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秘密は、希望か絶望か
第1話 人生で、二回目の関わり
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「さあ、隠さずに見せろよ。パカッと一気に」
「えっでも……」
こいつは、静海。
お父さんの趣味で、名前が決まったようだ。
なぎと読ますと決めていたようだが、届けのときに、つい、しずみと書いたらしい。
中学校の時に、他の校区からやって来て、話が合い。付き合ったことがある。
まあ、所詮は中学校の付き合い、軽く興味のあったキスを数回した程度。お互いに友人の重なりもなく、付き合いはフェードアウト。
幼馴染みと言えばそうだが、人生としては、つぎはぎだらけの重なり。
大学も方向が違う。
多分何もなければ、そのまま、違う人生を歩んでいただろう。
ところがだ、人生は誰かがサイコロでも振っているのか、重なるときには重なる。
工業系の大学を出て、中堅の会社で技術開発室へ就職。
そう、女っ気はない。
たまに、デザイン部と強制の飲み会が伝統的にあるが、それも昨今無くなっていた。
「えーと、此方が弊社の技術開発部になります。ここでしたら、ワンオフのカスタムオーダーも受けることができると思います」
そんな案内を聞いて、頭の中は、はぁ?? っとなる。
そう、現場にいた全員が。
「そうなんですね。何処にお願いをして良いのか、本当に困っていたんです」
そう言って、顔を上げたのが、静海だった。
随分育って化粧もしていたが、俺には分かった。
いぶかしげな瞳。だが向こうも、分かったようだ。
「あのう、すみません」
そう言って、その女子が俺を見かけて近寄ってくる。
むろん静海ではなく、うちの制服を着た方の子。
「うちの課長が、開発部に投げろと。此方の課長さんには弱みがあるから、断れないはずだと」
いきなり脅しから入った話は、ひそひそと続く。
此方はドキドキだ。
「あの方、大学の地域連携室とか言う所の方で、研究室の方から上がってきた機械作製案をその受けてくれる所を探しているらしくて」
「案? そこから?」
「ええ。そうなんです」
「大学なら、工作室とか工学部なら在って、管理している共同実験室の人とかいるよね」
そう言うと、困った顔をする。
「そうなんですか? 私、経済なので知りません」
ぷいっと言う感じで、素っ気なく言われる。
「あっそう。で、大学の先生。その夢に、一から付き合えと、一体幾らで?」
「共同プロジェクトにしたいようで。つまり材料とかも持ち出しです」
「人間もだよな。給料出るの?」
「たぶん。良いものができたら、ボーナスとか?」
すごく、うさんくさい。
そんな最悪な話を、持ってきたのが静海。
なんだか大学の方は、地域連携つまり地域貢献の一環で、学術の地方還元というのが流行。いや、しないといけないらしい。
文科省から予算は削られ、地方創生とか、地域教育とかまあ色々と、ご命令が来て、大変らしい。
大規模な概算要求は通らず、人員も削減、また削減で係長の下が全員派遣という所もあるようだ。
「それって機密情報とか、大丈夫なのか?」
「流石にその辺りは、線引きをしてるわよ」
結局、何か弱みを持っている課長は、断るなんて事は出来ず。
命令され、部内で、まだあまり役に立たない俺が担当になった。
あくまでも、まだ、だからな。
「君、彼女と知り合いなんだろ?」
どっからか、個人情報が漏れた?
「知り合いっていえば、そうですけれど、元同中で元カノです」
「じゃあ、間違いも起きないだろう。よろしく」
どういう理屈か、そう言って投げられた。
元カノだったら、再び何かあっても訴えてこないとか? 最近ハラスメント怖いからなぁ。
それでまあ、相手の教授先生に会わされ、崇高なるコンセプトと夢を語られる。
イノベーションと実社会への融合。とか?
