりゃ、国境で理由を聞け。踏み通ってくるなら、死んで貰おう」
「はっ、国境で死んで貰おうと宣言をするので?」
「バカそんな事をしたら、こっちが戦争を吹っかけることになるだろ、あくまでも向こうが踏み込んでくるのが先、踏み込んできたら、あの落とし穴へ誘い込め」
「はっ、承知しました」
「間違っても相手が来るまで手を出すなよ」
「はいぃ」
 まあこちらの国も手が足りない、彼らは、農家の食い詰め。
 各地を回り、集めてきた。

 基礎トレーニングは、学校の授業を参考にやっている。
 朝、目覚ましのランニング。
 おおよそ一〇キロ。

 その後、休憩がてら、戦闘術の座学。
 参考となるのは、『我が校の生徒でも理解できる戦闘術、戦闘パターン五万通り。卒業までに丸暗記よろしく』と言う教本。

 この本はきちんと、一年生の前期中間テスト範囲、期末、等々分かれている。
 三年間ですべてのパターンが試験に出ると言うが、手技、足技、体術に分かれており、その中でも、突き、当て身、投げ、組技とかに分かれている。
 無論、学期ごとに全範囲の基本から順に習う。

 その後実技と、戦術。
 総当たり、各個撃破、奇襲等々の有効な使う場面、それもテキスト化してある。

 兵達が班に分かれて、戦闘訓練。
 その順位で、晩飯のおかずが変わる。

 ちなみに変わったところでは、逮捕術。
 緊縛などと言う授業もある。
 なかなか人気は高い。
 その中で、妙技を披露するのが、田中と長谷川、そして葛野。
 こいつらの緊縛は、早く美しい。
 どこを絞め、どこを緩めるのか、それにより動きやすく、ピンポンとに急所が締め上げられる。

 これにより、女子ならば……
「十歩が限界。もうらめぇ」
 そんな言葉を言わせてしまう。

 実に恐ろしい奴らだ。

 そして……
「おうおう、てめえらなにもんだぁ、こっから先はわしらの縄張じゃけぇ、勝手に入るならどうなってもしらんどぉ。おお? わかっとんか、われぇ」
 どうも一年生教材による教育がきっちりされているようだ。
 今のは用語集、広島弁と河内弁の応用だと思われる。

 喧嘩なら満点だが、ここは国境、他国の軍に対しての対応としては零点だ。
「いやあ皆さん、申し訳ありませんです。こいつ新人で…… あっお怒り、そうですよね、お怒りはごもっとも、ですがその、軍で国境を越えてこられるとこちらも、それなりに…… 対応を行いますが、よござんすか?」
 揉み手をして、笑顔を貼り付けた楓真の目が怪しく光る……

 怒りに震える、ワーガマー=マーイヴエル侯爵の足が、国境を越える。
 それを見た、楓真は叫ぶ。
「にげろぉー」
 一転の逃げ……
 誰も居なくなった。
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