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少しどろどろ

第3話 女の子は強い

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「で、どっちが良い」
 酒臭い息を吐き、聞いてくる香菜。

「いやまあ、どちらも知りあったばかりだし、まだそんなに良く分からないだろう」
 俺は逃げの一手。

「あら、そうよね。よく知りあわないと」
 そう言って、俺に向けて倒れかかってくる、美加。
 だが、俺の肩に回る右手とは別に、左手は胸から腹、脇腹へと摩りながら下がってくる。

「ちょっと美加、酔っているでしょ。優樹君困っているじゃない」
「どうして困るの? ああ、私にも触っていいから。優樹君なら許す」
 そう言って手は止まらない。

「あーもう、美加ってば普段おとなしいのに、どうして」
「うん? よく見る。屑には興味が無いの。優樹君はびびっと来たの。私、バージンなんだ。貰って」
「「えっ」」
 その言葉に、俺と、香菜が驚く。

「あーと。ごめんなさい。初めてじゃないけど、数は少ないから貰って」
「なにを?」
「うーん。二人での初めて?」
「何だそりゃ」
「良いじゃ無い。昔は昔で好きな人が居たのよ。初めてなんて痛いだけで問題ない」
「馬鹿ね。初めてだから良いのよ。男の人って繊細だから、比べられると思うだけでストレスを感じるみたいよ」
「――比べないから。昔の事なんて忘れたから」
 二人とも、顔を真っ赤にして必死。

「少し頭を冷やすために、風呂へでも入る? 着替えはスウェットで良いよね」
 そう言われて、にらめっこ状態。
「二人で入ってこい。命令だ」
「「はい」」
 渋々と、浴室へ移動する二人。

「スウェットはこれ、ナイロンタオルは中に吊ってある。バスタオルと。こんな物かな?」
 そう言っている間に、美加はさっさと脱ぎ始める。

「うわっ。それじゃあ」

「見ても良いのに」
 そんな声が、背後から聞こえる。

 なんだか、やいのやいの言う声が聞こえる。

 ぼーっと飲みながら、考える。
 杏奈のことは、思っていないわけではないが、犯罪に手を染めているなら忠告をしてやめさせないというけない気がする。俺達が止めなけりゃ誰が止めてくれる。
 明日にでも、崇に言って居場所を探そう。

 そうして考え込んでいると、頭を持って引っ張られる。
 強制的に背もたれまで、もたれかかり、滴る雫と共に顔が逆さまになって降りてくる。
 そう背もたれ越しに美加にキスされる。
 上半身は裸。肩にバスタオル。
 もう少し首をひねってみると、下は穿いていた。
「上も着ないと風邪を引くぞ」
「ちょっと髪が乾いてからね。普段もそんな感じだから」
 そう言って、美加はまた左側に座る。

 一口二口と酒を飲み。
 ふっと息をはく。

 その顔は、湯上がり以上に真っ赤になっている。
「もしかして、キスも初めてか?」
 そう聞くと、こっくりと頷く。

「本当に良いのか?」
「いいの。びびっと来たの」
「そうか」
 せっかくだ、キスしてあげよう。
 そう思い肩を抱くと、優しくキスをして舌を差し込む。
「んぅ」
 絡めつつ、少し吸ってみたり、もてあそぶ。

 ガシャッと音がして、あわてたように香菜がやって来る。
「ぬあぁ。何やってんの。美加、上の服は?」
「まだ、髪が乾いていないから」
 明らかなに赤い顔をして、そう答える。

「ナニをしたの?」
「素敵なキスいただいちゃった。香菜帰って良いわよ」
「こんな時間から、帰れるわけないでしょう。それにまだお試しで、よく知りあってもいないし」
 そう言って、こちらへ飛び込んでくる。

