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第四章 中等部
第54話 アルノシュト王国軍
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「なに? ダンジョンの異変が終わっただと……」
アルノシュト王国軍西部方面軍マクシム=コンドラー侯爵はその報告を聞き、ぐむむと腕を組み、悩み始める。
元の命令は、ダンジョンの氾濫で混乱、もしくは弱体化をしているところに攻め込め。
救援ということで理由は立つ。
そんな火事場泥棒的な命令を受けていた。
だが実際は、フィリップ商国としては、ほとんど被害も出ず、逆に王国軍は周囲で兵糧を消費したのみ。
この現状はよろしくない。
「この近くに、食料庫を持つ町はあるか?」
「交易の分岐点。セラーネゴスがありますが、常駐の軍がいます」
「軍が? 数は?」
「確か千五百位だと思います」
そう、商業の要。セラーネゴスの町。
住人は一万程度だが、倉庫と問屋が建ち並び、実際の人数は絶えず二万人はいるだろう。
使ってしまった兵糧。
徴兵された兵達は、多くは農民。
装備など適当だし、食い詰めた野盗だと言えばそれで通りそうな格好。
百人ほどを志願させ、奪ったモノはお前達の物だと言いくるめる。
そこで、火も放ち。援軍に見せかけた王国兵が雪崩れ込み、モノを奪う。
そんな計画を立てた。
それを知り、幾人かの貴族はその場から脱出。
王都へと報告に戻る。
だが、貴族に命じられて、いやいや参加をした盗賊役。
しかし、行かないと村の者達がひどい目に遭う。
暗くなった街道を歩いていると、明かりが見える。
探索者か旅人が、野営をしているのだろうかとふと見る。
鍋からは良い匂いが周囲に漂うが、子どもが持っているのは、デススパイダーかなにかの足のようだ。
その丈夫そうな足を炙り、パキリパキリとへし折ると、中の身を喰らい始めた。
横にいる女の子に渡すと、その子も嬉しそうに喰らい始める。
その横にいる若夫婦ぽい者達は、顔を背けている。
「おいシン。それ本当に食えるのか?」
「嫌なら食わんで良い」
そう言いながら、シンはハフハフとその身を頬張っている。
そうタラバの足。
鍋もカニ鍋。
結局宿で泣いていた、マッテイス。
何もしないうちに物事は終わり、二人を紹介して一緒に帰ることになった。
カニや魚。貝は毒を少し持っていたが、シンが浄化をした。
そこへやって来た農民達。
「そんなモノを喰って大丈夫かい?」
同じ年頃の子どもを村にでも置いてきているのか、シン達を不憫そうな目で見る。
「ああ美味いぞ。食うか?」
そう言って、特有の固い殻に包まれた足がにゅっと出てくる。
じっと見るが、手を出してくる気配が無いのを、シンは勘違いして、すっぱりと縦に割る。
「ほれ」
怖々手を出す一人。
子どもは、今この瞬間にも食っているんだ。
大丈夫だろ。
そう思い、口へと運ぶ。
「うめえぇ。何じゃこりゃ」
その声を聞いて、周囲の者達も手を出し始める。
体も出てきたが、デススパイダーの頭だけで、胴体部分は食えず、足は美味いのだなと、薄暗いところで勝手に判断され、王国内でデススパーダー狩りがこの後流行ることになる。
考えれば、頭から足が全部生えているのはおかしな話だが、気が付く連中はいなかった。
そして、デススパイダーも意外と美味かったようで、名産となっていく。
糸を取り、食用にもなる。
そんな頃。
いつまで経っても、セラーネゴスの町では火の手が上がらない。
「ちっ。農民どもめ。逃げおったか。行くぞ」
そう、援軍という大義もなくなり、単なる盗賊と化した王国軍が町を襲う。
だが、ダンジョンの異変により集められていた探索者達。
丁度帰り道で、大量にいた。
王国の正規兵にスキル持ちがいたって、すでに対処方は確立されている。
人数が多い方が勝つ。
たいした事も出来ずに、王国軍は逃げ帰ることになる。
だが、おまぬけなことに、証拠を沢山残していた。
紋章の入った鎧等々。
それをネタに、後日王国は苦情を受ける。
だが、当然ながら、コンドラー侯爵家の暴走とされ、彼らの一門は切り捨てられた。
文字通り切られ、吊るされた。
「あの農民たち、喜んでいたなあ」
「ああ。この足はカニだったが、確か蜘蛛も美味いはずだ。問題は無い」
のんきな二人と、後ろで見たことない景色に喜んでいる二人。
学園での騒動は、すぐそこに待っていた。
「お兄様が帰ってきた…… えっ。女連れ? 結婚ですってぇ」
その報は一瞬で学園内を駆け巡る。
いや、控え室の中だから、そこからそこのへ話だが……
挨拶途中で、カミラがシンと結婚をしたいと言いだし、ローラもよく分からず、私もしたいと言い出す。それなら私もと言い出す者がちらほら出て、どうぞどうぞとはならなかったようだ。
そうして行われた、お嫁さん候補順位決め決定戦。
当然。ローラの圧勝。
「何なのでしょう。ローラさんの強さ。えっ、人間じゃない? さすがお兄様ですわ。家柄に裁縫。その他お役に立てることを混ぜて総合順位を決めましょう」
そうして、順位決め決定戦は怪しい方向へと流れていく。
その中で、いつの間にかシンが伯爵号を持って居ることがしれると大騒ぎになる。
特に、シュワード伯爵家では、奥方であるアウロラ様の暴走が始まる。
シン君を我が手に。
まるで自身が結婚するかのような暴走ぶり。
なぜか、伯爵自身は、かわいそうなシンに思いを馳せる。
アルノシュト王国軍西部方面軍マクシム=コンドラー侯爵はその報告を聞き、ぐむむと腕を組み、悩み始める。
元の命令は、ダンジョンの氾濫で混乱、もしくは弱体化をしているところに攻め込め。
救援ということで理由は立つ。
そんな火事場泥棒的な命令を受けていた。
だが実際は、フィリップ商国としては、ほとんど被害も出ず、逆に王国軍は周囲で兵糧を消費したのみ。
この現状はよろしくない。
「この近くに、食料庫を持つ町はあるか?」
「交易の分岐点。セラーネゴスがありますが、常駐の軍がいます」
「軍が? 数は?」
「確か千五百位だと思います」
そう、商業の要。セラーネゴスの町。
住人は一万程度だが、倉庫と問屋が建ち並び、実際の人数は絶えず二万人はいるだろう。
使ってしまった兵糧。
徴兵された兵達は、多くは農民。
装備など適当だし、食い詰めた野盗だと言えばそれで通りそうな格好。
百人ほどを志願させ、奪ったモノはお前達の物だと言いくるめる。
そこで、火も放ち。援軍に見せかけた王国兵が雪崩れ込み、モノを奪う。
そんな計画を立てた。
それを知り、幾人かの貴族はその場から脱出。
王都へと報告に戻る。
だが、貴族に命じられて、いやいや参加をした盗賊役。
しかし、行かないと村の者達がひどい目に遭う。
暗くなった街道を歩いていると、明かりが見える。
探索者か旅人が、野営をしているのだろうかとふと見る。
鍋からは良い匂いが周囲に漂うが、子どもが持っているのは、デススパイダーかなにかの足のようだ。
その丈夫そうな足を炙り、パキリパキリとへし折ると、中の身を喰らい始めた。
横にいる女の子に渡すと、その子も嬉しそうに喰らい始める。
その横にいる若夫婦ぽい者達は、顔を背けている。
「おいシン。それ本当に食えるのか?」
「嫌なら食わんで良い」
そう言いながら、シンはハフハフとその身を頬張っている。
そうタラバの足。
鍋もカニ鍋。
結局宿で泣いていた、マッテイス。
何もしないうちに物事は終わり、二人を紹介して一緒に帰ることになった。
カニや魚。貝は毒を少し持っていたが、シンが浄化をした。
そこへやって来た農民達。
「そんなモノを喰って大丈夫かい?」
同じ年頃の子どもを村にでも置いてきているのか、シン達を不憫そうな目で見る。
「ああ美味いぞ。食うか?」
そう言って、特有の固い殻に包まれた足がにゅっと出てくる。
じっと見るが、手を出してくる気配が無いのを、シンは勘違いして、すっぱりと縦に割る。
「ほれ」
怖々手を出す一人。
子どもは、今この瞬間にも食っているんだ。
大丈夫だろ。
そう思い、口へと運ぶ。
「うめえぇ。何じゃこりゃ」
その声を聞いて、周囲の者達も手を出し始める。
体も出てきたが、デススパイダーの頭だけで、胴体部分は食えず、足は美味いのだなと、薄暗いところで勝手に判断され、王国内でデススパーダー狩りがこの後流行ることになる。
考えれば、頭から足が全部生えているのはおかしな話だが、気が付く連中はいなかった。
そして、デススパイダーも意外と美味かったようで、名産となっていく。
糸を取り、食用にもなる。
そんな頃。
いつまで経っても、セラーネゴスの町では火の手が上がらない。
「ちっ。農民どもめ。逃げおったか。行くぞ」
そう、援軍という大義もなくなり、単なる盗賊と化した王国軍が町を襲う。
だが、ダンジョンの異変により集められていた探索者達。
丁度帰り道で、大量にいた。
王国の正規兵にスキル持ちがいたって、すでに対処方は確立されている。
人数が多い方が勝つ。
たいした事も出来ずに、王国軍は逃げ帰ることになる。
だが、おまぬけなことに、証拠を沢山残していた。
紋章の入った鎧等々。
それをネタに、後日王国は苦情を受ける。
だが、当然ながら、コンドラー侯爵家の暴走とされ、彼らの一門は切り捨てられた。
文字通り切られ、吊るされた。
「あの農民たち、喜んでいたなあ」
「ああ。この足はカニだったが、確か蜘蛛も美味いはずだ。問題は無い」
のんきな二人と、後ろで見たことない景色に喜んでいる二人。
学園での騒動は、すぐそこに待っていた。
「お兄様が帰ってきた…… えっ。女連れ? 結婚ですってぇ」
その報は一瞬で学園内を駆け巡る。
いや、控え室の中だから、そこからそこのへ話だが……
挨拶途中で、カミラがシンと結婚をしたいと言いだし、ローラもよく分からず、私もしたいと言い出す。それなら私もと言い出す者がちらほら出て、どうぞどうぞとはならなかったようだ。
そうして行われた、お嫁さん候補順位決め決定戦。
当然。ローラの圧勝。
「何なのでしょう。ローラさんの強さ。えっ、人間じゃない? さすがお兄様ですわ。家柄に裁縫。その他お役に立てることを混ぜて総合順位を決めましょう」
そうして、順位決め決定戦は怪しい方向へと流れていく。
その中で、いつの間にかシンが伯爵号を持って居ることがしれると大騒ぎになる。
特に、シュワード伯爵家では、奥方であるアウロラ様の暴走が始まる。
シン君を我が手に。
まるで自身が結婚するかのような暴走ぶり。
なぜか、伯爵自身は、かわいそうなシンに思いを馳せる。
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