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忘れていたバレンタインデー(いやホントに)
第1話 2月の14日は、バレンタインだったらしいねえ
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「奇しくも昨日はバレンタインデーだったし、お前も忘れていたようだが、これをあげよう」
離婚届と、山のように積み上げた写真と報告書。
それを、彼女の目の前に積み上げる。
彼女は、妻であり幼馴染みだった。
彼女、旧姓落部涉美。俺は、成冨歩互いに二十五歳。
結婚三年。
彼女は、小学校の三年生のとき颯爽と現れた。
転校してきてすぐに、教室の半数を友人にした。
男ばかりだな。
俺達、男には判らなかったが、女の子に受けが悪かった。
身長もこの頃は男女の差が無くなり、今から女子の方が男を追い抜く頃。
髪を、両サイドで編み込み。花でも飾れば草原に佇むお嬢さんのような佇まい。
制服ではなく私服だった小学校。
彼女は、淡いブルーのワンピースに白いニットカーデガンを羽織り、春の妖精のようだった。
――そう悪友も、感想を述べている。
顔は幼さの中に理知的なものを垣間見せ、あどけない笑顔と、軽い二重と少しきつめのまなざしは男どもを虜にした。
行き帰りは、数人の男どもが送り迎え。
いや、集団登校だから当然だが。
そんな生活を、俺はしらけたまなざしで見ていた。
いやその頃、同級生に興味があんまり無かったんだよ。
集団登校で、引率をしてくれている、六年生の中谷加奈子ちゃんに俺は夢中だった。
そして、一年が過ぎ、彼女は遠い所へ行ってしまった。
――そう中学校へと。
丁度、三歳違い。
そうこれから先、彼女と一緒に学校へ通うことはない。
もう少ししたら、どうせ中学生だと希望を抱いた俺だったが、その事に気がつき絶望した。
それが、どれだけ大きかったことか、わかるかね諸君。
追いつき中学へ入れば、彼女はすでに高校生。
中学校には…… 彼女はすでに、いないんだ……
――そんな絶望の中、四年生になった俺は、引率する側に回る。
一年生の手を引く。むなしい日々。
「ほら、旗を持って、大きく振りながら渡るよ。たまにおバカな大人が止まってくれないから、車は止まるのを確認してね」
俺がそう言うと、学童擁護員のおじさんが、聞こえたのか苦笑いをしている。
緑のおばさんは有名だが、おっさん達には愛称が無い。
「ふうっ。今日も無事に学校へ来られたぜ。ようし一年生。教室へ向かえ」
「だから。なんで、歩君が仕切るのよ。それは六年生の仕事でしょ」
文句を言っているのは、去年まで加奈子お姉様を補佐していた、無名な女。
いや近所に住んでいる、宮内静香。
信じられるか、宮内幸太の姉ちゃんなんだぜ。
いや、幸太は同じクラスで、今横で立っているが、少しぼーっとした奴。
弟に似ず、姉ちゃんは偉そうなんだよ。
ポーニーテールが目の前で揺れるから、つい手が伸びるが、掴むとものすごく怒られるし、四年生と六年生女子では十センチくらい身長が違うし体格も全然違う。
偉そうに、胸まであるし。
一重の少し丸い目と、少し厚めの唇がかわいいと、母さん連中には言われている。
そんな、辛く悲しい日々を送っているおれだ。
土曜日に、近くのコンビニで買い物をして、うちへ帰る途中。
お嬢様じゃない。落部涉美を見つける。
うずくまる彼女の足下には、水たまりができていた。
「何だよお漏らしかよ、近くにコンビにあったのに」
「恥ずかしくて、借りられなかったのよぉ」
意外と偉そうな返事が返ってきた。
「おしっこすると痛いし、止まらなかったの」
彼女は言い訳をする。
「それは、ボーコーエンだ」
本当は、尿道炎かも知らないが知らん。
女の子は、トイレで拭く方向を間違えたり、学校で言い出せなかったりして意外と膀胱炎が多いらしい。
「止まったのなら、家まで付いて行ってやる。お母さんとかいるのか?」
涙ぐみながら、首を振る。
「仕方ない、着替えたら、近くの先生のところへ行こう」
学校のかかりつけ医だが、土曜日は午前中やっているはず。
いったん彼女のうちへ行き、服を全部脱がせて風呂場で洗う。
なんか文句言っているが知らん。
パンツとかは、ざっと洗って、絞って洗濯機へ放り込む。
ぐずっている彼女の手を引き、病院ヘ行く。
「あら、歩君一人?」
受付のお姉さんは顔なじみだ。
「この子がさあ、おしっこするときに痛いし止まらないって。親もいなくって、ここ昼から休みだし、連れてきた」
「あーじゃあ、保険証もないわね。お嬢ちゃん保険証って知ってる?」
ぶんぶんと、首を振る。
「仕方ないわね、痛いのよね」
彼女はこっくりと頷く。
「お電話番号と、住所、それと名前は書ける?」
こっくりと頷くと書き始める。
たまにそんな話は知らんとごねられるし、十五歳以下で親の承知無しの治療もやばいらしいが、そんな事は知らなかった。
「電話、でないわね。まあいいわ、先生に聞いてくる」
意外とすぐに戻ってきて、受診する。
「歩君は外で待っていて」
そう言われて出ようとするが、きっちり手を握られて離さない。
「まあ良いか」
そう言って診察をして。
「これに、おしっこを入れてきて。おしっこ出る?」
ぶんぶんと横に首を振る。
「じゃあちょっと、待ちましょうね。出そうになったら言ってね」
三十分くらいしたら出た様だが、少し血尿だったようだ。
