はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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第二章 冒険者時代

第15話 変わっていく世界

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「ねえねえ、どれにする?」
 朝からギルド内は騒然とする。

 男と腕を組み、デレデレのマリーがいた。
 凜とした姿は消え、一人のかわいい女の子。
 亜麻色の髪を揺らし、気のせいか体も丸みを帯びて……

 だが、ちらっと酒場の方を見た目は、ブラウンの冷酷な目。
 体中から発する、冷たい刃の様な威圧。

 その傍らで、変わってしまった彼女を、呆然と見つめる一軍達。

 だが、福山も困っていた。
「ねえ、君かわいいね」
「ありがとう。うふっ」
 女の子に声をかけた瞬間、目の前には必ずマリーがいる。

 そう、その時から彼女は、瞬速のマリーと呼ばれるようになった。
 酒場側で、一軍とミーティング。
 その最中、いきなり姿が消える。

 そう福山が、冒険者の女の子に声をかけようとした。
 その瞬間、マリーは消え、福山と女の子の中間に忽然と姿が現れる。
 そう彼の発する褒め言葉は、彼女に向けられる事になる。
 それを聞いて、彼女は『いやーん。ダーリンたら……』そんな事を言ってくねくね。

 まあ彼が声をかけるのは挨拶的なものがあるし、良い…… のだが、それはそれで便利でもある。
 用事があれば、他の女の子に声をかけるまねをすると、瞬時に彼女がやって来る。
「まあっ、いいかぁ」
 彼はそうつぶやき、楽しんでいるようだ。

 彼女はそんな感じだが、二人でいれば素直でエロく体力もある。
 まあ…… お似合いの二人。
 少し変わっているが……


「おー来たぞ、あれじゃねえか?」
「よーし…… って、あれはやばすぎだろ」
 武藤が引きつる。

 彼らはいくつかに別れて、ギルドの依頼をこなしていた。
「食用の羊さんを捕まえてくださいね」
 ギルドの受付であるジャネットに、かわいくお願いをされた。

 すでに、ギルド内で、彼らは化け物の集団だと有名になっている。

「グラスランドデスシープさんは、美味しいんです。でもおっかない角がありますから気を付けてください」
 そう言って彼女は、かわいいイラストを描いてくれた。

 四足歩行で足は短く、しろいもふもふに、黒い顔。
 ただ頭の両脇から、ねじれた凶悪な角が前向きに伸びている。
 横に小さく、めえぇと書き加えられ、なんとなくかわいい。
「まかせろ」

 彼らは簡単に引き受けてしまった。

「マリー。あれ良いのか?」
「なにが?」
「グラスランドデスシープの捕獲受けちまったぞ」
「まあダーリンなら大丈夫よ」
 優しくニコッと笑う。

 そう初めての日、彼女はためらい、後ずさった。
 だが、かれは彼女のバックをあっさりと取った。
「かわいいマリー、大丈夫だよ」
 背後から抱きしめて、優しく耳元で囁く。
 胸を揉みながら……

 獲物を追い詰める時の、彼が出すスピードは人間業ではない。
 マリーは思い出す。
 その後の、情事を……
 そんな所…… 舐めるなんて…… ああっ……

「マリー…… よだれ」
「あっごめん」
 

 そうイラストとの、かわいさのギャップがすごい。
 凶悪な顔をした、バッファローのような羊。
 日本の動物園で見た羊と違い、牛並み。

 そして、見た目は悪魔。
「違いすぎるだろ」

 だがまあ、倒さなければいけない。
「とりあえず、弓かな」
「そんなものは無い」
「槍」
「ない」
「石」
「ほい」
 とりあえず、身近な飛び道具。

「大谷投げろ」
「そんな奴いねーよ」
 突っ込まれる。

 そうここに居るのは、いつものメンバー。
 鈴木、福山、武藤、飯塚、それに一人加わり五人で一チーム。
 梅本 大介うめもと だいすけ、さっきのふざけた台詞はこいつだ。

 こいつが真面目なところを見たことがない。
 だが、こいつが投げた球は速かった。

「なあ、頭が爆散したぞ。何を投げたんだ?」
「えっ。さっきの石」
 そう、グラスランドデスシープの頭は破裂した。

 だが結果的にそれが良かった。
 捕まえそこね、仲間を呼ばれると奴らは軍団でやって来る。
 一瞬のことで、鳴く暇無く倒せたのはラッキーだった。

 出て行ったと思ったら、もう一頭引きずって帰ってきて、しかも倒し方がすごい。
 密かに話題となる。



 その頃。
 二年五組の一部。
 伊藤三兄弟が居るチーム十名は、筏を作っていたがとうとう諦めて、丸木舟まるきぶねを造り始めた。

 ちまちまナイフで、直径一メートルもありそうな大木を切り出す。

 ある程度削り込んだら、そこに楔となる尖った石を打ち込む。
 なんとか、一週間掛けて倒してしまった。
 そして長さ十メートルくらいでまた切り、今度は半分に割る。

 その半分になった木、切断面上で火を焚き削る。
 そう、炭になれば簡単に削ることができる。
 外側を削り、船の形にして二艘を繋ぐ。
 ヘリの上部に穴を開けて、棒を突き刺した。

「できたぞー」
 そう、一月余り。ついに船ができた。
 双胴船のいかだ? が完成をして彼らはいそいそと出港をした。

 だがその前に、丸太二本を一組にした筏で、海を越えた強者達も居た。
「切れるなら、沢山巻けば良いんだよ」
 高野 叶恵たかの かなえ山田 明宏やまだ あきひろ山路 将文やまじ まさふみ富田 真澄とみた ますみ

 この四人収まるところに収まり、脱出を始めた。
 将文が適当なことを言い始めたが、それもそうだと納得をして、適当に造った船で脱出。

 巨大魚に出くわすことも無く大陸側へ。
 見つけた村で、お世話になっていた。

 その他大多数は、まだ島の中で二度目の秋を迎えようとしていた。
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