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第三章 初等部
第19話 貴族学院幼年部
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貴族学院幼年部は、一般的に幼年、初級学校と呼ばれている。
七歳から十歳までの四年間。基礎教育として貴族の心得や行儀作法をならう。
剣技とかも習うが、その前に、スキル持ちとなった元平民達に対して、重点的に貴族としての礼儀としきたりをたたき込む。
そして家同士の繋がりを作るのが、重要とされている。
幼少期からの友人は、大人になってからのそれとは違う。
多少家の格式とか、繋がり。そんなモノも考慮はされるが、やはり絆は強くなる様だ。
学園もそれを見越したイベントが組まれている。
クラス対抗、トーナメント戦。
クラス対抗、ダンジョン攻略戦。
クラス対抗、模擬戦争。
クラス対抗、サバイバル。
クラス対抗……
そう、敵が居ることで、味方の絆は強くなる。
少し脳筋なスケジュール。
一応、クラス対抗、ダンス大会などもある。
そう貴族だからね。
ただ、本格的なダンスや教養は、十一歳から十四歳を対象とした中等教育学校で習う。ここから、本格的な上級貴族達も入学をしてくる。
そして、二回目の『判定の儀』で引っかかった者達も……
スキル発現で出遅れた者。いや平民だった者達は、受け入れた貴族家で少し基本を習い。中等部の途中へ放り込まれるという地獄が待っている。
一年と二年で学習し。皆が、優雅に振る舞い、舞い踊る中。
そこに編入される。
当然何も出来ない者達は、見せしめにあう。
スキルを持っている? ここでは、全員持っているぞ。それがどうした。そんな感じだ。
判定を受けて、スキルがあったことで必要以上に高くなった鼻は、此処で完璧にへし折られることになる。
高等部は、各方面の基礎訓練所という意味合いが強い。
十五歳から二十歳まで、就職後に必要となる基本である剣技、魔法、戦術、戦略を主に習う。
だが、高等部は、途中で部隊の目にとまり、採用されれば抜けることになる。
この世界、学歴よりも、部隊経験が優先されるためだ。
能力がないから習いに行く。そんな考えがある。
「わあ。此処が、これから住むお家ですのね」
七歳になり、ヘルミーナの滑舌もよくなり、自分の血を引く容姿に磨きがかかったとアウロラが自画自賛していた。
この時、従者に混じり、シンも荷運びをしながら、間取りなどを覚えていた。
その後、学校の清掃担当部署へ着任の挨拶に行く。
「清掃班の班長アビントンだ。平民で三十二歳。よろしくなチビ」
シンを見た瞬間、子供だったので驚いたようだ。
この時はまだ、九歳だったので仕方が無い。
「同僚は、八人。指導は…… マッテイスが二十五歳で一番上だが、のろまなんだよな。トム達にたのむか……」
なんだか、ぶちぶちと言いながら、アビントンは別の部屋へ連れて行く。
ドアを開けた瞬間、控え室だろうか? 湿気とカビの匂いが漂う。
あの、濡れて乾いてを繰り返してきた、湿ったぞうきんが放つあの匂い、それが部屋に充満をしている。
「うん? 皆仕事中か」
そう言いながら、部屋の中でサボっていた男を見つける。
班長は、ぼそっと「仕方ねえな」とぼやきながら、やる気の無い目をした、小太りの男に声をかける。
「マッテイス。新人だ。この坊主の面倒を見ろ。サボり方は教えんで良いからな」
そう言って、彼の方へシンを押し出すと、班長は帰ってしまった。
「シンです。よろしくお願いいたします」
そう言って、先輩に頭を下げる。
「おう、よろしくな」
そう言って、以外と屈託のない笑顔を向けられる。
さっき班長が、ぼやいていた言葉。
「やつは、他に行くところがなく居付いている。普通は良い仕事先が見つかれば、さっさとやめてしまう仕事だ。残っている奴は、能なしだよ」
さっき、自分は三十二歳だと言っていた班長が、そんな事をぼやいていた。
マッテイスさんは、二十五歳ねぇ。
シンは、優しく微笑むマッテイス。その怪しい雰囲気を持つ男を観察をする。
「ごきげんよう。本日より入居いたしました、ヘルミーナ=シュワード。七歳でございます」
「これはこれはご丁寧に。わたくしは、モニカ=ビョルク。同じく七歳でございます。家も同じく伯爵家ですわね」
そう言って、彼女はなぜか、引きつった笑顔を向けてくる。
「当家をご存じでしたか」
「ええ。数々の武勇を聞き及んでおります」
彼女は、やや日焼けをした、顔でそう答える。
モニカは父親から、シュワード伯爵家のことを聞いていた。
武勇はあるが、猪突猛進の脳筋だと。
そして、モニカだが。いま一生懸命、伯爵令嬢を演じようとしているが、先日まで森や川で走り回っていた。
一緒に遊んでいた幼馴染みも、他の貴族家ではなく、家の使用人や兵士の子供達であった。
父エドアルトと母親であるアデール。
家宰フォルカー=シュヴァイツが家をまとめる。
森と山。そして川。領地は特色のない田舎。
彼女には、二つ下にウォルトという弟がいるが、おそらくはスキル無し。
きゃきゃあと遊び回っているところを捕まり、『判定の儀』へ連れて行かれる。そこでまさかスキルありと判定をされた。
困ったのは、親たち。
女の子だし、子どものうちは健康的にのびのびと育てようとしたが、モニカにスキルが発現してしまった。
急ごしらえで教育をして、本人は今、冷や汗を掻きながらお嬢様を一生懸命やっている。
まあすぐに、化けの皮は剥がれることになるのだが。
七歳から十歳までの四年間。基礎教育として貴族の心得や行儀作法をならう。
剣技とかも習うが、その前に、スキル持ちとなった元平民達に対して、重点的に貴族としての礼儀としきたりをたたき込む。
そして家同士の繋がりを作るのが、重要とされている。
幼少期からの友人は、大人になってからのそれとは違う。
多少家の格式とか、繋がり。そんなモノも考慮はされるが、やはり絆は強くなる様だ。
学園もそれを見越したイベントが組まれている。
クラス対抗、トーナメント戦。
クラス対抗、ダンジョン攻略戦。
クラス対抗、模擬戦争。
クラス対抗、サバイバル。
クラス対抗……
そう、敵が居ることで、味方の絆は強くなる。
少し脳筋なスケジュール。
一応、クラス対抗、ダンス大会などもある。
そう貴族だからね。
ただ、本格的なダンスや教養は、十一歳から十四歳を対象とした中等教育学校で習う。ここから、本格的な上級貴族達も入学をしてくる。
そして、二回目の『判定の儀』で引っかかった者達も……
スキル発現で出遅れた者。いや平民だった者達は、受け入れた貴族家で少し基本を習い。中等部の途中へ放り込まれるという地獄が待っている。
一年と二年で学習し。皆が、優雅に振る舞い、舞い踊る中。
そこに編入される。
当然何も出来ない者達は、見せしめにあう。
スキルを持っている? ここでは、全員持っているぞ。それがどうした。そんな感じだ。
判定を受けて、スキルがあったことで必要以上に高くなった鼻は、此処で完璧にへし折られることになる。
高等部は、各方面の基礎訓練所という意味合いが強い。
十五歳から二十歳まで、就職後に必要となる基本である剣技、魔法、戦術、戦略を主に習う。
だが、高等部は、途中で部隊の目にとまり、採用されれば抜けることになる。
この世界、学歴よりも、部隊経験が優先されるためだ。
能力がないから習いに行く。そんな考えがある。
「わあ。此処が、これから住むお家ですのね」
七歳になり、ヘルミーナの滑舌もよくなり、自分の血を引く容姿に磨きがかかったとアウロラが自画自賛していた。
この時、従者に混じり、シンも荷運びをしながら、間取りなどを覚えていた。
その後、学校の清掃担当部署へ着任の挨拶に行く。
「清掃班の班長アビントンだ。平民で三十二歳。よろしくなチビ」
シンを見た瞬間、子供だったので驚いたようだ。
この時はまだ、九歳だったので仕方が無い。
「同僚は、八人。指導は…… マッテイスが二十五歳で一番上だが、のろまなんだよな。トム達にたのむか……」
なんだか、ぶちぶちと言いながら、アビントンは別の部屋へ連れて行く。
ドアを開けた瞬間、控え室だろうか? 湿気とカビの匂いが漂う。
あの、濡れて乾いてを繰り返してきた、湿ったぞうきんが放つあの匂い、それが部屋に充満をしている。
「うん? 皆仕事中か」
そう言いながら、部屋の中でサボっていた男を見つける。
班長は、ぼそっと「仕方ねえな」とぼやきながら、やる気の無い目をした、小太りの男に声をかける。
「マッテイス。新人だ。この坊主の面倒を見ろ。サボり方は教えんで良いからな」
そう言って、彼の方へシンを押し出すと、班長は帰ってしまった。
「シンです。よろしくお願いいたします」
そう言って、先輩に頭を下げる。
「おう、よろしくな」
そう言って、以外と屈託のない笑顔を向けられる。
さっき班長が、ぼやいていた言葉。
「やつは、他に行くところがなく居付いている。普通は良い仕事先が見つかれば、さっさとやめてしまう仕事だ。残っている奴は、能なしだよ」
さっき、自分は三十二歳だと言っていた班長が、そんな事をぼやいていた。
マッテイスさんは、二十五歳ねぇ。
シンは、優しく微笑むマッテイス。その怪しい雰囲気を持つ男を観察をする。
「ごきげんよう。本日より入居いたしました、ヘルミーナ=シュワード。七歳でございます」
「これはこれはご丁寧に。わたくしは、モニカ=ビョルク。同じく七歳でございます。家も同じく伯爵家ですわね」
そう言って、彼女はなぜか、引きつった笑顔を向けてくる。
「当家をご存じでしたか」
「ええ。数々の武勇を聞き及んでおります」
彼女は、やや日焼けをした、顔でそう答える。
モニカは父親から、シュワード伯爵家のことを聞いていた。
武勇はあるが、猪突猛進の脳筋だと。
そして、モニカだが。いま一生懸命、伯爵令嬢を演じようとしているが、先日まで森や川で走り回っていた。
一緒に遊んでいた幼馴染みも、他の貴族家ではなく、家の使用人や兵士の子供達であった。
父エドアルトと母親であるアデール。
家宰フォルカー=シュヴァイツが家をまとめる。
森と山。そして川。領地は特色のない田舎。
彼女には、二つ下にウォルトという弟がいるが、おそらくはスキル無し。
きゃきゃあと遊び回っているところを捕まり、『判定の儀』へ連れて行かれる。そこでまさかスキルありと判定をされた。
困ったのは、親たち。
女の子だし、子どものうちは健康的にのびのびと育てようとしたが、モニカにスキルが発現してしまった。
急ごしらえで教育をして、本人は今、冷や汗を掻きながらお嬢様を一生懸命やっている。
まあすぐに、化けの皮は剥がれることになるのだが。
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