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幼馴染みが、寝取られた日

馬鹿な男は見限るにかぎる

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「早くしないと遅刻するよ」

 目の前で、まだベッドから出ずに、ぐずっているのは渡辺啓介わたなべ けいすけ。私の幼馴染み。

「お・き・ろ」
「佳世。起こしてくれぇ」
 そう言って手を伸ばしてくる。

 一瞬手を引こうと手を伸ばしたが、数日前のことを思い出す。

 あの日は、手を引いたら布団の中に引っ張り込まれ、朝っぱらからやられて、そろって遅刻する羽目になった。
 そうなのよ、すでに義母さんも出勤してしまっている。

 ふと見れば、一部だけ元気そうにおっきしている。
「起きないと、折るわよ」
「冷てえな」
「遅刻をすると言っているでしょ」

 そう言って、布団を捲るとやっぱり。
「何をすんだよ」
「何をするじゃない。何をする気でズボンを脱いでいるの?」
「えっ、いやまあ」

 素直に蹴り起こす。


 こいつとは、そうね腐れ縁と言った方が良いかも。
 小学校の時に、「佳世ちゃんね。この子は啓介と言うのよろしくお願いね」
引っ越しの挨拶に来たお義母さんから頼まれた。

 家の横は空き家だった。
 そこに引っ越してきた渡辺家。
 だけど、お義父さんは元の土地で残っているとのこと。
 基本転勤は拒否していたが、会社自身の事業所統廃合。
 事務所が地方に一つとなってしまい、苦渋の決断で啓介君を連れて転勤をしてきたようだ。

 そうお義母さんが仕事で早く出て、帰りもそこそこ遅い。
 私の家も共稼ぎ、あの頃、私は嬉しかった。
 一人でお家で待つのは、淋しかったから。

 おバカでも、誰か居ると心が落ち着く。

 そんな私に、こいつはつけ込み甘えてきた。
 まるで便利な、家政婦さんだとでも思っているのよきっと。

「勉強つまんない」
「みんな一緒。早くやる」
 そう言ってもぐずって、なかなかしない。
「頑張ったら、ホットケーキを焼くから」
「本当に。じゃあやる」

 そんな感じで自分のことなのに、ご褒美をねだる。
 おかげで、色々なレパートリーが増えたわ。
 だけどいつも、一方的なもの。
 たまに、お義母さんからお小遣いは貰ったけれど、材料費に消える。

 手間賃はプライスレス。

 でも、一人は嫌だったの。
 そんな私の思いに付け込む啓介。

 中学校の三年くらいになると、付き合うとかキスをしたとか話題が出始める。
 当然、どちらからと言うこともなく、そんな話が出る。

 そして。
「ご褒美」
 そう言ってねだられる。
「もう。仕方が無いわね」
 私も興味があったし、受け入れた。

 そして高校。
 関係は進む。

 そして今。

 まだ結婚なんてしてもいないのに、関係はくたびれた夫婦のよう。
「今日の飯は、しけてんな」
「お義母さんが忙しいのに用意してくれたの。何を文句言っているのよ」
「わかったよ」
「いい加減にしないとまた遅刻よ。早く」
「はいはい」
「ハイは一回」
「…… おかんかお前は」
「ああ゛っ」
 とまあこんな感じ。


「走れ」
「ちょっと待て、飯食ってすぐだから横っ腹が」
「早く起きないからでしょ」
 こうなる。

 そして、ある時から馬鹿の態度が変わった。
 エッチをしてもいい加減。
 私を使って、ただ、自分がいけば良いみたいな? 
 まるで、右手の代わりに使っている感じ?

 いやな予感に従い、彼の友人経由で情報を拾う。

 すると、ちょっと派手めの、笠井絵梨花と言う子の名前が浮かぶ。
 この子、少し前に二股とか三股でサッカー部内で騒動を起こした子だが、あの馬鹿は知っているのだろうか?

