181 / 221
高校二年生。夏休みの出来事
第2話 異変
しおりを挟む
この年になっても、みんなが言っているような、付き合うとか、彼氏彼女。
好きとか愛してるなんぞ、未だに気持ちが理解できない。
だが、肉体的には大人に近くなり、したい事はしたい。
相手が香澄でも、シャワーを浴びている所を想像すれば、体は反応をする。
そんな俺の事情も知らず、奴は短パンとタンクトップ。しかもノーブラで出てきた。
おばかな香澄の膝に、キズを体液で包み。乾かさずに自然治癒力をあげる、保湿系絆創膏を貼る。
このタイプは少し値段が高いが、早く綺麗に治る。安い布タイプや、消毒薬は、交換する度に傷にダメージを与えて長引かせる。
十年以上前からは、皮下に達するような傷でない限りは、消毒や乾燥は、傷に悪いという事が知られている。
緊急時や、面積が広いときには、傷口を水道水で洗い、砂などを取り除いた後、傷にワセリンを塗り、ラップで包んで保護をするのが良いと教えて貰った。
ただ、深い傷や化膿してきた場合などは、すぐに病院へ行くこと。
そう、傷口を乾燥させるスプレーで、重篤化することが多く、乾燥は駄目だと知られて、最近は傷を乾燥させない。
まあ、処置をしたその上からネットで抑える。
関節部分は、剥げやすいからな。
「ありがとう」
「ほかは?」
肘とか、掌。別に問題は無さそうだ。
だが肘とかを見たときに、別の所が気になり、つい目をそらす。
「よし、熱冷ましを飲んで寝ろ」
「はーい」
「九度を超えたら、座薬だな」
そう言うと逃げていく。
座薬は普通、体温で少し表面を融かしてから入れるものだが、昔おばさんに強引に入れられて、すごく痛かったらしい。
座薬怖い病だ。
夕方まで待って、帰ってきたおばさんに説明をする。
「なので、警察に診断書を持っていってください」
「ありがとうね」
「本人は夏バテで、熱もあったので、熱冷ましを飲んで寝ています」
「はいはい」
そうして、俺は帰った。
その後、きちんと近所の診療所へ行った様だ。
翌日気になって、様子を見に行くと、元気にそう言っていた。
「膝小僧に絆創膏を貼って、泳ぐのは駄目かなあ」
「あまり良くはないなぁ。他の人も嫌がるだろうし、最近は変な感染症も多いらしいからなぁ」
「感染症?」
「そう。傷口なんかがあると、そこから感染をするんだってさ。父さんが言っていたよ」
「へぇ。そうなんだ」
「それに、体調が悪いと、免疫力? とかいうのが下がっているから病気になりやすいらしい」
「もう。心配しすぎ。すぐに元気になるから大丈夫よ」
そう言ってむくれる、香澄。
ほっぺを膨らませるから、思わず両手で挟み、潰す。
「ぶううう。もう……」
そして…… その日が、元気だった香澄の、最後の姿だった。
三日くらいで、高熱が出始めて、入院。
レントゲンを撮ると、肺炎を起こしていたようだ。
血液ガス分析で、血中の酸素濃度が低いらしくて、酸素吸引。
「どうしてこんな事に?」
「判らないの。急に……」
なぜか、おばさん達も血液検査などをされて、面会もさせてもらえない様だ。
『薬剤耐性』
『アシネトバクター?』
『感染症……』
「届け出を……」
そんな会話が聞こえて、病室周りがにわかに騒がしくなる。
「腎機能も……」
「カルバペネム系薬効いていません」
「大学病院へ連絡。緊急で」
「はい」
看護師さんが走って行く。
そんな姿を、俺とおばさんは呆然と見送る。
現実は、ドラマと違い。会話もする暇が無かった。
ただ、あわただしく状態が変わっていく。
「大学病院へ輸送します」
そう言って、完全防備でやって来たスタッフ。
ストレッチャーの上に乗った香澄も、ビニールでくるまれている。
「感染の危険はほぼありませんが、予防のためです」
そう言って……
ビニールシートがぶら下がる救急車へ積み込まれる。
俺達は、おばさんの車で追いかける。
数時間後、大学病院で、先生から話を聞く。
「もともと、日本では少なかったのですが、最近増えています。通常なら発症をしないのですが、お嬢さんずっと体調が悪かったとか? それで免疫機能が落ちていたのでしょう」
そう言って、パソコンのモニターを指し示す。
「白くなっているのが肺で、炎症を起こしています。腎機能も落ちていて、抗菌剤を使う必要があるのですが、いくつかの薬剤に耐性がある様なので……」
感染症には、抗生物質とか抗菌剤と呼ばれる薬剤が使われる。
だが、それに対する耐性を持つものが居る。
日本では少なかったものも、観光客の増加など、人の移動により、特殊な菌が増えてきていたりする。
異常な夏の暑さ。
それにより体調を崩し、何でも無い病原菌が突然発症して、人の命を危険にさらす。
免疫が低下した人などが発症する、いわゆる日和見感染症で珍しいものではない。
それは、土壌や水など環境中に生息している菌で、健康な人の皮膚からも検出される事があるもの。
だが、いくつかのものによる発症が、今、急激に増えているらしい。
そして、運が悪かったようだ。
敗血症からのショック。多臓器不全。
それは…… あっという間だった……
好きとか愛してるなんぞ、未だに気持ちが理解できない。
だが、肉体的には大人に近くなり、したい事はしたい。
相手が香澄でも、シャワーを浴びている所を想像すれば、体は反応をする。
そんな俺の事情も知らず、奴は短パンとタンクトップ。しかもノーブラで出てきた。
おばかな香澄の膝に、キズを体液で包み。乾かさずに自然治癒力をあげる、保湿系絆創膏を貼る。
このタイプは少し値段が高いが、早く綺麗に治る。安い布タイプや、消毒薬は、交換する度に傷にダメージを与えて長引かせる。
十年以上前からは、皮下に達するような傷でない限りは、消毒や乾燥は、傷に悪いという事が知られている。
緊急時や、面積が広いときには、傷口を水道水で洗い、砂などを取り除いた後、傷にワセリンを塗り、ラップで包んで保護をするのが良いと教えて貰った。
ただ、深い傷や化膿してきた場合などは、すぐに病院へ行くこと。
そう、傷口を乾燥させるスプレーで、重篤化することが多く、乾燥は駄目だと知られて、最近は傷を乾燥させない。
まあ、処置をしたその上からネットで抑える。
関節部分は、剥げやすいからな。
「ありがとう」
「ほかは?」
肘とか、掌。別に問題は無さそうだ。
だが肘とかを見たときに、別の所が気になり、つい目をそらす。
「よし、熱冷ましを飲んで寝ろ」
「はーい」
「九度を超えたら、座薬だな」
そう言うと逃げていく。
座薬は普通、体温で少し表面を融かしてから入れるものだが、昔おばさんに強引に入れられて、すごく痛かったらしい。
座薬怖い病だ。
夕方まで待って、帰ってきたおばさんに説明をする。
「なので、警察に診断書を持っていってください」
「ありがとうね」
「本人は夏バテで、熱もあったので、熱冷ましを飲んで寝ています」
「はいはい」
そうして、俺は帰った。
その後、きちんと近所の診療所へ行った様だ。
翌日気になって、様子を見に行くと、元気にそう言っていた。
「膝小僧に絆創膏を貼って、泳ぐのは駄目かなあ」
「あまり良くはないなぁ。他の人も嫌がるだろうし、最近は変な感染症も多いらしいからなぁ」
「感染症?」
「そう。傷口なんかがあると、そこから感染をするんだってさ。父さんが言っていたよ」
「へぇ。そうなんだ」
「それに、体調が悪いと、免疫力? とかいうのが下がっているから病気になりやすいらしい」
「もう。心配しすぎ。すぐに元気になるから大丈夫よ」
そう言ってむくれる、香澄。
ほっぺを膨らませるから、思わず両手で挟み、潰す。
「ぶううう。もう……」
そして…… その日が、元気だった香澄の、最後の姿だった。
三日くらいで、高熱が出始めて、入院。
レントゲンを撮ると、肺炎を起こしていたようだ。
血液ガス分析で、血中の酸素濃度が低いらしくて、酸素吸引。
「どうしてこんな事に?」
「判らないの。急に……」
なぜか、おばさん達も血液検査などをされて、面会もさせてもらえない様だ。
『薬剤耐性』
『アシネトバクター?』
『感染症……』
「届け出を……」
そんな会話が聞こえて、病室周りがにわかに騒がしくなる。
「腎機能も……」
「カルバペネム系薬効いていません」
「大学病院へ連絡。緊急で」
「はい」
看護師さんが走って行く。
そんな姿を、俺とおばさんは呆然と見送る。
現実は、ドラマと違い。会話もする暇が無かった。
ただ、あわただしく状態が変わっていく。
「大学病院へ輸送します」
そう言って、完全防備でやって来たスタッフ。
ストレッチャーの上に乗った香澄も、ビニールでくるまれている。
「感染の危険はほぼありませんが、予防のためです」
そう言って……
ビニールシートがぶら下がる救急車へ積み込まれる。
俺達は、おばさんの車で追いかける。
数時間後、大学病院で、先生から話を聞く。
「もともと、日本では少なかったのですが、最近増えています。通常なら発症をしないのですが、お嬢さんずっと体調が悪かったとか? それで免疫機能が落ちていたのでしょう」
そう言って、パソコンのモニターを指し示す。
「白くなっているのが肺で、炎症を起こしています。腎機能も落ちていて、抗菌剤を使う必要があるのですが、いくつかの薬剤に耐性がある様なので……」
感染症には、抗生物質とか抗菌剤と呼ばれる薬剤が使われる。
だが、それに対する耐性を持つものが居る。
日本では少なかったものも、観光客の増加など、人の移動により、特殊な菌が増えてきていたりする。
異常な夏の暑さ。
それにより体調を崩し、何でも無い病原菌が突然発症して、人の命を危険にさらす。
免疫が低下した人などが発症する、いわゆる日和見感染症で珍しいものではない。
それは、土壌や水など環境中に生息している菌で、健康な人の皮膚からも検出される事があるもの。
だが、いくつかのものによる発症が、今、急激に増えているらしい。
そして、運が悪かったようだ。
敗血症からのショック。多臓器不全。
それは…… あっという間だった……
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる