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第三章 初等部
第38話 クラス対抗、模擬戦争。その二
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「よくやった。すごいぞ」
声をかけられて、喜ぶ上級三組の面々。
だが一部の人間達は、キッとモニカ達を睨む。
褒められて嬉しいが、素直に喜ぶことが出来ない。
「あの野郎。女のくせに……」
不穏な空気が流れる。
だが、アヴァロン伯爵家の執事である、ランピーニがやって来る。
「坊ちゃん。旦那様からよくやった。見事な戦術だと、お褒めのお言葉です」
「戦術? そう。そうだろう」
そう言って返事を返す。
父上が褒めてくれた。
執事が帰った後、そっと聞く。
「戦術って何だ?」
「何でしょうね?」
彼らは若かった。
知らないことは、まだ多いようだ。
組み合わせの都合上、次の上級二組対下級七組の勝者と対戦。
その次は、二回戦を組み合わせの都合上、シードされた中級一組対下級六組の勝者と試合となる。
彼は褒められたことにより、モニカの勝手を許すようだ。
さて、上級一組は下級一組との対戦となる。
第一試合だった、下級一組と下級五組は、例年通りの中央でのドツキ合いを行い、下級一組が勝利をした。
だが、その後の試合を見ていると、戦術を取り入れてきていた。
「多少、組み替えをした方が、よろしいかと思います」
「組み替えですか? ヘルミーナ様」
「ええ。一回戦目で他のクラスの皆さん、試合をご覧になって、多少お知恵を使った様子」
作戦盤を持ち込み、本格的に作戦を巡らす。
現場では、障害物が目隠しとなり、配置は読みにくい。
「最小限の伏兵として、遊撃隊を両側面へと展開をいたします。時間差で攻め込み、一気に本陣の旗を倒すということでいけますでしょう。その間に本隊は弓から槍。剣へとその時の状態によって武器を変更。速やかに持ち場へと戻り、再度繰り返す。波状攻撃で相手を削りましょう。魔法が攻撃に使うことができればもっと簡単ですのに……」
この大会では、攻撃魔法が禁止されていた。
なぜか。それは危ないから……
保護者の前で事故でもあれば、後々ややっこしいことになるからである。
「あと、各作戦コードは分隊で把握をしていらっしゃいますよね」
「「「はい」」」
「では問題は無いでしょう」
グラウンドでは、上級二組がドツキ合いの末、勝ちを収めて、次の試合。
中級一組対下級六組の準備が始まっていた。
勝利に対して、貪欲な姿を見せる中級一組が、遊撃部隊を運用していた。
だが、力があり雑草のような下級六組は、遊撃に数を分けたために数が減った中級一組を圧倒する。
「まずい。遊撃隊。敵本隊の後ろを攻撃しろぉ」
本部から声がかけられるが、遊撃には届かないようだ。
バッファローの群れのような下級六組は、鼻息荒く敵本陣を攻撃をする。
「あー。やられたぁ。お母様申し訳ありません」
中級一組の大将が、獰猛な群れに飲み込まれていく……
「下級六組。勝利」
下級六組の本陣を攻撃をしていた中級一組の遊撃隊は、その声で我に返る……
「あー。何だよ本陣が踏ん張らなきゃ、意味がないじゃん」
その後本営。
この大会では本陣と呼称をしているが、途中で遊撃が戻ってこなかったことで言い合いになる。
「お前の母上に言ってやる」
「そんな事を言うなら、俺もいうぞ。この前トイレに間に合わなくて、もら……」
「わー言うな。俺が悪かったぁ……」
などと…… 実にほのぼのした空気が流れる。
学園生活も色々とあるようだ。
「さあ、皆さん参りましょうか」
妙に貫禄が出たヘルミーナが、皆を率いて戦場へと向かう。