 むろんキスをするために。

 あーまあ良いけどね。
「ぷはっ。イーブンよ」
 ふふっという感じで笑顔を見せると、右側に座りおもむろに上を脱ぐ。
 ついでに下も。

 何だこのカオス。ちらっと、酒を飲みながら香菜を見ると、美加も脱ぎ始める。
「水をこぼしちゃった」
 そう言いながら。

「あーちょっと、風呂へ入ってこよう」
 そう言って、二人の間から抜け出す。

 そして風呂から出ると、奴らは下着まで脱いでいた。
 なぜそうなった。

 何処へ入ろうかと悩む。
 反対には、テレビがあり、ソファーは片側にしかない。
 反対側に丸椅子を持ってくると、二人の裸を正面から見るという責め苦がくる。
 一番良いのは間か。

 また間に収まる。するとグラスにまた注がれる。
 黙って飲む。
 すると右側から、つまみがやって来る。
 微妙な空気。
 さわっと下半身で、刺激を感じる。

 スリスリと、しているのは、美加。
 当然反応してしまう。

 それを見た、香菜が叫ぶ。
「美加、破れたり」
 そう言って俺のを脱がすと、香菜はぱっくりといってしまう。

 まるで、処女とは違うのよという感じで、上目遣いに美加を見上げる。
 だが彼女も、負けてはいない。

 再び、キスから、俺の手を導き、自分の敏感な所へと誘導をする。

 それを見て、俺は香菜に倒される。
 香菜が先に使おうとするが、流石にまずい。
 二人を抱えて、ベッドへ移動。

 避妊はしなきゃね。

 装着後、香菜を乗せ。
 美加を愛撫。
 初めてだという事だし、念入りにいかせる。

 そして、香菜が果てたようなので、美加を乗せ動き始める。
 その間に、香菜が復活をしてきたので、マッサージ器で相手をする。

 まあそんな倒錯な時間。

 けっきょく、俺と美加は徹夜で、いったん美加の家に寄り大学へ向かう。
 香菜にはスペアを置いてきたが、一人幸せそうに寝ていた。

 そうして、日を開けず、奴らはやって来る。
 そのたびに、荷物を持ってきて、部屋が手狭になってくる。
 その後すぐに部屋を探しに回り始めたが、学生課の前に張り紙を見つけた。

 『右の者、退学に処す。植田仁志、塩村淳也、木之内杏奈』
「あっ、忘れていたが、ばれたのか?」
「やっぱりね」
 二人に手を引かれ、場を離れる俺達の後ろで、松根崇が涙をこぼしていたことに気がつかなかった。

 奴は半同棲をしていたらしく、知らなかったが、退廃的な生活の横で警察が来て捜査をしていたようだ。

 こうして、俺は幼馴染み二人と、なぜか縁が切れてしまった。
 気がついたら、崇も大学を辞めていたんだよ。

 そうして、俺達の奇妙な同棲も、半年で落ち着いた。
 香菜のお父さんに、バレて叱られたらしい。
 住んでたマンションがお父さんの名前だったのに、勝手に解約をしたから。通知が行って色々とまあ。「どっちが好きなんだ」と聞かれ、俺は、「どっちもです」とお父さんに宣言したら、香菜はドナドナされた。俺は悪くない。

「あなた。ご飯よ」
「ああ、ありがとう」
 俺と美加は結婚をして暮らし始めたが、そこへご近所さんが引っ越してきた。

 呼び鈴を押されて、外に出る。
「あらぁ、お久しぶりね。美加」
 ものすごく嬉しそうな香菜。

「お知り合いかい?」
「ええ。大学時代の友人ですわ。――とっても大事な」

 香菜の後ろには、旦那さんだろう。人なつっこい、笑顔が見えている。
 だがその前に立っている、香菜の笑顔は見えなくて幸せだっただろう。

 本当に偶然か? そう聞きたかったが我慢をする。
 少し狂気をはらんだ香菜の笑顔が、そうさせた。
「ご近所だから、これからよろしくね……」


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お読みくださり、ありがとうございます。

とうとう、幼馴染みがついでになってきましたが、地道にちょっとドロドロでしょ。
連れ帰られた、香菜はどれだけ悔しかったでしょう。

意外と良くある話だそうです。
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