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異世界では常識が通じない

第3話 異世界では常識が通じない。 貴族編2

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 サルドの出発は、馬車という乗り物で、国民に会うことなく行われた。

 そうして、一月もせず死亡の方が届く。
 向こうの王都まで、約二週間だと聞いた。
「じゃあ、何処で死んだのです」
「不明だ。便りが一通のみ。これがすべてじゃ」

 こちらの王から、そう知らされ、つい俺は、そばに居たアルビーナの頭をなでて、神殿を飛び出す。
 彼女は悲しそうだったから。

 その時は忘れていた、すでに巫女の立場を引き継いでいたことを。
 頭をなでた俺は、精霊を怒らせたらしい。

 だが、精霊が俺の心に触れ、理解したようだ。

「見せてやる」
 多少、サルドに似ている精霊なんだろうなあ。
 無表情で手を振る。

 すると目の前に見えてくる景色。
 これはあの時の、馬車とか言う乗り物を空から見た景色。

 森を出てドンドン上がるスピード。
 馬だけ交換して、休むことなく走り続ける。
 食事は与えず、いや水だけは貰っていたようだが、最低だ。
 

 そんな中、わずか五日ほどで到着。
 城についても、裏から中へ入り、服が汚れているため水をぶっかけられる。

 そんな場に現れて、とんでもない事を言い出す腐った奴。
 そいつが人の王。レイフ=マティアス=ブロムダール。

「精霊族。美しいと聞いたが、全然だな」
 体が限界で、倒れているサルド。
 汚い手が、サルドの手首を掴み仰向けにする。
「こやつ、まだ子供か?」
 目線は、胸に向かっている。

「確か、十五だと」
「なんだと? それでは飼わんといかんではないか。無駄じゃ。王族じゃ無くても良い適当に攫ってこい」
 そう言ってそいつは、サルドの胸に剣を突き刺した。

 その光景を見たとき、俺の中で何かがはじけた。
「おい精霊、俺に力を貸せ。国の民のため。そしてサルドのために」
「うーん。まあ良いでしょう。ですが、あなた死にますよ。多分ですが」
「それでも良い。あの王を殺せればそれで良い」

 その文言で、強制的に契約をしたようだ。

 途中馬車を引きつれた、人さらいを一掃する。
 精霊は容赦なく、俺の生命力を削る。
「あの悪魔のような、性欲は精霊のせいだったのか」
 なんとなく理解する。
 巫女はそうなったときから精霊と繋がっている。
 子供の頃から慣れれば、きっと人外の精神力と強さを得る。

 そして、俺は歩き続けて、王都へ到着をする。
 精霊は、俺の横につき従っている。俺には姿が見えるが、他の人には見えないのだろう。

 町の入り口をくぐり城郭内へ入る。
 
 一直線に王城へと向かい、途中で止められたが突き進む。

「止まれ、此処は王城だ何者だ?」
「この中に悪魔がいる」
 そう答えると、門番はビクッとして、聞いてくる。

「誰がそうなんだ?」
「多分王だな。奴は悪魔に憑かれている。覚えはないか?」
 賭けだが聞いてみる。

「何とかなるのか?」
「精霊が大丈夫だと言っている」
 そう答えるが、むろんこいつは、そんなことを言わけ無い。 
 ただそこにいる。

「良し判った、みんなに説明をしてくる」

 門番が、職務放棄をして走って行く。
 そこまで、奴はおかしくなっていたのだろう。

 俺は追いかけることはなく、見た景色。
 裏へ回り、なかへ入る。
 見たことのある光景。

 そこから先に進み、血なまぐさいプールを抜け先へ進む。
「貴様何……」
 剥製士は、言葉半ばで動きを止める。

 そして、その先に有ったのはサルドの頭。
 ガラスの目が入り、生き生きとしている。

 体は見えないが、台の上で骨が繋がれている途中。

 作業途中の腐った目の奴らは、みじん切りとなった。

 脇のプール。
 皮が浮いている。

 俺は先に進む。

 真っ暗い部屋だが、広さはわかる。
 魔導具だろう。
 魔力を流す。

 そして、明るくなった先には、ご丁寧にカード付きの剥製がならんでいる。
 奴は、家族も剥製にしたようだ。

 王妃に、娘。息子。

 その先にも、色々な種族がならんでいる。
「精霊。燃やせるか? そして、捕らえられている魂があれば解放をしてくれ」
「ああ。良いとも」

 一瞬で、炎が。それも青白い火。
 それが場を、清めていく。

 振り返り、作業場も頼む。
 あんなサルドは見たくない。

 さげすむ様な目で見るサルド。
 あどけなく笑うサルド。
 俺にはそれだけで良い。

 そんな浄化の最中、見た奴が来た。
 慈悲などいらぬ。
「奴だ。燃やせ」

 奴がオロオロしながら、地下室に入った瞬間。服に火が移る。
 それはじわりじわりと燃え広がり、奴の体を燃やしていく。
 今更こうしたって、誰も帰っては来ない。
 そんなことは判っている。

 でも、しなければ、これから先も被害者は増えていた。
 それが止まれば、それで良い。


 そしてあの門番達が来たときには、すべて燃えていた。

 なぜか俺も生き残り、横には精霊が立っている。
「死ななかったな。不思議なものだ。お前とはリンクが八十パーセント以上。あの王族よりも強い」
「そうなのか?」
「ああ。力はまだ貸そう。この王国とやらも倒して、この地を治めるか?」
「いや。森に帰るさ」
「そうか」
 精霊はそう言ったが、何かを見たらしい。
 ニヤニヤとしながら、俺の横を歩いて行く。

 俺が精霊王として、この大陸を征服するまで十五年の月日が掛かった。

 サルドの骨が埋まった墓の前で報告をする。
「わりい。アルビーナと結婚をする。精霊を連れていることが、親父さんにばれちまった」

 アウノがそう言うと、どこかで声が聞こえた気がした。
「やると思ったわ。妹を愛してあげて……」


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真面目に書くと長編がいけそうだが、需要はなさそう。
最近、調べていて、性癖の色々についてみていて、お人形好きは意外とやばいと知りました。

 さてお読みくださり、ありがとうございます。
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