上 下
213 / 220
優しさの限界

第1話 隣りのゆーちゃん

しおりを挟む
 私には、幼馴染みがいる。
 小さな頃から、兄妹のように育って来た。

 お母さんに叱られても、ゆーちゃんだけはかばってくれた。

 私はいつも、考え無しに突っ走るって叱られる。
 でも、考えていないわけではなく、少し我慢ができないだけ。
 許してくれない周りが悪い。

 別に、犯罪とかしているわけでも無いし……
 
 中学校の時も、つい店で、食べたくなってお菓子を食べた。
 その時も、なぜかゆーちゃんに叱られて、そのままレジに行った。
 何か説明をしてお金を払い、お店の人に少し叱られた。

 
 中学校の二年生頃。
 あるゲームが流行っていた。
 だけど、家もゆーちゃんちも貧乏で、ゲームなんか持っていなかった。

 家の団地とは違うけれど、近所で、ゆーちゃんと仲が良い子がいた。
 男の子で、少し顔と性格が悪いけれど、ゆーちゃんとは気があうらしく、たまに遊んでいた。

 その子は、深井 希夢ふかい のぞむ
 小学校の四年生くらいの時、お母さんが浮気をして別れたらしい。
 ゆーちゃんは、その前から仲がよく一緒に遊んでいたけれど、その離婚後は、良くない歳上の人達と遊んでいるらしい。

 その幾人かは、ゆーちゃんとも知り合いだけど、私は一緒にあそんじゃだめと言われていた。

 深井 希夢は、少し荒れていた。
 父親が親権を取った後、帰っても誰も居ない家。
 最初は、自由だと遊んでいたが、一人っ子の弊害ですぐにつまらなくなった。
 たまには、結城 寛太ゆうき かんた と遊んでいたが、結城の家は貧乏なのでゲームを持っておらず、下手くそだ。

 お母さんが居た頃は、あそこの団地の子だと知られると、遊んだだけで叱られた。
 まあそんな仲で、あいつは貧乏で色々な物を知らないから、小学校の時は色々な物を見せびらかしては優越感を得られる相手だった。

 他の奴だと、『そんな物、当然持っているよ』と答えが返るが、こいつなら『すっげー』となる。
 それは小さな自己顕示欲を刺激する。
 そう彼と居ると、自分が偉くなった気がする。

 だけど、時間が来れば帰ってしまう。
 その内、夜にも遊べる似たような連中と彼は遊び始める。

 夜中に親が仕事をしていれば、家に居なくとも判らない。
 一晩中あそんでも、朝帰れば良い。

 そいつらは、歳上との繋がりもあり、色んなことを教えてくれる。
 そして大抵、だめだと言われることは楽しい。

 寛太は困っていた。
 幼馴染みの敷居 麻衣しきい あさい
 こいつは、色々なところで危なっかしい。
 お母さんの、玲奈れいなさんからも、たのまれているが……

 そう、玲奈さんは夜のお店で働いていて、麻衣は夜になると俺の家にずっと居た。
 ボケボケしていて、目が離せない。
 
 だがある日、ゲームをしてみたいと言う。
 今流行のゲームは、アバターを作り、ネットワーク上の仮想空間で集まりスローな生活をするもの。
 ゲームの内容的に、少し借りてと言うわけにはいけないし、本体を借りても、ネットワーク環境など無理だ。

「だぁー。仕方が無い」
 いやだったが、麻衣を連れて深井の家へと行く。

「おーい居るか?」
「おっおう、ちょっと待ってろ」
 インターフォン越しに会話。
 カメラを見てきっとあわてたな。

 ばたばた、ゴンという音が聞こえた。
 階段を降りてきて、靴下が滑ったようだ。
 玄関に転がりながら、ドアが開いた。

 そう、ボケボケ麻衣は、玲奈さんの娘。
 父親は知らないが、玲奈さんは面食いということで有名だ。
 顔が良い奴ばかりと付き合い、振られるを繰り返している。
 ただし、玲奈さん本人も、美人なんだよ。

 もてない深井と関わらせたくなかった。
 こいつは絶対、麻衣を物で釣る。
 そして、麻衣は釣られるだろう。
 それが判っていたのに、連れてきてしまった。

 それからはまあ、ゲームをしながら、友達と話をできるレベルくらいにはやり込む。
 俺は此のゲームのことを知らないから、仕方が無いが、深井鼻息を荒くして付きっきりで教える。
 ちょこちょこ手が、背中だったり肩に触れるのが気になる。

 ああ、焼き餅が…… 
 おれは、麻衣が好きではあるが、こいつと一生暮らすのは嫌なんだよ。
 絶対俺の心が、ストレスで壊れる。

 色々な考えが足りず、人に迷惑をかける。
 今までそれを見てきたし、できるフォローはしてきた。
 でも、うんざりしているのに…… こいつの横に知らない男が立つのも嫌なんだよ……

「こら、深井。さわるんじゃんねぇ」
 ちょっと触れただけとでも言いたそうに、こっちを向く。

「なんだ二人、付き合ってんのか?」
 すごく嫌そうに聞いてくる。

「兄妹みたいなものだ」
「じゃあ良いじゃん。おれ、麻衣ちゃん気に入っちゃった。お菓子食べる?」
「いいの? ありがとう」
 ああ、もうだめだ餌付けされた。

 帰りに麻衣に対して、しつこく説明をする。
「良いか俺がいないときには、絶対あいつの所に行くな」
「なんでぇ?」
 なんで…… だとっ…… ぐっ。

「あいつと付き合いたいのか? エッチしたいのか?」
「うーん? よくわからないし」
 こてんと首がかしげられる。

「あいつと付き合うなら、俺は、もうお前と遊ばん」
 禁断の技を使う。

「それはやだ……」
 それを言ってしまうと、いつものことだが、泣きそうになる。なだめて、頭をなで、手を繋いで帰った。

 だがまあ、この手のゲームは、せっかく作ったアバターとか気になるらしく、遊び方を知っているだけではなく、日々変化をする状況を、話しするのが楽しいらしい。

 つまり麻衣は、俺に黙って行きやがったということだ……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜合体編〜♡

x頭金x
恋愛
♡ちょっとHなショートショートつめ合わせ♡

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

処理中です...