さよなら、世界最強の僕たち

木村

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第二話 公式が二次創作をしないでくれと無責任にボクは思った

03

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 ボフンとその胸の間に顔を突っ込まされたボクは意外なその柔らかさといい匂いにクラクラしてしまう。

「ほら、いつもみたいに好きに触れ」
「えっ……あ、……」

 彼はボクの右手をつかむと、軍服の隙間から手を差し入れさせ、その胸筋に触れされた。むに、としている。スベスベの肌で、むにむにしている。いい匂いでむにむにしていて……なんだかドキドキする。

「お前は俺の胸が好きだな……」
「あっ、……ご、ごめんなさい、……」
「謝るな。ほら、もっと触ってくれ」
「あ、でも、ボク、……」

 彼はボクの頭を優しく撫でて、ボクの耳も撫でた。

「……触り方がわからない?」
「うん、……それに恥ずかしいよ、……」
「フ、ならいい。浮気はしていないようだな」

 彼はボクの頭から手を離すと、今度はむにとボクの頬を引っ張った。そしてニカッと歯を見せて笑う。
 そんな顔は同人誌ですらそうそう見ないというか完全に解釈違いなのだが、それはそうとしてめちゃくちゃ幸せそうな笑顔でボクの情緒は弾け飛びそうになった。

「会いたかった、シャンル」
「いや、ちが、……」
「お前が抱いていいのは俺だけだ」

 そしてボクの情緒は弾けた。

「シャガジは解釈違いなんだが!!!!!!」
「……シャガジ? 誰の話をしているんだ、さっきから?」
「ガジとシャンルの話しかしていない!! ガジは左固定でシャンルは右固定なの!!!! ボクの中では!!!!!!」
「左? 右? ……拘束されたいということか? わかった」
「はい!?」

 ガシャン、と音がした。
 え、と思ったらガジの右手とボクの左手が手錠で結ばれていた。

「これでずっと一緒だな♡」

 甘い声と甘い笑顔だ。

「ちがううううううううううううう!!!!!!」
「さ、もう鬼ごっこはいいだろ。俺の家に来い」
「推しの家は気になるけどちがうううううううううう!!!!!!」

 ボクは叫んだけど彼は聞いてくれなかった。仮面をつけてシャツのボタンを留めると、軍服で手錠を隠し、ボクとボクの荷物を引っ張ってホテルを出ていってしまった。しかもホテルの人は助けてくれなかった。後で旅ログサイトで最低評価をつけてやるとボクは泣き叫んだけれど、助けてくれなかった。
 ボクはすごい長い黒塗りの車に放り込まれ、彼の右側に固定されてしまった。恐怖でなくボクを見て、彼は微笑む。
 彼はボクの指と無理やり自分の指をからめてきた。なめらかな革手袋の下にゴツゴツと太い指があるのがわかる。大人の手をしている彼はするりとボクに顔を寄せる。

「今のままでも可愛いが、早く大人になれ、シャンル」

 近寄ってくる彼の顔を右手でガードした。

「……なんでそんなこと言うの……」
「そりゃ、さすがに今のお前じゃたt……」
「はいアウト!! 完全にアウト!!!! 一昨日来やがれ、クソジジイ!!!!!!」
「クソジジイだと? それはさすがに傷つくぞ」
「推しを傷つけたくはないが子どもに手を出す推しは完全なるアウト!!!!!!」

 ボクはペチと彼の頬を叩いた。

「これは誘拐だ!! 今すぐボクを解放しなさい!!!!」
「俺がお前を誘拐か。ゾクゾクするな」
「ちがう!!!!!! そういう反応はちがう!!!!!!」
「安心しろ、シャンル。俺が法だ」
「うわああああああああああ軍と法がベッタベタ関係にあることに触れた気がするウウウウウウウ!!!!!! 顔を近づけるなアアアア!!!!!!」

 ボクは叫んだけど、運転手もボクを無視した。筋肉ペドおじさん相手にボクができたことといえば、セカンドキッスの死守だけだった。
 ボクが彼の家に連れ込まれる頃には、ボクの喉はすっかり嗄れてしまっていたのはそういう理由だ。
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