はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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第一章 先ずはサバイバル

第4話 季節と共に

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「おい竹は、面倒だが埋めろ。ぱっと見て見えないようにな」
 山の中腹に、拠点を構えた二年一組。

 山の斜面を掘りかき、平らなところを造る。
 今は春の終わりくらいの季節。
 すぐに暑くなるが、沢が近く、森の中でかなり涼しい。

 水源は完全に石垣で囲い、生き物が近寄らないようにした。
 そこから、竹のパイプをつなぎ、拠点まで水を引く。
 穴を掘り、石を積み上げて、間を粘土で埋めて表面も固めて乾燥させる。

 乾燥ができたら、中で火を焚き粘土を焼結させる。
 中には、小石や砂、それの間に炭を入れ、上から引いてきた水を流し込む。
 そう簡易水道を造った。
 
 集落とするため、杭を打ちロープを張る。
 将来的には、木の壁や石垣でも良い。
「だがなあ、海の向こうが気になるよな」
「お前もそう思うか」

 木の上に、簡易な足場を丸太で造り、周囲を警戒中。
 どうもこの辺り、謎の生物が存在をしていて、かなり好戦的に襲ってくる。

 女子が持っていたナイフを借りて、俺達警戒組は槍を作った。

 小さい奴は、良いんだよ。
 弱いからな。
 ただ俺達より大きな奴がいる。
 豚っ鼻の奴だ。

 それと、猪や鹿。
 まだ会っていないが、クマの足跡を見た。

「船を造りながら、弓も作ろう」
 そのためには板が要る。
 今は石で作ったくさびを、石で打ち込む方法で板を作っている。
 木の皮は、竹のヘラで綺麗にそぎ落とす。
 屋根を葺くふくのに使えるしな。
 それにしても、鉄製の道具が欲しい。

「和弓なら、前にテレビの特番で作り方を見たぞ」
「竹はあるから、それで行くか」
 オレと杉原は、とりあえず方向性を決めた。

 そうして、鏃は楔にも使った、黒曜石っぽい石を割ったり研磨をしたりして作る。

 その間に女子達は、炭や焼き物を作る。
 男の一部は海まで行き、塩を作り、その間に貝を捕り、干物にして持って帰ってくる。無論魚も捕れれば取るし、干物も作る。

 そうして順調に、一組が文化的な生活を始めた頃。
 おおよそ、一月後。

 死に戻る奴が多数いたのが、意外にも三組の奴隷組。
 彼らは、一年生の時にクラス内で立場が決まり、上の言うことでしか行動ができなかった。
 そのため、自分で思っても行動ができない。

 一年間、サバイバル訓練も行ったのにだ。
 つい生水をのみ、腹を壊す。
 うっかりで怪我をする。

 向こうに戻ると、怪我は治り、リセットされる。
 死ぬとき少し辛いだけ。
 奇妙な修行を始めた様だ。
 それはとても、非人間的な方法で。

「今度はお前の番だぞ。これを食ってみろよ」
「ちっ、しかたねえ」
 食わせて時間をおき様子を見る。

「食えそうだ」
 そんな感じで、システムの穴を付き、それでもなんとか知識を積み上げる。

 そうして彼らは、恐ろしい存在へと変化をする。
 そう彼らが、ランク組と会った時、死を恐れない彼らは恐怖だった。
 なんとか闘って殺す。
 だが、殺してしまったときの表情と目は、それ以後ランカーを苦しめる。

 そして数ヶ月すれば、殺したはずの奴らが再びやって来るのだ。
 記憶はある。
 殺した記憶と同じように、殺された方も恨みと共に。


 二組、四組、五組は、実習で習ったことを忠実に行っていた。
 水は煮沸。
 テントとシュラフ。
 獲物を獲って、保存食を作る。

 だが数週間ならそれでいけるが、布は朽ちはてる。
 時間と共に、退屈さが心を蝕む。

 野生動物が居るため気が抜けない。
 遊びで、ゴブリンを見つけて殺す。
 男女で、色恋に浸る。
 
 最初は警戒をしたが、この世界では妊娠などしないようだ。

 そう時間が経つに連れ、野性に返る奴らが現れてくる。
 近くに来るとドキドキしていた男女。
 数ヶ月すると、拒絶をするか、慣れるか両極端となる。

 特に、秋が深まり寒くなり出すと共に、その傾向はひどくなる。

 当番制で、決めていた狩猟も適当になる。
「いつもおまえら手ぶらじゃねえか。欲しけりゃ獲ってこいよ」
 とろくさい者達は、グループから放り出される。


 こっち側で待っている、布袋 依舞ほてい いむ先生と、勢登 生沙せと いくさ先生。
「毎年のことですが、数分で生徒の顔が変わりますね」
「ええまあ、最初が一番環境の変化が大きい。日本の常識との違い。そこからの脱却。そして守る者達ができて、そのために戦う。精神的には、家族と子どものために戦うのが一番成長できますが、精神的にキツいため、子どもはできない設定が惜しい……」
 そう言って、戦いの神としては、惜しいとぼやく。

「まあ子どもはできませんが、向こう側に渡れば、愛する者も増えるし、やって来る試練もかなりむごいものになりますからね」
「だが毎回、島を出て、あちらに行くのは四分の一程度。あの試練は皆に受けさせたい…… あれこそが、未来。やつらの……」
「しっ。生徒です。はい反省文を書いて」

 戻ってきた生徒の、状況はまちまち。

「畜生やられた、早く帰らないと……」
 焦る生徒の肩に、手が置かれる。

「大丈夫。私も殺されたから…… 」
 強姦されることでも心配したのか、その男の子は殺された彼女を見てほっとする。

「あいつら、三組の奴か?」
「さあ顔は覚えたけれど、拠点と備蓄は奪われたわね」
 五組の佐々木  碧人ささき あおと和田 一花わだ いちかは殺された様だが、燃える目をしている。


 だが戻ってくる大部分は、ヤル気がなく、目が腐っている。
 反省文を書かず逃げようとするが、閉空間となっておりどこに向かっても、中に戻ってくる。
 南に向かえば、北から戻ってくる。

 諦めたようで、反省文の紙を持っていく。
 だけど書いているうちに、何かを思いつき、少し目に力が戻る。

 そう反省文は、無意味ではないのだ。
 おのれの行動を振り返り、反省の言葉の通り、何が悪かったかを考えれば何かは思いつく。

「頑張れ、この時間なら序の口よ」
 布袋 依舞ほてい いむ先生は笑顔で生徒に手を振る。
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