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第4章 政府崩壊へ

第34話 新政府

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 何事も無かったように、中根は立ち上がる。
「俺は知っていた。と言うか、頼まれて収容所に潜入したからな」
 そう言って、不適に笑みを浮かべる。

「知っていた? 収容所って、じゃあ最初から?」
 静流は驚き、中根に聞き返す。
「報告もしてある。静流に誑(たぶら)かされたことも」
「ちょっと。誑かすって何よ。そう、じゃあ、私たちおとうさま公認なのね」
 そう言って、静流が謎の踊りをしながらクルクル回り始めた。

 司令室は、そんなのんきな空気だが、それ以外では、国民も鬱積をしていたのか、至る所で集会が始まる。
『自由を取り戻せ』
 そんなシュプレヒコールが響かせながら、道を人々が流れ始める。

 目的場所は、各地の管理施設。
 レジスタンスを逮捕しようと、捜査官や軍が集まり包囲していた。
 だがその包囲の外側を、市民が包囲する。
 それも、自身が選び、持ち寄った武器を持って。

 それに気がついた兵や査官官も、手を出せばどうなるかを、理解する。
 彼らだって、家族は居る。
 此処で、数人撃ち殺し逮捕したって、どうしようもない。
 そんな事をすれば、その情報は広がり、家族は殺されるか、それどころか家族に殺される可能性もある。

 軍幹部は、家で寛いでいたとこを端末などから事態を知り、情報をくれたテレビや端末に怒鳴り散らし。部下に命令を下そうとして、立ち上がった。だが、その背中にブラスターの銃口を突きつけられる。
「おとなしくしていただこう。将軍」
「待て撃つな。逃がしてくれたら、望むものをやろう。なんだ地位か金か?」
「平和と、あなたの身柄ですかね。望みは言いました。従ってください」

 そんなことが、各地の軍上層部関係者の家で行われる。
 警備していた者達は、さっさと逃げたようだ。

 終わってみれば、あっさりと片がついた。

 翌日には、新政府発足の布告と、それを認める旧軍部。

 そして、事態が収まった後、候補者の立候補を受け付け、選挙を行うと通達される。議員の基本給与は、国民平均給与を元に算定。
 ただ、議員が発案して行った施政による効果。それを元にする歩合が加算される。
 無論、年度で評価し、働きが無ければ更新をしない、年更新の任期制。
 基本は五年まで。そこで選挙を行い、当選すればさらに五年。

 先ずはの、基本骨子はそんな所。
 そこから情報を洗っていくと、国民はなんだかんだ巧妙に加算され、所得の六割もが税金として取られていたことが判明。
 そこで、均等で不公平の無い徴税方法の模索、納税と労働を否定し明確な理由が無き者に対する罰則規定。

 その他諸々。
 取り決めすることが、どんどん増えていく。
 過去の行政記録を参考に、基本的な行政骨子を作る。

 この、新政権に賛同する職員は残し、調印後雇用継続となり業務をフォローしていく。

 そんな中、我々も無くなっていた市民証が再交付。
 再度国民として復活した。

 ところが、そこで静流達がごね出す。
「一夫一婦は嫌。双方の合意があれば、少子化対策の為、一対多の婚姻を許可しろ。でも、遺伝的な錯誤が出そうだから、多対多は不可」
 という法を、ごり押しした。

 周囲に、苦笑いされながら、法案は混ぜられる。
「完全に職権乱用だな」
「私たちの仕事は、問題提起と対案を示すこと。何も間違っちゃ居ない」
 そう言って、静流は胸を張る。

 そして、そんな姿を見つめている女性が一人。
 彼女は、中林未希(なかばやしみき)そう。俺を、レジスタンスに関わらせたい。それだけの安易な発想で、査官官に売った。
 政府転覆後、父さん達に会った。その折、未希が起こした行動、その理由を聞いた。
「中林家とは、これからも仲良くしたいし、未希ちゃんかわいいじゃないか。やったことは年相応で短慮だが、結果おまえも無事だったし」
 そんなことを言われた。

「いやいや、あの飯のまずさと、クラスターの雨の中での脱出。いま考えてもよく無事だったと思っているよ」
「それも経験だ。細かいことは良い。中林家とは話がついている。嫁に貰え。望月家当主はまだ俺だ。嫌は許さん」

 そう言われて、思わず絶句。
 後ろに控えていた、静流たちも何も言わないし。

 その後、強引に俺たちのチームに未希が編入されたが、まだ俺には近寄れないようだ。
 初っぱなに、俺に向かって飛びついてこようとして、静流たちに囲まれ、殺気を思いっきり浴びせかけられた。
 父さんには、文句は言わなかったが、静流たちは未希の教育はするようだ。
 自身が起こしたことによる、影響と予測。それが出来ないうちは、俺の嫁として不足だそうな。

 ちなみに、白川文子は俺の補佐官として、静流たちに認められている。

 来月の一日。正式に世界に向けて新政府樹立を宣言する。

 ひょんな事から、早く関わったが、そのおかげで早く事態が進んだと、親からは言われている。『ほらな、考え方によっては未希ちゃんの功績だ。認めろ』そんな馬鹿なことを親父が言ってくる。

 専用の執務室と、役職を貰い。今日も一日の仕事が始まる。
 何故か、中根もまだチームに居る。
 親父の友人から、息子をよろしくと言われて、預かっているそうだ。
「ちょっと癖が強くてな。おまえの所以外だと、騒動を起こすんだ」
 面倒を見てやってくれと、言うことらしい。

「さて仕事を始めよう」
 そう言ってみんなに、言葉をかける。
 今日も、新しい朝が始まった。
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