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第3章 レジスタンス

第25話 侵入計画

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「問題はだな。目的が、敵の本拠地。どうするよ」
「「「任せた」」」
 中根を除く全員が、中根に向けて言い放つ。

「うぉい。何だよ。その見事にそろった答えは。一瞬任せとけって、言いそうになったぞ」
 中根君お冠。

「いやだから、行って良いよ」
 俺が言う。

「さすがの俺でも、キツいな」
 中根君。腕組みまで始める。

「なんだ。普段あれだけ言っているのに、出来ないのか」
 俺がさらっと言う。

「いや。そりゃ。どうしてもと言うなら、行かないことも無いが」
 言質はとった。
「「「じゃあどうぞ」」」
 皆がそろう。

「おまえなあ。去年はあんなに、素直でかわいかったのに」
 そう言った瞬間。
 中根の顔。すぐ横を、ナイフが通り過ぎる。

「すまん。手が滑った」
 当然言ったのは、静流。

 硬質の壁。金属が入っているはずだが、ナイフは根元まで刺さっている。
 スタスタと歩き、柄を握り理解する。
 ああ、そうか。気を纏わせて投げたのか。
 静流は鼻息荒く。今も全身から、気が吹き出している。

「流生の教育係は、私なんだが。何か文句でもあるのか?」
 流れるような動きで、中根の首元にナイフの先が、チクッと刺さる。

「いだっ。刺さっている。おい。しゃれにならねえ。文句なんかありませんです」
 ふっと、ナイフと共に気配が消える。
 中根が後ろを振り向いたときには、すでに自分の椅子へ戻ってきている。
 正面に向き直り、それを見て中根がさらに驚く。

 最近になって静流も、紡の気配隠蔽を覚えたようで、本当に皆。
 気配がないんだよ。

 シャワーとか浴びているとさ、鏡に映る自分の背後に、突然手が数本映るんだ。
 びっくりするよ。

 それはさておき。
「じゃあ仕方ない。計画を練るか」
 皆が頷く。

「最初に、中根が正面から榴弾を持ち。腹にダイナマイトでも抱いて陽動のため突入。爆発はなるべく建物の奥でするように。その間にだな。この見取り図を見てくれ」

 どこから入手をしたのか、地図が出てくる。
 しかも、トラップの注釈付き。

「うん? 中根どうした?」
 おまえ、どうしてまだ居るんだという感じで、静流が中根を睨む。
「いや、さっきの陽動どうこうは、冗談だろう? 作戦を聞いているだけだが」
「これから、行うのは、作戦としても。沈着冷静に、任務を遂行しなければ駄目だ。分かるな。おまえみたいな暗くなった瞬間。下ネタを吐きながら、あまつさえ。手まで出してくるような奴に、務まると思うのか? あげく尻を触られて、声を出したらこっちが悪者だ。何が我慢した先に、真の快楽があるだ。馬鹿者め」
 さっきから、手に持ったナイフが、無茶な軌道を描いている。
 危ないな。

「おまえ数年前に俺が言った台詞。よく覚えているな」
「あの頃は、初心だったからな。必死で勉強をしていたんだ。どこまで本気でどこから冗談かも判断つかずな」
 それを、静流が言ったとき。その言葉が記憶にあることを思い出す。

「あれは、中根の教育か。つまらんな」
 俺がついそう言うと、ナイフがピタッと止まる。

 顔が青くなり、かくかくとしながら、静流がこちらを向く。
「あっいや。あれは本当だ。紡そうだよな」
 突然話を振られ、紡も驚く。
「何の話?」
「あっほら。エッチのとき、いく寸前で幾度も止められて、我慢できなくなってから最後わーっていくと良いよな」
 静流の顔が青くなったり、赤くなったりしながら、必死で説明をする。

「あーうん。そうね。寸前で取られて、置き去りにされ。目の前で見せられるのも。なかなか良いわよ。今度逆で試しましょ」
 そう言うと、静流の動きが止まる。

「いや。そこはさ。公平にせめて」
「と言うことは、不公平だと思いながら、していたと。ほー。まあ私も二番手だからと我慢もしていたけれど。流生。静流は我慢をするのが、好きなんだって。好きなことを存分に味あわせてあげましょ」

「まあそれは。考えておく。さて、いつもの下水道は使えないんだよな」
 静流が完全に固まったので、図面と注釈を読んで、紡がチェックをしていく。

「うん。完璧」
「出来たか?」
「うん。手が無い。まともにいくのは無理ね」
 図面を追いかける。

「ここから、こちらへ」
 そう言って図面上を、手でなぞる。
「穴を掘って真っ直ぐ行けば良さそうだけれど、ここを見て」
 図面に、細長い何かが書かれている。建物の4隅に刺さっている?

「何だこりゃ?」
 中根が首をひねる。
「地面の抵抗値か、音。つまり振動を拾っている」
 紡が4隅から、徐々に大きくなるように、連続的に半円形を書いていく。
「だから、穴が掘れない?」
「あらまあ」
 俺と中根がのけぞり、背もたれに倒れ込む。
 静流はうつむき、呪詛を吐いているが。

「普通ならね」
 そう言って、紡がにやっと、笑みを浮かべる。
「静流の言った、我慢大会をしましょ。黙ってひたすら濡れ濡れになるの」
「そうか、なるほど。音と抵抗ね」
「そうそう」
 俺と、紡に見られ、静流がビクッとする。
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