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不能犯?
第1話 惨めな日々
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「許してくれ。おれには、これしかなかったんだ」
俺は今、神乃水 萠美の首を絞め、橋から突き落とした。
この橋は、下の谷まで三十メートルはある。
これで俺は……
俺は、疎村 悠久。萠美のじいさんと、俺のじいさん達は村がダムに沈むため、下流の町まで出てきて、家を建てたらしい。
その頃は、新たに開かれた農地や家があり、寒村という感じだったが、市内から比較的近く、開かれた所。
デベロッパー達が放って置く訳はない。
次々と、田んぼや畑は、宅地に姿を変えていく。
俺や、萠美が生まれた頃は、まだあった田んぼや、農業用用水池も高校の頃には姿を消してしまった。
子供の頃、一度、俺は溺れた記憶がある。
だが、それを誰も覚えておらず、俺の記憶にしか、あの苦しさが残っていない。
ふと、萠美のじいさんが言っていた言葉を思い出す。
「めぐみの漢字は、今の萠美ではなく廻見だったのじゃが、かわいくないと言われてなあ」
そんな言葉が記憶に残っている。
そのじいさんも亡くなって、親の代には疎遠になったが、地区は同じ。
小学校で、同じクラスになる。
相変わらず、親たちは素っ気ないが、俺は萠美と遊び出す。
萠美のじいさんは、俺には優しかったが、どうも親たちには嫌われていたようで、疎遠になった原因でもある様だ。
だが、俺はそんな事など、知らない。
俺は一緒に遊び始めて、すぐに気がついた。
「萠美。宿題しようぜ」
そうなんだよ、萠美は賢く、俺は授業だけでは理解できなかった。
だから、放課後、萠美に教えて貰う。
「やっぱり教え方が上手いな。お前先生になったらどうだ?」
「えっでも私、はるちゃん以外と、あまりしゃべれないし」
本人が言うように、引っ込み思案でおとなしい性格。
そうして、おれが、お勉強を教えて貰っている以上、萠美が家に来ていても、親たちは文句を言わなくなった。
「あの子は、神乃水のゆかりの者だからな。ダムの底に沈んだ以上何が起こるか」
「そんなの迷信でしょ。ギャアギャア言っていた、お父さん達も亡くなったし。私たちが疎遠にするのもおかしくない?」
「それもそうか? まあ必要上には、関わらないようにしよう」
「もう。拘るのがおかしいんだって」
親たちが、俺が寝てると思ってしゃべっていた内容だが、よく分からなかった。
それ以降も、俺は中の上で成績をキープしていく。
萠美は、なぜか上の下辺りをうろうろする。
点数は、七十点前後。
俺と数点しか違わない。
これはおかしい。
「なんで。点数おかしいぞ」
そう聞くと、ビクッとして、涙目。
「言わないでくれる?」
「何を?」
聞き返すと、申し訳が無いという感じで、言い始める。
「目だつなって、お父さん達に言われているの。目だてば敵を作るんだって」
「何で? 良い点数をとれば、先生が呼ぶときに褒めてくれるじゃん」
「だから、それが駄目なの。うーんとね。家は特別だからって」
「そうなのか?」
思わず周りを見る。
同じ時代に作ったから同じような感じだし。
「よく、わかんねぇ」
寝転がって、天井を見る。
うちと同じ竿縁天井。壁はキラキラした綿壁が塗られている。
違うのは、ふすまに俺が開けた穴が無いくらい。
「一緒じゃん」
「なにが?」
「家」
そう答えると、萠美の目が悠久って馬鹿? と訴えている。
「ち、が、う。家って言うのは…… もういい。気にしないで」
そう言って、ぷいっと勉強を始めてしまった。
「はい、今日のお土産」
「うーす」
帰りに、萠美の手作り問題を貰って帰る。
家で解いて、明日持っていく。
できてなければ、また、あんた馬鹿を食らう。
アニメで見て気にいったらしく、すぐに言うんだ。
そんなこんなで、中学校でも同じ。
毎日のように通う。
「もう、また適当に解いてる」
そう言ってビシッと必須公式集、『悠久でも判るシリーズ』が出てくる。
むろん手作り。
いやあ、この頃になると、手作り参考書が、家の本棚に山積みとなっていた。
相変わらず、萠美も同じくらいの順位。
小学校より下がったのは、一度基礎を間違えているのに、応用問題をといて、先生に疑われたそうだ。
「もう。あれから目を付けられて困っているの」
彼女は、そう言って文句を言う。
「普通に、点数を取れば良いじゃ無いか」
「だーめ。それにね、段々と楽しくなちゃって」
「そんなものか?」
「うん」
日々そんな感じで、点数が同じという事は、行く高校も同じ。
俺達は、そろって進学をした。
高校へは、自転車通学。
五キロほどだし、電車代がもったいない。
それに、通学時間は痴漢が多いらしい。
通い出して、三日くらいで、彼女から要望が来る。
「へーい彼氏。一緒に自転車通学をしないかい? 健康にも良いよ」
そう言って。
理由を聞くと、痴漢だ。
「駅員を呼んだか?」
「面倒だし目だつから嫌。それより、一緒に自転車。帰りに少しくらいなら一緒に遊べるよ」
悩んだ。その頃は、ゲーセンとボーリングにはまっていた。
「よし、いいや。通うか」
