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不能犯?
第3話 禁忌の訳
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「あの後、普通だった。覚えていたのは俺だけ」
未だに冷たかった水の感覚や、息のできない苦しみ、そして消えていく意識。
覚えている。
あそこで俺は死に、今は夢を見ている?
でもこけると痛いし血も出る。
ガキの頃に経験したことが無い、エッチの時の感覚など想像できるわけが無い。
そう思いながら、シャーペンの先で指先を突っつく。
「痛い」
訳が分からない。
そして、夏休みに実家へ顔を出すと、二〇歳を越えたのだからと言って、お祭りに連れて行かれる。
だがお祭りと言っても、縁日の様な参道に露店が出てと言う感じではなくダム湖の脇にある、半島のような出っ張り部分に社が有り、そこで旧村人が集まり拝むだけ。
ちゃっかり、萠美も来ていた。
流石にその状態で普通にいちゃつくことはなく、バラバラに帰る。
その帰り、神乃水のお母さんがあげていた祝詞が、全く理解ができずあれは何語なのだろうかと考えていた。
初めて見た、宝玉は直径で三十センチくらいの物だが、祝詞に反応して、光っていたし不思議なことばかり。
「なあ、悠久はまだあの子と仲が良いのか?」
「ああ、たまに会っているよ」
「そうか。もう大人だし言っておこう」
家に帰るなり、この会話だ。
持ち帰った、御神酒という名に、レベルアップをした日本酒の封が切られ、いきなりグラスに注がれる。
「もう何百年も前の話になるが、村に伝わる話だ。今となっては本当かどうかも判らんが、村の伝承だ」
そう言って、話すかと思えば、台所に行って、たくあんと、魚肉ソーセージを持って来た。
「つまみだ。酒だけ飲むと体に悪い」
そんなことを言って笑う。
「お前と酒が飲めるときがくるとは。いいなあ、こういうのも」
「ああ、俺も嬉しいが、話は?」
笑っていたのが、真面目な顔に変わる。
「あれは、あの家族は、火の玉と共に現れ、村に住み始めた。そして不思議な水を村人に配り、輪の中へ入ってきた。あの時代、人の流れは意外と制限されていたらしいからな。村になじむまで、通常三代かかると言われていたそうだ」
「三代?」
「ああ。本人はよそ者、その子供で顔見知り、その孫の代で村人になれる」
「ひでえ」
「昔はそんなもんだ」
ドボドボと、酒がまた注がれる。
「そしてやって来たその親子だが、その水は魅力が強力すぎて、一部の村人が家族を襲った」
「えっ」
「襲って殺し、その水を自分の物としようとした。だが殺したが、何処にも水はなく、説明をしていた水源も見つからなかった」
「何だそりゃ、村人もひどいが、その水はどこから?」
「さあ? それはたいした問題じゃない」
「問題じゃない?」
うんうんと言って、たくあんを囓り何かを思い出す。
「数日後に、何も知らない村人。つまり計画に混ざっていなかった人が、子供が病気になり社へ行った。すると、打ち壊された社はもちろん、殺された家族も普通通りで水を貰い帰ってきた。当然焦ったのは、悪さをした連中だ。また襲いに行った。今度は帰ってこなかった」
「返り討ちか?」
「わからん。だがそんな事は、幾度もあったらしい」
「ばかだな」
「だが話は広まり、村人は恐れ始めた。それが、あの家を禁忌する元になった」
そんな話を聞いた後も、萠美とは会っていたし、変わることはなかった。
でも、学校で仲良くしていた女の子が失踪をした。
男女の中にはなっていなかったが、噂は出ていたらしい。
彼女の方が、俺を気にいって、友達とかに付き合っているとか何とか流したようだ。
実際には、彼女がいるからと言ったのが、プライドを傷つけたのかもしれない。
警察にも、事情聴取は受けたが、別におとがめもなかったし、うやむやとなる。
そんな時、萠美の家に遊びに行くと、少しあわてた感じで出てきた。
「あわててどうしたんだ?」
「うん別に? トイレに行っていたから、チャイムを聞いて焦っただけ」
「そうか、きちんと拭いたか?」
「拭いたわよ」
そんな普通の感じだが、部屋の隅に、見たことのあるバッグを見つける。
「買ったのか? 見たことがない奴だな」
「うん。アウトレットで見つけて、その時は良いと思ったんだけど、今イチだったわ」
この鞄は、彼女が持っていたものと同じ物。
まあ今の時代、同じ物が売られていたもおかしくはないが、俺といたときに付けた傷まで同じ、駐車場のフェンスから飛び出していた針金。
目だちはしないが、ひっかき傷がある。
今までの情報と、失踪。
伝承。
急に恐ろしくなった。
萠美の顔は、お母さんとそっくりなんだよ。
今の時代写真がある。
萠美を抱っこしたお母さん。その顔はうり二つだった。
「なあに、人の顔をじっくりと見て」
「いや別に」
「そこは、かわいいから、見とれていたとか言う所でしょう」
「そうか? わりい」
「いつまで経っても悠久は悠久ね」
そう言って彼女は、倒れ込んでくる。
「んふ。しよ」
そう言って。
未だに冷たかった水の感覚や、息のできない苦しみ、そして消えていく意識。
覚えている。
あそこで俺は死に、今は夢を見ている?
