30 / 95
第二章 冒険者時代
第30話 救いの光
しおりを挟む
「冒険者だ、討伐に来た」
忙しいので適当。
「周りを囲む奴ら、じゃまだな」
一匹のオークに対して、数人がたかってる。
「よし無視だ」
そう言って、彼らは奥へと走っていく。
奥は、モンスターの数も多く、修羅場状態。
前に突っ込んだ、冒険者達の亡骸も転がりまくっている。
「うげっ、これはキツいな」
ぼやく奴らに言い放つ。
「お前、自分が行きたいって言ったじゃないか、ゾンビだから、何だっけ? なんかゲームみたいだって」
そう、行きたいと手を上げた田中や長谷川達。
「ああそうか、没入型の3Dだとこんな感じだよな、すっげー」
「切られたら死ぬし、臭いし最悪だけどな」
「それが良いんだよ。クソゲーだけど」
そんな軽口がでるほど、ひどい現場。
人間はそうやって心を安定させるようだ。
「気持ちだけだが、成仏をしてください」
願いながら、皆が浄化を行う。
いやほんと、匂いを消そうという試みだった。
その光は、惨劇の元となったモンスター、つまりオークに当たると、そいつらを燃やした。
そして、人々の怪我を治して、心を癒やした。
らしい……
これは後で聞いたことだから、その時には判らなかった。
誰とも無しに、始めた浄化。
それを見た皆が浄化を使い、連鎖的に広がった。
まあ、血でドロドロの山の中、死体と匂い、皆が浄化を使ったのは理解できる。
だがそれが、あそこまで強力な魔法になるとは思わなかった。
ええそうです、神野が持っている『義』の玉、そいつが何かをした様だ。
仲間の願いを力に変えて、敵を滅する。
多分力を与えた先生は、ニヤニヤしてみているだろう。
「あらあら、かわいい生徒達、頑張りなさい」
そう言って。
その光景は奇蹟として、サンドウ皇国の兵の中で広がっていく。
インセプトラ―王国からやって来た、奇妙な格好をした冒険者達、彼らは奇蹟を見せたと。
無論、町で待機をしていたヘイド=ハンター準男爵達も、その噂を聞いたが、それが神野達のことだとは、思わなかった。
救い出した人達に感謝をされながら、町への帰還。
本当なら、もっとこう言うときにはお通夜のような雰囲気なのが普通。
モンスターに飼われて、繁殖用の道具とされていた者達、食われる順番待ちをしていた者達、大抵、恐怖などで壊れているか、ひどいトラウマを背負って救出をされる。
だが今回は、助かったと言う事に対して素直に喜びがでていた。
救われたと……
その反応は、町の人にも変化が現れる。
今までなら、教会へ直行、そのまま隔離をされ、人知れず亡くなっていた。
だが今回は、素直に家族が居るなら家族の元へ、独り者なら教会へ行き、他の町のものなら、支援金を受け取り、帰って行った。
そう元の生活へ早く帰す。
その事により、絶望へと沈ませない。
以後、日々忙しく生活をする。
教会に籠もり、絶望の生活をひたすら思い出し、沈んでいく生活とは違う。
謎の冒険者達は、それにより感謝されながら送り出されていく。
調査隊の面々は、自分たちが送り出されるようなイメージを受ける。
そう調査にでるときも、静かに送り出された。
普通、敵地へと向かうときなどは壮行会が行われる。
だがそんな役目でもなく、騒げばゾンビを引き寄せてしまう。
それはそれは、静かな送り出し……
そして、サンドウ皇国へ入るときからずっと病原菌扱いの辛い日々。
だが、彼らとの旅は全く違う。
出立時には、町の人達が見送りに来て、声援が投げかけられる。
「道中に食え」
そう言って手土産まで持たされる。
無論対象は、彼らではないが、それで十分だった。
彼らは、知らず知らずに曲がっていた背中が、ピンと伸びて歩き始める。
その行列の近くで、お仲間が死にかかっていたのだが、残念ながら気がつかなかった。
その両者、まるで光と影であり、差は悲しいほどだった。
その途中でも、いくつかの問題を片付けながら、彼らは国境へとたどり着く。
「おおい、そこの者達どこへ行く、そちらはダイモーン王国。今は病気が蔓延して向こうに行くと戻ってこられなくなるぞ」
「あー」
なんと答えようかと考え始めると、颯爽とヘイド=ハンター準男爵が割り込んでくる。
「彼らは、インセプトラ―王国の冒険者達。我らが依頼をしてご足労を願ったのだ。つまらないことを言って、止めないでいただきたい」
そう言った瞬間、彼らの顔が曇った。
かわいそうな奴らだ、どう頼まれたのか判らないが、もう帰ってくることはないだろう。若そうなのに、残念だ。
そんな意識が、彼らの表情からダダ漏れ。
「そうか…… 気を付けていけ」
「達者でな」
口々に、兵から言葉がかけられる。
そして鉄板を張った、重そうな扉が開かれる。
その時、ドアの影にいたのだろう、ゾンビが一匹飛びかかってきた。
まだ若そうな男の子。
俺たちの前に出てきて、つい反射的に張った浄化の光に触れる。
一瞬だけ苦しみ、表情が和らぐ。
その後笑顔に変わり、嬉しそうな顔のまま、まるで灰のようにもろもろと崩れて行った。
骨すら残らないのはあれだが、エグい感じがなくって良かった。
そう俺達は、そんな感想で済んだのだが、驚いたのは門番達。
「見たかあれ、奴らが、笑顔になって消えていった」
「教会の奴らでも無理だ」
「馬鹿野郎教会の奴らなど役に立つか、彼らはきっと神だよ、教会のようなまがい物じゃなく」
教会の評価は、こうしてそっと落ちていく。
