はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

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私立徳井天世高校

第1話 変わった学校

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「おいやべえ、逃げろ」
「逃げろってどこへ?」
「知るか……」

 こんなのは、序章だった。
 俺達は、先輩が真面目になる理由を、これから経験をする事になる。


 この世界、我々が暮らす世界に似ている。というかそっくりなんだが、時折神が降臨して奇跡を起こすそんな世界。

 数百億もの昔、世界がまだ混沌としていたときに、神界で闇に属する神を一人追放した。

「闇の魔神メイダークネスったら、またわたくしのスカートを捲ったのよ、知識と智恵を覗こうと……」
 アルマ・マターという知の女神、スカートの中にはふくろうが居て、知識と智恵が詰め込まれている。

「まあ、そう言うでない。彼らはまだ生まれたばかり、幼いのじゃ」
「主神様、だけど、事もあろうに、私のお尻を貧相だと。わたくしは美の女神。体は黄金律なのに……」
 そう言って、アプロディーテーが泣き始める。

 その悲しみは波動となり、世界は闇に傾く。
 その闇からは、また新たな闇の者達が生まれ出ずる事になる。
 まあ、メイダークネスはそれを望み、いたずらをしているようだが……

「主神様、彼らはこの世界が光にあふれ、気に入らないのでしょう」
 光の闘神プログナンスルミネが進言して、彼らを闇の世界に追放してしまった。


 それから、時が経ち……
「間違いありません、このままでは、闇の世界がこの世界に繋がります」
「ええい。なんとかせねば。そうだ、地上の者に戦士を作れ」
「それには、器が必要です」
 混乱する中、分体を地上に降ろし、理を少しゆがめながら学校を作る。

 神の軍たる才能を、発掘するために。
 強靱な肉体と精神を持つ者を作るために。
 その学校は、いつの間にかできていた。


 私立徳井天世高校しりつとくいてんせいこうこう
 そこの門戸は広く、名前さえ書ければ合格をする。
 いつしか、巷では最終処分場と噂される。

 どんな悪ガキでも、そこに入れば更生する。
 困った親達は、喜んで子どもを通わせる。
 そんな学校だった。


「あーだりい。ばっくれるかぁ」
 神野 龍一じんの りゅういちがいつもの様にうだうだ言い出す。
「サバイバルは、点を取らないとまずいだろ」
 杉原 楓真すぎはら ふうまが、いつもの様になだめる。
 ぞろぞろと廊下を歩く、仲良し一〇人。
 男子五人と、女子五人。

 学校には、植物園があり、そこは温室でまるで熱帯。
 一晩で、様子が変わる不思議空間。

「ようし来たな。注目。今日のステージは砂漠だ。生き残れ。以上だ。装備を確認をしろ。タイムは二コマつまり二時間以内に到着をしないと飯抜きになるぞ。では行け」

 そう全寮制。
 此の学校、一学年五クラス。
 各クラス四〇人。
 つまり六〇〇人の生徒が暮らしている。

 学年ごとに、食堂も違う。
 なんか、食い物の分量と栄養のバランスが、この年だと大きく違うらしい。

 ちなみに、寮の門限はない。
 男子寮と女子寮ではなく、クラスで寮が決まっている。

 そのため、一年の時には騒動が起きるが、三ヶ月もすれば、謎の規律が生まれる。
 そうボスが決まり、クラスを統率する。

 そのため、クラス単位で決まりが違う。
 そう下種が上に立つと悲惨だ。

 だが、うちのクラスは、神野が頭を張り、副官が杉原。
 決まりはない。自由。人のじゃまをするな、それが鉄則。

「うりゃぁー、行け行け行けぇ」
 サバイバル? 
 ガラ場の砂漠。

 走って、休憩。
 方向を確認をして、また走る。
 だがきちんと、時間内に到着をできる。

 これが、うちのクラスの良いところ。
 一年で、神野が頭を取ったとき、弱い奴らは徹底的に鍛えた。
 もうどこの軍隊だよという感じで。

 神野は基本優等生で真面目。
 だが、中学校の時に好きだった女の子が、ヤンキーに寝取られた。
「だって、格好いいんだもの。それに、エッチなことだって……」
 それを聞いて、真面目君は方向転換をしたらしい。
 もてたい、そのためだけに。

 まあ周りは焦ったようだが、此の学校に放り込まれた。
 杉原は、よく分からない。
 賢く、真面目なのにここへ来た。
「ばかだな、普通の学校へ行って何が楽しいんだ? ここは最高なんだよ」
 そう言って、にへにへしている。

 まあお互い、彼女もできたし楽しんでいる。

「おおっ。二年一組脱落者無しだな。よし解散」
 そうなんだよ。温室は二五メートルプールくらいの大きさ。それなのに、中で俺達は一〇キロ以上を走った。

 まあ此の学校で、そんなことは気にしていられない。

 食堂へ移動するとき、別のクラスの奴らとすれ違う。
 二年三組。
 こいつらは、一部がトップを取り、クラス内にランクのピラミッドがある。 
 最下層は、ほぼ奴隷だな。

 うつろな目をした奴らが、半数。

 だが、本人が望まない限り、よそのクラスに手を出せない。
 そう、申請をすれば、クラス対抗戦ができるが、勝てば統率をしなければいけない。
 内部に、反抗的な奴らを抱えたまま。
 それは、ものすごくリスクがあることだ。

 まあクラス内で、怪我をしたり妊娠をしたり、そんな事があった場合、ボス共々退学だ。
 連中も、そこまでは馬鹿じゃない。

「さあ、明日から楽しい修学旅行だ。きっちりと装備を確認しろ。装備は、Bだ怪我をしない様にな」
 担任の樋本 門柱ひのもと もんちゅう先生が嬉しそうに説明。

 此の先生、どう見ても日本人じゃない。
 仲の良い早房 彫刷《はやぶさ ほるす》という美術の先生も異様な雰囲気を纏う。

「んあっ。修学旅行のしおり、真っ白なんだが、京都の方ってどこだ」
 そもそも、京都に行くのに、サバイバル装備のBというのがおかしい。

「さあ?」
「白紙って言うことは、自由行動なのか?」
「そうじゃね……」
 結愛とじゃれているから、楓真の対応が適当だ……

 そうして、翌日……
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