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第二話 公式が二次創作をしないでくれと無責任にボクは思った
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彼はボクの手に頬をすりよせると、ボクに覆い被さるようにして顔を近づけてきた。近くで見ても彼は美しい。彼が綺麗で、いい匂いがするので、ボクはなんとなく、気持ちがトロンとしてきた。
「俺たちの時代では、傷は隠すか治すものだ。だが、今は傷を持つ人の方が多いから……教育を変えた。……今になって形になるのか……ハッ、いい時代になったもんだな」
なのに彼の口調は皮肉を言うようだった。ボクは少しムッとした。
「ガジとシャンルが作った世界だよ。ボク、戦争がなくて、国境がなくて、怖くないこの世界が大好き。この世界を作ってくれたガジとシャンルが大好き」
「……それが教育だ」
「洗脳みたいに言わないでよ! ボクがガジ大好きで、シャンルが好きなのは学校で教わったからじゃないよ! むしろ学校ではこんなこと教わらないよ! 大事なことは、っ……大事なことは自分の目で見てきたことだ」
大事なことは同人誌が教えてくれるんだよ、と言いそうになったが、なんとか耐える。ガジの火傷の跡を撫でて「綺麗だよ」と言うと、彼は目を細めた。疑っているようにも、信じてないようにも見える表情だ。
「ガジ、ボクが見てきた中で一番綺麗」
「……一番?」
「うん、一番だよ」
彼がボクの唇に人差し指をあてる。
「なら、一番、俺のことが好きか?」
「え?」
「ちがうのか?」
「違わないけど、でもボク、ガジとシャンルが一番好きと言うか……ンン、なんで唇ふにふにするの?」
「お前が可愛いからだよ、……『シャンル』」
彼はボクの唇をふにふにしながら微笑む。ボクが呆けていると、額や頬、鼻に彼は口づけを落とした。それからまた口にキスされそうになったので、両手で彼の顔をおさえる。
「違うよ! ボクは森下シャル!」
「……お前はシャンルだ」
彼はボクの手のひらにキスをして、ニコリと微笑む。
「あの星で死んだお前がこの星でその姿になった。そうだろう、シャンル?」
ボクが黙ると部屋はシンと静かだ。
そして彼は微笑み続ける。穏やかに見えるが、その瞳には狂喜が孕んでいる。彼は、ボクを、本気で、シャンルだと思い込んでいる。
あまりの恐怖にボクはちょっと泣いた。
「……違う違う違う! 怖い怖い怖い! 全部違う! 全部まるっ! と! 違う‼」
「ああ、問題ないさ。すべて安心して俺に任せておけ、シャンル」
「なにも安心できない! 全く会話が通じない! とても怖い! 転生物地雷なんだけど!!」
「俺はどんなお前でもやっぱり好きになるらしい。シャンル、……平和を謳歌しているところ悪いが、……また俺と地獄を歩いてくれ」
ボクは言われた言葉の意味を考える。
考えて、理解して、泣いた。
「絶対に嫌なんだが!?!?!?」
「すまないなあ」
「ミリもすまないと思っていない顔をしている!?!?!?」
「差し当たってまず、お前、……浮気はしていないよな?」
「浮気って……」
ボクはそこで、は、と気が付いた。ガジの勘違いよりも重大なことだ。
自分の腹の上にまたがっているガジを見て、ボクはごくりと唾をのむ。
「まさか、ガシャン……公式……?」
「は? ガシャン? 誰だ、それは」
「ガジ、シャンル、付キ合ッテイル……?」
「……俺はそのつもりだが、お前はそうじゃないのか」
「ガジ! シャンル! 付き合っているゥ!! ジーザス! 世界は救われた!!」
ついバンザイしたボクをみて、ガジはくすくすと笑いながら軍服のボタンを上から外していく。その重たそうな上着を脱ぐと、彼はシャツのボタンも外していく。
