上 下
4 / 35
第1章 いくつかの起点

第4話 予期せぬ出来事

しおりを挟む
 さっき、材料を探しに行くとき。
 淵の浅瀬に、笹を葉っぱごと、沈めておいた。
 川へ入るときに、服を脱がないのは怪我防止のため。
 意外と尖った石があり、すっぱりと切れる。

 銛になる物は、ススキの軸に爪楊枝ぽいのを作って刺し。糸を結んである。
 これは子供のころに習ったが、うまくしないと鱗で滑る。
 慣れれば、手づかみの方が早いが、大きな穴へ手を入れるのは危険。
 ギギとか、トゲのある魚もいるし。獰猛な亀もいるしな。

 ハヤを3匹ほど捕まえ、エラから木の枝を通して浅瀬に置いておく。
 淵に向かい、岩陰をのぞき込んでいく。
 イワナやヤマメが潜んでいるし、たまにウナギもいる。

 見ると、イワナがいるので、岩を抱える様に両側から手を突っ込み。つかまえる。

 瀬の方でも鮎がいて、縄張りで向きを変える瞬間を狙い。突いてみるが刺さらない。本来、しゃくり針という3本とか4本の針で引っかけるんだよな。

 諦めて淵の方へ戻る。
 都合イワナを3匹。捕まえてもどる。
 瀬の所で、下ごしらえをして、竹を割り串を作る。
 竹は、切られていたのがあったから、ちょっと貰った。
 減点かな? ナイフじゃ切るのが大変なんだよ。


「ねえ流生。おかしいの。魚がいないのよ」
 青い唇をして、体は震え。未希が文句を言ってくる。

「早く火に当たって体を温めないと、風邪を引くぞ」
 そう言って串に刺した、ハヤを2匹と、ヤマメを1匹こそっと差し出す。

「うん」
 そう言って、自分のテントへ走っていく。

「俺も風邪引くな」
 シャツとかを脱いで、絞る。
 ズボンや靴も干しておく。

 やがて、魚が焼けてくる頃。
 少しうとうとしていた。
 もう周りは、日が落ち随分暗い。
 薪を放り込み。ふと目線をあげると、火の向こう側になぜか未希が座っている。
 バスタオルを羽織っただけで。

 努めて平静に、
「どうしたんだ? さっきのじゃ足りなかったのか?」
「んーん。まあ少ないけど大丈夫。ねえ。流生って、私のこと好き?」
 軽く首を振った後、じっと見つめ聞いてくる。
「うんまあ」
「じゃあ。何があっても信じてね」
 そう言うと立ち上がり、こちらへ来る。

「何で、膝の上?」
 それも、こっち向き。
 つい視線が、下へ下がる。
 火は、未希の背中側だけど、見えるし。

「えっち。私の体。興味あるんだ」
「まあな。随分2年前とは変わったな」
「そうよね。ここも元気」
 むぎゅっと、つかんでくる。
 思わずキスをする。
 魚の味がする。

 キスをしながら、抱きしめる。
「んっ。あっ」
 吐息がこぼれる。
「男子は知らないでしょうけど、私たち。お薬を飲んでいるから大丈夫よ」
 そう言って、耳元でささやく。

 腰をずらし、抱え込む。
 もうすっかり準備ができているのは分かっていたが、少し手でいじる。
 吐息が、激しくなってくる。

「いじ、んっわる」
「だめ。何事も準備は必要」
「んんっ」
 力が入り。脱力。

「ありゃ」
「もうっ。えっあっ。いまだめ」
 そんな言葉、聞けない。

 すこし、抵抗を感じながら、貫く。
「んんっ」
「ああ。痛かったな。ごめん」
「だいっ。じょうぶ」

 結局未希は、膝の上で、俺に抱かれながら眠ってしまった。


 俺は困ったまま、火の番をしつつ、一睡もできず夜を明かす。

「んっ」
 そう言って、未希が目を覚ます。

 バッチリと目が合い。状況を理解したのか真っ赤になる。
「あーごめん。体痛いよね」
「大丈夫」
「よっ」
 そう言って立ち上がる。明るくなった光の中で見る、未希は綺麗だった。

「明るいところで見られると、さすがに、なんだか恥ずかしいわね」
「そうか? 俺はうれしいけど」
 そう言うと、プクッと頬を膨らませ
「えっちぃ」
 そう言って、自分のテントへ歩いて行く。
 ちょっと歩き方が、ギクシャクしているのは、あれか? 初めてだったからか。