「膀胱炎だな、塗り薬と、抗菌剤。お父さん達はいつも何時頃帰ってくる?」
そう聞かれて、なやんでいる。
意外と、複雑な家だったようだ。
離婚届と、山のように積み上げた写真と報告書。
それを、彼女の目の前に積み上げる。
彼女は、妻であり幼馴染みだった。
彼女、旧姓落部涉美。俺は、成冨歩互いに二十五歳。
結婚三年。
彼女は、小学校の三年生のとき颯爽と現れた。
転校してきてすぐに、教室の半数を友人にした。
男ばかりだな。
俺達、男には判らなかったが、女の子に受けが悪かった。
身長もこの頃は男女の差が無くなり、今から女子の方が男を追い抜く頃。
髪を、両サイドで編み込み。花でも飾れば草原に佇むお嬢さんのような佇まい。
制服ではなく私服だった小学校。
彼女は、淡いブルーのワンピースに白いニットカーデガンを羽織り、春の妖精のようだった。
――そう悪友も、感想を述べている。
顔は幼さの中に理知的なものを垣間見せ、あどけない笑顔と、軽い二重と少しきつめのまなざしは男どもを虜にした。
行き帰りは、数人の男どもが送り迎え。
いや、集団登校だから当然だが。
そんな生活を、俺はしらけたまなざしで見ていた。
いやその頃、同級生に興味があんまり無かったんだよ。
集団登校で、引率をしてくれている、六年生の中谷加奈子ちゃんに俺は夢中だった。
そして、一年が過ぎ、彼女は遠い所へ行ってしまった。
――そう中学校へと。
丁度、三歳違い。
そうこれから先、彼女と一緒に学校へ通うことはない。
もう少ししたら、どうせ中学生だと希望を抱いた俺だったが、その事に気がつき絶望した。
それが、どれだけ大きかったことか、わかるかね諸君。
追いつき中学へ入れば、彼女はすでに高校生。
中学校には…… 彼女はすでに、いないんだ……
――そんな絶望の中、四年生になった俺は、引率する側に回る。
一年生の手を引く。むなしい日々。
「ほら、旗を持って、大きく振りながら渡るよ。たまにおバカな大人が止まってくれないから、車は止まるのを確認してね」
俺がそう言うと、学童擁護員のおじさんが、聞こえたのか苦笑いをしている。
緑のおばさんは有名だが、おっさん達には愛称が無い。
「ふうっ。今日も無事に学校へ来られたぜ。ようし一年生。教室へ向かえ」
「だから。なんで、歩君が仕切るのよ。それは六年生の仕事でしょ」
文句を言っているのは、去年まで加奈子お姉様を補佐していた、無名な女。
いや近所に住んでいる、宮内静香。
信じられるか、宮内幸太の姉ちゃんなんだぜ。
いや、幸太は同じクラスで、今横で立っているが、少しぼーっとした奴。
弟に似ず、姉ちゃんは偉そうなんだよ。
ポーニーテールが目の前で揺れるから、つい手が伸びるが、掴むとものすごく怒られるし、四年生と六年生女子では十センチくらい身長が違うし体格も全然違う。
偉そうに、胸まであるし。
一重の少し丸い目と、少し厚めの唇がかわいいと、母さん連中には言われている。
そんな、辛く悲しい日々を送っているおれだ。
土曜日に、近くのコンビニで買い物をして、うちへ帰る途中。
お嬢様じゃない。落部涉美を見つける。
うずくまる彼女の足下には、水たまりができていた。
「何だよお漏らしかよ、近くにコンビにあったのに」
「恥ずかしくて、借りられなかったのよぉ」
意外と偉そうな返事が返ってきた。
「おしっこすると痛いし、止まらなかったの」
彼女は言い訳をする。
「それは、ボーコーエンだ」
本当は、尿道炎かも知らないが知らん。
女の子は、トイレで拭く方向を間違えたり、学校で言い出せなかったりして意外と膀胱炎が多いらしい。
「止まったのなら、家まで付いて行ってやる。お母さんとかいるのか?」
涙ぐみながら、首を振る。
「仕方ない、着替えたら、近くの先生のところへ行こう」
学校のかかりつけ医だが、土曜日は午前中やっているはず。
いったん彼女のうちへ行き、服を全部脱がせて風呂場で洗う。
なんか文句言っているが知らん。
パンツとかは、ざっと洗って、絞って洗濯機へ放り込む。
ぐずっている彼女の手を引き、病院ヘ行く。
「あら、歩君一人?」
受付のお姉さんは顔なじみだ。
「この子がさあ、おしっこするときに痛いし止まらないって。親もいなくって、ここ昼から休みだし、連れてきた」
「あーじゃあ、保険証もないわね。お嬢ちゃん保険証って知ってる?」
ぶんぶんと、首を振る。
「仕方ないわね、痛いのよね」
彼女はこっくりと頷く。
「お電話番号と、住所、それと名前は書ける?」
こっくりと頷くと書き始める。
たまにそんな話は知らんとごねられるし、十五歳以下で親の承知無しの治療もやばいらしいが、そんな事は知らなかった。
「電話、でないわね。まあいいわ、先生に聞いてくる」
意外とすぐに戻ってきて、受診する。
「歩君は外で待っていて」
そう言われて出ようとするが、きっちり手を握られて離さない。
「まあ良いか」
そう言って診察をして。
「これに、おしっこを入れてきて。おしっこ出る?」
ぶんぶんと横に首を振る。
「じゃあちょっと、待ちましょうね。出そうになったら言ってね」
三十分くらいしたら出た様だが、少し血尿だったようだ。
「膀胱炎だな、塗り薬と、抗菌剤。お父さん達はいつも何時頃帰ってくる?」
そう聞かれて、なやんでいる。
意外と、複雑な家だったようだ。
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