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第二章 幼少期
第8話 道場でのご挨拶
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翌朝、家宰であるセバスディーさんに案内をされて、道場へ行く。
ここには、伯爵家と縁のある子供達が来ているらしい。
スキルがあれば、大体学園へ行くが、中には家の都合で行けない子もいる。
貴族と言っても大小あり、上の子を通わせば下は我慢という家も沢山ある。
そんなスキルがあったり無かったりする子が、寮生活をしている。
今は、二十人程度。
戦争になれば、スキル有る無し関係無しに、徴用されて行かねばならない。
それと、何十年とかに一度発生するモンスターの氾濫。そして、百年に一度起こると言われている大氾濫。
そして、何か切っ掛けがあれば、突然発生をするダンジョンの暴走。
この時には、階層の棲み分けなど関係が無く、とめども無くモンスターが湧く。
まあそれがこの世界。
女神の設定。その詰めの甘さ……
そういう事で、伯爵と関わりのある弟子達。
有事になれば、自軍の隊長級となる。
「今日から、こちらでお世話になるシンだ」
「ドミニクです」
「アーネです」
とまあ、ラルフ達ちびっ子も挨拶をする。
視線は集まるが、大体良くない。基本は侮蔑系の視線。
ざっと、男爵から説明は終わっていたのか、知っているようだ。
道場を仕切っているのは、先日伯爵と一緒に来ていた、ルドルフ=ラウレンス男爵のようだ。
「そうだな。シン君達は今日は見学という事で、見ていて欲しい」
「承知した」
そう答えて、壁沿いに座る。
そうして見学を始めたが、体の使い方の基本、それと魔力操作が全然できていない。と言うかやっていない。スキルのない者は、ある者達の動きをひたすらコピーしている。
こうして並んで見ていたが、ちびっ子達にも道場にいる者達の力が見えたのだろう。皆の集中が途切れて来た。
やがてそれは、道場で修行をしている者達にも伝わる。
小僧が一人、男爵に何かを言っているが、男爵の方が難色を示す。
だが、中途半端に自信があるものは、どこにでもいるようで、食ってかかる。
その少年は、スキル持ちだが、準男爵家の次男坊。不幸にも長男もスキルを持っていた。イグナーツ=ハインツという十歳の少年だった。
「ハインツ。彼らは、伯爵様の客人であり、スキルを持っていない」
「それは伺いました。それなのに、あの態度ですか?」
彼は壁際で遊んでいる子供達を、厳しい目で見つめる。
それに対して男爵は、何かを言おうとしたが続きは言わず、口を噤んだ。
だが言いたいことは分かる。
見学をしている俺達にとって、道場にいるものは格下だと、理解をしてしまったのだろう。
男爵は、悩んでしまう。
だがどちらにしても知るのなら、早いほうがいい。彼はそう考えた。
「すまないが、誰か相手をしてくれないかね」
結局男爵から、声がかかる。
すぐに手を上げたのは、暇を持て余していたちびっ子ラルフ五歳。
彼はスラムで、力も無く虐められていた。
境遇は皆同じ様なものだが、四歳くらいからシンの仲間になり、約一年。
その成果はあっといまに出て、今では、多少図に乗ったきらいがある。
シンは思わず、声をかける。
「ラルフ。出てもいいが、ここは修行の場。きちんと手加減をしろ。そして、急所打ちは禁ずる」
「えー」
「駄目だ」
そう言って、じっと見る。
「はーい……」
無論そのやり取りは、道場側の面々も見ていた。
当然……
「ふざけるなぁ」
こうなる。
十歳対五歳。スキルありと無し。
彼らの常識では、相手にもならず圧倒的な勝ちとなる。
だが、ラルフは日々の生活で、喧嘩をうられた場合相手にスキルは発動させない事に決めている。
スキルが発動すると、勝手に動き回って弱くなる。だからおもしろくない。
すでに、基本的なスキル動作は覚えている。
そして念じないと、始まらないことも。
「準備はいいか? それでは互いに向かい合い。では始め」
声がかかる瞬間に、ラルフはすでに動き始めていた。
それは円を中心にした動き。
折り返す度に、間合いは近づき、剣の間合いを越えてしまう。
