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少しどろどろ

第2話 怪しい影と、乗ってしまうおバカ。

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「あんな金額で良いの?」
 人なつっこい顔で聞いてくる香菜ちゃん。

「良いんじゃ無いか? 基本食べて飲んだ量が違うし」
「そうね。優樹くんやっぱり男の人ね。何処に入るの?」
 そう言って、俺のお腹を、香菜ちゃんが摩る。

 一瞬それを見て、美加ちゃんの目が鋭くなる。
「明日はまだ学校もあるし、今度は明後日くらい? 週末だし」
 俺はすかさず、次回の予定を放り込む。

「そうねえ。明日きっちり一限目から必修があるし」
 そう言って美加ちゃんは悲しそうな顔になる。

「私、明日一限目無い」
 嬉しそうに、香菜ちゃんが言ってくれるが。
「明日は俺も、一限目があるんだよ」
「じゃあ、優樹君の部屋で飲も、確か近くでしょ」
「そりゃそうだが」
 そう言って、ちらっと、美加ちゃんを見る。

「それなら、私も参加する。コンビニとスーパーへ寄ろう。おつまみを作るから」
 そう言って、両腕を引かれはじめる。

 一度に二人じゃなくていいんだけどと、間の悪さを呪う。

 結局順番で、スーパー経由でコンビニ。
 コンビニでは、スキンケアなどが入った、お泊まりセットやその他と下着など買ったらしい。
 香菜ちゃんが説明をしてくれる。

「泊まる気なんだ」
「えっ駄目?」
「駄目じゃないけど」
 そう言うと彼女はじっと見つめて言ってくる。

「いい? 私ね。こんな感じだけど、身持ちは良いの。誰の所へでも泊まるような人間じゃないし。でも、優樹くんのところだから、良いかなって。判ってね」
「はいはい」

 必ず言われる定番台詞。
 全員言うが、元彼がいたりなんやかや。誰の所へでもは、決して此処だけではない。誰とでも寝るわけではないというのも、相手は複数形なんだよ。

「へー。完全なワンルームじゃなくて、リビングがある。こっちがベッドルーム?」
「そう。だけど人が来るなんて思ってなかったから、掃除してない」
「ちょっとおつまみ作るね、お皿とかは?」
「ああ、こっち」

 そう言って、美加ちゃんの相手をしているうちに、香菜ちゃんは捜索をしていたらしい。ベッドの下とか。

 ざっと、炒め物とレンチンでポテサラなどを作る。
「手慣れているのね」
「ああ、自炊をしているからな」
 そう言って、テーブルに皿を持ってくると、複雑そうな顔をした香菜ちゃんが居た。

「どうした?」
「この子」
 机の上に、飾っていた写真を持って来たようだ。

「ああ。俺と松根の幼馴染みだ」
 彼女達もコンパに行っていたのだから崇を知っている。

「ベッドルームの化粧品はこの子の? 付き合っているの?」
「いや付き合っていない。ベッドルームの化粧品は知らない。前に付き合っていた子のかも知らないが」
「そうなんだ」
 しまった。いつの間に化粧品など置いていたんだ? 男は疎いが、そういうトラップは多い。

「この子言いたくないけど、良くない人たちと連んでいるよ」
「何だそりゃ」
 そう言いながら、適当に座って貰うと、両側を挟む感じで座られる。

「さっきの話。なに? 幼馴染みとしては気になるな」
「ほら人文とかって、女の子が多いじゃない」
「そうだなあ」
「この子が、話を持っていって、えーと」
「植田て言うのと、塩村でしょ」
「そうそう」
 そう言って、美加ちゃんがスマホを操作する。

「この三人でしょ」
 男は知らないが、女は杏奈だ。
「学生課には報告をしているけれど、お店に紹介して、手数料を取っているらしいの」
 美加ちゃんが嫌そうな顔をして教えてくれる。

「手数料?」
「そう。紹介されたときには、いきなり借金から始まるバイト生活」
「いくつかの店と契約をしているみたいよ」
 そう言って、俺の口に、アスパラベーコンが押し込まれる。
 犯人は、香菜ちゃんだ。

「そろそろ、警察も動いているから、付き合っているなら別れた方が良いわよ」
「付き合っていないよ」
「そう? こんなのも、ベッドの下から見つけたけど」
 そう言って、七〇Dサイズのブラ。

「誰のだこれ?」
「多分あたし達と、アンダー七〇なら身長は変わらないわね。カップ数は負けたけど。それにしても化粧品といい、ブラといい。優樹君は嘘つきね。美加どうする?」
「うん? 気にしないわよ。別れてくれるなら、今居たって気にしないし」
「なっ」
 香菜ちゃんの予想が外れたようだ。

 すでに、美加ちゃんは、グラスを空け二杯目だ。
 塩もみしたキュウリを、もぐもぐと食べている。

 そして、「暑っ」とか言いながら、上に着ていた、ロングボレロのカーディガンを脱ぐ。
 汗と共に香る甘い香り。
 じとっと見る、鋭い目。

「あー。そうね。私も特に気にしないし」
 香菜ちゃんもそう言い放ち、飲み始める。


 そんな、微修羅場が繰り広げられている頃。

 とあるお店の事務所。
「ねー店長さんも、色を付けてくれるって。此処も風俗じゃないから、お客さんと話をすれば良いだけだし、少しはスキンシップはあるけれど、ファミレスより時給は良いわよ。あなたがうんと言ってくれないとみんなが困るのよ。どうやって責任を取る気なの?」
「ああ。優しく言っている間が花だぜ」
 男二人が立ち上がる。

 杏奈の前には、初心そうな女の子。
 そしてその両側で立ち上がったのは、植田仁志と塩村淳也。

 脇のソファーには、此処の店長だろうか?

 机の上には、契約書。
「さあ、さっさとはんこかサイン。みんなに迷惑をかけんなや、ごらあ。ああ゛っ」

 震えていた女の子だが、いきなり態度が変わる。
「脅迫ね。強要罪現行犯」
「ああ゛っ」
「おい、ちょっと待て」
 反射的に、植田が食ってかかろうとし、店長が違和感に気がつく。
 プッシュツートークボタンはすでに放されたが、時はすでに遅い。

 警官達が雪崩れ込んでくる。

「いつもこんな仕方をしていたのなら、余罪がありそうね。ああ私、身分秘匿捜査官だから忘れてね」
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