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おバカな二人。その顛末。(信二とみゆき)
第1話 おバカな、幼馴染み
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「ねえ。知ってる?」
「何が?」
「私は女で、あなたはお・と・こ。うふ」
また、何かのドラマに、はまりやがったな?
そう言ってにじり寄り、僕にキスをする。
ガツンと前歯が当たり、二人とも、もだえる。
「痛ぁ~い」
何か言っている奴は放っておいて、一瞬口を押さえ、血が出ていないか、離した手を見て確認する。
血は出ていないが、腫れてきた感じがする。
当然、おバカの唇も、ぷくっと腫れた。
明日には、治まっていてくれ。
確か必死で、神様にお願いした。だが奴はあっけらかんと、クラスで口外した。
「昨日チューしてみたの、でもね。甘くも酸っぱくも、たばこの味もしなかった」
そりゃね。たこなんか吸ったことないし、そもそも。おまえが、たばこの味を知っていたらびっくりだよ。
昨日のは、チューでもなけりゃ、出会い頭の事故だよ。
おバカな奴に、
「女子とチューしただと。きったねー」
とか言われるし。
騒いでいると耳に入ったのか、先生にもう少しで親を呼ばれる所だったよな。
僕は言った、
「あれは、キスとかどうこうじゃなく、ぶつかったんです。事故です」
腫れた唇を、突き出し指さす。
「そっ、そうなのね」
いや? みゆきのお父さんに、その頃何か言われた気がする。
何だっけ? ぽっかり記憶が抜けているな。
怒れたのじゃなく、悲しそうな目が?
ぼくは、如月信二(きさらぎしんじ)。
そして、このおバカな幼馴染みは、成瀬みゆき。
覚えている限り、半分失敗だが、初めてのキスは、このとき。
確か小学校4年生だったな。
こいつは、小学校の1年生の時から、僕が世話をしている。
そう。
もう一度言おう。僕が世話をしている。
いや、していた。
こいつと出会ったのは、小学校入学からわずか1週間後。
この学校では、最初の1学期は集団登校と、下校は、ペアになった4年生とかが送っていくはず。
だが、こいつは僕たちの下校する通学路で、ひたすらうろうろしていた。
曲がり角を、のぞき込み首をひねる。
この辺りは、住宅地で同じような道ばかり。
慣れれば、分かるのだが、土地勘がなければ分かりづらい。
僕は、一緒に帰っている上級生と、顔を見合わせる。
「どうしたの? 家はどこ?」
そう聞くと、結構大きめの目で僕をじっと見る。
「見たことある」
「そりゃあるだろう。おんなじクラスで、斜め後ろに座っているのだから。でっ、成瀬さんだよね。家はどこ? ペアになっている、送っていく上級生は?」
「まったけど居なかったの。それで、おうちへ帰ろうとしたのだけれど、ここどこ?」
「ここは、○○町。家はどこ?」
「家はあるけど、どこ?」
「しらんがな」
僕は、上級生と顔を見合わせる。
「僕には、君の家はわからない。うちに来て、家族の人に電話する? それとも携帯電話持っているの?」
「防犯ブザーはあるけど、携帯電話は持っていない。それに知らない人について行っちゃいけないって言われているの」
「何で、君は」
思わずがっくりとくる。
「僕は同級生。それも、すぐそばに座っている僕を、知らないんだ?」
「え~。なんでだろう?」
首をかしげると言うよりは、上半身をかしげる変な奴だった。
強引に、ランドセルを開け、名札を探す。
「あった。△△町? 学校を出て真逆じゃないか」
最近は、防犯のために名前だけで、住所なども書かない事があるが、こいつ迷子の常習犯か? 電話番号まで書いてある。
「うちへ帰っても誰もいないし、この子送っていっても良いですか?」
上級生に聞いてみる。
「家も親がいないし、1年生だけだと危ないから、私も一緒に行ってあげる」
そう言ってくれるのは、4年生の河合紬葵(かわいつむぎ)さん。
送っていくことにして。まず、学校へ戻る。
すると、なんと言うことでしょう。
首を長くして、周辺を探し回る上級生と、連れられた1年生。こいつはクラスが別だろう面識がない。
僕たちを見た、上級生が
「いた。あなた成瀬さんだよね」
そう言われて、小さく頷く。
「さっきからずっと探していたのよ」
「蒲田さん。この子迷子になっていたわよ」
ああ、河合さん。面識があるのか。
「どこで?」
「○○町の方」
そう聞くとがっくりとして、突然叱ろうとしたから、間に入る。
「彼女は、あなたを探したけれど、見当たらなかったから。一人で帰ろうとしたみたいです」
そう言うと、多少溜飲が下がったのか、
「理由は分かったけれど、勝手に帰っちゃ駄目。先生に相談して」
そう言われて、僕の後ろから出て
「はーい」
と返事をする。
その日は、結局河合さんと一緒に、彼女の家まで送っていき。帰りは少し遠回りをして帰った。
なんだか少し、楽しかった。
その時の顛末は、確かそんな感じだったと思う。
次の日、教室で会ったこいつは。
僕のことを、まるで初めて見たかのように、
「本当に斜め後ろにいた」
そう言って驚いていた。
いや良いけどね。
確かそう思ったと思う。
そして、送り迎えが無くなった2学期。
1日目から、こいつは迷子になって、二時間目。
見知らぬおっさんに連れられ、学校へ来たらしい。
先生が困り、家を知っている子と聞かれ、つい手を上げた。
その瞬間。先生の顔は明るくなり、
「如月くん。じゃあ今日から、成瀬さんを送っていって」
と言いやがった。
「○○ちゃんは確か、成瀬さんの家と近いはず」
そう言ったが、
「○○ちゃんは、クラスが違うし。担任のババア。いえ。色々と面倒になるのよ。それに成瀬さんかわいいじゃない。今から仲良くなれば、10数年後、先生に感謝することになるわよ。きっと」
確かそんなことを言われた。
思い返せば。
そう言えば、きっかけは、あいつのせいだったな。
今年の年賀状は、超大作の恨み言を送ってやる。
内容証明で、民事的な精神的苦痛について、是非弁済をして貰おう。
「何が?」
「私は女で、あなたはお・と・こ。うふ」
また、何かのドラマに、はまりやがったな?
そう言ってにじり寄り、僕にキスをする。
ガツンと前歯が当たり、二人とも、もだえる。
「痛ぁ~い」
何か言っている奴は放っておいて、一瞬口を押さえ、血が出ていないか、離した手を見て確認する。
血は出ていないが、腫れてきた感じがする。
当然、おバカの唇も、ぷくっと腫れた。
明日には、治まっていてくれ。
確か必死で、神様にお願いした。だが奴はあっけらかんと、クラスで口外した。
「昨日チューしてみたの、でもね。甘くも酸っぱくも、たばこの味もしなかった」
そりゃね。たこなんか吸ったことないし、そもそも。おまえが、たばこの味を知っていたらびっくりだよ。
昨日のは、チューでもなけりゃ、出会い頭の事故だよ。
おバカな奴に、
「女子とチューしただと。きったねー」
とか言われるし。
騒いでいると耳に入ったのか、先生にもう少しで親を呼ばれる所だったよな。
僕は言った、
「あれは、キスとかどうこうじゃなく、ぶつかったんです。事故です」
腫れた唇を、突き出し指さす。
「そっ、そうなのね」
いや? みゆきのお父さんに、その頃何か言われた気がする。
何だっけ? ぽっかり記憶が抜けているな。
怒れたのじゃなく、悲しそうな目が?
