210 / 232
破滅は、そっと笑顔で近寄り、囁くだけ
第1話 転校生
しおりを挟む
「蒼空…… あなたは本当のことを言っていたのに…… 信じなくてごめん。私もそっちに行くから……」
「おおい人が落ちた、救急車……」
幼馴染み、藤野 蒼空。
とっても優しくて、でも優柔不断で、意気地無し。
でも…… ずっと好きだった。
それなのに、馬鹿な私は、あなたの言うことを信じずに、あの悪魔の囁きに乗ってしまった。
高校一年の夏休み。
花火大会でやっとキスをした。
それも私から、強引に。
蒼空は私のことを好きだと思う、それなのに…… スキンシップはするの。
プロレスとか、ふざけてくすぐり合いとか…… それは平気なのに、私が言っても、彼氏彼女の関係には成れない。
だから、友達が言っていたように、私から強引に求めた。
アイスを食べ終わったタイミングで、欲しかったのに、一口くらいくれても良かったのにと、文句を言ってキスをするという荒技。
それなのに驚かれただけ、それにあれ以降、少し距離が開いた気がする。
まあその理由は、数ヶ月後、お母さんの言葉で、分かるんだけどね。
そんなギクシャクした夏休み明け、転校生が一人やって来た。
百八十センチ近い身長で、爽やか系イケメン。
八美乃 狩人
当然、そんな彼の周りには、休み時間になると、女の子がたかる。
私は、蒼空が居るから別に興味は無い。
休み時間も、とくに興味を示さず相手にしなかった。
だけどその日から、ちょくちょくと目が合う気がする。
そう彼は、それだけで私をターゲットにした。
自分に興味を示さない…… それだけで。
クラスが違うから、待ち合わせて蒼空と帰る。
朝は、起こしに行って、寝ていればキスをして起こす。
そして、蒼空のお寝坊に付き合って遅刻。
「あーもう。今度寝坊したら、おいていくからね」
「いや、先に行けって言ったじゃん。待たなくていいよ」
「そしたらまた、遅刻がひどくなるじゃない。隣のクラスなのに、蒼空のクラス担任、闇烏先生にたのまれているのよ」
「あーそりゃ。すまない」
そんな事を言いながら、楽しく帰った日々。
「悪い、文化祭の準備で遅くなる」
「手伝おうか?」
そう言ったら、彼は変な顔をする。
「そりゃ助かるけれど、他のクラスの催し物を手伝うとかまずくないか?」
「ああそうか、採点をするんだったけ」
「そう。会社経営に通じる催し。企画立案、そして実行と結果を出す。これも社会生活への訓練だぁ。って先生が張り切っていたからな」
「ああそう言えば、うちもそうだ。成績がボーナスに関係するって言う噂だし。うんまあ帰るわ」
そう言って蒼空と別れ、一人で帰り始めると、声がかかる。
秋の夜長と言うけれど、少し遅くなると薄暗くなる。
「あれ? そこを行くのは撫養さん」
声が聞こえ振り返ると、あいつだよ。
「こんにちわ」
「はい。えーとなんでしょう?」
「いやだなあ、帰りがこっちと言うだけ。そんなに警戒しないでよ」
「ああいえ、男の子が苦手で」
そう言うとアレッという顔をする。
「何度か見かけたけれど、男と仲よさそうに歩いているじゃん」
「ああ、それは多分蒼空、藤野君だと思う」
「彼氏なの?」
そう聞かれてうんと言いたいが、言えない。
「彼氏じゃないけれど、幼馴染みであいつは別に怖くないから」
「ふーん羨ましいね。こんなかわいい子を、幼馴染みというだけでキープ中か」
「キープ中って、なんですかそれ? 蒼空はそんな事しません」
「ふーん。そうなんだ。蒼空君はしないんだね。この前見たのは違ったのか。いやあごめん変なことをいって」
そういった彼は、曲とか映画とか話を振ってくる。
「どうして、そんなに色々聞くんですか?」
「そりゃ君のことが、気になるからだよ。こっちに引っ越してきて淋しいし、君みたいにかわいくて聡明。ああ賢い子が、彼女になったりすると嬉しいじゃん」
そう言って彼は、人の頭に手を伸ばしてくる。