隠されていた首、鎖骨、胸の谷間、腹筋までさらすと、彼はボクの膝の上に移動して、ボクの頭と肩をつかんでボクを抱き起こした。
「わっ、わわ……」
「俺たちの時代では、傷は隠すか治すものだ。だが、今は傷を持つ人の方が多いから……教育を変えた。……今になって形になるのか……ハッ、いい時代になったもんだな」
なのに彼の口調は皮肉を言うようだった。ボクは少しムッとした。
「ガジとシャンルが作った世界だよ。ボク、戦争がなくて、国境がなくて、怖くないこの世界が大好き。この世界を作ってくれたガジとシャンルが大好き」
「……それが教育だ」
「洗脳みたいに言わないでよ! ボクがガジ大好きで、シャンルが好きなのは学校で教わったからじゃないよ! むしろ学校ではこんなこと教わらないよ! 大事なことは、っ……大事なことは自分の目で見てきたことだ」
大事なことは同人誌が教えてくれるんだよ、と言いそうになったが、なんとか耐える。ガジの火傷の跡を撫でて「綺麗だよ」と言うと、彼は目を細めた。疑っているようにも、信じてないようにも見える表情だ。
「ガジ、ボクが見てきた中で一番綺麗」
「……一番?」
「うん、一番だよ」
彼がボクの唇に人差し指をあてる。
「なら、一番、俺のことが好きか?」
「え?」
「ちがうのか?」
「違わないけど、でもボク、ガジとシャンルが一番好きと言うか……ンン、なんで唇ふにふにするの?」
「お前が可愛いからだよ、……『シャンル』」
彼はボクの唇をふにふにしながら微笑む。ボクが呆けていると、額や頬、鼻に彼は口づけを落とした。それからまた口にキスされそうになったので、両手で彼の顔をおさえる。
「違うよ! ボクは森下シャル!」
「……お前はシャンルだ」
彼はボクの手のひらにキスをして、ニコリと微笑む。
「あの星で死んだお前がこの星でその姿になった。そうだろう、シャンル?」
ボクが黙ると部屋はシンと静かだ。
そして彼は微笑み続ける。穏やかに見えるが、その瞳には狂喜が孕んでいる。彼は、ボクを、本気で、シャンルだと思い込んでいる。
あまりの恐怖にボクはちょっと泣いた。
「……違う違う違う! 怖い怖い怖い! 全部違う! 全部まるっ! と! 違う‼」
「ああ、問題ないさ。すべて安心して俺に任せておけ、シャンル」
「なにも安心できない! 全く会話が通じない! とても怖い! 転生物地雷なんだけど!!」
「俺はどんなお前でもやっぱり好きになるらしい。シャンル、……平和を謳歌しているところ悪いが、……また俺と地獄を歩いてくれ」
ボクは言われた言葉の意味を考える。
考えて、理解して、泣いた。
「絶対に嫌なんだが!?!?!?」
「すまないなあ」
「ミリもすまないと思っていない顔をしている!?!?!?」
「差し当たってまず、お前、……浮気はしていないよな?」
「浮気って……」
ボクはそこで、は、と気が付いた。ガジの勘違いよりも重大なことだ。
自分の腹の上にまたがっているガジを見て、ボクはごくりと唾をのむ。
「まさか、ガシャン……公式……?」
「は? ガシャン? 誰だ、それは」
「ガジ、シャンル、付キ合ッテイル……?」
「……俺はそのつもりだが、お前はそうじゃないのか」
「ガジ! シャンル! 付き合っているゥ!! ジーザス! 世界は救われた!!」
ついバンザイしたボクをみて、ガジはくすくすと笑いながら軍服のボタンを上から外していく。その重たそうな上着を脱ぐと、彼はシャツのボタンも外していく。
隠されていた首、鎖骨、胸の谷間、腹筋までさらすと、彼はボクの膝の上に移動して、ボクの頭と肩をつかんでボクを抱き起こした。
「わっ、わわ……」
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