172 / 232
人はそれを自業自得と言う
第2話 不穏な空気
しおりを挟む
彼は翌日。
おバカな友人達に、経験とか興味だとか聞いてしまったようだ。
「へー…… 結構…… やっぱり……」
聞き耳を立てても聞こえない。
そこに、連んでいる女が一人張り付いてきて、颯人に何かを耳打ちしている。
あっ、何か言ったけれど、そこで振り向くと唇が当たる。
やめてぇえ。
「葉月。あんたさっきから、なに百面相をしているの? ―― ああ、颯人くんか。高嶺の花だね」
声をかけてきたのは、皐月。私と同じく、生まれ月で名前をつけられた同士。
むろん、颯人が幼馴染みで、部屋に出入りしているなど言っていない。
ばれれば、殺される自信がある。女の友情なんてそんな物よ……
だけど、そんなことを考えると、フラグという物は立つもの。
「葉月。今日ちょっと遊びに行くから、部屋には行かないけど、きっちり勉強しとけ。気に入ったようだから、赤点ならラーメンな」
奴は爽やかに、言い放って行った。 私の周りに混乱を残して……
そう、皐月の前で……
当然、彼女の目で炎が燃え上がる。
地の底から聞こえるような、妙に響き渡るような声。頭の芯や胸に変に刺さる。
「ねえぇぇ。葉月ぃ。私…… とても信じられない話を聞いたの…… 今日は行けないという事よね? ねっ? ねっ? じゃあ普段は? いつもなら来るの? 彼が、部屋へ……」
「いやちょっと、皐月。首が…… 息……」
その日、初めて河原で石を積んだ……
向こうでは、優しそうなおばあさんが来ちゃ駄目と、私を追い返す?
どうしてなの。そっちに行きたいのに…… 私、何か悪い事をしたのかなあ?
「息して、息……」
「何してんの?」
「首を絞めたら、葉月の息が」
そう言うと、彼は私のほっぺに手を当てて囁いたらしい。
「んー。葉月。朝だ、起きろ。起きないと布団を捲るぞ」
「ひっ、だめぇ。―― えっ、なにこれ??」
目を覚ますと、ニヤニヤ顔の颯人。
周りには、心配? とも違う、複雑な顔をしたクラスメート。
「へー。そう言う仲なんだ。友達だと思っていたのに。『朝だ、起きろ。』言って欲しいぃわぁ。それに私なら、布団も捲ってほしい」
皐月の言葉と視線。いえ、死線を感じる。なにかやばい意識が、私の心に突き刺さる……
遠くからも、私に視線が集中している気がする。
その日、数少ない友人達。なぜか皆が、近寄ってくれなかった。
だけど、翌日から、私はモテモテになる。
「葉月。まさか私が、遊びに行くのを駄目とか言わないわよね」
皐月の目が怖い。心なしか、左側鼻血が出ている。
「えっ。あっ。うん…… もちろん良いし……」
その日も、彼は来なかった。
私の友人来襲を見ていたのだろうか?
違っていた。
それは前日のこと……
近所のカラオケボックスの一室で、おバカ連中が女の子を振り向かせようと熱唱する中、行われていた会話。
「男が初めてだと、強引だからやっぱり痛いわよ」
「そうよね。なんか鼻息ばかり荒くって、強引に胸を揉むから痛いし」
「そうそう」
軽薄グループの面々。
だけどこいつら、成績が良い。
「唇を尖らせてさ、鼻息をふんふんさせて、あれで冷めちゃった」
「何の話?」
「初恋。最悪だったわよ」
人世 麻美が、嫌そうな顔をする。
唐多 弥子がその言葉に反応する。
「それでもしてみたら…… あー。体の相性とかって、してみないとわからないじゃない?」
「へー。相手によって違うもの?」
颯人が気になり質問をする。
「そうそう。やっぱりいい人だと、こうピタっとくるというか。収まっただけで幸せを感じるときがあるのよね」
「じゃあ、その人と付き合っているの?」
麻美がそう聞くと、弥子が首を振る。
「いい男は、本命持ちが多いの……」
「あんたねぇ。刺されるわよ」
麻美が、弥子を呆れた目でみる。
だが、弥子の反応は違った。
「刺して欲しいぃ。最近してないの。やっぱり固定の彼氏が欲しい」
そう言いながら、颯人の方をちらっと見る。
「颯人くん。どうかなぁ。私ぃ、何でもするよ」
「ばかねえ。深身さんという、最強の女がいるじゃ無い。幼馴染みというプラチナカード持ちが」
麻美がそう言うと、意外な返事がやって来る。
「あー。別に付き合ってはいないよ。仲は良いけれど。だけど、今まで幾人か付き合った子は、葉月に会わないでとかいうから、別れる原因になるんだよね。どうしてかなあ?」
横で、聞いていた二人とも、当然だろうと考える。
「颯人くん相手だと、自信がなくなるもの」
「そうだよね。何時フラれるか不安だよね」
そう言いながら、拍手をする。
歌が終わったようだ。
会話をしながら、聞いていたのか。すごいな。
「おし。颯人歌え。感動する奴」
「感動? それじゃあ」
『トイレの神様』という古い曲を歌った。
なんとなく好きなんだよね。
「これは…… これは、違うぞ颯人。泣かせてどうするぅ」
皆、なぜか号泣していた。
「かすれるようなビブラートが、胸に…… おばあちゃんのところがだめぇ」
場が、なぜか微妙な雰囲気になってしまった。
その後、 陽介達が盛り上がる曲とか歌っては、おれが『手紙~拝啓 十五の君へ~』とかを歌う。
「もう、ゆるしてぇ」
そして帰ることになってしまったが、なんとなく勝った気がする。
泣くのは良いことなんだよ。
そして、翌日。彼女達に再び誘われた。
おバカな友人達に、経験とか興味だとか聞いてしまったようだ。
「へー…… 結構…… やっぱり……」
聞き耳を立てても聞こえない。
そこに、連んでいる女が一人張り付いてきて、颯人に何かを耳打ちしている。
あっ、何か言ったけれど、そこで振り向くと唇が当たる。
やめてぇえ。
「葉月。あんたさっきから、なに百面相をしているの? ―― ああ、颯人くんか。高嶺の花だね」
声をかけてきたのは、皐月。私と同じく、生まれ月で名前をつけられた同士。
むろん、颯人が幼馴染みで、部屋に出入りしているなど言っていない。
ばれれば、殺される自信がある。女の友情なんてそんな物よ……
だけど、そんなことを考えると、フラグという物は立つもの。
「葉月。今日ちょっと遊びに行くから、部屋には行かないけど、きっちり勉強しとけ。気に入ったようだから、赤点ならラーメンな」
奴は爽やかに、言い放って行った。 私の周りに混乱を残して……
そう、皐月の前で……
当然、彼女の目で炎が燃え上がる。
地の底から聞こえるような、妙に響き渡るような声。頭の芯や胸に変に刺さる。
「ねえぇぇ。葉月ぃ。私…… とても信じられない話を聞いたの…… 今日は行けないという事よね? ねっ? ねっ? じゃあ普段は? いつもなら来るの? 彼が、部屋へ……」
「いやちょっと、皐月。首が…… 息……」
その日、初めて河原で石を積んだ……
向こうでは、優しそうなおばあさんが来ちゃ駄目と、私を追い返す?
どうしてなの。そっちに行きたいのに…… 私、何か悪い事をしたのかなあ?
「息して、息……」
「何してんの?」
「首を絞めたら、葉月の息が」
そう言うと、彼は私のほっぺに手を当てて囁いたらしい。
「んー。葉月。朝だ、起きろ。起きないと布団を捲るぞ」
「ひっ、だめぇ。―― えっ、なにこれ??」
目を覚ますと、ニヤニヤ顔の颯人。
周りには、心配? とも違う、複雑な顔をしたクラスメート。
「へー。そう言う仲なんだ。友達だと思っていたのに。『朝だ、起きろ。』言って欲しいぃわぁ。それに私なら、布団も捲ってほしい」
皐月の言葉と視線。いえ、死線を感じる。なにかやばい意識が、私の心に突き刺さる……
遠くからも、私に視線が集中している気がする。
その日、数少ない友人達。なぜか皆が、近寄ってくれなかった。
だけど、翌日から、私はモテモテになる。
「葉月。まさか私が、遊びに行くのを駄目とか言わないわよね」
皐月の目が怖い。心なしか、左側鼻血が出ている。
「えっ。あっ。うん…… もちろん良いし……」
その日も、彼は来なかった。
私の友人来襲を見ていたのだろうか?
違っていた。
それは前日のこと……
近所のカラオケボックスの一室で、おバカ連中が女の子を振り向かせようと熱唱する中、行われていた会話。
「男が初めてだと、強引だからやっぱり痛いわよ」
「そうよね。なんか鼻息ばかり荒くって、強引に胸を揉むから痛いし」
「そうそう」
軽薄グループの面々。
だけどこいつら、成績が良い。
「唇を尖らせてさ、鼻息をふんふんさせて、あれで冷めちゃった」
「何の話?」
「初恋。最悪だったわよ」
人世 麻美が、嫌そうな顔をする。
唐多 弥子がその言葉に反応する。
「それでもしてみたら…… あー。体の相性とかって、してみないとわからないじゃない?」
「へー。相手によって違うもの?」
颯人が気になり質問をする。
「そうそう。やっぱりいい人だと、こうピタっとくるというか。収まっただけで幸せを感じるときがあるのよね」
「じゃあ、その人と付き合っているの?」
麻美がそう聞くと、弥子が首を振る。
「いい男は、本命持ちが多いの……」
「あんたねぇ。刺されるわよ」
麻美が、弥子を呆れた目でみる。
だが、弥子の反応は違った。
「刺して欲しいぃ。最近してないの。やっぱり固定の彼氏が欲しい」
そう言いながら、颯人の方をちらっと見る。
「颯人くん。どうかなぁ。私ぃ、何でもするよ」
「ばかねえ。深身さんという、最強の女がいるじゃ無い。幼馴染みというプラチナカード持ちが」
麻美がそう言うと、意外な返事がやって来る。
「あー。別に付き合ってはいないよ。仲は良いけれど。だけど、今まで幾人か付き合った子は、葉月に会わないでとかいうから、別れる原因になるんだよね。どうしてかなあ?」
横で、聞いていた二人とも、当然だろうと考える。
「颯人くん相手だと、自信がなくなるもの」
「そうだよね。何時フラれるか不安だよね」
そう言いながら、拍手をする。
歌が終わったようだ。
会話をしながら、聞いていたのか。すごいな。
「おし。颯人歌え。感動する奴」
「感動? それじゃあ」
『トイレの神様』という古い曲を歌った。
なんとなく好きなんだよね。
「これは…… これは、違うぞ颯人。泣かせてどうするぅ」
皆、なぜか号泣していた。
「かすれるようなビブラートが、胸に…… おばあちゃんのところがだめぇ」
場が、なぜか微妙な雰囲気になってしまった。
その後、 陽介達が盛り上がる曲とか歌っては、おれが『手紙~拝啓 十五の君へ~』とかを歌う。
「もう、ゆるしてぇ」
そして帰ることになってしまったが、なんとなく勝った気がする。
泣くのは良いことなんだよ。
そして、翌日。彼女達に再び誘われた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる