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第3章 レジスタンス

第21話 到着

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 必死で持ち上げた体。視線の先にはびっしりセンサーが貼ってある。
 センサーの少ない方へ、トラバースしようとするが気になり見る。
 見上げると、5m位先に、赤外による動体センサー。
「あーなるほど、経費削減か」

 くぼみは駄目。壁面に張り付き体重を支える。
 ――滑るなよ。滑ると終わる――

 中根は、低い気温の中で、盛大に汗をかき。温度センサーが大丈夫かと思いを巡らせ昇って行く。
 そして出てくる、オーバーハング。
 心が折れそうになる。
 回り込もうとするが、動体センサーが当然ある。
 ――そりゃそうだ――

 突っ張りながら、身を乗り出し。エッジにセンサーがありませんようにと、祈りながら手を掛ける。
 すると上から、ロープが下がってくる。
 目前に現れた、それ掴んで、這い上がる。
 軽やかに、登り。窪地に体を納める。

 そう。体を納めたのは窪地。ここから少し、オーバハングが連続をする。
 もういい加減。脇を流れている、水の中へ入ったら楽な気がするが、すぐに気を失い落下だろう。かなり水量はあり。相当な高さを落下してきている。

「あー。ありがとう。まいったな。助けて貰うとは」
「若い分。体力がありますから」
「ぬかせ。しかしここから、オーバハングの連続か。どのくらいあるかな?」
「意外と、短いと思いますよ。水が浮いていますから」
 望月に言われて、気がつく。確かに水が、壁から離れている。

「岩の大きいのがあっても、あんな感じにはならないでしょう」
「そうだな。じゃあそれを希望に、行ってみるか。ただ、水平部分に移るところは、危険ポイントだ。水の中から、行った方が良いかもしれんな」
「動体センサーですか」
「ああ」
「分かりました」

 そう言って、望月はヌメヌメと岩肌に張り付き。昇って行く。
「あいつは、トカゲか?」
 すると、静流や出浦も同じように昇って行く。
「なんなんだ一体?」
 いい加減、限界が近い体を奮い立たせ、岩に張り付く。
「手がかりも、足がかかりもないじゃないか」
 ぼやきながら昇って行く。

 5mも上がれば、繰り返しのオーバーハングはなくなったが、上を覗くとこのハングの上はもう横穴だ。ここから、水の側へ移動し、水に負けず中を移動した方が良いだろう。
 だが問題は、背負っている山本さん。
 さすがに、頑張って貰わないとヤバイ。
 彼女のすぐ後ろについて、踏んづけて貰いながら移動をするか。

 背中から降りて貰い、今の状況を説明する。
「踏み台?」
「ええ。2人並んで水を受けるよりは、縦になる方が水圧を受けなくてすみます」
「それはそうだけど、大丈夫かしら?」
「水の深さに寄りますが、水面からあまり出ると、センサーに引っかかります。ボンベを使っても良いのですが、なるべく残しておきたい」
「そうね。少しは頑張ってみます」
「お願いしますね」

 会話中に、皆が上がってくる。
 この上がすぐに、横穴になっていることを説明し、トラバースしてここから水に入ることを説明する。
「大変だが、その方が安全だろう。先頭は水圧がキツいが誰が行く?」
「山本さんを先頭にして、その真後ろに僕がつきますので、踏んで貰った状態で押していきます」
「まあ。先頭は水圧が強いから、気を付けろ」
「はい」
 自信なさげに、山本さんが答える。


「じゃあ、行ってみるか」
 うまいことに、段差は滝の中まで続いていた。
「じゃあ、行ってください」
 彼女が手を伸ばした瞬間に、水圧に負け。めくれて飛んでいきそうになる。
「駄目。これ」
「うーん。先に登り、水よけをを作るから。静流。彼女を押し上げてくれ」
「分かった、気を付けてね」

 エッジ部分に手を掛け、昇るが。
 これは、確かにキツい。
 気を放ち、自分の体の周りに、くさび形にシールドを張る。
 這い上がり、体を回転させ、足を上流側に向ける。
 そのままシールドを張り、水を分ける。

 左手のみを伸ばし、彼女の手を取る。
 静流が押し上げたのだろう。一気に上がってくる。
「そのまま這い上がって。ちょっと待っていて」
 ついでに、静流達も引き上げる。

 這い上がってきた、中根が目を丸くする。
「どうなっているんだ。これは?」
「気を使ったシールドです。このまま先頭を行きますので、付いてきてください」

 水の中でとどめるようにシールドを張り続け、赤外線スコープで周囲を探る。
 範囲は、5m。奥側にもう一段。

 流れの中を進み、途中で檻に触る。
 これはきっと、テンションのセンサー入りだろうな。上流側には刃が付いているし、20cm上には赤外線が走っている。
 見回すが、他にはなさそう。

 陸に上がろうと思い、ふと音響センサーを見る。
 一個付いていた。有効範囲は壁から来ているせいで楕円形。水から30cm手前まで。 
 ラッキー、水際はどう確認しても、センサーはない。

 だが手を突こうとした瞬間、いやな予感がする。
 そっと、手を戻し。立ち上がる。

 川底から、センサーまでは70cm。
 水が落ちれば鳴ってしまうため、十分体の水を切った後。馬になる。
 背中越しに、渡って貰い。はたと困る。
「自分が渡れない」
「馬鹿だろ。おまえ」
 中根が反対側から馬になってくれた。
 何とか飛び越え、事なきを得る。

 そんなことを、繰り返し、数時間後。やっと、マップ上は装置の裏へとたどり着く。
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