幼馴染みが、知り合いになった夜 短編集

久遠 れんり

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思いを言葉にできたら

第4話 思いを言葉にできたら

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「さて、なんとなく悔しいが、君達は復縁をするのかい?」

 ズバッと聞かれて、固まってしまう。
「いままで、幼馴染みの彼しか見ていなかったの。わかんない」
 そう言うと、彼は微笑む。

「まあ、スパッと切り替えられるほど、浅い関係ではないのは分かった。まだ高校生なのにだ……」
 そう言って、睨まれる。

「良いじゃ無い、別に。ずっとそばに居たんだもの」
「そうなんだ。妹がいるけれどそんな気にはならんな」
 かれは、少し笑いながら言ってくる。

「バカじゃない。兄妹なんて駄目よ」
「そうだね。――そこでだ。おれと…… いや僕と付き合わないかい。むろんいきなりは無理だろうが、お互いを知って行くには、時間をかければ良い。俺はね、仕事もそうだけど妥協はしないし、思いを伝えず腐るのもいやなんだ。――ただまあ、人の彼女を盗るほど腐っても居ないから、黙っていたがね」

 面と向かっての告白。

「――今でも君は、彼の彼女なのか? 昔、直接聞いたときには、彼はただの幼馴染みとか腐れ縁だと言っていたが。君を見るのにそうは思えなかったから、口にはしなかった。だけどまあ、彼の…… 悪いが愚行としか思えないが、和泉 真美いずみ まみと言う彼女を選んだ。そして彼らは、毎日のようにラブホだったり彼女の家へと行っている」
 開いた口が塞がらない。
 忙しいだろうに、調べたの?

「それって調べたの?」
「まあ調べはしたが、切っ掛けは、彼女が友達にきちんと落としたと言って、金銭を受け取っていたからな。その現場を見てだな。それからも、彼女は彼と付き合っているようだから、切っ掛けはそれでも、真面目に付き合うのかな? ただ問題として、彼女は長くて半年くらいで別れるそうだが」
 そう言ってスマホの文章。結構長文を見せてくれる。
 スクロールをして、最後に要約というか、まとめがあった。

 過去の男達からの証言。要約。
 基本浮気性で、さらに質が悪いことに、自分が浮気をするものだから、相手も信じていなくて、拘束が強い。
 スマホにおいて、すぐに返事を返さないと鬼電がやって来る。
 自分が出ないときは、しょうがないじゃんで済ます。
 この時は大体浮気中。

 大多数から、最悪な女。と返事がありました。

「彼に教えれば、喜んでくれるかもね」
「だめよ。自分が信じているときは、何を言っても信じないの。自分で痛い目に遭わないと」
「じゃあ君はそれを待って、泣き付いてきたところをいい子いい子して、腐れ縁を続けるのかい?」
 そう言われて、睨んでしまった。

「腐れ縁なんて言わないでよ」
「俺が言ったわけじゃ無い。言ったのは彼だ」
「結構性格悪い?」
「どうだろう、時と場合によるね。―― 拘れば、不幸になるのが分かっていて一歩を踏み出せない子の背中を押すときには多少針でも出した方が踏み出しやすいと思わないか?」
 グラスを少し口から放すと、上目遣いに此方を見ながら言ってくる。

「うん。とどまると、痛そうね」
 真っ直ぐな目に引き込まれそう。

「だろっ。では改めて、俺の名前は井上 貴之いのうえ たかゆき、芸名は綾野 貴あやの たかし。――高校へ入ったときに君を見かけて、同じクラスになって喜んで…… だが、その相手が別の男を見ている事に気がつき、落ち込んで。――ここまで、思いを伝えられずに過ごしてきた。この思いを、ずっと言葉にできたらと思ってきたんだ。小野寺 詩織おのでら しおりさん好きです。付き合ってまらえませんか?」

 真面目な目。
 真っ直ぐで真面目な目で見られたとき、私の心臓はすでに一六ビートいいえ違うわ。
 きっと三二ビートを刻んでいた。
 彼の言った、『この思いを、ずっと言葉にできたらと、思ってきたんだ』その言葉は私にも突き刺さった。

 もっと早く。
 彼に言っていたら、――いえきっと、それでも変わらない。もっと早く司に振られただけでしょう。

「まだ名前も知ったばかりだから、お友達からではどう?」
 そう言うと彼は、ほっとした表情を見せた。

「ああ、それで十分」
「――ただ私、司と…… 経験があるの。ごめんね」
 そう言ったらこいつ、なんと言ったか。

「ああ。大丈夫。君と付き合えない間に八つ当たりのように幾人かと付き合ったから。当然経験も、二〇人だか行きずり含めると三〇人くらい?あるし。きちんと検査はしているから病気はない。テクについては修行もしたから、比べてくれて良いよ」
 安心をしたのかペラペラと。一人と多数は違うでしょ。なに三〇って?

「やっぱり、友達だけで終わらそうかしら?」
「ちょマジでやめて」

 彼の人気は、衰えを知らず。
 おかげで入籍はできないけれど、幸せな結婚生活? はできた。
 三〇歳を機に発表をして、入籍をした。
 それでも意外と、仕事はあるようだ。

 司は一度、泣きながら顔を見せたらしいが、丁度貴之が来ていて、私は意識が飛んでいて知らなかった。

 そうなのよ。貴之ってば、彼女を決めたと言ったとき界隈がザワついたらしい。
 本気で私への腹いせで、伝説を作っていた。
 どうも、三〇人というのも、過少申告のようだった。

 でもまあ、わたし幸せよ。


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 たまには、普通の恋愛話を書いてみました。
 普通でしょ?
 え?
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