はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

文字の大きさ
上 下
20 / 95
第二章 冒険者時代

第20話 試練

しおりを挟む
「何、それはまことの事か?」
「はっ、知らせには、そのように書かれております」
 キクーノス=オーガミ王は考える。

 天から…… おそらくは、何かの試練。
 『シュウガクリョコウ』とやらを、受けるために彼らはやって来た。
 それはいかなる物なのか……

 王は、ゴクリとつばを飲み込む。
 常人には、計り知れない何か……
 そう、この世界で何かが起きておる。



 ―― 起きていた。
 インセプトラ―王国から、南側。
 神々が住まう山々と呼ばれている、山脈を挟んだ反対側。
「まただ……」
「どうすりゃいいんだ……」
 ダイモーン王国では、今年の初めから奇妙な病で人が死に、それは急速に広がっていた。
 最初は軽微な風邪症状。

 だがそれは、およそ二八日、一月近く経つといきなり劇症化、高熱を出し急激に悪化。
 最終的に、多臓器不全を起こして、人々は亡くなっていく。

 ところがだ、夜中に埋葬された墓地から這い出し始める。
 見た目は、土に汚れた顔色の悪い人。
 だが、人間を見ると襲い始める。
 そうゾンビ化。

 教会では、埋葬時に浄化をして土に埋める。
 だが、ゾンビが出始めて、埋めるときに石を抱かしてみたりしたが、力が強く這い出してくる。

「地から、何か悪しき物が湧いているのかもしれない」
 神父さんがそんな事を言い始める。

 そのため、直接土に触れないように、ご遺体を木の箱に入れて収めることに決めた。
 だがそんな物を買えるのは、裕福な者だけ。
 大部分は、そのまま埋める。
 従来、死者は地に吸収され、浄化されると言われていた。

 そしてこのゾンビ、倒し方は、胸に杭を打つと死ぬようだ。
 首をはねても、胴体は動き続ける。
 そして、不注意に血でも浴びれば熱が出て、一月後には仲間入りになってしまう。
 無論噛まれても同じ、体液は危険なのだ。
 
「なんとかしねえと、人が居なくなっちまう」
 ナラカの町、ギルドの酒場で、冒険者ベリアル達は酒を飲みながらくだを巻いていた。

 そう今日も彼らは、ゾンビ退治をして帰って来た。
 依頼を受けた場所、第三開拓村はすでに全滅をしていた。

 生前の行いに多少影響をされるようで、農作業をしている振り、水を汲んでいる振り、踊っている者……

 両手を斜め上に挙げて左右に…… どう見ても踊っているようにしか見えなかったが、ひょっとすると何かの作業かもしれない。

 途中で聞こえた、『ぽぅ』と言う奇声。

「だめだ、村人は全滅だ。急所は胸だそうだ、血には気を付けろ。ヴァラク、美人でも死体とはするなよ、うつるぞ」
「ばか、おれが幾ら女が好きって言ったって、死体とするかよ」
 そう言って、嫌そうな顔を向ける。

「ミミちゃんでもか?」
「馬鹿野郎、あの子はまだ生きている。縁起でもないことを言うんじゃねえよ」
 ミミちゃんは、ヴァラクのお気に入りだった女の子。だが、働いている店、ナラクは飯屋というよりは酒場だったため、人の出入りも多く、彼女は数日前から熱を出しているようだ。
 疲れだろうと言ってはいるが、長引けばあの熱病だ。
 みんな、口では色々と言っているが、判っている。

 おおよそ二八日…… 六六六時間経てば、皆死んでしまう。
 その後生き返り、人を襲い始める。
 最近は、なるべく墓穴を深く掘り、うつ伏せに埋葬するのが流行らしい。

 教会関係者達は、幽界門がどうとか言っていたが、そんな非現実的な物ではなく悪さをしていたのは闇の者。
 そう地球で言えば、悪魔というのが近いだろう。
 ダイモーン王国の地方領主、ガミジン=ホース侯爵。

 人から見れば、牧畜や農業にいそしむ温厚な領主。
 実に平和な領だが、仕事がやりやすいのか盗賊などが現れる。
 街道を通る商人や、農民が忽然と姿を消したときには、盗賊でも出たんだろうと諦める。運が悪かったと……

 代々領主をしているが、皆詳しくは知らない。
 王家すら、余り関心がない家であった。


 ただ、代替わりの連絡は来るが、婚姻や出産、そんなものはついぞ聞いていないことに誰もが気がついていなかった。

 屋敷の地下には、どこかで見たコウモリもどきが大量にいて、ギイギイとやかましく鳴いている。
 そしてさらわれた者達は、自分自身が食われていくのをぼーっと見ている。

 やがて満腹になると、下級デーモン達は国中に広がってく。
 色々なものをまき散らしながら……

「コウモリが飛んでやがる。明日は晴れか?」
「バカ、黄昏れているなよ、日が暮れかかって、気温が下がってきたんだ。天気を当てるなら、ワイバーンが低いところを飛んでいるときだろ」
 そう言いながら、近寄ってきたじじいの胸に杭を押し込む。

「そりゃ違う、炎竜だろ?」
「そんなめったに飛ばないものなど、あてにならん」
「良いから、早くしないと暗くなる」
 皆は、意図的に無駄話をギャアギャア叫びつつ、ゾンビ達を呼び寄せる。

 真面目に日が暮れるとやばい、こっちは休憩が必要だがゾンビ達は二四時間襲ってくる。
 噛まれれば痛いし、病気がうつる。

「ほら、あの子かわいいぞ」
「ああ、かわいいから、皆に食われちまって…… ゆっくり休んでくれ」
 そう言って、ヴァラクは女の子の胸に杭を押し込む。

 その時、ミミとイメージが重なり、つい涙がこぼれる。



 ―― 本当の心は、彼にしか判らない。
 だが彼は、ミミが亡くなった後、シオンちゃんが推しになったようだ……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...