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気がついたときには、大抵遅い
自由は見えないもの
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大昔聴いた曲で、自由な場所に居るときは、自由は見えない。そんな感じのことを歌っていた。
本当にその通りだと思う。
目の前で頭を下げているのは、幼馴染みで、あー今はまだ妻か。
「相手はどう言っているんだ?」
「彼に悪いから、子供はあなたが引き取って」
意外と、あっけらかんと彼女は答える。
「分かった」
そう答えて、両脇に立つ子供達の頭をなでる。
「じゃあ」
そう言って、書類を残して彼女は出ていった。
「ずっと家にいるのも退屈だろう。仕事をして良いよ」
「それもそうね」
久津手 溜矢。今の彼氏。
お金があり、比較的時間が取れる仕事のよう。
ただ呼び出されて、よく飲みに行く。
幼馴染みの彼と出来ちゃった結婚をして、すぐに子育てに追われた数年。
私は落ち着いた頃。仕事に復帰をしたが、研究職のあの人は子育ての手伝いに取れる時間はなかった。
子供が寝付いた後、数時間だけ飲みに出た。ほんの少し。
テレビの音だけが響く家はいやだった。
たまたま入った、賑やかな居酒屋で彼らのグループはいた。
夢のような馬鹿話をして、嬉しそうに笑っている。
やがて声をかけられた。
「へー子供が二人も。見えないなぁ」
「結婚が早かったから、まだ三〇にもなっていないのよ」
ちょっと混ざって馬鹿話をしたら、連絡先も伝えず別れるつもりだった。
だけど、気がつけば見知らぬ部屋。
周りは、乱交状態。
「あっ起きた? 寝ちゃうなんてひどいな」
私は、自分のバッグがあることだけを確認し、安心をした。
すべて、控えられていたとも知らず。
「まあ飲んで」
「いえ、もう帰るから」
回らない頭で、そう答える。
「まだ抜けていないからだよ、もう少ししようぜ」
少しレスになっていたこともあったが、本当にその時はすごかった。
薬を使われていたことも知らず。
相手によって、感じ方が違うことも初めて知った。
それから、幾度となく呼び出されたときに、会いに行くようになった。
夫には適当なことを言ったが、子供の頃からの付き合い。
あっという間にばれた。
私は、自由を求めて、家を出てしまった。
この時には、まだやり直せたのに。
彼への負い目は、ずっと続くだろうけれど。
すべてを知っている彼なら、話せば許してもらえた。
きっと。
久津手は彼女だと言ってくれるが、私の目の前で他の女も相手にする。
仕事を始め。正気になる時間が増えるにつれ、異常だった自分を理解する。
ある日、警察が踏み込んできて、逮捕された。
そして、薬物と病気。私は汚されていた。
事情聴取と、治療。
騙されていたのだと、理解をする。
複数の女達。
薬で縛り、仕事をさせ金を巻き上げる。
通帳やカードを自身が持っていても、ネットバンクで紐付けされて、中身は残っていなかった。
ただ、彼の部屋に集まり楽しくはしゃぐ。
連れだと言った男達も、見ず知らずの者達。
つまり、一晩幾らで集めて金を取っていた。
プロの子ではなく、寂しい女達を食い物にする。
そんな話を、婦人警察官から聞かされる。
居場所を求めて、ただ寂しくて。
私のことを考えて、頑張ってくれていた、彼の手を振りきって求めたのは、虚構の空間。
「いまは、子供さん達に手も掛かるし、お金も大変だったでしょうけれど。もう少しすれば良くなったかもね」
少し年上の警察官はそう言う。
「本当に?」
「家はそうだった。としか、言えないわ」
「徐々に、お給料は上がっても、物価は上がるし大変よねえ」
処遇と再犯率の低さは酌量されたが、罪は罪。
結局要望は聞いてもらえて、お父さんの田舎の方へ移送され保護観察。
家族も、彼の家の横にあった家を引き払い、引っ越すことになった。
少しのさみしさと不自由。
それから逃げ出し、最悪な結果をたぐり寄せてしまった。
彼は子育てのため、出世の枠から外れた部署で、仕事をして頑張っているようだと、お母さんネットワークで聞いたらしい。
「自由な場所に居るときは、自由は見えないのね」
大人はすべての行動に、責任がついてくる。
自分のしたことには、責任を取らなければならない。
自身の手によって。
------------------------------------------------------------------
この前久々に聞いて、やはり良い歌だと思い引用させていただきましたが、著作物的にはどうなのでしょうか?
歌手名やタイトルはそのまま使って良いようですが、歌詞についてはそのまま引用は駄目のようですので、残念ながら変更しています。
阿呆鳥というグループで、もう四〇年も前でしょうか?
菊池章夫さんが今でも今でも活動をされていてCDもHPで販売されているようです。
本当にその通りだと思う。
目の前で頭を下げているのは、幼馴染みで、あー今はまだ妻か。
「相手はどう言っているんだ?」
「彼に悪いから、子供はあなたが引き取って」
意外と、あっけらかんと彼女は答える。
「分かった」
そう答えて、両脇に立つ子供達の頭をなでる。
「じゃあ」
そう言って、書類を残して彼女は出ていった。
「ずっと家にいるのも退屈だろう。仕事をして良いよ」
「それもそうね」
久津手 溜矢。今の彼氏。
お金があり、比較的時間が取れる仕事のよう。
ただ呼び出されて、よく飲みに行く。
幼馴染みの彼と出来ちゃった結婚をして、すぐに子育てに追われた数年。
私は落ち着いた頃。仕事に復帰をしたが、研究職のあの人は子育ての手伝いに取れる時間はなかった。
子供が寝付いた後、数時間だけ飲みに出た。ほんの少し。
テレビの音だけが響く家はいやだった。
たまたま入った、賑やかな居酒屋で彼らのグループはいた。
夢のような馬鹿話をして、嬉しそうに笑っている。
やがて声をかけられた。
「へー子供が二人も。見えないなぁ」
「結婚が早かったから、まだ三〇にもなっていないのよ」
ちょっと混ざって馬鹿話をしたら、連絡先も伝えず別れるつもりだった。
だけど、気がつけば見知らぬ部屋。
周りは、乱交状態。
「あっ起きた? 寝ちゃうなんてひどいな」
私は、自分のバッグがあることだけを確認し、安心をした。
すべて、控えられていたとも知らず。
「まあ飲んで」
「いえ、もう帰るから」
回らない頭で、そう答える。
「まだ抜けていないからだよ、もう少ししようぜ」
少しレスになっていたこともあったが、本当にその時はすごかった。
薬を使われていたことも知らず。
相手によって、感じ方が違うことも初めて知った。
それから、幾度となく呼び出されたときに、会いに行くようになった。
夫には適当なことを言ったが、子供の頃からの付き合い。
あっという間にばれた。
私は、自由を求めて、家を出てしまった。
この時には、まだやり直せたのに。
彼への負い目は、ずっと続くだろうけれど。
すべてを知っている彼なら、話せば許してもらえた。
きっと。
久津手は彼女だと言ってくれるが、私の目の前で他の女も相手にする。
仕事を始め。正気になる時間が増えるにつれ、異常だった自分を理解する。
ある日、警察が踏み込んできて、逮捕された。
そして、薬物と病気。私は汚されていた。
事情聴取と、治療。
騙されていたのだと、理解をする。
複数の女達。
薬で縛り、仕事をさせ金を巻き上げる。
通帳やカードを自身が持っていても、ネットバンクで紐付けされて、中身は残っていなかった。
ただ、彼の部屋に集まり楽しくはしゃぐ。
連れだと言った男達も、見ず知らずの者達。
つまり、一晩幾らで集めて金を取っていた。
プロの子ではなく、寂しい女達を食い物にする。
そんな話を、婦人警察官から聞かされる。
居場所を求めて、ただ寂しくて。
私のことを考えて、頑張ってくれていた、彼の手を振りきって求めたのは、虚構の空間。
「いまは、子供さん達に手も掛かるし、お金も大変だったでしょうけれど。もう少しすれば良くなったかもね」
少し年上の警察官はそう言う。
「本当に?」
「家はそうだった。としか、言えないわ」
「徐々に、お給料は上がっても、物価は上がるし大変よねえ」
処遇と再犯率の低さは酌量されたが、罪は罪。
結局要望は聞いてもらえて、お父さんの田舎の方へ移送され保護観察。
家族も、彼の家の横にあった家を引き払い、引っ越すことになった。
少しのさみしさと不自由。
それから逃げ出し、最悪な結果をたぐり寄せてしまった。
彼は子育てのため、出世の枠から外れた部署で、仕事をして頑張っているようだと、お母さんネットワークで聞いたらしい。
「自由な場所に居るときは、自由は見えないのね」
大人はすべての行動に、責任がついてくる。
自分のしたことには、責任を取らなければならない。
自身の手によって。
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この前久々に聞いて、やはり良い歌だと思い引用させていただきましたが、著作物的にはどうなのでしょうか?
歌手名やタイトルはそのまま使って良いようですが、歌詞についてはそのまま引用は駄目のようですので、残念ながら変更しています。
阿呆鳥というグループで、もう四〇年も前でしょうか?
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