でもこけると痛いし血も出る。
ガキの頃に経験したことが無い、エッチの時の感覚など想像できるわけが無い。
そう思いながら、シャーペンの先で指先を突っつく。
「痛い」
訳が分からない。
そして、夏休みに実家へ顔を出すと、二〇歳を越えたのだからと言って、お祭りに連れて行かれる。
だがお祭りと言っても、縁日の様な参道に露店が出てと言う感じではなくダム湖の脇にある、半島のような出っ張り部分に社が有り、そこで旧村人が集まり拝むだけ。
ちゃっかり、萠美も来ていた。
流石にその状態で普通にいちゃつくことはなく、バラバラに帰る。
その帰り、神乃水のお母さんがあげていた祝詞が、全く理解ができずあれは何語なのだろうかと考えていた。
初めて見た、宝玉は直径で三十センチくらいの物だが、祝詞に反応して、光っていたし不思議なことばかり。
「なあ、悠久はまだあの子と仲が良いのか?」
「ああ、たまに会っているよ」
「そうか。もう大人だし言っておこう」
家に帰るなり、この会話だ。
持ち帰った、御神酒という名に、レベルアップをした日本酒の封が切られ、いきなりグラスに注がれる。
「もう何百年も前の話になるが、村に伝わる話だ。今となっては本当かどうかも判らんが、村の伝承だ」
そう言って、話すかと思えば、台所に行って、たくあんと、魚肉ソーセージを持って来た。
「つまみだ。酒だけ飲むと体に悪い」
そんなことを言って笑う。
「お前と酒が飲めるときがくるとは。いいなあ、こういうのも」
「ああ、俺も嬉しいが、話は?」
笑っていたのが、真面目な顔に変わる。
「あれは、あの家族は、火の玉と共に現れ、村に住み始めた。そして不思議な水を村人に配り、輪の中へ入ってきた。あの時代、人の流れは意外と制限されていたらしいからな。村になじむまで、通常三代かかると言われていたそうだ」
「三代?」
「ああ。本人はよそ者、その子供で顔見知り、その孫の代で村人になれる」
「ひでえ」
「昔はそんなもんだ」
ドボドボと、酒がまた注がれる。
「そしてやって来たその親子だが、その水は魅力が強力すぎて、一部の村人が家族を襲った」
「えっ」
「襲って殺し、その水を自分の物としようとした。だが殺したが、何処にも水はなく、説明をしていた水源も見つからなかった」
「何だそりゃ、村人もひどいが、その水はどこから?」
「さあ? それはたいした問題じゃない」
「問題じゃない?」
うんうんと言って、たくあんを囓り何かを思い出す。
「数日後に、何も知らない村人。つまり計画に混ざっていなかった人が、子供が病気になり社へ行った。すると、打ち壊された社はもちろん、殺された家族も普通通りで水を貰い帰ってきた。当然焦ったのは、悪さをした連中だ。また襲いに行った。今度は帰ってこなかった」
「返り討ちか?」
「わからん。だがそんな事は、幾度もあったらしい」
「ばかだな」
「だが話は広まり、村人は恐れ始めた。それが、あの家を禁忌する元になった」
そんな話を聞いた後も、萠美とは会っていたし、変わることはなかった。
でも、学校で仲良くしていた女の子が失踪をした。
男女の中にはなっていなかったが、噂は出ていたらしい。
彼女の方が、俺を気にいって、友達とかに付き合っているとか何とか流したようだ。
実際には、彼女がいるからと言ったのが、プライドを傷つけたのかもしれない。
警察にも、事情聴取は受けたが、別におとがめもなかったし、うやむやとなる。
そんな時、萠美の家に遊びに行くと、少しあわてた感じで出てきた。
「あわててどうしたんだ?」
「うん別に? トイレに行っていたから、チャイムを聞いて焦っただけ」
「そうか、きちんと拭いたか?」
「拭いたわよ」
そんな普通の感じだが、部屋の隅に、見たことのあるバッグを見つける。
「買ったのか? 見たことがない奴だな」
「うん。アウトレットで見つけて、その時は良いと思ったんだけど、今イチだったわ」
この鞄は、彼女が持っていたものと同じ物。
まあ今の時代、同じ物が売られていたもおかしくはないが、俺といたときに付けた傷まで同じ、駐車場のフェンスから飛び出していた針金。
目だちはしないが、ひっかき傷がある。
今までの情報と、失踪。
伝承。
急に恐ろしくなった。
萠美の顔は、お母さんとそっくりなんだよ。
今の時代写真がある。
萠美を抱っこしたお母さん。その顔はうり二つだった。
「なあに、人の顔をじっくりと見て」
「いや別に」
「そこは、かわいいから、見とれていたとか言う所でしょう」
「そうか? わりい」
「いつまで経っても悠久は悠久ね」
そう言って彼女は、倒れ込んでくる。
「んふ。しよ」
そう言って。
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