失恋ファイブ

閑話

質問した私が馬鹿だった

◇　レッド

「心理テストです。あなたにとって鞄ってなんですか？」

　ピンクは「なんですか」と困惑している声をあげたが私が睨むと「あ、えーっと、俺はこればかり使ってますね」と傍らにあった古いリュックを持ち上げた。登山用の鞄だ。軽くタウンユースもできるデザインのそれは使い勝手がよくて気に入っているらしい（それは建前で例の二宮君からもらったものだから、だと思うけど）。その隣にいたブルーを見ると「あんま鞄使わねえな。マァ、荷物があるときだけ？　だから入りゃいい」とどうでも良さそうに答えた。なるほど、クズらしい回答である。イエローは「持ってねえ。鞄持つと荷物増えるしな」とカラカラ笑った。確かに彼が鞄を持っているところは見ない。グリーンはグリーンで「仕事用の鞄しか持っていないですね。プライベートでもそれを使っています」と微笑む。
　私は酒を飲んで天井をあおぐ。

「私はこう答えたのよ。『ずっといい鞄探してるんだけどなかなか見つからない』って……この心理テストね、鞄は恋人のことを指すんだって……」

　全員黙り込んで酒を飲み始めた。やはりここはこの世の終わりである。