そう今回、木製の模造品だが、両方供に剣を持って構えていた。
それなのにである。間合いはすでに無手の距離。
動きの速いラルフに、本来なら剣技二を発動し、フェイントなどを混ぜ再び剣技二を発動する。剣技二は単に二手。一で発動する袈裟斬りに切り上げが増えるだけ。
スキルとは、たったそれだけのもの。
攻撃用が最大十手まで。同じく防御用が五手。それを組み合わせる。
相手から返ってくる情報で、それに自動補正がかかる。
だが本人の能力を超え、見えない動きだと対応してくれない。
シンが、スキルのことを初心者用のサポート能力といった由縁である。
ただ最初。初めて剣を持ったときに両者の動きを比較すれば鋭さと武器の扱い。
その差は大きく、比較にならないほどの差がある。
初めて武器を持った者が、スキルを使えば、達人レベルの振りが出来る。
筋力と軌道の最適化。
そのため、かけ声のイチ、二などの代わりに、剣技一と唱えながら発動をする。
それにより、発動スピードも上がる。
そしてその組み合わせと、間に混ぜるフェイクや、スキル無しの剣技。
その組み合わせが、各流派の特色となる。
それを踏まえて、ラルフは相手にスキル発動をさせず、当て身と払いで、引っくり返す。
そして転んだ相手の、顔面間際で拳が止まる。
こちら側ではよく見る光景だが、道場側では何が起こったのか判らないのだろう。
ラルフは体を左右に振りながら、あっという間にハインツの懐に入り込み、転がした。
技を受けたハインツ少年も、何が起こったのか判らない。
左右に細かく振られ、スキル発動をためらった。
ある程度補正が効き、相手を自動で追いかけるが、外れるときがある。
それは隙となる。
躊躇したのを許してもらえず、気が付けばもう懐へ入っていた。
そうなれば、もう防御用のスキルに切り替えるが、剣を放さないと剣スキルが働いてしまう。
その矛盾は、昔から知られており、間合いに入られるのが悪いとなっている。
剣を持つなら、剣の間合いで戦え。
足さばきの訓練は重要だ。
「やめ」
そして、悔しそうなハインツ少年は叫ぶ。
「卑怯だぞ」
そんな叫びが、道場内に響く。
無情だが、その叫びに賛同するものは、誰もいなかったが……
ここには、伯爵家と縁のある子供達が来ているらしい。
スキルがあれば、大体学園へ行くが、中には家の都合で行けない子もいる。
貴族と言っても大小あり、上の子を通わせば下は我慢という家も沢山ある。
そんなスキルがあったり無かったりする子が、寮生活をしている。
今は、二十人程度。
戦争になれば、スキル有る無し関係無しに、徴用されて行かねばならない。
それと、何十年とかに一度発生するモンスターの氾濫。そして、百年に一度起こると言われている大氾濫。
そして、何か切っ掛けがあれば、突然発生をするダンジョンの暴走。
この時には、階層の棲み分けなど関係が無く、とめども無くモンスターが湧く。
まあそれがこの世界。
女神の設定。その詰めの甘さ……
そういう事で、伯爵と関わりのある弟子達。
有事になれば、自軍の隊長級となる。
「今日から、こちらでお世話になるシンだ」
「ドミニクです」
「アーネです」
とまあ、ラルフ達ちびっ子も挨拶をする。
視線は集まるが、大体良くない。基本は侮蔑系の視線。
ざっと、男爵から説明は終わっていたのか、知っているようだ。
道場を仕切っているのは、先日伯爵と一緒に来ていた、ルドルフ=ラウレンス男爵のようだ。
「そうだな。シン君達は今日は見学という事で、見ていて欲しい」
「承知した」
そう答えて、壁沿いに座る。
そうして見学を始めたが、体の使い方の基本、それと魔力操作が全然できていない。と言うかやっていない。スキルのない者は、ある者達の動きをひたすらコピーしている。
こうして並んで見ていたが、ちびっ子達にも道場にいる者達の力が見えたのだろう。皆の集中が途切れて来た。
やがてそれは、道場で修行をしている者達にも伝わる。
小僧が一人、男爵に何かを言っているが、男爵の方が難色を示す。
だが、中途半端に自信があるものは、どこにでもいるようで、食ってかかる。
その少年は、スキル持ちだが、準男爵家の次男坊。不幸にも長男もスキルを持っていた。イグナーツ=ハインツという十歳の少年だった。