思わず、手を払う。
「ああ、ごめんついね。ああ、うちはまだこの奥なんだ。じゃあね」
奥に行くと、新興の住宅地。
今地価が下がっているから、大きな家が沢山建っている。
何かどっと疲れて家へと帰る。
でも家には、誰も居ない。
お父さんは仕事。
お母さんも、中学校の時からフルタイムに戻った。
お風呂を洗ったり、簡単にお味噌汁を作ったり、他のおかずも下ごしらえをして置く。
向かいの家も主はいない。
うちと同じく共稼ぎ。
蒼空が帰っていなければ、真っ暗いまま。
「蒼空のクラスも、誰が演劇なんて言い出したんだろう」
ちらっと原稿を見せて貰った。
ドロドロの愛憎劇、新釈浦島太郎。
亀吉が虐められていたのは、海辺の村で留守中の女房達を食い荒らしたから。
旦那さん達が、囲んで袋にしていた。
それを知らずに、太郎は助けて、御礼として竜宮場へと連れて行かれる。
飲んで食べて好き勝手しておいて、最後に渡された箱を開け、請求額を見て、真っ白に燃え尽きた…… そんな話になっていた。
父兄も来るのに、よく企画が通ったわね。
そうそれを読んでいたのに、体育館に蒼空を探しに行って、その現場を告白か何かだと勘違いをしてしまった。
「鯖子、そんな事を言って、彼氏はいいのか?」
「会えないとね、やっぱり淋しいのよ。だからお願い。して……」
「鯖子…… なんて君は、美味しそうなんだ」
「だめ、鯖子で笑う」
「福島 綾乃なんか、ふぐ子だぞ」
「あー微妙。三谷君て、絶対人を見て役名を決めたよね。失礼しちゃう」
そう、タイミングが悪いことに、心音は、『彼氏はいいのか?』の所でやって来て、驚き、『会えないとね、やっぱり淋しいのよ。だからお願い』辺りで現場を離れた。
そう裏切られたと勘違い。
頭の中に、『蒼空君はしないんだね。この前見たのは違ったのか』と言う言葉が残っていたから……
そう、夏祭り、キスをしてからのギクシャク。
手を出してくれない蒼空。
色々が、私を導いていく……
間違った方向へ。
「おおい人が落ちた、救急車……」
幼馴染み、藤野 蒼空。
とっても優しくて、でも優柔不断で、意気地無し。
でも…… ずっと好きだった。
それなのに、馬鹿な私は、あなたの言うことを信じずに、あの悪魔の囁きに乗ってしまった。
高校一年の夏休み。
花火大会でやっとキスをした。
それも私から、強引に。
蒼空は私のことを好きだと思う、それなのに…… スキンシップはするの。
プロレスとか、ふざけてくすぐり合いとか…… それは平気なのに、私が言っても、彼氏彼女の関係には成れない。
だから、友達が言っていたように、私から強引に求めた。
アイスを食べ終わったタイミングで、欲しかったのに、一口くらいくれても良かったのにと、文句を言ってキスをするという荒技。
それなのに驚かれただけ、それにあれ以降、少し距離が開いた気がする。
まあその理由は、数ヶ月後、お母さんの言葉で、分かるんだけどね。
そんなギクシャクした夏休み明け、転校生が一人やって来た。
百八十センチ近い身長で、爽やか系イケメン。
八美乃 狩人
当然、そんな彼の周りには、休み時間になると、女の子がたかる。
私は、蒼空が居るから別に興味は無い。
休み時間も、とくに興味を示さず相手にしなかった。
だけどその日から、ちょくちょくと目が合う気がする。
そう彼は、それだけで私をターゲットにした。
自分に興味を示さない…… それだけで。
クラスが違うから、待ち合わせて蒼空と帰る。
朝は、起こしに行って、寝ていればキスをして起こす。
そして、蒼空のお寝坊に付き合って遅刻。
「あーもう。今度寝坊したら、おいていくからね」
「いや、先に行けって言ったじゃん。待たなくていいよ」
「そしたらまた、遅刻がひどくなるじゃない。隣のクラスなのに、蒼空のクラス担任、闇烏先生にたのまれているのよ」
「あーそりゃ。すまない」
そんな事を言いながら、楽しく帰った日々。
「悪い、文化祭の準備で遅くなる」
「手伝おうか?」
そう言ったら、彼は変な顔をする。
「そりゃ助かるけれど、他のクラスの催し物を手伝うとかまずくないか?」
「ああそうか、採点をするんだったけ」
「そう。会社経営に通じる催し。企画立案、そして実行と結果を出す。これも社会生活への訓練だぁ。って先生が張り切っていたからな」
「ああそう言えば、うちもそうだ。成績がボーナスに関係するって言う噂だし。うんまあ帰るわ」
そう言って蒼空と別れ、一人で帰り始めると、声がかかる。
秋の夜長と言うけれど、少し遅くなると薄暗くなる。
「あれ? そこを行くのは撫養さん」
声が聞こえ振り返ると、あいつだよ。
「こんにちわ」
「はい。えーとなんでしょう?」
「いやだなあ、帰りがこっちと言うだけ。そんなに警戒しないでよ」
「ああいえ、男の子が苦手で」
そう言うとアレッという顔をする。
「何度か見かけたけれど、男と仲よさそうに歩いているじゃん」
「ああ、それは多分蒼空、藤野君だと思う」
「彼氏なの?」
そう聞かれてうんと言いたいが、言えない。
「彼氏じゃないけれど、幼馴染みであいつは別に怖くないから」
「ふーん羨ましいね。こんなかわいい子を、幼馴染みというだけでキープ中か」
「キープ中って、なんですかそれ? 蒼空はそんな事しません」
「ふーん。そうなんだ。蒼空君はしないんだね。この前見たのは違ったのか。いやあごめん変なことをいって」
そういった彼は、曲とか映画とか話を振ってくる。
「どうして、そんなに色々聞くんですか?」
「そりゃ君のことが、気になるからだよ。こっちに引っ越してきて淋しいし、君みたいにかわいくて聡明。ああ賢い子が、彼女になったりすると嬉しいじゃん」
そう言って彼は、人の頭に手を伸ばしてくる。
思わず、手を払う。
「ああ、ごめんついね。ああ、うちはまだこの奥なんだ。じゃあね」
奥に行くと、新興の住宅地。
今地価が下がっているから、大きな家が沢山建っている。
何かどっと疲れて家へと帰る。
でも家には、誰も居ない。
お父さんは仕事。
お母さんも、中学校の時からフルタイムに戻った。
お風呂を洗ったり、簡単にお味噌汁を作ったり、他のおかずも下ごしらえをして置く。
向かいの家も主はいない。
うちと同じく共稼ぎ。
蒼空が帰っていなければ、真っ暗いまま。
「蒼空のクラスも、誰が演劇なんて言い出したんだろう」
ちらっと原稿を見せて貰った。
ドロドロの愛憎劇、新釈浦島太郎。
亀吉が虐められていたのは、海辺の村で留守中の女房達を食い荒らしたから。
旦那さん達が、囲んで袋にしていた。
それを知らずに、太郎は助けて、御礼として竜宮場へと連れて行かれる。
飲んで食べて好き勝手しておいて、最後に渡された箱を開け、請求額を見て、真っ白に燃え尽きた…… そんな話になっていた。
父兄も来るのに、よく企画が通ったわね。
そうそれを読んでいたのに、体育館に蒼空を探しに行って、その現場を告白か何かだと勘違いをしてしまった。
「鯖子、そんな事を言って、彼氏はいいのか?」
「会えないとね、やっぱり淋しいのよ。だからお願い。して……」
「鯖子…… なんて君は、美味しそうなんだ」
「だめ、鯖子で笑う」
「福島 綾乃なんか、ふぐ子だぞ」
「あー微妙。三谷君て、絶対人を見て役名を決めたよね。失礼しちゃう」
そう、タイミングが悪いことに、心音は、『彼氏はいいのか?』の所でやって来て、驚き、『会えないとね、やっぱり淋しいのよ。だからお願い』辺りで現場を離れた。
そう裏切られたと勘違い。
頭の中に、『蒼空君はしないんだね。この前見たのは違ったのか』と言う言葉が残っていたから……
そう、夏祭り、キスをしてからのギクシャク。
手を出してくれない蒼空。
色々が、私を導いていく……
間違った方向へ。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる