はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

文字の大きさ
上 下
18 / 95
第二章 冒険者時代

第18話 奇蹟に理由を求めるのは、仕方ないじゃん

しおりを挟む
「なに? それは真か?」
「御恐れながら……」
「ううむ」
 
 王都カーブキーの王城にて、現物のコインを見せられながら、王キクーノス=オーガミは報告を聞く。

 辺境伯エジーヲ=ゴーバメッド侯爵は、伯爵カリーノ=チュカーンからの話を伝える。

「その者達、当初四〇名ほどで行軍の途中、全員が気を失い、気がつけばサンカウロスの町近郊へと現れたと申しておりました。そして丁度その時に、定期便ともいえる魔の者達の襲撃がありましたが、謎の光を纏い、あっという間に撃退を行ったようであります。その力、教会の者どもが使う癒やしの光に酷似し、さらに強力とのことでございます」
 そう言った後、背後に控える伯爵に目配せし、間違いが無いことを確認をする。

 そっとメモが出てくる。
 何かがあるのなら先に出せよと、睨み付ける侯爵。
 メモには、『彼らは、手首に時刻を知るための腕時計なるものを装備、どうやってか、その日の天気までおおよそ当てる模様』

 誰かが、気圧計付きのモデルを持っていたようだ。
 アウトドアを楽しむなら必需品だね。

「なっ…… これは真か?」
「はっ、ギルドからの情報でございます」
 恭しく、頭を下げる伯爵。

「どうした、言って見ろ」
「はっ、未確認情報ですが、ギルドによると、彼らは腕に時刻を測る時計を装備、天気まで当てることができるそうでございます」
「ぬうぅ」
 この世のものとは思えない、精密な硬貨。
 腕に付けて? 魔導具か? しかし時を知る?
 どうやって? さらに天気??

 王の頭の中で、クエスチョンマークが乱舞する。

「そりゃあ、あれだ」
 公の場なのに、王の幼馴染みである宰相は、素の状態で王に意見を言い始めた。

「天の使いとか言う奴じゃないか?」
「天の使い? なぜその様な方々が? 王国に何かが起こると?」
「そうだな。王国だけじゃないかもなぁ……」
 この大陸、パレーストラムには中央に山脈があり、いくつかの国が存在をする。

「御恐れながら、頻繁に出没をする魔の者に、何か関係があるのでしょうか?」
 伯爵が宰相に問いかける。

「ああそりゃ、あるかもなぁ」
「こら、トーミオ。言葉」
「おお、こりゃ失礼。王様」
 そう言ってニヤニヤ。

 近衛達は、またかと呆れる。
 宰相は、優秀だがガラは余り良くない。
 結構問題の多い人物だ。

 だがまあ、王にしろ宰相にしろ献上品となったコインを見て驚き、王都の職人に造れるかどうかを聞いて回る。
 無論、王国貨幣作製局の鋳物師達にも話は聞いた。
 無論『無理でございます』そんな回答を受け取る。

 細工師はできると回答をしたが、物が貨幣で同じ物を作れるかと聞かれ、期間と枚数は? と一応問い返す。
 だが貨幣と聞いた瞬間、気が狂いそうになる姿が幻視される。
 貨幣なら、作業に関わる人は増やせない。
 当然人が増えれば、悪さをするリスクが増える。

 延々と、同じ物を作り続けるのは、流石にストレスが大きい。

 そして、見本を見ているとふと気が付く。偽物防止だろう。コインに書かれた、見えないほどの記号。
 できると言ったが、実際できるかどうかなど……
「きっと、実際に造るとなればそれなりの期間が…… なんだ、これは?」
 彼は気がついてしまった…… 傾けると見る角度によって模様が見え隠れする……
 それも違った形が……

 そう旧五百円は、500円だけだったが、新タイプは下に傾けたとき『JAPAN』の文字、下からつまり上に傾けたときは、『500YEN』と見える。見る角度により文字が変わる。
「これは無理です……」
 彼は愕然とする。

 
 その頃、町中の鍛冶屋でも困っていた。
「おっちゃん、刃が欠けちまった。直してくれ」
「おう、少し待っていろ」
 鍛冶屋の親父、カークスは受け取ったときに変わった色をしたナイフだと思ったが、安易に受け取ってしまう。

 刃の欠けなら、状態により削るか焼いて叩き、形を作るしかない。
 だが、親方が知らなかった黒い金属、こいつは学校の迦具土かぐつち先生が趣味で造ったものを、生徒に配布していた。
 タングステンカーバイドを使用して、超硬。
 無論そこそこ配合比を変えて、ある程度のしなりは持たせてあるが、基本衝撃に弱かったりする。

 だが修理をしようなどと考えると、タングステンカーバイドの融点は二千八百七十度なのだ、実際は混ざり物があるため多少低い。それでも……

 ふいごで幾ら木炭を仰いでも、溶けることはない。
 木炭の燃焼温度は、千度前後しかない。

 元々、タングステンカーバイドは、高温で型に粉末を入れて焼結、そしてプレス成形。
 そうタングステンカーバイドは、鉄とは違うのだよ鉄とは……

「くそう、なんだこりゃぁ」
 必死になるおやっさん。そんな時に音がする。
 ガッと鈍い音……
 ハンマーの当て方をしくじったと思ったが、炙られ冷やされ、叩かれたナイフは、クラックが広がり折れた。

「あああっ、折っちまったぁ」
 あわてて掴みに行くが、折れたナイフは超高温。
「あちいっ、なんだよこれ」

 おやっさんはその晩、何十年ぶりかで二日酔いになったそうだ。
 仕方が無いから、おやっさんは鉄で同じ形の物を造り、弁償をした。

 そして、その時から色々試すが、その素材は謎だった。
 その話は、鍛冶師仲間で共有されて、広がっていく。

「やはり彼らは、神の使い……」
「来るんだよ、きっとやばいものがぁ」
「うむむ…… 何が来ても良いように備えよ」
「おうっ。了解だ」
 その時期から、王の胃が悪いと、きな臭い噂まで流れ始める。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

処理中です...