「ハインツ。彼らは、伯爵様の客人であり、スキルを持っていない」
「それは伺いました。それなのに、あの態度ですか?」
彼は壁際で遊んでいる子供達を、厳しい目で見つめる。
それに対して男爵は、何かを言おうとしたが続きは言わず、口を噤んだ。
だが言いたいことは分かる。
見学をしている俺達にとって、道場にいるものは格下だと、理解をしてしまったのだろう。
男爵は、悩んでしまう。
だがどちらにしても知るのなら、早いほうがいい。彼はそう考えた。
「すまないが、誰か相手をしてくれないかね」
結局男爵から、声がかかる。
すぐに手を上げたのは、暇を持て余していたちびっ子ラルフ五歳。
彼はスラムで、力も無く虐められていた。
境遇は皆同じ様なものだが、四歳くらいからシンの仲間になり、約一年。
その成果はあっといまに出て、今では、多少図に乗ったきらいがある。
シンは思わず、声をかける。
「ラルフ。出てもいいが、ここは修行の場。きちんと手加減をしろ。そして、急所打ちは禁ずる」
「えー」
「駄目だ」
そう言って、じっと見る。
「はーい……」
無論そのやり取りは、道場側の面々も見ていた。
当然……
「ふざけるなぁ」
こうなる。
十歳対五歳。スキルありと無し。
彼らの常識では、相手にもならず圧倒的な勝ちとなる。
だが、ラルフは日々の生活で、喧嘩をうられた場合相手にスキルは発動させない事に決めている。
スキルが発動すると、勝手に動き回って弱くなる。だからおもしろくない。
すでに、基本的なスキル動作は覚えている。
そして念じないと、始まらないことも。
「準備はいいか? それでは互いに向かい合い。では始め」
声がかかる瞬間に、ラルフはすでに動き始めていた。
それは円を中心にした動き。
折り返す度に、間合いは近づき、剣の間合いを越えてしまう。
そう今回、木製の模造品だが、両方供に剣を持って構えていた。
それなのにである。間合いはすでに無手の距離。
動きの速いラルフに、本来なら剣技二を発動し、フェイントなどを混ぜ再び剣技二を発動する。剣技二は単に二手。一で発動する袈裟斬りに切り上げが増えるだけ。
スキルとは、たったそれだけのもの。
攻撃用が最大十手まで。同じく防御用が五手。それを組み合わせる。
相手から返ってくる情報で、それに自動補正がかかる。
だが本人の能力を超え、見えない動きだと対応してくれない。
シンが、スキルのことを初心者用のサポート能力といった由縁である。
ただ最初。初めて剣を持ったときに両者の動きを比較すれば鋭さと武器の扱い。
その差は大きく、比較にならないほどの差がある。
初めて武器を持った者が、スキルを使えば、達人レベルの振りが出来る。
筋力と軌道の最適化。
そのため、かけ声のイチ、二などの代わりに、剣技一と唱えながら発動をする。
それにより、発動スピードも上がる。
そしてその組み合わせと、間に混ぜるフェイクや、スキル無しの剣技。
その組み合わせが、各流派の特色となる。
それを踏まえて、ラルフは相手にスキル発動をさせず、当て身と払いで、引っくり返す。
そして転んだ相手の、顔面間際で拳が止まる。
こちら側ではよく見る光景だが、道場側では何が起こったのか判らないのだろう。
ラルフは体を左右に振りながら、あっという間にハインツの懐に入り込み、転がした。
技を受けたハインツ少年も、何が起こったのか判らない。
左右に細かく振られ、スキル発動をためらった。
ある程度補正が効き、相手を自動で追いかけるが、外れるときがある。
それは隙となる。
躊躇したのを許してもらえず、気が付けばもう懐へ入っていた。
そうなれば、もう防御用のスキルに切り替えるが、剣を放さないと剣スキルが働いてしまう。
その矛盾は、昔から知られており、間合いに入られるのが悪いとなっている。
剣を持つなら、剣の間合いで戦え。
足さばきの訓練は重要だ。
「やめ」
そして、悔しそうなハインツ少年は叫ぶ。
「卑怯だぞ」
そんな叫びが、道場内に響く。
無情だが、その叫びに賛同するものは、誰もいなかったが……
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