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関わりと罪

第1話 うらやましい

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 私は、小学校二年生の時、ひいおばあちゃんが住んでいたお家に越してきた。
 今まで住んでいたアパートより広く、お庭まである。私は嬉しかった。
 おじいちゃん達とも、一緒に暮らすみたい。

 でも、お家の窓から、生け垣越しに見るお家は、もっと大きく二階建てだった。
 見ているとその二階の窓から、こっちを覗く男の子と目が合った。
 その男の子は、悲しそうな目でこっちを見ていた。

 その子とは、学校で再び会い、仲良くなることになる。


 ―― 隣に住んでいた、おばあさんが亡くなった。

 うちは共稼ぎで、昼間は誰も居ない。
 そのため、内緒だが隣のおばあさんのお家で遊んでいた。

 その辺りで買えないような、変わったお菓子をくれたり、あやとりとか将棋、皆が知らないゲームを教えて貰った、楽しかった。

 でもいつしか、訪ねても留守で、会わないうちに、母さんが亡くなったからお葬式へ行かないと…… そんな事をぼやいていたのを聞いた。

 ご近所だからとお葬式へ行き、お別れをした。
 僕は背が低くて、お棺の中のおばあさんは見られなかった。
 でも、死んだ人を見るのが怖くて、丁度良かったのかもしれない。

 それから数ヶ月、三月に入って、誰かが引っ越して来たようで、でっかいトラックがやって来た。
 おばあさんの息子さんだというのに、十分おじいさん。
 その人の、お孫さん? とその家族。

 その中に、同じ年くらいの女の子がいた。

 彼女は、おばあちゃんの窓からこっちを見ていた。


 いつもの光景なのに、違和感。
 おばあさんの優しい顔ではなく、どこか抜けた顔の女の子。
 だけど、不思議そうに見上げる顔は、おばあさんとどことなく、似ていると言えば似ているかも知れない。

 だけど、すぐに学校に転校してきて、先生からお隣だから面倒を見てあげてと言われて、一緒に帰ることになった。

 彼女の家は、家と違い、おかあさんがずっとお家に居るらしく、おじいさんとおばあさんも一緒に居るらしい。

 彼女が家に帰ると、家の中から色々な声が聞こえる。

 それに比べて……
 家は、自分で鍵を開けて、中へ入る。
 空気がこもっているから、窓を少し開ける。
 でもストッパーのある分だけ、少しだけ。
 それでも、外の音が入り安心する。

 締め切ると、高気密だとかで、時計の音しかしない。

 部屋に上がり、宿題をする。
 此の窓は、きちんと開けることができる。
 そこから覗くと、前なら声がかかっていた。

「シュウ坊。帰ってきたならおいで。お菓子あるよ……」
 僕の名前は、木月 掠愁きづき りゃくしゅうなので、シュウ坊と呼ばれていた。

 だけど、今はもうその声は聞こえない。
 宿題をすませてゲームを始める。
 ネットに繋がっているため、チャットで友人と話しをする。
 友人と言っても、年も性別も判らない。

 はずだが、男か女かは、ある程度予測できる。
 僕は下手だし、彼らの発言を聞いているだけで楽しかった。


 それから一年ほどして、隣の田内たのうち家のおじいさん。
 希美のぞみのおじいさんが、体を壊したらしく入院をした。
 お母さんが、そのため病院と家とを通う事になる。

「ねえ、木月くん」
「はい?」
「良ければだけど、家の子と遊んでくれない?」
「遊ぶ? 良いですけど、どうしたんですか?」
「わたしは、病院へ行かないといけないし、おばあちゃんにたのんでも少しねえ」
 そんなよく分からない理由で、希美は遊びに来始めた。

 意外とこいつちゃっかりもので、家の母さんとかにも媚びを売るような奴だった。

 
 私は、お隣に遊びに行けると聞いて喜んだ。
 だって、新しくて立派で大きいの。

 見たことのないゲームなんかも沢山持っていて。
 私なんか、おじいちゃん達と住めることになって最初は嬉しかったけれど、将棋とか碁? 五目並べならおもしろかったけれど、私はゲームが欲しかった。けれど、高すぎて買えないって、お母さんが……

 クラスの子には、持っている人達のグループがあるけれど、ゲーム機を持っていないと一緒にあそんでもらえない。

 だから聞いてみたの。
「此のゲーム機、貸してくれない?」
「ああ良いよ」
 ポータブルゲーム機は、色とかついているキャラごとに、いくつか持っている。
 一個くらい貸すのはかまわない。


 オレの横に並んで、嬉しそうに遊んでいる希美……

 よく見るとかわいいな。
 そんな事を思っていた。

 数年が経つ。
 おじいさんは、仕事で石綿とか、電気溶接のスラグを長いこと吸っていた。
 そのおかげで、なんとか定年まで勤めたが、定年後ガクッときた様だ。

 入院退院が長引く中で、すっかり我が家のように入り浸る様になった希美。

 中学校になると、かわいさは学年でも目立つ様になっていた。
 だが出会って六年も経つと、多少本性にも気がつく。
 こいつは自信家で、多少我が儘。
 いつも人をうらやむ性格。

 まあ向上心があると言えばそうだが、たまに鼻につく。
 誰々さんが、こんなゲームを持っていた。
 こんなアクセサリーを付けていた。
 スマホが……

 そう今はスマホを持っているが、田内家としては頑張った方だろう。
 お父さんの稼ぎだけで、入退院を繰り返すおじいさんを見ている。
 無論年金とかはある様だが、裕福では無い。

 だけど買って貰った、物を誰かが持っているものと比較をして文句を言う。
「基本性能とかは、最近なら変わらないと思うんだけどなあ」
 そう言うと、真顔で近寄ってくる。
「じゃあ、かえっこして」
 目の前に顔。思わず恥ずかしくなって、顔を背ける。

「やだ……」
「やっぱりそうじゃない。けちぃ」
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