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普通の話?(新太と栞)

新太と栞

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「中学では、別々の学校になっちゃうけど、またきっと会えるよ」
「新太。お願い、絶対高校で会おうね。連絡もしてね」
 そう言って、車の影で栞はぎゅっと抱きつき、僕にキスをした。

 そして、車はお父さんが、単身赴任中の家に向かい動き始める。

「新太くん。ちゃんと連絡をくれるかなぁ」
「なあに栞。寂しいのは今だけよ。きっと中学校に入学すれば、お友達もたくさん出来るわよ」
「そうかなあ」

 僕、処世新太(しょせいあらた)と南元栞(みなもとしおり)は同い年の幼馴染み。
 中学校入学前に、お父さんが単身で暮らしている家へと引っ越していった。
 お母さんの勘が働き、お父さんを一人にすると、良くないことが起こると突然言い出したようだ。
 でも栞に言わせると、お父さんの部屋には、お母さんがこそっと仕掛けた。うえぶなかめらで、いつでもお父さんに会えると言っていたのに。不思議なの。と言っていた。

 保育園の頃から、兄弟同然に暮らし。つい昨日まで、一緒にお風呂へ入り一緒に寝ていた。うちの両親も栞がお嫁さんなら、気を遣わなくて良いと言っていた。


 中学に入り、メッセージアプリで連絡を取っていたが、最初の頃は、寂しいとか、つまらないという単語のオンパレードだった。
 必然的に、お互い学校でこんな事があったと書いていたが、それは徐々に少なくなる。バスケットボール部へ入ったと、言っていたから。そのせいもあるのだろう。
 無論通話も無くなっていく。

 僕は、美術部。
 基礎練習のため、ひたすら、人物と静物デッサンを繰り返す。
 些細な夢だが、漫画家になり。印税で暮らしたいと、この頃は本気で考えていた。
 見識を広げるため、ひたすら、本を読み。色々情報収集。
 資料集と称した、スクラップブックや風景集を作っていた。
 そして、僕がデ○ノートと呼ぶデッサンノート。
 デマ(デッサンマテリアル)だから、文字を伏せる理由は無いが、内容は、家族や他人には見せられない。

 最近は幾人かに、声を掛けるが。
 小学校時代は、無論。栞の資料集となっている。
 まあ資料と言うだけあって、色々なアングルからの写真や表情。まあそんな物。

 最近だと、興味本位に美術室に来た子にお願いをする。
 まあ、お互いにデッサンをしあったり。結構楽しい。


 そしてその頃の、栞。
「先輩。お疲れ様です。今日はどうされます?」
「そうだな、後輩のために勉強会をしようか」
「えっ。連日。大丈夫ですか?」
「ああ良いよ」
「あの先輩。今付き合っている人とかいます?」
「いやいないよ。いれば、勉強会などせずに。デートに出かけるさ」
「そうですか。ありがとうございます」
 躊躇無く腕を組む。

「おい栞。学校で。やめてくれよ」
「勘違いされたら、私が責任取りますから」
「うん? それってどういう」
「言いません」
 こんな感じで、るんるんだった。
 わずか1月。


「新太と離れて1月。寂しかったけれど。先輩とか優しいし親切だし。それに上級生って、かなり体つきが違うのよね。確かに、新太も鍛えていたけど、あまり成長前に、筋肉を付けすぎると、背が伸びないとか言っていたし。ただ一人で寝ると。それが少し寂しいのよね」
 そう言って、ベッドで横に一緒に並んでいる。でっかい大根の抱き枕に、ぎゅっとすがりつく。これは、大根が安眠に効くと聞いて、勘違いで買ったものだが、意外と効果があったようだ。


「うーん。最近目覚めが良いな。やはり夜中に蹴られて、幾度か目が覚めるのは体調に良くなかったか」
 最近は夜寝て、朝までぐっすり。
 最近、中学入学のとき、栞がうちから通うって言うのを、それじゃ駄目だと説得したのが良かった。
 まあ栞のお母さんも、切羽詰まった感じだったし、お父さんのところ。夫婦だけで生活を始めれば、殺人事件でも起こりそうだったものな。


 それから、3年後。
「あれ、そこにいるのは、新太ちゃん」
「あっ。お久しぶりです。御無沙汰しています。最近連絡が無いのですが、栞元気ですか?」
 そう挨拶をしながら、栞のお母さんが抱っこしている赤ちゃんから、目が離れない。
「そうね。この子男の子で。実は新の一文字で、あらたって言うの」
「はっ? 何でまた。栞の弟ですよね」
「あー。あのね。あの娘。中学校のとき妊娠しちゃって」
「はっ?」

 思わず、目の前がブラックアウトし、気がつけば膝をついていた。
 まてよ、俺以外の奴と付き合って、妊娠して出来た子供にあらたって名付けた?
「何を、考えているのか。理解できませんが、僕がおかしいのでしょうか?」
 思わず、四つん這いのままで、お母さんに問いかける。

 さすがに、お母さんも困ったようで、回答に困る。
「あーうん。私もこんな事言って、良いのかだけど、我が娘ながらなんて馬鹿なことをと思ったもの。てっきり、新太君と結婚するものだと思っていたし」
「まあ。うちの親からの希望もあって、僕もそう思っていましたが。そうでしたか。ちょっとお祝いを上げるのは、精神的にも立場的にも今難しいので、『お幸せに』とだけ、伝えていただけると嬉しいです。じゃあ僕は、試験も終わったので、お先に失礼します」
 帰って行く俺を、お母さんは見つめ。やっぱり新太君の方がどう考えても、当たりだったのにとぼやく。

 この学校。家から近いのと、最近ありがたみが減ったが、特選進学クラスは費用が一切かからない。ただし進学先は、国立大学法人それの中でも旧帝国大学系と一部の私大のみ。特別カリキュラムや特別授業も受けられる。

 そして、別枠でスポーツ特待生。
 他に、全日制普通科と、定時制普通科がある。
 試験を受けているのなら、まだ終わっていないのは、普通科のみ。全日制か定時制か不明だが。

 同じ学校でも、会うことはないな。


 相手は、一つ上で、スポーツ推薦を受けた奴だそうだ。
 で、同じ学校の定時制を、受けに来ていたと、親経由で情報が来た。
 俺に、たまたまだが会ったことで、うちの親へごめんなさいと連絡が来た。

 気楽になった僕は、適当に恋愛をしながら、学校の思惑を見事に裏切り。理学部へと進んだ。医学部でも良かったのが、なんとなく。
 昔から、人を見ていたせいか、生物化学に興味が出たためだ。
 無論。絵もまだ描いている。

 そして、大学へ入学して数ヶ月。
 親から、連絡が入る。

「なんだか、こっちへ栞ちゃんから連絡が来て、旦那と別れて、子供2人抱えて帰ってきたみたいよ。あんたに会えないかって。旦那さん大学へ行って、離れていた1年で浮気してたらしくて。向こうにも、子供が出来たみたいでね。大変みたいよ。新太聞いてる?」
「聞いてるけど、やだ。今忙しいから切るよ」

「ごめんごめん。はーいニコッと笑って。はい。かわいい。目線をこんどはあっち。左の上腕で軽く胸を持ち上げる感じで、天から降ってくるものを受けるように。ハイ。そう。次お尻こっちに向けて。ハイご開帳」
「やっ。えっち」
「いやなの?」
「うー。いやじゃ無いけど、撮らないで。来て」
 今僕の前には、近くの美大生がモデル?をしてくれている。

 彼女は、知り合って、まだ1月くらいだが、素直で良い子。
 そして何より、寝相が良い。


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 うーん。一応ざまあ系かな。
 別の話を書いてる中で、思いついたパターンの一つ。
 主人公側のダメージで、大きいのはなんだという自問。その1です。

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