 服を着て、森の方へ入っていった。

 俺も、服を着て、使わなかったシェルターを壊し。片づける。

 帰る準備のため。
 燃え残っている薪を抜き。火を弱める。
 うん? 遅いな。

 気になり、森へ入っていく。

 すると、未希と誰かが、言い合う声が聞こえる。
 相手は、あれはレジスタンスの使う認識阻害シート。
 幾多あるカメラの目を阻害する。特殊シート。
「ちっ。離れろ。レジスタンスが、こんな所で何をしている」

 声を出した俺に気がつき、未希を突き飛ばして逃げ出す。

「この野郎」
 とっさに手を伸ばし、認識阻害シートを引っぺがす。
 中から出てきたのは、美人なお姉さん。
 一瞬動きを止めてしまった。
 いきなり顔を殴られ、認識阻害シートを持ったまま、傾斜10度の坂を転がる。
「ちぃ」
 顔を起こすと、相手は逃げ始めていた。

 あわてて起き上がり、後を追おうとしたが、逃げた奴より未希が気になる。
「大丈夫か?」
「うん大丈夫。でもどうして?」
「帰りが遅いから、気になったんだよ。それより、あいつレジスタンスだろう。どうしてこんな所に」
 俺がそう言って、手に持った認識阻害シートを見たとき、未希の表情が曇ったことに気がつかなかった。


 キャンプの片付けをして、家へ帰っているとき。端末からアラートが流れる。
『緊急避難命令。速やかに家へ帰り待機』
 あわてて、未希と走って帰る。
 ああ。認識阻害シートを取り上げたから、奴が警戒網にひっかかったのだろう。

 家に帰る途中、治安部隊がすでに警戒線を張っていた。
「端末と手のひらをここに」
 素直に従う。

「出ていた目的は?」
「単位取得の為。サバイバル訓練です」
「2人共かね?」
「そうです」
 そう言うと、表情が和らぎ
「手助けは、していないよね」
 と、聞いてきた。
「その辺りは、きっちりしました」
 そう言うと、うんうんと頷く。

「では。早く帰りなさい。警戒中だ。怪しい者は見ていないよね」
「ええ。みて……」
 そこまで言ったとき、未希が口を開く。

「彼が手引きをしたのを、見ました」
 その瞬間。捜査官の雰囲気が変わる。

「本当かね。冗談でしたは、通じないよ」
「証拠に彼は、認識阻害シートを持っています」
 それを聞き、捜査官は銃に手をかける。

「持っているなら出しなさい。まあ。本当に持っているなら、持っているだけで、有罪だがね」
 俺は片手は上げ、左手でポケットから認識阻害シートを取り出す。

 捜査官は、確認し。すぐに俺の端末は、没収された。
 連れて行かれる俺を、無表情な未希が見送る。

 その日。拘留先で一晩。
 色々考えたが、俺には理解できず。
 そして、俺の中で、何かが壊れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

怖がりの少年

火吹き石
ファンタジー
・ある村の少年組の、ささやかな日常の話

虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~

すなる
ファンタジー
追記《イラストを追加しました。主要キャラのイラストも可能であれば徐々に追加していきます》 猫を庇って死んでしまった男は、ある願いをしたことで何もない世界に転生してしまうことに。 不憫に思った神が特例で加護の力を授けた。実はそれはとてつもない力を秘めた創造神の加護だった。 何もない異世界で暮らし始めた男はその力使って第二の人生を歩み出す。 ある日、偶然にも生前助けた猫を加護の力で召喚してしまう。 人が居ない寂しさから猫に話しかけていると、その猫は加護の力で人に進化してしまった。 そんな猫との共同生活からはじまり徐々に動き出す異世界生活。 男は様々な異世界で沢山の人と出会いと加護の力ですべてを解決しながら第二の人生を謳歌していく。 そんな男の人柄に惹かれ沢山の者が集まり、いつしか男が作った街は伝説の都市と語られる存在になってく。 (

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

運命のいたずら世界へご招待~

夜空のかけら
ファンタジー
ホワイト企業で働く私、飛鳥 みどりは、異世界へご招待されそうになる。 しかし、それをさっと避けて危険回避をした。 故郷の件で、こういう不可思議事案には慣れている…はず。 絶対異世界なんていかないぞ…という私との戦い?の日々な話。 ※ 自著、他作品とクロスオーバーしている部分があります。 1話が500字前後と短いです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

日本国転生

北乃大空
SF
 女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。  或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。  ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。  その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。  ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。  その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。

処理中です...