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苦しさとの狭間(美貴と悠)
第2話 美樹の事情と悠との別れ
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意外と別れるのは辛い。
実際は、二年生の時には別れようと思っていた。
でも付き合いが長く、踏ん切りが付かなかった。
彼には良いところが、沢山ある。
あると思っている。
友達に言わせると、同じ歳の男子はガキだから駄目。
はっきりそう断言していた。
でも彼は、小学校に入ってから、ずっと側に居た。
だから。うん。だからなのよね。
もう家族に近い。
だから。踏ん切りが付かない。
でも、きっとこのままでは駄目になると思う。
だから告げよう。
「そうか」
「ごめんね。楽しかったけれど。それだけじゃ、ちょっとね」
卒業にかこつけて、踏ん切りを付け、言ってしまう。
彼がもう少し私のことを見てくれれば、きっと違った結末になれたのかも。
いえ。きっと駄目よね。
彼はどんどんおかしくなっていった。
きっとこれが正解。さようなら、悠。
小学校に入って、お父さんとお母さんは別れて暮らしていた。
だけど、まだ完全に離婚はしておらず、別居状態。
離婚したのは、小学校五年くらい。
お父さんと、お母さんはどんな話をして、別れたのか知らないけれど、お父さんはすでに別の人と暮らしていたみたい。そして家の生活状態は悪くなった。
そして、お金のこともあり、精神的に追い詰められたお母さんは、異性にすがりついてしまった。
お母さんは、その頃かなり辛かったのだろう。
「あんただって、疲れたり辛かったりしたら、お母さんて言って頼るでしょ。お母さんだって、誰かに頼りたいときがあるのよぉ」
その時、お母さんは酒に酔っていた。でも、その時小学校五年生。そのお母さんの本音は私には辛かった。
そして、その人は家に出入りを始めた。
友達に相談する。
「男の人って危ないわよ。裸にされて、エッチなことをされたりするの」
「えっちな事ってどんなこと?」
「よく分からないけれど、嫌なことさせられるって」
よく分からないけれど、私は怖くなり、二人きりにならないように悠にお願いをする。
「ねえ悠、学校終わったら一緒に勉強をしよう。お母さんが帰ってくるまで、お願い」
その時私は、子どもで無知で、友達の言葉を鵜呑みにした。
でも、私はその頃に流行っていたおもちゃが、どうしても欲しくて、でも、お母さんには言えない。生活をするのに毎月困った様子を見ていた。
そして、私は馬鹿なことをする。
お風呂から出たあの人に、裸になって迫る。
「どうしても、お金が欲しいんです」
おじさんは、困った感じで私を見つめ、そして言ってくれる。
少しも、嫌らしい感じなど無かった。
「お母さんには、内緒だよ。それにこんな事はもうしないで。大事にして、本当に好きになった人とすることだ」
そう言って、お金を貰ってしまった。
でも結局、そのお金で、欲しかったおもちゃを買うことはなかった。
あんなに欲しかったのに、ひどくちっぽけな自分の欲望。
きっとこういうのが、子どもという事なのだろう。
人が持っていても、興味すら無くなってしまった。
不思議。
そして、あの人はお母さんに相談したのだろう。
私を叱らないでと言っている声が聞こえていたが、お母さんは、私を叱りつけて暴力を振るってしまう。
その後、お母さんは、私がそんな事をしてしまう。そんな境遇を与えたことに、かなり落ち込んだ。
その後、体調を崩したお母さんを見ると、私は、自身の愚かさを後悔した。
それ以降、積み重なった疲労と精神的な物のせいだろう、お母さんは寝込むことが多くなった。
でも、その事は学校でも、事情は共有され先生達は、優しくなった。
私は、自分のできる範囲で家のことをするようにした。
そうして、お母さんの苦労を自分の実体験として理解する。
高校に行くため、勉強して補助金や、NPOの好意に甘えて、必要な物はそろえることができた。高価な制服は、ある人が娘がすぐ大きくなって実質一年も使わなかったと寄付してくれた。人の好意がありがたい。
よく言う、人は生きているだけで、人に迷惑を掛けるという言葉が、実感できる。この状態にならなければ、きっと気がつくことはなかっただろう。
お母さんの、体調が悪いので、あの人は来てくれる。
あの一件から、少しぎこちなくなってしまったが、それでもお母さんは彼のことを頼っている。表情がお母さんから、女に変わる。
この年になって初めて気がついた。
お母さんに悪い事をしてしまった。
そして、その気持ちを知りたくなり、私は一歩大人に近付こうとする。
悠を誘って、一線を越える。
やり方はもう知っている。でも、うまくできず失敗。
二回目でできたが、その必死さを見て、思わず言ってしまった。『あわてすぎ。お猿さんみたい』言わなくて良い言葉。後で落ち込んでしまう。
初めて同士だったせいか、かなり痛かった。
皆の言うように、良くなるのかしら?
悠と居るのは楽しいが、隙あらば求めてくるため、お母さんの介護があるためと言って逃げてしまう。まだ痛いのよ。それに、自分が終わると素っ気なくなるし。
結局ちょっとした買い物と、勉強。それを中心として付き合いを進める。
まだ高校生だしね。まだ、お母さん達のように相手に頼りたいとか、ずっと一緒にいたいとかそういう気持ちが分からない。
私は本当に悠が好きなのかしら? そんな疑問まで浮かんでしまう。
でも、他の人となんて、そんなことは思いつかない。
でも、あるときから、違うという事を思い出す。
悠は私といても、私を見ていない。
日数を重ねると、それがはっきりと分かってくる。
そして、耐えられなくなった。
丁度卒業、悠は大学に行く。
私はお母さんのこともあるし、働こう。
あの人は出してくれると言ったけれど、目的もなく大学に通うのは違うと思った。
そして悠に告げる。
別れの言葉。
これからどうなって、どんな出会いがあるのかは分からない。
でも、心を痛めながら一緒にいるのは違うと思う。
きっと自然な私を、受け入れてくれる人に巡り会うだろう。
-----------------------------------------------------------------------------
なんだか忙しくて、心がささくれている。
忙しいと、逃げるように文章を書いている自分に笑いが出ます。
実際は、二年生の時には別れようと思っていた。
でも付き合いが長く、踏ん切りが付かなかった。
彼には良いところが、沢山ある。
あると思っている。
友達に言わせると、同じ歳の男子はガキだから駄目。
はっきりそう断言していた。
でも彼は、小学校に入ってから、ずっと側に居た。
だから。うん。だからなのよね。
もう家族に近い。
だから。踏ん切りが付かない。
でも、きっとこのままでは駄目になると思う。
だから告げよう。
「そうか」
「ごめんね。楽しかったけれど。それだけじゃ、ちょっとね」
卒業にかこつけて、踏ん切りを付け、言ってしまう。
彼がもう少し私のことを見てくれれば、きっと違った結末になれたのかも。
いえ。きっと駄目よね。
彼はどんどんおかしくなっていった。
きっとこれが正解。さようなら、悠。
小学校に入って、お父さんとお母さんは別れて暮らしていた。
だけど、まだ完全に離婚はしておらず、別居状態。
離婚したのは、小学校五年くらい。
お父さんと、お母さんはどんな話をして、別れたのか知らないけれど、お父さんはすでに別の人と暮らしていたみたい。そして家の生活状態は悪くなった。
そして、お金のこともあり、精神的に追い詰められたお母さんは、異性にすがりついてしまった。
お母さんは、その頃かなり辛かったのだろう。
「あんただって、疲れたり辛かったりしたら、お母さんて言って頼るでしょ。お母さんだって、誰かに頼りたいときがあるのよぉ」
その時、お母さんは酒に酔っていた。でも、その時小学校五年生。そのお母さんの本音は私には辛かった。
そして、その人は家に出入りを始めた。
友達に相談する。
「男の人って危ないわよ。裸にされて、エッチなことをされたりするの」
「えっちな事ってどんなこと?」
「よく分からないけれど、嫌なことさせられるって」
よく分からないけれど、私は怖くなり、二人きりにならないように悠にお願いをする。
「ねえ悠、学校終わったら一緒に勉強をしよう。お母さんが帰ってくるまで、お願い」
その時私は、子どもで無知で、友達の言葉を鵜呑みにした。
でも、私はその頃に流行っていたおもちゃが、どうしても欲しくて、でも、お母さんには言えない。生活をするのに毎月困った様子を見ていた。
そして、私は馬鹿なことをする。
お風呂から出たあの人に、裸になって迫る。
「どうしても、お金が欲しいんです」
おじさんは、困った感じで私を見つめ、そして言ってくれる。
少しも、嫌らしい感じなど無かった。
「お母さんには、内緒だよ。それにこんな事はもうしないで。大事にして、本当に好きになった人とすることだ」
そう言って、お金を貰ってしまった。
でも結局、そのお金で、欲しかったおもちゃを買うことはなかった。
あんなに欲しかったのに、ひどくちっぽけな自分の欲望。
きっとこういうのが、子どもという事なのだろう。
人が持っていても、興味すら無くなってしまった。
不思議。
そして、あの人はお母さんに相談したのだろう。
私を叱らないでと言っている声が聞こえていたが、お母さんは、私を叱りつけて暴力を振るってしまう。
その後、お母さんは、私がそんな事をしてしまう。そんな境遇を与えたことに、かなり落ち込んだ。
その後、体調を崩したお母さんを見ると、私は、自身の愚かさを後悔した。
それ以降、積み重なった疲労と精神的な物のせいだろう、お母さんは寝込むことが多くなった。
でも、その事は学校でも、事情は共有され先生達は、優しくなった。
私は、自分のできる範囲で家のことをするようにした。
そうして、お母さんの苦労を自分の実体験として理解する。
高校に行くため、勉強して補助金や、NPOの好意に甘えて、必要な物はそろえることができた。高価な制服は、ある人が娘がすぐ大きくなって実質一年も使わなかったと寄付してくれた。人の好意がありがたい。
よく言う、人は生きているだけで、人に迷惑を掛けるという言葉が、実感できる。この状態にならなければ、きっと気がつくことはなかっただろう。
お母さんの、体調が悪いので、あの人は来てくれる。
あの一件から、少しぎこちなくなってしまったが、それでもお母さんは彼のことを頼っている。表情がお母さんから、女に変わる。
この年になって初めて気がついた。
お母さんに悪い事をしてしまった。
そして、その気持ちを知りたくなり、私は一歩大人に近付こうとする。
悠を誘って、一線を越える。
やり方はもう知っている。でも、うまくできず失敗。
二回目でできたが、その必死さを見て、思わず言ってしまった。『あわてすぎ。お猿さんみたい』言わなくて良い言葉。後で落ち込んでしまう。
初めて同士だったせいか、かなり痛かった。
皆の言うように、良くなるのかしら?
悠と居るのは楽しいが、隙あらば求めてくるため、お母さんの介護があるためと言って逃げてしまう。まだ痛いのよ。それに、自分が終わると素っ気なくなるし。
結局ちょっとした買い物と、勉強。それを中心として付き合いを進める。
まだ高校生だしね。まだ、お母さん達のように相手に頼りたいとか、ずっと一緒にいたいとかそういう気持ちが分からない。
私は本当に悠が好きなのかしら? そんな疑問まで浮かんでしまう。
でも、他の人となんて、そんなことは思いつかない。
でも、あるときから、違うという事を思い出す。
悠は私といても、私を見ていない。
日数を重ねると、それがはっきりと分かってくる。
そして、耐えられなくなった。
丁度卒業、悠は大学に行く。
私はお母さんのこともあるし、働こう。
あの人は出してくれると言ったけれど、目的もなく大学に通うのは違うと思った。
そして悠に告げる。
別れの言葉。
これからどうなって、どんな出会いがあるのかは分からない。
でも、心を痛めながら一緒にいるのは違うと思う。
きっと自然な私を、受け入れてくれる人に巡り会うだろう。
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なんだか忙しくて、心がささくれている。
忙しいと、逃げるように文章を書いている自分に笑いが出ます。
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