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第二章 冒険者時代
第18話 奇蹟に理由を求めるのは、仕方ないじゃん
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「なに? それは真か?」
「御恐れながら……」
「ううむ」
王都カーブキーの王城にて、現物のコインを見せられながら、王キクーノス=オーガミは報告を聞く。
辺境伯エジーヲ=ゴーバメッド侯爵は、伯爵カリーノ=チュカーンからの話を伝える。
「その者達、当初四〇名ほどで行軍の途中、全員が気を失い、気がつけばサンカウロスの町近郊へと現れたと申しておりました。そして丁度その時に、定期便ともいえる魔の者達の襲撃がありましたが、謎の光を纏い、あっという間に撃退を行ったようであります。その力、教会の者どもが使う癒やしの光に酷似し、さらに強力とのことでございます」
そう言った後、背後に控える伯爵に目配せし、間違いが無いことを確認をする。
そっとメモが出てくる。
何かがあるのなら先に出せよと、睨み付ける侯爵。
メモには、『彼らは、手首に時刻を知るための腕時計なるものを装備、どうやってか、その日の天気までおおよそ当てる模様』
誰かが、気圧計付きのモデルを持っていたようだ。
アウトドアを楽しむなら必需品だね。
「なっ…… これは真か?」
「はっ、ギルドからの情報でございます」
恭しく、頭を下げる伯爵。
「どうした、言って見ろ」
「はっ、未確認情報ですが、ギルドによると、彼らは腕に時刻を測る時計を装備、天気まで当てることができるそうでございます」
「ぬうぅ」
この世のものとは思えない、精密な硬貨。
腕に付けて? 魔導具か? しかし時を知る?
どうやって? さらに天気??
王の頭の中で、クエスチョンマークが乱舞する。
「そりゃあ、あれだ」
公の場なのに、王の幼馴染みである宰相は、素の状態で王に意見を言い始めた。
「天の使いとか言う奴じゃないか?」
「天の使い? なぜその様な方々が? 王国に何かが起こると?」
「そうだな。王国だけじゃないかもなぁ……」
この大陸、パレーストラムには中央に山脈があり、いくつかの国が存在をする。
「御恐れながら、頻繁に出没をする魔の者に、何か関係があるのでしょうか?」
伯爵が宰相に問いかける。
「ああそりゃ、あるかもなぁ」
「こら、トーミオ。言葉」
「おお、こりゃ失礼。王様」
そう言ってニヤニヤ。
近衛達は、またかと呆れる。
宰相は、優秀だがガラは余り良くない。
結構問題の多い人物だ。
だがまあ、王にしろ宰相にしろ献上品となったコインを見て驚き、王都の職人に造れるかどうかを聞いて回る。
無論、王国貨幣作製局の鋳物師達にも話は聞いた。
無論『無理でございます』そんな回答を受け取る。
細工師はできると回答をしたが、物が貨幣で同じ物を作れるかと聞かれ、期間と枚数は? と一応問い返す。
だが貨幣と聞いた瞬間、気が狂いそうになる姿が幻視される。
貨幣なら、作業に関わる人は増やせない。
当然人が増えれば、悪さをするリスクが増える。
延々と、同じ物を作り続けるのは、流石にストレスが大きい。
そして、見本を見ているとふと気が付く。偽物防止だろう。コインに書かれた、見えないほどの記号。
できると言ったが、実際できるかどうかなど……
「きっと、実際に造るとなればそれなりの期間が…… なんだ、これは?」
彼は気がついてしまった…… 傾けると見る角度によって模様が見え隠れする……
それも違った形が……
そう旧五百円は、500円だけだったが、新タイプは下に傾けたとき『JAPAN』の文字、下からつまり上に傾けたときは、『500YEN』と見える。見る角度により文字が変わる。
「これは無理です……」
彼は愕然とする。
その頃、町中の鍛冶屋でも困っていた。
「おっちゃん、刃が欠けちまった。直してくれ」
「おう、少し待っていろ」
鍛冶屋の親父、カークスは受け取ったときに変わった色をしたナイフだと思ったが、安易に受け取ってしまう。
刃の欠けなら、状態により削るか焼いて叩き、形を作るしかない。
だが、親方が知らなかった黒い金属、こいつは学校の迦具土先生が趣味で造ったものを、生徒に配布していた。
タングステンカーバイドを使用して、超硬。
無論そこそこ配合比を変えて、ある程度のしなりは持たせてあるが、基本衝撃に弱かったりする。
だが修理をしようなどと考えると、タングステンカーバイドの融点は二千八百七十度なのだ、実際は混ざり物があるため多少低い。それでも……
鞴で幾ら木炭を仰いでも、溶けることはない。
木炭の燃焼温度は、千度前後しかない。
元々、タングステンカーバイドは、高温で型に粉末を入れて焼結、そしてプレス成形。
そうタングステンカーバイドは、鉄とは違うのだよ鉄とは……
「くそう、なんだこりゃぁ」
必死になるおやっさん。そんな時に音がする。
ガッと鈍い音……
ハンマーの当て方をしくじったと思ったが、炙られ冷やされ、叩かれたナイフは、クラックが広がり折れた。
「あああっ、折っちまったぁ」
あわてて掴みに行くが、折れたナイフは超高温。
「あちいっ、なんだよこれ」
おやっさんはその晩、何十年ぶりかで二日酔いになったそうだ。
仕方が無いから、おやっさんは鉄で同じ形の物を造り、弁償をした。
そして、その時から色々試すが、その素材は謎だった。
その話は、鍛冶師仲間で共有されて、広がっていく。
「やはり彼らは、神の使い……」
「来るんだよ、きっとやばいものがぁ」
「うむむ…… 何が来ても良いように備えよ」
「おうっ。了解だ」
その時期から、王の胃が悪いと、きな臭い噂まで流れ始める。
「御恐れながら……」
「ううむ」
王都カーブキーの王城にて、現物のコインを見せられながら、王キクーノス=オーガミは報告を聞く。
辺境伯エジーヲ=ゴーバメッド侯爵は、伯爵カリーノ=チュカーンからの話を伝える。
「その者達、当初四〇名ほどで行軍の途中、全員が気を失い、気がつけばサンカウロスの町近郊へと現れたと申しておりました。そして丁度その時に、定期便ともいえる魔の者達の襲撃がありましたが、謎の光を纏い、あっという間に撃退を行ったようであります。その力、教会の者どもが使う癒やしの光に酷似し、さらに強力とのことでございます」
そう言った後、背後に控える伯爵に目配せし、間違いが無いことを確認をする。
そっとメモが出てくる。
何かがあるのなら先に出せよと、睨み付ける侯爵。
メモには、『彼らは、手首に時刻を知るための腕時計なるものを装備、どうやってか、その日の天気までおおよそ当てる模様』
誰かが、気圧計付きのモデルを持っていたようだ。
アウトドアを楽しむなら必需品だね。
「なっ…… これは真か?」
「はっ、ギルドからの情報でございます」
恭しく、頭を下げる伯爵。
「どうした、言って見ろ」
「はっ、未確認情報ですが、ギルドによると、彼らは腕に時刻を測る時計を装備、天気まで当てることができるそうでございます」
「ぬうぅ」
この世のものとは思えない、精密な硬貨。
腕に付けて? 魔導具か? しかし時を知る?
どうやって? さらに天気??
王の頭の中で、クエスチョンマークが乱舞する。
「そりゃあ、あれだ」
公の場なのに、王の幼馴染みである宰相は、素の状態で王に意見を言い始めた。
「天の使いとか言う奴じゃないか?」
「天の使い? なぜその様な方々が? 王国に何かが起こると?」
「そうだな。王国だけじゃないかもなぁ……」
この大陸、パレーストラムには中央に山脈があり、いくつかの国が存在をする。
「御恐れながら、頻繁に出没をする魔の者に、何か関係があるのでしょうか?」
伯爵が宰相に問いかける。
「ああそりゃ、あるかもなぁ」
「こら、トーミオ。言葉」
「おお、こりゃ失礼。王様」
そう言ってニヤニヤ。
近衛達は、またかと呆れる。
宰相は、優秀だがガラは余り良くない。
結構問題の多い人物だ。
だがまあ、王にしろ宰相にしろ献上品となったコインを見て驚き、王都の職人に造れるかどうかを聞いて回る。
無論、王国貨幣作製局の鋳物師達にも話は聞いた。
無論『無理でございます』そんな回答を受け取る。
細工師はできると回答をしたが、物が貨幣で同じ物を作れるかと聞かれ、期間と枚数は? と一応問い返す。
だが貨幣と聞いた瞬間、気が狂いそうになる姿が幻視される。
貨幣なら、作業に関わる人は増やせない。
当然人が増えれば、悪さをするリスクが増える。
延々と、同じ物を作り続けるのは、流石にストレスが大きい。
そして、見本を見ているとふと気が付く。偽物防止だろう。コインに書かれた、見えないほどの記号。
できると言ったが、実際できるかどうかなど……
「きっと、実際に造るとなればそれなりの期間が…… なんだ、これは?」
彼は気がついてしまった…… 傾けると見る角度によって模様が見え隠れする……
それも違った形が……
そう旧五百円は、500円だけだったが、新タイプは下に傾けたとき『JAPAN』の文字、下からつまり上に傾けたときは、『500YEN』と見える。見る角度により文字が変わる。
「これは無理です……」
彼は愕然とする。
その頃、町中の鍛冶屋でも困っていた。
「おっちゃん、刃が欠けちまった。直してくれ」
「おう、少し待っていろ」
鍛冶屋の親父、カークスは受け取ったときに変わった色をしたナイフだと思ったが、安易に受け取ってしまう。
刃の欠けなら、状態により削るか焼いて叩き、形を作るしかない。
だが、親方が知らなかった黒い金属、こいつは学校の迦具土先生が趣味で造ったものを、生徒に配布していた。
タングステンカーバイドを使用して、超硬。
無論そこそこ配合比を変えて、ある程度のしなりは持たせてあるが、基本衝撃に弱かったりする。
だが修理をしようなどと考えると、タングステンカーバイドの融点は二千八百七十度なのだ、実際は混ざり物があるため多少低い。それでも……
鞴で幾ら木炭を仰いでも、溶けることはない。
木炭の燃焼温度は、千度前後しかない。
元々、タングステンカーバイドは、高温で型に粉末を入れて焼結、そしてプレス成形。
そうタングステンカーバイドは、鉄とは違うのだよ鉄とは……
「くそう、なんだこりゃぁ」
必死になるおやっさん。そんな時に音がする。
ガッと鈍い音……
ハンマーの当て方をしくじったと思ったが、炙られ冷やされ、叩かれたナイフは、クラックが広がり折れた。
「あああっ、折っちまったぁ」
あわてて掴みに行くが、折れたナイフは超高温。
「あちいっ、なんだよこれ」
おやっさんはその晩、何十年ぶりかで二日酔いになったそうだ。
仕方が無いから、おやっさんは鉄で同じ形の物を造り、弁償をした。
そして、その時から色々試すが、その素材は謎だった。
その話は、鍛冶師仲間で共有されて、広がっていく。
「やはり彼らは、神の使い……」
「来るんだよ、きっとやばいものがぁ」
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