 まあ良いけどね。

 彼の友人達を手足として使い、行動を見張る。
 案の定、部屋に上がり込み、良からぬ事をしているみたい。
「あー。黒ね」
「馬鹿だよな啓介の奴」
「うだうだ言ってないで、集めて」
「あっごめん」
 横にいるのは、志村誠二しむら せいじと言う子だが、昔から私に気がある。ずっと断っていたが、今回手として使った。

 集めたのはサッカー部の関係者。
 もめていて、まだ解決はしていないらしく、ドロドロの最中らしい。

「あの馬鹿女、啓介を引っ張り込んだの。様子を見た方が良いんじゃ無い?」
 やって来た彼らに囁く。

 むろん、喧嘩をしているはずの彼らは、見事にそろった動きでアパートの階段を駆け上がる。
 ドアをノックしたが、出てこないようで、音は激しくなる。

「おらぁ、絵梨花いるんだろ俺だ。ドアを蹴破るぞ」
 集まったのは、村上修嗣むらかみ しゅうじ遠山崇文とおやま たかふみ江澤俊之えざわ としゆきの三人。
 話を聞くと、いまは、修嗣くんと仲がよく、後の二人は、過去の人になり掛かっているらしい。
 ちなみに、修嗣君は、昨日したばかりだとか。

「じゃあ、啓介はキープ君かしら?」
「口直しの間男じゃないか?」
 誠二と一緒に、二階を見られる、法面ブロックの上。
 こちら側からは、ドアしか見えないが、ドアが少し開いた。

 その瞬間に、修嗣くんは足を挟み込み、強引にドアを開く。
 チェーンが掛けてあったようだが、ガタイのいいサッカー部の修嗣くん。おもちゃのように破壊する。
「おおう。すげえな」

「ちょっと、あんたたち……」
 絵梨花の言葉はそこまで。
「絵梨花。何だその格好は?」
 うん、修嗣くんの声。

「なんだてめえ」
 修嗣くんが、啓介を見つけたのかな?

「いや…… ちょっと待て…… 彼女にさそわれて……」
 などという声が、断片的に聞こえる。

 だがすぐに、静かになり。
 なにもなかったような感じだが、誰も出てこない。

「どうしたのかしら?」
「さあ。見てみる?」
 そう言って、アパートの部屋へ移動する。

 中は、修羅場ではなく混沌。

 なぜか、啓介は撮影係で、筋肉マッチョな三人が、絵梨花と言う女相手に撮影会をしていた。

 確か三人とも、絵梨花は俺の女だと、少し険悪に言っていたが……
「この雰囲気。格下げられたのかな」
「彼女から、完全に肉便器だな」
 そこに、彼女の意思はない。

「おい、佳世。これ一体どうなっているんだ?」
 啓介が聞いてくる。

 当然だが、私の返事は。
「だれあんた。私の名前を気安く呼ばないで」
「えっ。おい」
「やかましい、啓介。俺の彼女に気安く声をかけるな」
「なに? 誠二おまえ」
「嘘を言わないで、彼女じゃ無いし」
「そんなぁ。此処は嘘でもあわせてくれよ」
 誠二くんが、落ち込む。

「で、この状態はなに?」
 話をぶった切り、状況を聞く。
「いやこいつらが入ってきて、そんなにエッチが好きなら満足させてやるって」
 啓介としていたのなら、準備はできていたのよね。

「そうね。彼女嬉しそうだから、問題は無さそうね。帰ろう」
「えっ?」
「なに、誠二まだ居るの? いいわよ。混ぜて貰ったら」
「混ざっていいのかな?」
 馬鹿みたいに、嬉しそうな顔で聞いてくる。

「良いんじゃ無い」
 そうして、私は部屋を出た。

 むろん、その後、誠二とは付き合っていない。
 お礼は、デート一回だと言っていたけど、睨んだら無くなった。
 あの後、無事に、混ざったようだし、彼女は卒業までサッカー部の部室に毎日ウキウキと通っていたみたいだし。

 馬鹿は、一月くらい朝になると家の前にいたが、完全無視をすると、諦めたようだ。
 お義母さんには、きっちりと啓介がどれだけ馬鹿かを説明したから、叱られたのだろう。

 そして、啓介が居たから地味にしていたが、髪型を変え、学校で叱られない程度に、すこしメイクをし始めた。

 いま、周りを囲む中から、私は良さそうな人を見定めている。
 誠実で、ずぼらじゃ無ければ良い。
 そして、子供の時とは違い、家にいてもそれほど淋しくはないし。色々から解放されて気楽。スマホのおかげで、連絡は来るし、啓介と別れてから、女子の友達と遊べる機会も増えた。

 心の中でどうしても淋しい部分はあるが、以外と楽しい。
 そう、少しだけ、なにかがたりない感じはある。
 許す気は無いけどね。

 誰かきっと、これを埋めてくれる人が現れるでしょう。


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お読みくださり、ありがとうございます。

ずるずる続けて悩むより、断捨離をしましょう。
心の平穏のために。
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