はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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第二章 冒険者時代

第19話 巡り会い、町

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「おう、おまえら何組だ?」

 すったもんだしたあげく、町に入った亀井達のグループと、明宏達。
 道ばたで相談をしていると、声をかけられる。
 明宏達は、さすがにもう農民の格好はしていない。

 声をかけたのは、無論一組のグループ。
 男三人に女二人。
川上 千尋かわかみ ちひろ斉藤 勝巳さいとう かつみ 西田 敏弘にしだ としひろ
 そこに、女の子が二人。
木村 孝子きむら たかこ望月 京子もちづき きょうこ

 話を始める亀井達を余所に、美加の目に光るものが……
 このグループは、男があぶれている。

「おれらは、三組で、こっちは四組だそうだ」
「そうか、いつ来たんだ?」
「四日位前、あー、明宏達は?」
「俺達はもう、一週間位になるか」
「うん、そうね」
  腕を組む叶恵と、それを見て、どこかから舌打ちが聞こえる。

「そうか、悪さをしないなら、宿舎に来るか?」
「宿舎?」
「最初…… 俺達皆がこのなりだろう。半分逮捕をされた感じで連れてこられて、まあ、監視はあるが、その時から宿舎を使って良いという事で、宿代もかからないし快適だぜ」

 仕事をして金ができたので、数人は宿へ行ってみたようだ。
 ところが、日本の宿をイメージしたら、大間違い。
 板の間に、適当に作られた干し草敷きのベッド。
 当然、チクチクするし、虫も居た。
 そうダニとかその類い。
 金を払ってひどい目に会いに行ったのかと、その報告を聞いて、皆大笑い。

 そこよりも安いところだと、山小屋のような雰囲気。
 板の間に全員雑魚寝で、朝には財布も何もかもなくなっているらしい。
 女の子だと、貞操も危険だという事だ。

「やべー、俺達なんとか安い宿なら、泊まれるなと話をしていたところだよ」
「やめた方が良いぜ。宿舎へ来いよ」
 そう言って、怪しい集団は膨らんでいく。

 代官は、話を聞いて寝込むことになる。
「奴らいったい、何処から来るのだ」
 気がつけば、じわりじわりと数が増えているらしい。
 散らばらず、与えた宿舎に留まっているのが救い。
 だが、それにしても限りがある。
 このまま彼らが増えるのであれば、受け入れるところが必要。

「ええい、彼らの宿舎を造れ。建て増しをするのだ、その時に意見を聞き、できることなら答えるように」
 彼は決断をした。
 救世主かもしれない。

 ひょっとすると…… いや、少しだけ、覚悟は決める。

 建て増し計画発令のため、調査に来ていた。
 餌を目の前にぶら下げて、そのかわりに情報を抜こうという意図が当然ある。

「諸君ら、じわじわと人数が増えているようだが、どこから来ておるのだ?」
「どこって…… なんでそんなことを?」
 皆は、顔を見合わせる。

 コホンと兵は咳払いをして、答え始める。
「代官様、オサメルーデ=マーチン男爵様が、人数が増えるようであれば、宿舎を建て増ししてくださるそうだ。そして注文があれば聞き届けるようにと聞いておる。さて先の質問、返答はいかに?」
「ちょっと待ってください」
 皆は集まって相談を始める。

 島にいることは言っても良いかと思ったが、中には悪さをする奴も居る。
「下手に言って、探しに行かれても困るな」
「そうよ。向こうの島じゃ、死んでも反省文を書くだけで戻ってくるだけらしいし、放って置けば良いのよ」
 間中 美加まなか みかはその事を言ってしまう。

 一組の連中は今だに誰も死んでいない。
 そう…… それは最も、必要な情報だった。

「おい教えてくれ、どうやれば修学旅行は終わるんだ?」
 つい兵がいるのも忘れて、杉原は 美加に詰め寄ってしまう。
 男の子、それもグレードが高い。
 美加は、急に近寄ってきた顔に、つい唇がにゅっと伸びる。

 だが先に、意識が飛びそうになる。
 そう血圧が一気に上昇をしたのだ。

 はううっ。
「こら意識を失うな、答えろ」
「はっ。初めてなの…… 優しくして…… お願い」
「ちがーうっっ」
 その態度に、森 澪もり みおが前に出る。
「あんた。人の彼氏相手に、どういうつもり? 楓真。あんたも離れて」
「ああ。はいはい」
 澪の剣幕に、頭に登っていた血が下がる。

 その奥で、兵は聞いていた。
 謎のキーワード、『シュウガクリョコウ』とは何だ?
 これは大事な何かを聞いたに違いない、そして、どうすれば終わるのかと言っていた。
 やはり、この一件、だだの神隠しではない。
 わいわい言っている皆を残して、兵達は消えてしまう。

「あれ、兵士さんが消えた」
「その方が良いよ、あわてて随分まずいことを言った気がする。聞き取りへの回答集と、宿舎への要望書を作ろう」
「ああ、そうだな」

 その時、男に囲まれ、もみくちゃにされて、喜んでいたものが一人。
「幸せ…… 私モテモテだわ」
 それだけで、幾度か上り詰め、幸せそうな顔で気を失っていた。


「なに? まことか」
「はっ」
 兵からの報告は、速やかに男爵に伝えられた。

「ふうむ…… シュウガクリョコウと…… それはいかなるものなのか誰か判らぬか?」
 その場に居る者達は、首を横に振るのみ。

 だが兵は、情報を出してくる。
「ですが、それを言ったとき、その者に対してどうやれば終わるのかと、それはもう必死の形相で詰め寄っておりました。愚考ですが、彼ら、神になるための試練を、地上にて行っておるのではありませんか?」
 それを聞いてその場で、どよめきが起こる。

「神の試練か…… シュウガクリョコウ…… それがいかなるものかは分からぬが、力あるもの達が、必死でどうすれば終わるのかと問うほどのもの…… そうか、試練を受けている者達が何かを達成をするのか、それとも悟り、重要な事に気がつくのか…… なかなかに厳しいものだとみた」

 そこまで考え、彼は思いつく。
 試練だとすれば、余り手を掛けて反則とされてしまうと、我らのせいで失格などになれば彼らのためにならん。
 その線引きについての話し合いは、なかなか答えが出ず、三日三晩延々続いたようだ。

「神の試練、シュウガクリョコウ…… 恐るべし……」
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