「まあ君、スタッフも紹介するから飲みにでも行こうか。君何処の出身だ? ああ彼か知っているよ。そうかそうか」
大学の先生も、知り合いだそうだ。
呼ばれそうになったから、丁重にお断りする。
実は俺高校のときから、独学でUSB機器を色々と作っていた。
そのおかげで、同じゼミの中で頭一つ出ていて、ゼミ生の世話をさせられた。
あの教授が来ると面倒な状態しか浮かばない。
きっと、割り込んでくる。
「あの、彼女は?」
飲み会の誘い。当然来るかと思ったら。
「あとは、よろしくお願いしますね。あっ、淵戸さん連絡先。アプリですが」
そう言って、スマホのバーコードを見せてくる。
目で訴える。
自分だけ逃げやがって、どういう了見だ? ああっ?
この人苦手なの。話は長いし、得意分野をしゃべり始めると延々と講義が続くの。
――何故か、彼女の気持ちが、理解できた。
そそくさと部屋を出て行く、静海。
深見静海。同じ学年だから二四歳。いや早生まれだったから、二三歳か。
見た感じは、中学校のまま、少し大きくなった。
身長は少し伸びた様で、一五八センチくらいかな?
胸よりお尻がちょっと大きい。
仕事の関係か、化粧は薄めで、髪の毛は肩程度の長さで軽く色を抜き、くびレイヤー。くびレイヤーというのは、毛先は外ハネのワンカールで、レイヤーを入れた表面は内巻きのワンカールというヘアスタイル。
このスタイルよく見る。最近多いのかな?
だが、そう。
流行の髪型で、頑張っているのだが、美人ではない。
普通? と言えば良いのだろうか。
まあ、俺も人のことは言えないが、一七五センチまで伸びた身長。
ぶら下がり健康器は無敵だった。
筋トレ用のホームベンチで、高校時代。充実した帰宅部を満喫した。
理想の細マッチョのために、努力をしたんだよ。
伴己、足を長くしたいなら、筋肉を付けちゃなんねい。
脳内再生される、おやっさんの声。
ここは泪橋の下にある小屋。
某漫画に感銘を受けた結果だ。
いや、ボクサーにはならないよ。
日課の運動が終われば、PCをいじり、ハンダで基盤に抵抗やらなんやらをくっ付けていく。
端子付きユニバーサル基板に回路を組んで、ラ○パイを接続。
ラ○パイは、名刺サイズ位。超小型のパソコン基板。
あの頃は、フルセットで五千円くらいだった。
専用のLinuxで動作する。
趣味と実益を兼ねた楽しみ。
まあ、そのおかげで、工学部だけどね。
「えっでも……」
こいつは、静海。
お父さんの趣味で、名前が決まったようだ。
なぎと読ますと決めていたようだが、届けのときに、つい、しずみと書いたらしい。
中学校の時に、他の校区からやって来て、話が合い。付き合ったことがある。
まあ、所詮は中学校の付き合い、軽く興味のあったキスを数回した程度。お互いに友人の重なりもなく、付き合いはフェードアウト。
幼馴染みと言えばそうだが、人生としては、つぎはぎだらけの重なり。
大学も方向が違う。
多分何もなければ、そのまま、違う人生を歩んでいただろう。
ところがだ、人生は誰かがサイコロでも振っているのか、重なるときには重なる。
工業系の大学を出て、中堅の会社で技術開発室へ就職。
そう、女っ気はない。
たまに、デザイン部と強制の飲み会が伝統的にあるが、それも昨今無くなっていた。
「えーと、此方が弊社の技術開発部になります。ここでしたら、ワンオフのカスタムオーダーも受けることができると思います」
そんな案内を聞いて、頭の中は、はぁ?? っとなる。
そう、現場にいた全員が。
「そうなんですね。何処にお願いをして良いのか、本当に困っていたんです」
そう言って、顔を上げたのが、静海だった。
随分育って化粧もしていたが、俺には分かった。
いぶかしげな瞳。だが向こうも、分かったようだ。
「あのう、すみません」
そう言って、その女子が俺を見かけて近寄ってくる。
むろん静海ではなく、うちの制服を着た方の子。
「うちの課長が、開発部に投げろと。此方の課長さんには弱みがあるから、断れないはずだと」
いきなり脅しから入った話は、ひそひそと続く。
此方はドキドキだ。
「あの方、大学の地域連携室とか言う所の方で、研究室の方から上がってきた機械作製案をその受けてくれる所を探しているらしくて」
「案? そこから?」
「ええ。そうなんです」
「大学なら、工作室とか工学部なら在って、管理している共同実験室の人とかいるよね」
そう言うと、困った顔をする。
「そうなんですか? 私、経済なので知りません」
ぷいっと言う感じで、素っ気なく言われる。
「あっそう。で、大学の先生。その夢に、一から付き合えと、一体幾らで?」
「共同プロジェクトにしたいようで。つまり材料とかも持ち出しです」
「人間もだよな。給料出るの?」
「たぶん。良いものができたら、ボーナスとか?」
すごく、うさんくさい。
そんな最悪な話を、持ってきたのが静海。
なんだか大学の方は、地域連携つまり地域貢献の一環で、学術の地方還元というのが流行。いや、しないといけないらしい。
文科省から予算は削られ、地方創生とか、地域教育とかまあ色々と、ご命令が来て、大変らしい。
大規模な概算要求は通らず、人員も削減、また削減で係長の下が全員派遣という所もあるようだ。
「それって機密情報とか、大丈夫なのか?」
「流石にその辺りは、線引きをしてるわよ」
結局、何か弱みを持っている課長は、断るなんて事は出来ず。
命令され、部内で、まだあまり役に立たない俺が担当になった。
あくまでも、まだ、だからな。
「君、彼女と知り合いなんだろ?」
どっからか、個人情報が漏れた?
「知り合いっていえば、そうですけれど、元同中で元カノです」
「じゃあ、間違いも起きないだろう。よろしく」
どういう理屈か、そう言って投げられた。
元カノだったら、再び何かあっても訴えてこないとか? 最近ハラスメント怖いからなぁ。
それでまあ、相手の教授先生に会わされ、崇高なるコンセプトと夢を語られる。
イノベーションと実社会への融合。とか?
「まあ君、スタッフも紹介するから飲みにでも行こうか。君何処の出身だ? ああ彼か知っているよ。そうかそうか」
大学の先生も、知り合いだそうだ。
呼ばれそうになったから、丁重にお断りする。
実は俺高校のときから、独学でUSB機器を色々と作っていた。
そのおかげで、同じゼミの中で頭一つ出ていて、ゼミ生の世話をさせられた。
あの教授が来ると面倒な状態しか浮かばない。
きっと、割り込んでくる。
「あの、彼女は?」
飲み会の誘い。当然来るかと思ったら。
「あとは、よろしくお願いしますね。あっ、淵戸さん連絡先。アプリですが」
そう言って、スマホのバーコードを見せてくる。
目で訴える。
自分だけ逃げやがって、どういう了見だ? ああっ?
この人苦手なの。話は長いし、得意分野をしゃべり始めると延々と講義が続くの。
――何故か、彼女の気持ちが、理解できた。
そそくさと部屋を出て行く、静海。
深見静海。同じ学年だから二四歳。いや早生まれだったから、二三歳か。
見た感じは、中学校のまま、少し大きくなった。
身長は少し伸びた様で、一五八センチくらいかな?
胸よりお尻がちょっと大きい。
仕事の関係か、化粧は薄めで、髪の毛は肩程度の長さで軽く色を抜き、くびレイヤー。くびレイヤーというのは、毛先は外ハネのワンカールで、レイヤーを入れた表面は内巻きのワンカールというヘアスタイル。
このスタイルよく見る。最近多いのかな?
だが、そう。
流行の髪型で、頑張っているのだが、美人ではない。
普通? と言えば良いのだろうか。
まあ、俺も人のことは言えないが、一七五センチまで伸びた身長。
ぶら下がり健康器は無敵だった。
筋トレ用のホームベンチで、高校時代。充実した帰宅部を満喫した。
理想の細マッチョのために、努力をしたんだよ。
伴己、足を長くしたいなら、筋肉を付けちゃなんねい。
脳内再生される、おやっさんの声。
ここは泪橋の下にある小屋。
某漫画に感銘を受けた結果だ。
いや、ボクサーにはならないよ。
日課の運動が終われば、PCをいじり、ハンダで基盤に抵抗やらなんやらをくっ付けていく。
端子付きユニバーサル基板に回路を組んで、ラ○パイを接続。
ラ○パイは、名刺サイズ位。超小型のパソコン基板。
あの頃は、フルセットで五千円くらいだった。
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