彼女達が現れた瞬間、グラウンドにいた下級一組を謎のプレッシャーが遅う。
「何だ、このグラウンドに充満するプレッシャーは?」
下級一組の一人が反応をする。
「なに? 沢山の人が…… 向こうの人。顔が怖い」
「大丈夫。私が守ろう」
そんなほのぼのとしたグランドでは、審判が手を上げる。
「それでは、二回戦。上級一組対下級一組、戦闘開始ぃぃん」
鬨の声を上げながら、上級一組の兵が、中央を敵陣に向けて進んでいく。
手には、盾。
ウエハースのように、列ごとに武器が違う。
その後ろには弓。
槍。剣と部隊は侵攻をしながら、周囲を警戒する。
突っ込んできた下級一組の数をざっと数え、ハンドサインを展開。
それは次々と各部隊に知らされ、伏兵部隊と、遊兵部隊はその数を変化させる。
戦闘の部隊。盾の影から矢が放たれる。
それを見て、下級一組の塊はばらけようとするが、統制が取れず被爆をする。
一気に数を減らし、そこにシールドバッシュからの、隙間から槍部隊が攻撃。
逃げ出した者達を、剣を持った兵が切っていく。
一当たりの一瞬で、半数以上が脱落。
そこへ、意図しない方向から敵兵が雪崩れ込んでくる。
それはもう、一方的な殲滅であった。
「上級一組。勝利」
そして、上級一組は整列をして、観客に礼を取り控えの席へと帰って行く。
「いやあ素晴らしいですな。一年生とは思えませんな」
来賓の横で、校長は焦っていた。
あのクラスは、例の特選部隊に選抜をされた、ヘルミーナ嬢。例のシュワード伯爵家の娘がいるクラス。
たった一人居るだけで、このような……
グラウンドの向こう側。
二年生の戦闘は、いまだに昔ながらの団子。
ワーと行って、ぶつかり戦う。
そう戦闘においての、戦術などは中等部になって教えること。
今は、王国法と貴族の心構えを勉強している最中。
それに、彼らは個人技だけで精一杯のはず。
「そうか、たった一人で、これほどまでに変わるのか」
校長の目が、何かを語る。
声をかけられて、喜ぶ上級三組の面々。
だが一部の人間達は、キッとモニカ達を睨む。
褒められて嬉しいが、素直に喜ぶことが出来ない。
「あの野郎。女のくせに……」
不穏な空気が流れる。
だが、アヴァロン伯爵家の執事である、ランピーニがやって来る。
「坊ちゃん。旦那様からよくやった。見事な戦術だと、お褒めのお言葉です」
「戦術? そう。そうだろう」
そう言って返事を返す。
父上が褒めてくれた。
執事が帰った後、そっと聞く。
「戦術って何だ?」
「何でしょうね?」
彼らは若かった。
知らないことは、まだ多いようだ。
組み合わせの都合上、次の上級二組対下級七組の勝者と対戦。
その次は、二回戦を組み合わせの都合上、シードされた中級一組対下級六組の勝者と試合となる。
彼は褒められたことにより、モニカの勝手を許すようだ。
さて、上級一組は下級一組との対戦となる。
第一試合だった、下級一組と下級五組は、例年通りの中央でのドツキ合いを行い、下級一組が勝利をした。
だが、その後の試合を見ていると、戦術を取り入れてきていた。
「多少、組み替えをした方が、よろしいかと思います」
「組み替えですか? ヘルミーナ様」
「ええ。一回戦目で他のクラスの皆さん、試合をご覧になって、多少お知恵を使った様子」
作戦盤を持ち込み、本格的に作戦を巡らす。
現場では、障害物が目隠しとなり、配置は読みにくい。
「最小限の伏兵として、遊撃隊を両側面へと展開をいたします。時間差で攻め込み、一気に本陣の旗を倒すということでいけますでしょう。その間に本隊は弓から槍。剣へとその時の状態によって武器を変更。速やかに持ち場へと戻り、再度繰り返す。波状攻撃で相手を削りましょう。魔法が攻撃に使うことができればもっと簡単ですのに……」
この大会では、攻撃魔法が禁止されていた。
なぜか。それは危ないから……
保護者の前で事故でもあれば、後々ややっこしいことになるからである。
「あと、各作戦コードは分隊で把握をしていらっしゃいますよね」
「「「はい」」」
「では問題は無いでしょう」
グラウンドでは、上級二組がドツキ合いの末、勝ちを収めて、次の試合。
中級一組対下級六組の準備が始まっていた。
勝利に対して、貪欲な姿を見せる中級一組が、遊撃部隊を運用していた。
だが、力があり雑草のような下級六組は、遊撃に数を分けたために数が減った中級一組を圧倒する。
「まずい。遊撃隊。敵本隊の後ろを攻撃しろぉ」
本部から声がかけられるが、遊撃には届かないようだ。
バッファローの群れのような下級六組は、鼻息荒く敵本陣を攻撃をする。
「あー。やられたぁ。お母様申し訳ありません」
中級一組の大将が、獰猛な群れに飲み込まれていく……
「下級六組。勝利」
下級六組の本陣を攻撃をしていた中級一組の遊撃隊は、その声で我に返る……
「あー。何だよ本陣が踏ん張らなきゃ、意味がないじゃん」
その後本営。
この大会では本陣と呼称をしているが、途中で遊撃が戻ってこなかったことで言い合いになる。
「お前の母上に言ってやる」
「そんな事を言うなら、俺もいうぞ。この前トイレに間に合わなくて、もら……」
「わー言うな。俺が悪かったぁ……」
などと…… 実にほのぼのした空気が流れる。
学園生活も色々とあるようだ。
「さあ、皆さん参りましょうか」
妙に貫禄が出たヘルミーナが、皆を率いて戦場へと向かう。
彼女達が現れた瞬間、グラウンドにいた下級一組を謎のプレッシャーが遅う。
「何だ、このグラウンドに充満するプレッシャーは?」
下級一組の一人が反応をする。
「なに? 沢山の人が…… 向こうの人。顔が怖い」
「大丈夫。私が守ろう」
そんなほのぼのとしたグランドでは、審判が手を上げる。
「それでは、二回戦。上級一組対下級一組、戦闘開始ぃぃん」
鬨の声を上げながら、上級一組の兵が、中央を敵陣に向けて進んでいく。
手には、盾。
ウエハースのように、列ごとに武器が違う。
その後ろには弓。
槍。剣と部隊は侵攻をしながら、周囲を警戒する。
突っ込んできた下級一組の数をざっと数え、ハンドサインを展開。
それは次々と各部隊に知らされ、伏兵部隊と、遊兵部隊はその数を変化させる。
戦闘の部隊。盾の影から矢が放たれる。
それを見て、下級一組の塊はばらけようとするが、統制が取れず被爆をする。
一気に数を減らし、そこにシールドバッシュからの、隙間から槍部隊が攻撃。
逃げ出した者達を、剣を持った兵が切っていく。
一当たりの一瞬で、半数以上が脱落。
そこへ、意図しない方向から敵兵が雪崩れ込んでくる。
それはもう、一方的な殲滅であった。
「上級一組。勝利」
そして、上級一組は整列をして、観客に礼を取り控えの席へと帰って行く。
「いやあ素晴らしいですな。一年生とは思えませんな」
来賓の横で、校長は焦っていた。
あのクラスは、例の特選部隊に選抜をされた、ヘルミーナ嬢。例のシュワード伯爵家の娘がいるクラス。
たった一人居るだけで、このような……
グラウンドの向こう側。
二年生の戦闘は、いまだに昔ながらの団子。
ワーと行って、ぶつかり戦う。
そう戦闘においての、戦術などは中等部になって教えること。
今は、王国法と貴族の心構えを勉強している最中。
それに、彼らは個人技だけで精一杯のはず。
「そうか、たった一人で、これほどまでに変わるのか」
校長の目が、何かを語る。
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