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卵が先か鶏が先か(結心(ゆな)と七海)

第1話 結心は、理解できない

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 幼馴染みの結心(ゆな)は、家のある新興住宅地から少し下った所に住んでいた。
 元々は、住人が減っていたが、持続可能な開発目標(SDGs)を期に工場と、火力発電所が出来た。
 その従業員として、赴任してきた人間が新興住宅地の住人。
 学校も当初、複式学級で二学年とか、三学年で一クラスだったようだ。
 そんな感じで、地域全体がのんびりした雰囲気で、三年生までは体育の着替えも三年生までは同じ教室。
 水泳は、川だったらしい。

 上流に、新興住宅地がで来たので、近くの中学校に借りに行くようになった。

 でだ、複式学級の時は、先生が一人一人について理解できるまで教えてくれたらしく困っていなかったが、人数が増えクラスが分かれると普通の授業になった。
 そのおかげで、幾人かはパニックを起こしたらしい。
 その中の一人が、結心。

 彼女は、理解できれば、きちんと出来る。
 でも、訳の分からないところで、引っかかったりする。
 先生達も、急な変化で困ったのだろう。
「仲良くなる為には、お友達になりましょう」
 そう言って、元々の住人側と新興住人でペアを作り、勉強とか行事を助け合う。そんな決まりを作った。

 新興側は、普通の学校からの転入で、来たときは何故か習った所ばかりやっていた授業。誰かが親に言ったらしく、親からも心配の声が上がっていた。
「誰だよチクったのは。楽だったのに」
 そんな声が上がる。
 おれ、瀬戸内七海は、小学校の三年生の夏に転入してきた。
 もう少しで、夏休み。そんな微妙な時期。

 工場の工期の問題だとか、学校の受け入れの準備がとか言っていたが、よく分からない。
 
 でだ、ペアだが、何故か組める人間は男女でとか言うことで、基本男女ペアとなった。これも大人の事情と囁かれたがよく分からない。

 それで、結心とペアになる。

 学校の帰りに結心の家に寄り、その日の授業で習ったところを、復習してついでに予習まで。教えている間に、西瓜を貰ったりトウモロコシを貰ったり意外と楽しかった。

 夏の間には、祭りもあったり、神社の祭事で旧暦の七夕に奉納灯籠というのがあって、住民が薄い紙に絵を描き、それを貼った灯籠が明かりとして参道に設置される行事があった。
 小学生達の描く絵は、当然漫画やアニメの絵も多いが、高学年以上になってくると、幽霊画が結構多くて、肝試し的雰囲気もある。

 祭りの晩に、一度学校に集まり、ペアで神社にお参りをしてくる。
 だけなのだが、そんなおもしろいこと、単純なお参りで終わるはずもない。
 特に地元民は、子供会から青年部へと自治会の流れがある様で、かなり閉鎖的な集落だった名残で、七夕だし告白タイムがくっ付いていたようだ。

 小さな子達から始まり、参加者はどんどん年上になってくる。すると盛り上がると、隠れていたす奴らも居る。
 ある程度、集落では周知だし、祭りなので集会所では御神酒が振る舞われていたりする。まあよっぱらいが灯籠のならぶ夜道。絵には本格的な幽霊絵。
 まあまあ。あちらこちらで。


 そんなことは、当然小学校三年生には教えてもらえないし、知らないし。
 夕方には、俺たちは行事を終え、帰って勉強をしていた。
 今日の絵日記は全員が、灯籠のならぶ景色だっただろう。

 親たちは、連れ添って集会所へ行ったようだ。
 大人は最後に灯籠の火を消して、片付けるという仕事がある様だ。

 そういうイベント、ハプニングはやってくる。
「あっねえ。七海ちゃん」
「どうした?」
「その…… 貰ったキーホルダーが無いの」
 泣きそうになって、見せてくる。キーホルダーの先には、付いていたはずの甘いもの好きトニートニーなトナカイさんが居なくなっていた。

 プラスチックでは無くフェルトぽいもの。落ちても音はしなかったのだろう。
 これは、ペアになった時に、プレゼントをお互いに交わしたもの。
 おれは、今使っているシャーペンを貰った。付いてる消しゴムがいちごの匂いがする。結心のお気に入りだったらしく、俺もお気に入りのトナカイさんをあげた。
 大体父さんが好きで、俺にも七海なんていう名前を付けるし。幾度か海賊王になるぞ、などと言ったが、最近は呪術師になると言っている。父さんは微妙な顔だ。

「たぶん、お参りに行ったときだよね」
「うん、そうだと思う」
「もうけど、時間も遅いし、明日聞いてみるか?」
「でも、ちょっ」
「ストップ。その名前は、口に出してはいけない」
 結心は、俺に口を塞がれたまま頷く。

「探しに行くのか?」
「行く」
「見つかったら叱られるから、電気も使えないぞ」
「うっうん」

 そう言って、怖がる彼女と手を繋いで、再び山を昇って行く。
 幸い、もうみんな、お参りが終わったらしく、すれ違う人も居ない。
 灯籠のろうそくも、いくつかの所はすでに燃え尽き、周りは暗い。

 夕方昇ったときに、何カ所か、知っている子が書いた灯籠の所で止まったので、そこを中心に探していく。
 だが無論。見つかることは無い。

 そして、神社までたどり着き。俺たちは別の物を見つける。
 いやまあ、外灯の明かりが当たるか、あたらないかの社の影。
 浴衣をはだけて、うねうねしているお姉さんと、後ろから腰を振っているお兄さん。お兄さんの手は、姉さんの胸に食い込み、倒れないように支えているようだ。

 俺たち二人とも、反射的にみてはいけないものだと思ったが、つい見入ってしまう。
 やがてお兄さんが何かを言って、動きが止まると、お姉さんが振り返り、お兄さんの物を口に含む。少しゆったりした動き。そして、それも止まる。

 それも終わると、お兄さんがお姉さんの頭をなで、二人は仲よさそうに場所を離れていった。
 繋いでいた手を、ついぎゅっと握りしめて道を下り始めた。
 二人とも、今見たものを、言ってはいけないと理解した。

 結局、甘いもの好きなトナカイさんは見つからなかったが、次の日落とし物として帰ってきた。それをみた結心の顔は、複雑な顔をしていた。
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