そうして一週間後、彼女は目の前で撥ねられた。
「萠美ぃ」
事故は絶望的で、即死状態。
病院で、お別れをした。
俺は今、神乃水 萠美の首を絞め、橋から突き落とした。
この橋は、下の谷まで三十メートルはある。
これで俺は……
俺は、疎村 悠久。萠美のじいさんと、俺のじいさん達は村がダムに沈むため、下流の町まで出てきて、家を建てたらしい。
その頃は、新たに開かれた農地や家があり、寒村という感じだったが、市内から比較的近く、開かれた所。
デベロッパー達が放って置く訳はない。
次々と、田んぼや畑は、宅地に姿を変えていく。
俺や、萠美が生まれた頃は、まだあった田んぼや、農業用用水池も高校の頃には姿を消してしまった。
子供の頃、一度、俺は溺れた記憶がある。
だが、それを誰も覚えておらず、俺の記憶にしか、あの苦しさが残っていない。
ふと、萠美のじいさんが言っていた言葉を思い出す。
「めぐみの漢字は、今の萠美ではなく廻見だったのじゃが、かわいくないと言われてなあ」
そんな言葉が記憶に残っている。
そのじいさんも亡くなって、親の代には疎遠になったが、地区は同じ。
小学校で、同じクラスになる。
相変わらず、親たちは素っ気ないが、俺は萠美と遊び出す。
萠美のじいさんは、俺には優しかったが、どうも親たちには嫌われていたようで、疎遠になった原因でもある様だ。
だが、俺はそんな事など、知らない。
俺は一緒に遊び始めて、すぐに気がついた。
「萠美。宿題しようぜ」
そうなんだよ、萠美は賢く、俺は授業だけでは理解できなかった。
だから、放課後、萠美に教えて貰う。
「やっぱり教え方が上手いな。お前先生になったらどうだ?」
「えっでも私、はるちゃん以外と、あまりしゃべれないし」
本人が言うように、引っ込み思案でおとなしい性格。
そうして、おれが、お勉強を教えて貰っている以上、萠美が家に来ていても、親たちは文句を言わなくなった。
「あの子は、神乃水のゆかりの者だからな。ダムの底に沈んだ以上何が起こるか」
「そんなの迷信でしょ。ギャアギャア言っていた、お父さん達も亡くなったし。私たちが疎遠にするのもおかしくない?」
「それもそうか? まあ必要上には、関わらないようにしよう」
「もう。拘るのがおかしいんだって」
親たちが、俺が寝てると思ってしゃべっていた内容だが、よく分からなかった。
それ以降も、俺は中の上で成績をキープしていく。
萠美は、なぜか上の下辺りをうろうろする。
点数は、七十点前後。
俺と数点しか違わない。
これはおかしい。
「なんで。点数おかしいぞ」
そう聞くと、ビクッとして、涙目。
「言わないでくれる?」
「何を?」
聞き返すと、申し訳が無いという感じで、言い始める。
「目だつなって、お父さん達に言われているの。目だてば敵を作るんだって」
「何で? 良い点数をとれば、先生が呼ぶときに褒めてくれるじゃん」
「だから、それが駄目なの。うーんとね。家は特別だからって」
「そうなのか?」
思わず周りを見る。
同じ時代に作ったから同じような感じだし。
「よく、わかんねぇ」
寝転がって、天井を見る。
うちと同じ竿縁天井。壁はキラキラした綿壁が塗られている。
違うのは、ふすまに俺が開けた穴が無いくらい。
「一緒じゃん」
「なにが?」
「家」
そう答えると、萠美の目が悠久って馬鹿? と訴えている。
「ち、が、う。家って言うのは…… もういい。気にしないで」
そう言って、ぷいっと勉強を始めてしまった。
「はい、今日のお土産」
「うーす」
帰りに、萠美の手作り問題を貰って帰る。
家で解いて、明日持っていく。
できてなければ、また、あんた馬鹿を食らう。
アニメで見て気にいったらしく、すぐに言うんだ。
そんなこんなで、中学校でも同じ。
毎日のように通う。
「もう、また適当に解いてる」
そう言ってビシッと必須公式集、『悠久でも判るシリーズ』が出てくる。
むろん手作り。
いやあ、この頃になると、手作り参考書が、家の本棚に山積みとなっていた。
相変わらず、萠美も同じくらいの順位。
小学校より下がったのは、一度基礎を間違えているのに、応用問題をといて、先生に疑われたそうだ。
「もう。あれから目を付けられて困っているの」
彼女は、そう言って文句を言う。
「普通に、点数を取れば良いじゃ無いか」
「だーめ。それにね、段々と楽しくなちゃって」
「そんなものか?」
「うん」
日々そんな感じで、点数が同じという事は、行く高校も同じ。
俺達は、そろって進学をした。
高校へは、自転車通学。
五キロほどだし、電車代がもったいない。
それに、通学時間は痴漢が多いらしい。
通い出して、三日くらいで、彼女から要望が来る。
「へーい彼氏。一緒に自転車通学をしないかい? 健康にも良いよ」
そう言って。
理由を聞くと、痴漢だ。
「駅員を呼んだか?」
「面倒だし目だつから嫌。それより、一緒に自転車。帰りに少しくらいなら一緒に遊べるよ」
悩んだ。その頃は、ゲーセンとボーリングにはまっていた。
「よし、いいや。通うか」
そうして一週間後、彼女は目の前で撥ねられた。
「萠美ぃ」
事故は絶望的で、即死状態。
病院で、お別れをした。
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