はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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第二章 冒険者時代

第27話 技術は爆発だ

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「うおーい。ただいまぁ」
 福山達は春先に帰ってきた。
 なんだか妙に元気はつらつで、顔もつやつや。

 あの時、大量に朱鳥を狩ったため、燻製にして持ち帰ってきた。
 道々食べると、元気はつらつで絶好調だったようだ。
 一欠片で、一キロは全力疾走できそうだとか。

 共に旅をしたおかげで、出発時よりも皆が仲良くなったようだ。

 迎えに出た、クラスメイト達は愕然とする。
 彼女達のとろけるような眼差し、福山はともかく他の二人まで……
 そして途中で目に付いた鉱石を、簡単な地図と共に持ち帰ってきていた。
 褒めようと思ったが、発案者はマリーのようだ。
 マリーを褒めよう。

 その晩、燻製肉をお土産に貰い、そのうまさに驚く。
 硫黄の採取は必要だし、今度現地で焼き肉だと、皆が張り切る。

 そうこの時は何も知らないからね。
 だがそれを聞いても、迷信だよね、だって美味いんだからと、計画的に狩るという暴挙にでる。

 この時から、色々不満があった者達が、焼き肉のタレや調味料を本格的に作り始める。
 うろ覚えの知識で。

 まあ最初は、味噌と醤油の醸造から始まり、豆と麦、そして食料探しではないが、討伐依頼の途中、湿地帯で米を発見をする。陸稲ではなく、水稲だったのには驚いた。


 そして、材料が揃い、実験が始まる。
 そう、彼らが作るのは黒色火薬。
 
 ところが、当てにしていた田中ですら、うろ覚えもいいところで、適当に混ぜて燃やすのを繰り返す。
 そう、硫黄と硝石を併せて燃焼させて、そのままにしていたり、植物から取り出した油脂があったり、ものすごく危険な現場。

 だが学校の授業については、運動以外は不真面目な彼ら。
 材料で、やばいということに気が付くものは居なかった。
 硫黄と硝石を併せて、燃焼させて放置していた瓶に液体が溜まっていたり。
 そんなことは気にせず、硝酸の結晶をぶち込み、また放置していたり……

 なぜか、その瓶の中でニトロ化が進んだり……
 こぼして、綿花で作られた布で拭いたり……

 そう黒色火薬を作っていたのに、奇しくも、ニトロセルロースが出来上がったり……
 その偉大なる生産物に気がつかず放置。空気が乾燥をしていて燃え上がり、大騒ぎになる。

「何を作ったんだ?」
「判らねえ、布がいきなり燃えた」
 そんな中で、誰かがぽつり。

「乾燥した空気で、自然に燃え上がる布。それはニトロセルロースに違いない。実におもしろい」
 とまあ。

 細かな粉末にして、管の底へ振りまき、上から鉄の玉を入れる。
 ぱーんといい音がして、玉は打ち上がる。

「いいんじゃね。どうやって作ったんだ?」
「さあ?」
「まあ、材料は此処にあったもので出来たんだ。頑張れ」

 そうして、よく判らないが、これをして放置、硝酸を追加、放置。
 放置をしまくるレシピが完成をした。

 粉末のセルロースを液体に通して乾燥させる。
 薬莢のような筒を造り、その中に重さを量りながらいくつか作っていく。

「さあ、試すぞ」
 パーン…… と、町の研究所。
 そこに並べられた筒が、「発射」そんなかけ声に従って、をしてはじけていく。

 それでもめげずに繰り返して、火薬の規定量を決める。
 銃の構造などは、この学校の生徒なら皆詳しい。
 そう、そんな奴ばかり。

「ファランクス? それって対空砲だろ?」
 そう、皆が皆知識が偏っている。中世の兵法や陣形は知らなくとも、近世の武器は結構詳しいのだ。
 まあちょい悪系はそういうものだ。

 車とかバイクとか、武器とか。
 絶対、皆家に帰れば木刀やヌンチャク、メリケンサックはあるはずだ。
 
 まあそれはいいが、鋳物の弾はどんどんできあがる。
 溶かすのが簡単で重さのある鉛。

 薬莢は、真鍮と言って銅と亜鉛の合金。
 これも普通に流通していた。

 それを蒸気機関でプレス。
 ああそうそう、機織り機のスピードはものすごく、商店の親父から喜ばれた。
 ただ部品がどうしても木が多く、耐久性がやばい。
 使えそうなものは、金属に変えているが、グリスがね。
 二四時間稼働はしないからいいのだが、将来的にはプラスチックとかが欲しい。

 機織り機が、部品の耐久限界を超えて、幾度目かの青い空に打ち上がってから、もう少し安全にしてくれとおっさんからクレームが来た。
 大体オッサンがノリノリでもっと早く。設計の三倍は出せと言うから、機織り機を赤く塗ったのに。

 そう言っていたら、駆動部はマグネティックシールドだと、一部の奴が言い始めて、電磁石でシャフトを浮かせる研究をしている。
 今は、穴が開いていて、可動部の内側にニョロニョロと油がでてくる構造だ。

 別の奴は、骨を使えとか、鉱石に耐摩耗性の強いものがとか言っていて、一度鉛を使うと具合が良かったのだが、体に悪そうなので素材は未だに探している。
 

 俺達は、すっかり町に根を張り、以外と頼りにされている。
 特に、新月とかにでてくるデーモン達、それの退治では俺達は無敵だった。

 宿舎を借りているから仕方が無いのだが、奴らがでると、兵が呼びに来るんだよ。
「兄さん方、出番です」
 そんな感じで。

 無給ではなく、ギルドから報償がでる。

 そして、『煉獄の薔薇』マリー達一軍も浄化を使えるようになっていた。
 色々なときに、便利だと。
 風呂代わりに使っているようだ。


 さて島は戦国時代が始まり、俺達は町に馴染んだ。

 その頃、ゾンビが湧いていたダイモーン王国は、国が傾きかかっていた。
 ゾンビによる被害の拡大と、人的不足。
 そこから来る生産性の低下。
 それは農業だけではなく、商業も工業もすべて。
 採掘をすれば、穴を見つけてゾンビ達が入ってくるし、優れた針子さんや、農業従事者は襲われて感染して、月を追うごとに数を減らす。

「なんとかせねば…… 教会は当てにならん。この際他国でも良い、助けを探せ」
「はっ。御意に……」

「そうは言っても、王が言うように都合良く…… 教会関係者以外に、浄化魔法を使える者など……」

 おわかりだろうか? ……
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