忙しいので適当。
「周りを囲む奴ら、じゃまだな」
一匹のオークに対して、数人がたかってる。
「よし無視だ」
そう言って、彼らは奥へと走っていく。
奥は、モンスターの数も多く、修羅場状態。
前に突っ込んだ、冒険者達の亡骸も転がりまくっている。
「うげっ、これはキツいな」
ぼやく奴らに言い放つ。
「お前、自分が行きたいって言ったじゃないか、ゾンビだから、何だっけ? なんかゲームみたいだって」
そう、行きたいと手を上げた田中や長谷川達。
「ああそうか、没入型の3Dだとこんな感じだよな、すっげー」
「切られたら死ぬし、臭いし最悪だけどな」
「それが良いんだよ。クソゲーだけど」
そんな軽口がでるほど、ひどい現場。
人間はそうやって心を安定させるようだ。
「気持ちだけだが、成仏をしてください」
願いながら、皆が浄化を行う。
いやほんと、匂いを消そうという試みだった。
その光は、惨劇の元となったモンスター、つまりオークに当たると、そいつらを燃やした。
そして、人々の怪我を治して、心を癒やした。
らしい……
これは後で聞いたことだから、その時には判らなかった。
誰とも無しに、始めた浄化。
それを見た皆が浄化を使い、連鎖的に広がった。
まあ、血でドロドロの山の中、死体と匂い、皆が浄化を使ったのは理解できる。
だがそれが、あそこまで強力な魔法になるとは思わなかった。
ええそうです、神野が持っている『義』の玉、そいつが何かをした様だ。
仲間の願いを力に変えて、敵を滅する。
多分力を与えた先生は、ニヤニヤしてみているだろう。
「あらあら、かわいい生徒達、頑張りなさい」
そう言って。
その光景は奇蹟として、サンドウ皇国の兵の中で広がっていく。
インセプトラ―王国からやって来た、奇妙な格好をした冒険者達、彼らは奇蹟を見せたと。
無論、町で待機をしていたヘイド=ハンター準男爵達も、その噂を聞いたが、それが神野達のことだとは、思わなかった。
救い出した人達に感謝をされながら、町への帰還。
本当なら、もっとこう言うときにはお通夜のような雰囲気なのが普通。
モンスターに飼われて、繁殖用の道具とされていた者達、食われる順番待ちをしていた者達、大抵、恐怖などで壊れているか、ひどいトラウマを背負って救出をされる。
だが今回は、助かったと言う事に対して素直に喜びがでていた。
救われたと……
その反応は、町の人にも変化が現れる。
今までなら、教会へ直行、そのまま隔離をされ、人知れず亡くなっていた。
だが今回は、素直に家族が居るなら家族の元へ、独り者なら教会へ行き、他の町のものなら、支援金を受け取り、帰って行った。
そう元の生活へ早く帰す。
その事により、絶望へと沈ませない。
以後、日々忙しく生活をする。
教会に籠もり、絶望の生活をひたすら思い出し、沈んでいく生活とは違う。
謎の冒険者達は、それにより感謝されながら送り出されていく。
調査隊の面々は、自分たちが送り出されるようなイメージを受ける。
そう調査にでるときも、静かに送り出された。
普通、敵地へと向かうときなどは壮行会が行われる。
だがそんな役目でもなく、騒げばゾンビを引き寄せてしまう。
それはそれは、静かな送り出し……
そして、サンドウ皇国へ入るときからずっと病原菌扱いの辛い日々。
だが、彼らとの旅は全く違う。
出立時には、町の人達が見送りに来て、声援が投げかけられる。
「道中に食え」
そう言って手土産まで持たされる。
無論対象は、彼らではないが、それで十分だった。
彼らは、知らず知らずに曲がっていた背中が、ピンと伸びて歩き始める。
その行列の近くで、お仲間が死にかかっていたのだが、残念ながら気がつかなかった。
その両者、まるで光と影であり、差は悲しいほどだった。
その途中でも、いくつかの問題を片付けながら、彼らは国境へとたどり着く。
「おおい、そこの者達どこへ行く、そちらはダイモーン王国。今は病気が蔓延して向こうに行くと戻ってこられなくなるぞ」
「あー」
なんと答えようかと考え始めると、颯爽とヘイド=ハンター準男爵が割り込んでくる。
「彼らは、インセプトラ―王国の冒険者達。我らが依頼をしてご足労を願ったのだ。つまらないことを言って、止めないでいただきたい」
そう言った瞬間、彼らの顔が曇った。
かわいそうな奴らだ、どう頼まれたのか判らないが、もう帰ってくることはないだろう。若そうなのに、残念だ。
そんな意識が、彼らの表情からダダ漏れ。
「そうか…… 気を付けていけ」
「達者でな」
口々に、兵から言葉がかけられる。
そして鉄板を張った、重そうな扉が開かれる。
その時、ドアの影にいたのだろう、ゾンビが一匹飛びかかってきた。
まだ若そうな男の子。
俺たちの前に出てきて、つい反射的に張った浄化の光に触れる。
一瞬だけ苦しみ、表情が和らぐ。
その後笑顔に変わり、嬉しそうな顔のまま、まるで灰のようにもろもろと崩れて行った。
骨すら残らないのはあれだが、エグい感じがなくって良かった。
そう俺達は、そんな感想で済んだのだが、驚いたのは門番達。
「見たかあれ、奴らが、笑顔になって消えていった」
「教会の奴らでも無理だ」
「馬鹿野郎教会の奴らなど役に立つか、彼らはきっと神だよ、教会のようなまがい物じゃなく」
教会の評価は、こうしてそっと落ちていく。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる