43 / 97
第三章 初等部
第43話 ささいな秘密
しおりを挟む
二人に礼を取った後、職員二人へ向き直る学園長。
「さて、この二人をモンスターの掃討。いや清掃に貸し出そう。だが、特殊だから、他の部隊から見えないように配慮をしてくれたまえ」
驚き、疲れた顔をしたギルド職員。
「清掃ですか?」
「そうだな。この二人は、当学園の清掃班員だ」
真面目な顔でそう言われ、二人は困惑をする。
「見た感じも、その様な感じですし」
二人は、どう対応していいのか判らない。
だが、その会話を、シンが途切れさせる。
「学園長。我々に説明が先ではないかね。こちらに全く説明がないのはどういうわけだ?」
言われて、ああっ、と思い出す。
待ち続けた間、自問自答の中で済ませたことを、現実では行っていない。
「おお。そうじゃ。すまない。この二人は、探索者ギルドの職員で、学園へと助力を願いに来たのだが、二人もご存じの通り学生も帰省をしてしもうた。そこで、お二人に力を貸していただけないかと考えた次第威じゃ……」
説明をしながら、声が小さくなる。
「それなら先に、こちらへ話を通すのがすじというものでは?」
「いや、それは、重々承知をしておる。じゃが……」
いい年をした学園長が、胸の前で指を組み、もじもじと親指を遊ばせる。
シンは、ため息を付くと答える。
「まあ良いでしょう」
顔を、ギルド職員に向けると、情報を問い出す。
「距離と、モンスターの総数は把握をしているのか?」
「あっはい。ギルドに戻れば大丈夫です。出現方向は、ディビィデ山脈の麓となっています」
その報告を聞いて、シンは首をひねる。
遠足…… いや、クラス対抗、サバイバル訓練で数ヶ月前に行ったばかり。
あまりにも早すぎる。
「おかしいな。マッテイス」
「どうした。シン」
「あそこに、ダンジョンでもあったか?」
「いや、無いはずだが……」
シンはいやな予感がする。
この前ふと思い出したばかりだが、あそこには、やばい奴を封じた廃坑がある。
封じて、千年以上……
生きていないと思ったが。
「よし行こう」
シンがそう言っても、職員二人の反応は鈍い。
年を取った方ではなく、どう見ても子供の方が仕切っている違和感。
この世界では、体は子供、頭脳は大人などと言う情報は広がっていない。
この反応が、普通だろう。
とりあえず無視をして、シン達は学園長室を後にする。
足早に、学園の外へと出ると、一気に山脈に向けて駆け出す。
「君達は、行かなくて良いのかね」
シン達がいなくなっても、よく分からず彼らはぼーっとしていた。
何歩も出遅れた彼ら。それから後。すべてが終わり、報告のためにギルドにシンが現れるまで、彼らはシンと会うことはなかった。
そう、切っ掛けは彼らが作ったのに、斬な事だが、その評価はされることがなかった。
「何か思い当たるのか?」
「前に言った気がするが、あそこの廃坑にはスライムを封じてある。当然、封じた場所は全く違う場所だが、時間の経過がある。廃坑がダンジョン化をして、こちら側に口を開けたのだとすれば、面倒なことになる」
そうして二人が駆けていく先には、探索者だろうか?
装備も年も、バラバラな連中が吠えている。
「おらあぁ。スキルのある奴は魔法を出せ。弾幕じゃぁ」
「スキル無しは黙っていなさいよ。こっちだって都合があるのよぉ」
かなり、限界が近いらしい。
「仕方ない。前線から奥は、人がいないようじゃな」
シンはそう言うと、望み通り火球の弾幕を張る。
奥を埋め尽くすモンスターと、前線の間に、おおよそ二十メートルほどの隙間が出来る。
「あれでいいじゃろ」
そう言うと、二人は端の方。
モンスターが作る壁へと突っ込んでいく。
文字通り前には壁だったが、彼らの後ろには、ぽっかりと道が生まれていく。
それに気が付いた者が居た。
「なんだありゃ?」
モンスターの一角に、どす黒い血しぶきが舞い、粉々となった肉塊が周りの飛び散っていく。
見えずとも、急に戦場を埋め尽くす濃密な血の匂い。
それに気がついたのは人だけではなく、モンスター達も……
だが、予想に反して、モンスター達はそちらから逃げ始める。
壁へと突っ込むとき、シンは抑えていた力を解放をした。
無論、濃密な殺気付き。
それに反応をしたのだ……
混乱をするモンスター達、それに乗じて、探索者達は少し立て直したようだ。
そんな中で、戦場に威圧の衝撃波が走る。
モンスター達の奥に、やっかいな存在がいた。
なぜか通常のモンスターの中に佇む首無騎士と呼ばれる死霊系モンスター。
腹が立つことに、炎系の魔法をレジスト? いや、パリィ。
持った剣で受け流したようだ。
顔はないが、不敵な笑みが幻視される。
だが、シンは容赦をしなかった。
彼の全身を包む、お掃除魔法。
いや一般には、浄化魔法だった。
あまりにも掃除に使うため、シンの中ではお掃除用の魔法として最近定着をされている。
全身から黒い煙を吹き出し、もろもろと、生地から汚れが剥げていくように崩れ、それは周囲の光の中で溶けるように消滅をしていく。
まるで漂白でもされるように……
「よし。綺麗になった」
満足そうにシンはそう言うと、再び歩みを開始する。
戦闘に入ってから、マッテイスは遅れてしまった。
リミッターを解除したシンは、ヒトでは無い。
モンスターに比べ、小さな彼が走り抜けると、大量の血肉が撒き散らかされる。
それは持っている剣によるもの。
一振りで、数十のモンスターが両断され、その後やって来る剣圧が、さらに周囲を蹂躙をする。
そんな作業をしているシンに、ついて行けない悔しさが沸き起こる。
「俺も訓練しよう。このままじゃ普通のちびっ子にも負けそうだ……」
頭に浮かぶ、日々特訓をしていたちびっ子達。
マッテイスはとりあえず、そう決めた。
その後、彼は思い直す。
人間だもの…… ちょっとした訓練なんか意味ないよなぁ。と少し自暴自棄になることになる。
「さて、この二人をモンスターの掃討。いや清掃に貸し出そう。だが、特殊だから、他の部隊から見えないように配慮をしてくれたまえ」
驚き、疲れた顔をしたギルド職員。
「清掃ですか?」
「そうだな。この二人は、当学園の清掃班員だ」
真面目な顔でそう言われ、二人は困惑をする。
「見た感じも、その様な感じですし」
二人は、どう対応していいのか判らない。
だが、その会話を、シンが途切れさせる。
「学園長。我々に説明が先ではないかね。こちらに全く説明がないのはどういうわけだ?」
言われて、ああっ、と思い出す。
待ち続けた間、自問自答の中で済ませたことを、現実では行っていない。
「おお。そうじゃ。すまない。この二人は、探索者ギルドの職員で、学園へと助力を願いに来たのだが、二人もご存じの通り学生も帰省をしてしもうた。そこで、お二人に力を貸していただけないかと考えた次第威じゃ……」
説明をしながら、声が小さくなる。
「それなら先に、こちらへ話を通すのがすじというものでは?」
「いや、それは、重々承知をしておる。じゃが……」
いい年をした学園長が、胸の前で指を組み、もじもじと親指を遊ばせる。
シンは、ため息を付くと答える。
「まあ良いでしょう」
顔を、ギルド職員に向けると、情報を問い出す。
「距離と、モンスターの総数は把握をしているのか?」
「あっはい。ギルドに戻れば大丈夫です。出現方向は、ディビィデ山脈の麓となっています」
その報告を聞いて、シンは首をひねる。
遠足…… いや、クラス対抗、サバイバル訓練で数ヶ月前に行ったばかり。
あまりにも早すぎる。
「おかしいな。マッテイス」
「どうした。シン」
「あそこに、ダンジョンでもあったか?」
「いや、無いはずだが……」
シンはいやな予感がする。
この前ふと思い出したばかりだが、あそこには、やばい奴を封じた廃坑がある。
封じて、千年以上……
生きていないと思ったが。
「よし行こう」
シンがそう言っても、職員二人の反応は鈍い。
年を取った方ではなく、どう見ても子供の方が仕切っている違和感。
この世界では、体は子供、頭脳は大人などと言う情報は広がっていない。
この反応が、普通だろう。
とりあえず無視をして、シン達は学園長室を後にする。
足早に、学園の外へと出ると、一気に山脈に向けて駆け出す。
「君達は、行かなくて良いのかね」
シン達がいなくなっても、よく分からず彼らはぼーっとしていた。
何歩も出遅れた彼ら。それから後。すべてが終わり、報告のためにギルドにシンが現れるまで、彼らはシンと会うことはなかった。
そう、切っ掛けは彼らが作ったのに、斬な事だが、その評価はされることがなかった。
「何か思い当たるのか?」
「前に言った気がするが、あそこの廃坑にはスライムを封じてある。当然、封じた場所は全く違う場所だが、時間の経過がある。廃坑がダンジョン化をして、こちら側に口を開けたのだとすれば、面倒なことになる」
そうして二人が駆けていく先には、探索者だろうか?
装備も年も、バラバラな連中が吠えている。
「おらあぁ。スキルのある奴は魔法を出せ。弾幕じゃぁ」
「スキル無しは黙っていなさいよ。こっちだって都合があるのよぉ」
かなり、限界が近いらしい。
「仕方ない。前線から奥は、人がいないようじゃな」
シンはそう言うと、望み通り火球の弾幕を張る。
奥を埋め尽くすモンスターと、前線の間に、おおよそ二十メートルほどの隙間が出来る。
「あれでいいじゃろ」
そう言うと、二人は端の方。
モンスターが作る壁へと突っ込んでいく。
文字通り前には壁だったが、彼らの後ろには、ぽっかりと道が生まれていく。
それに気が付いた者が居た。
「なんだありゃ?」
モンスターの一角に、どす黒い血しぶきが舞い、粉々となった肉塊が周りの飛び散っていく。
見えずとも、急に戦場を埋め尽くす濃密な血の匂い。
それに気がついたのは人だけではなく、モンスター達も……
だが、予想に反して、モンスター達はそちらから逃げ始める。
壁へと突っ込むとき、シンは抑えていた力を解放をした。
無論、濃密な殺気付き。
それに反応をしたのだ……
混乱をするモンスター達、それに乗じて、探索者達は少し立て直したようだ。
そんな中で、戦場に威圧の衝撃波が走る。
モンスター達の奥に、やっかいな存在がいた。
なぜか通常のモンスターの中に佇む首無騎士と呼ばれる死霊系モンスター。
腹が立つことに、炎系の魔法をレジスト? いや、パリィ。
持った剣で受け流したようだ。
顔はないが、不敵な笑みが幻視される。
だが、シンは容赦をしなかった。
彼の全身を包む、お掃除魔法。
いや一般には、浄化魔法だった。
あまりにも掃除に使うため、シンの中ではお掃除用の魔法として最近定着をされている。
全身から黒い煙を吹き出し、もろもろと、生地から汚れが剥げていくように崩れ、それは周囲の光の中で溶けるように消滅をしていく。
まるで漂白でもされるように……
「よし。綺麗になった」
満足そうにシンはそう言うと、再び歩みを開始する。
戦闘に入ってから、マッテイスは遅れてしまった。
リミッターを解除したシンは、ヒトでは無い。
モンスターに比べ、小さな彼が走り抜けると、大量の血肉が撒き散らかされる。
それは持っている剣によるもの。
一振りで、数十のモンスターが両断され、その後やって来る剣圧が、さらに周囲を蹂躙をする。
そんな作業をしているシンに、ついて行けない悔しさが沸き起こる。
「俺も訓練しよう。このままじゃ普通のちびっ子にも負けそうだ……」
頭に浮かぶ、日々特訓をしていたちびっ子達。
マッテイスはとりあえず、そう決めた。
その後、彼は思い直す。
人間だもの…… ちょっとした訓練なんか意味ないよなぁ。と少し自暴自棄になることになる。
3
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜
k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」
そう婚約者のグレイに言われたエミリア。
はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。
「恋より友情よね!」
そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。
本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
婚約者に忘れられていた私
稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」
「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」
私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。
エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。
ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。
私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。
あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?
まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?
誰?
あれ?
せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?
もうあなたなんてポイよポイッ。
※ゆる~い設定です。
※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。
※視点が一話一話変わる場面もあります。
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!
町島航太
ファンタジー
ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。
ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる