幼馴染みが、知り合いになった夜 短編集

久遠 れんり

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幼馴染みは、癖が悪かった(令和六年六月六日なのでサイコ系?)

第1話 ある噂

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 大学三年。

 後期になって、ある研究室で実験のサポートに忙しかった俺。
 いつからか、学内で噂が流れる。
 俺はその頃、全然知らなかった。だが意外と有名なようだ。
「夕方、大学の前でうろうろしている女の子。飲みに誘えばやれる」
 その噂を確認するためか、夕方には混雑をしていたとか。

 俺は今、幼馴染みである、坂森 好美さかもり このみと去年から暮らしている。
「最近、変な男につきまとわれて。怖いからお願い」
 何を考えているのか、そう言って、家に転がり込んできた。
 あまり上手ではないが、料理もしてくれるし、知らない仲ではないし、まあ良いかと。

 実は高校のときに一度彼氏彼女となり、付き合ったが、コイツのことが怖くなり別れた。

 子供の頃から、昆虫採集とかが好きなど、色々変わっていた。

 たまに、笑顔が嘘の時がある。
 顔は満面の笑み、だが、目が笑っていない。

 本人は、しらばっくれているが、長い付き合いの俺には分かる。
 昆虫を捕まえ、無慈悲にピンを押し込む。
 その時の笑顔。
 あれこそが、コイツの本当の笑顔。
 まあ普段付き合うには問題が無い。多分ね……

 好美は大学に通わず、地元の工場へ勤めた。
 少し有名な電子部品メーカー。

 だが家へ来たときには、なぜか派遣となっていた。


「帰る前には、準備があるから、連絡をしてね」
 それが、一緒に暮らし始めた二人の約束。
 俺の家なのに…… そう思ったが、まあいい。

 それを、今日、疲れていたから忘れた。

 家に帰ると、好美はいなかった。
「買い物か?」

 気にせず、部屋着に替えてベッドへ潜りこむ。


 夜中、時計を見ると二時過ぎ。
 違和感で目を覚ます。
「起きちゃった。何日お風呂に入っていないの? 匂うわよ。それに連絡をくれないから、ご飯もできていないし」
「ああ悪い。それで何をしているんだ?」
「しーちゃんの匂いがするから、堪能していたの」

 俺は、使役 究しえき きわむ
 そう言って、なぜか俺の胸に顔を埋め、匂いを堪能していた。
「やめろ。ずっと缶詰で三日も風呂に入っていない」
「やっぱり。すこし、匂いが酸っぱいわよ」
 九月と言っても、日によってはまだ暑い。

「シャワー浴びてくる」
 酸っぱいと言う言葉が気になり、風呂に行く。
「もう。もう少し、堪能しようと思ったのに」

 そう言った彼女だが、こう言うときには必ず離してくれない。
 案の定、浴室に付いてくる。

 体を洗いながら、まとわりつき俺を刺激する。
 高校の時、別れてからは最後まではしない。
 だが、俺を食べる。

 美味しそうに……


「うふっ。籠もっていたから、すごいいっぱい」
「そうか?」
「うん」

 彼女はそう言って、美味しそうに飲み干す。
 家に来てから、定期的に行う儀式。

「わたしがいるから、できないでしょ。お手伝い」
 そう言って。


 高校の時、彼女が怖いと思ったのは、ある事件が切っ掛け。

 あるグループから目を付けられようで、ある日いきなり、いじめが始まった。
 最初は些細な、そう…… 物が無くなったりするのが最初。

 だがそれは、あからさまになる。
 机に落書きをされた。
 そう、その日は先生が来て、逆に落書きをするなと理不尽なことを言われた。
「朝、一緒に来たときはこうなっていました」
 当然俺はかばった。先生にそう言うと
「そうなのか?」
 そう言ったまま、目をそらす。

 結局何も起こらず、職員室へ。
「だが、いじめだとはっきりしないと。こう言うのは非常にデリケートでセンシティブだからなぁ」
「誰かが怪我したり、死なないと動けないと?」
 そう言うと、先生はうろたえる。
「そうは言っていない。極端なことを言って、騒ぎを大きくするな」
 そんな話になる。

 俺は腹が立っただけだが、好美は受け取り方が違ったようだ。

 ある日、近くのトイレで叫び声が聞こえる。

 あわてていくと、よく騒いでいるグループの男があわてて叫ぶ。
「早く先生を呼んでこい。エリカが殺されちまう。誰だよあいつはおとなしいって言ったのは」

 そこには、シャツに蹴られた跡を付け、髪を毟られ。ずぶ濡れの好美が女の腹にまたがり、ひたすら殴っていた。

 周りの奴らは、泣きながらどかそうとしているが退かない。
 俺は覗き込む。
「好美。流石にもうだめだ。やめとけ」
 そう言って、彼女をハグする。
 好美自体も殴られていたようだ、顔が腫れ鼻血を流していた。

 そう、殴られていたのは、矢島 恵里華やじま えりかとかいう女の子。
 さっき泣きべそをかいていた男が彼氏で渡辺 龍わたなべ りゅうだった気がする。
 化粧を決めて、結構綺麗っぽい子だったが跡形もない。
 ただまあ、力が無いから、大丈夫だと思うがよくわからん。

「好美」
 もう一度立たせてからそう言うと、ふと初めて気が付いたようにこちらを向く。
 ちらっと、倒れている矢島を、全く興味が無い目で見下ろす。

「これで先生、調べてくれるね」
「ああ流石にな。だが、お前も罰を受けるぞ」
「どうして? されたから、やり返しただけだよ」
 話を聞くと、周りの取り巻きに、蹴られたり殴られた分を、そのまま矢島に打ち込んだらしい。

「ねっ。おあいこでしょう」
「ああ。まあな」
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