ぼくは、如月信二(きさらぎしんじ)。
そして、このおバカな幼馴染みは、成瀬みゆき。
覚えている限り、半分失敗だが、初めてのキスは、このとき。
確か小学校4年生だったな。
こいつは、小学校の1年生の時から、僕が世話をしている。
そう。
もう一度言おう。僕が世話をしている。
いや、していた。
こいつと出会ったのは、小学校入学からわずか1週間後。
この学校では、最初の1学期は集団登校と、下校は、ペアになった4年生とかが送っていくはず。
だが、こいつは僕たちの下校する通学路で、ひたすらうろうろしていた。
曲がり角を、のぞき込み首をひねる。
この辺りは、住宅地で同じような道ばかり。
慣れれば、分かるのだが、土地勘がなければ分かりづらい。
僕は、一緒に帰っている上級生と、顔を見合わせる。
「どうしたの? 家はどこ?」
そう聞くと、結構大きめの目で僕をじっと見る。
「見たことある」
「そりゃあるだろう。おんなじクラスで、斜め後ろに座っているのだから。でっ、成瀬さんだよね。家はどこ? ペアになっている、送っていく上級生は?」
「まったけど居なかったの。それで、おうちへ帰ろうとしたのだけれど、ここどこ?」
「ここは、○○町。家はどこ?」
「家はあるけど、どこ?」
「しらんがな」
僕は、上級生と顔を見合わせる。
「僕には、君の家はわからない。うちに来て、家族の人に電話する? それとも携帯電話持っているの?」
「防犯ブザーはあるけど、携帯電話は持っていない。それに知らない人について行っちゃいけないって言われているの」
「何で、君は」
思わずがっくりとくる。
「僕は同級生。それも、すぐそばに座っている僕を、知らないんだ?」
「え~。なんでだろう?」
首をかしげると言うよりは、上半身をかしげる変な奴だった。
強引に、ランドセルを開け、名札を探す。
「あった。△△町? 学校を出て真逆じゃないか」
最近は、防犯のために名前だけで、住所なども書かない事があるが、こいつ迷子の常習犯か? 電話番号まで書いてある。
「うちへ帰っても誰もいないし、この子送っていっても良いですか?」
上級生に聞いてみる。
「家も親がいないし、1年生だけだと危ないから、私も一緒に行ってあげる」
そう言ってくれるのは、4年生の河合紬葵(かわいつむぎ)さん。
送っていくことにして。まず、学校へ戻る。
すると、なんと言うことでしょう。
首を長くして、周辺を探し回る上級生と、連れられた1年生。こいつはクラスが別だろう面識がない。
僕たちを見た、上級生が
「いた。あなた成瀬さんだよね」
そう言われて、小さく頷く。
「さっきからずっと探していたのよ」
「蒲田さん。この子迷子になっていたわよ」
ああ、河合さん。面識があるのか。
「どこで?」
「○○町の方」
そう聞くとがっくりとして、突然叱ろうとしたから、間に入る。
「彼女は、あなたを探したけれど、見当たらなかったから。一人で帰ろうとしたみたいです」
そう言うと、多少溜飲が下がったのか、
「理由は分かったけれど、勝手に帰っちゃ駄目。先生に相談して」
そう言われて、僕の後ろから出て
「はーい」
と返事をする。
その日は、結局河合さんと一緒に、彼女の家まで送っていき。帰りは少し遠回りをして帰った。
なんだか少し、楽しかった。
その時の顛末は、確かそんな感じだったと思う。
次の日、教室で会ったこいつは。
僕のことを、まるで初めて見たかのように、
「本当に斜め後ろにいた」
そう言って驚いていた。
いや良いけどね。
確かそう思ったと思う。
そして、送り迎えが無くなった2学期。
1日目から、こいつは迷子になって、二時間目。
見知らぬおっさんに連れられ、学校へ来たらしい。
先生が困り、家を知っている子と聞かれ、つい手を上げた。
その瞬間。先生の顔は明るくなり、
「如月くん。じゃあ今日から、成瀬さんを送っていって」
と言いやがった。
「○○ちゃんは確か、成瀬さんの家と近いはず」
そう言ったが、
「○○ちゃんは、クラスが違うし。担任のババア。いえ。色々と面倒になるのよ。それに成瀬さんかわいいじゃない。今から仲良くなれば、10数年後、先生に感謝することになるわよ。きっと」
確かそんなことを言われた。
思い返せば。
そう言えば、きっかけは、あいつのせいだったな。
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