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卵が先か鶏が先か(結心(ゆな)と七海)

第3話 親子は似ている

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 結心は以外と、深く考えず行動する。
 それは、完全に遺伝だと思う。

 この家の中を見ると分かるが、テレビショッピングの製品が非常に多い。
 何かを見て、今だけと言われるとすぐ飛びつく。
 そのため、買ってから、一切使われない物がゴロゴロしている。

 大体、この周辺でウォーターサーバなど、逆に売る方じゃ無いかと言うくらい水が良い。それなのに、毎月金を払っている。本人達は、『お湯も出るし便利なんだよ』そう言って喜んでいるから良いか。

 掃除機や、マッサージ器。カラオケやパソコン。百科事典にジューサー?
 いろんな物がある。
 それに年に一度しか使わない、ビニールハウスも作ったとか喧嘩をしていたし。
 必要のないものを買うのは、夫婦とも一緒だし。
 よく言えば、お人好しで穏やか。
 その実。細かいことを考える事が面倒。

 そんな親から生まれた、結心は全く同じ。
 危なくて、目が離せない。
 基本、お人好しなんだよな。

 まあそんなことを考えながら、興味に負け。むぎゅっと胸を揉む。
「ひゃい」
「ひゃいってなに。痛かった?」
「驚いただけ。どう? 気持ちいい?」
「うーん。まあ」
「えっ。今イチなの?」
 そう。大きくなってきても、まだ未発達。お母さん達のような柔らかさは無い。
 無言でついむぎゅむぎゅと揉んでしまう。非常にシュールな空間。

 だが俺よりも、結心の方が感じたらしい。
 赤い顔と、ちょっと荒い呼吸。
 押し倒されて、顔が近付き、キスが降ってくる。
 身動きも取れないし、ぎゅっと抱きしめる。

 やがて、口が離れ聞いてくる。
「ねえ。七海ちゃん。私のこと好き?」
「あーうん。まあね」
「良かった。私も七海ちゃん好き」
 まあ、そう言っても、この時はまだお互い小さかったし、ラブよりはライクの意味合いが強く。他の子よりもちょっと上レベル。
 ただそれを、言葉として交わすことで、二人の関係は少し深くなった。

 いやまあ、それ以降事あるごとに私に触れて、ここがいいのと言うのが増えた。
 この頃は、女のこの方が精神的にも身体的にも成熟が早いし、集まればそんな話ばかりしていたようだ。

 そしてその年頃から、お祭りの時のぞきに行く奴らが一定数いることを知る。
 周囲も、そうやってみんな大きくなるんだと、変な理解を示していたし。
 妙な田舎の伝統?

 そうして、子ども達は順調に大きくなって、いちゃつく奴らが増えると、みんながやっていると妙な競い合いが発生してくる。
 中学三年生くらいからは、高校受験の微妙な空気の中、夏前になると彼氏彼女がクラスの中で増えてくる。

 奇しくも、来たときに決めた、男女ペアがここに来て威力を発揮してくる。
 ここまで読んでいたなら、小学校の先生恐るべし。
 人のことは言えないけどね。

 当然、俺たちも一年の時から始まったふれあいも、俺の成長に合わせ進んだ。
「もう。早く行かないと次の人が来るよ」
「歩くのが遅いのは、おまえの方だろう」
「それは、七海ちゃんが、いじるからでしょ」
「そりゃごめん。やめようか」
「いじわる」

 灯籠がならぶ、良い雰囲気の中。
 きっとみんな、盛り上がっているのだろう。
 この頃になると、女の子は浴衣が増える。
 髪をあげた首筋が、淡い光の中で色っぽく見える。

「意外とみんな同じだな。あれ見ろよ」
 先に出たペアが、見える位置で、まだもたついている。

「あれ、きっと佳代ちゃん達だ」
 そう言ったと思ったら、結心の顔が近付いてくる。
「あのねえ。佳代ちゃんが言ってたけど、健太くんが最近。通販で変なおもちゃを買うんだって。きっと今使っているんだよ。ほら、歩き方が変だしふらついてる」
 そう言われれば、男の方につかまり。よろよろとしながら歩いている。

 ついそうなのかと、にまにましてしまう。
「おまえも欲しいなら、買ってあげようか?」
「えっ。ホントに?」
 その反応にびっくりだよ。
「本当だよ。今度探そう」
 そんなことを言いながら、前のカップルを見ながら昇って行く。
 当然途中で、女の子がへたり込み、追い抜くことになったが。

 軽く涙を浮かべ、真っ赤になった佳代ちゃんが、凄く色っぽかった。
 いつもと違うその姿に、目を引かれ、ちょっとドキドキしちゃったよ。

 当然、妙な能力が発揮されて、結心にお尻をつねられる。
「なんだよ痛いな」
「うー。やだ。他の子見ないで」
 そう言って、手を繋ぎ。足早に神社へと向かう。


 まあそんな楽しい生活も、急に人が増えた田舎では、密かに変化が起こっていた。
 高校の二年の時。
 幾軒か突然人が消えた。
 そう、その中に、結心の家も入っている。

 地上げというか、詐欺同然に土地を巻き上げられ、何故か逆に借金を背負わされて夜逃げをしたらしい。
 村の中で、土地の売買が話しに上がっていたが、田んぼでは儲けにならない。
 開発をして、その利権。つまり不労所得を得ましょうなんて言う話があり。
 お調子者の家が乗ったようだ。

 当然。そんな開発はされず。
 複数軒の家が、開発用に借金をした金を持って、業者は消えたらしい。
 残るのは、開発企業名に変更された土地と、巨大な借金の保証人。
 誰にも、何も言わず。その数軒の家は姿を消した。
 当然、家地(やぢ)部分は自分名義だが、価値は低く。なんの補填にもならず取られた様だ。

 僕はそれを知って、将来力になれるかもと、法学部を目指すことにした。
 イチゴのシャーペンと、怪しいおもちゃを握りしめ決意した。

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 お盆が近くなって、子どもの頃のお祭りをふと思い出して書きました。
 そういえば、子どもの頃は灯籠に水墨画で幽霊画を描いたなと。
 何を書いても、何故か前衛的な絵になったなと懐かしい思い出です。
 
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