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第二話 公式が二次創作をしないでくれと無責任にボクは思った
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「うううううう……」
「どうした? 呻いているな」
泊っているホテルに駆け込み「誰か助けてえええ」と叫んだのにフロントの人は助けてくれず、泊まっていたシングルルームに超大きい軍人さんを連れ込むことになってしまった。
そして彼は今シングルベッドに腰掛けて、備え付けのコーヒーを飲んでいる。ボクはスーツケースを盾にして、彼を睨んだ。必死のボクの威嚇に彼は穏やかに微笑む。
いつも仏頂面のガジの超貴重な微笑みは尊いけど相手が違うのでノーカンだ。ボクはシャンルに微笑むガジを同人誌越しに眺めたいのである。
「うううううう! 帰って!」
「どうした? そんなことをしても可愛いだけだぞ」
「話が通じないの怖すぎる!!」
彼はコーヒーを飲み干すと、立ち上がった。
ボクはスーツケースに隠れて頭を抱えて小さくなる。目を閉じて怯えていると、トンと背中をつつかれた。ボクは小さく丸くなってその攻撃に耐える。
「……、……こっちを向いてくれないか」
想像していたより、小さな声だった。
「お前の顔が見たいんだ……」
その台詞は同人誌で読みたい台詞であってボクに言われたい台詞じゃない! と叫びたかったけど怖かったので耐える。
「それとも傷だらけの醜い俺の顔など見たくもないか……?」
……プツンとなにか切れた。ボクは顔を上げて叫んだ。
「そんなわけあるかい!!!! ガジ様の顔は死ぬほど見たい!!!!」
「お、おう……」
「それとこれとは話が別でしょ! ボクはシャルでシャンル様じゃないからガジ様のちゅーとか完全にダメなの! ガジ様が完全に相手を間違ってる! 完璧ハンサム超イケオジ超攻め様のガジ様が間違うとか解釈違いなんだが!?!?!? ガッデム!」
ボクは床を叩いて悔しさに嘆く。
「……ああ、そうか。……そうか、……」
トン、トン、とまた背中をつつかれた。
「……平和の中では、そんな風になるのか」
トン、トン、とつつく指があがっていく。トン、トン、と背骨を通って、トン、と彼がボクのうなじをつつく。
「くすぐったいから、やめて……」
「へえ?」
グイとその手で思い切りうなじを引き上げられた。あ、と思っている間に持ち上げられて、ヒエという間もなくベッドに転がされる。げ、と思う間もなく、僕の上に彼はまたがっていた。
ボクの腹の上で世界最強が笑っている。
「すごく重い!」
「お前が細くなっただけだ。俺は変わってない」
「いやボクは生まれたときからとても平均的な体型ですけど!?!?!?」
「なあ、……見たいんだろ、俺の顔」
彼が頭の後ろに手をもっていくと、仮面の紐を解いた。コロン、とその仮面は落とされる。
「……どうだ?」
彼はボクの手をとると、その頬に導いてくれた。ゴツゴツと顔を覆う火傷の痕は、彼の戦いの歴史だ。そしてそれはボクの大好きな彼だ。
ボクは今、英雄の顔を見ている。美しくて、綺麗で、偉大な、ボクらの英雄。
「……綺麗……ガジ、とても綺麗だ……」
彼は嬉しそうに微笑んだ。
「どうした? 呻いているな」
泊っているホテルに駆け込み「誰か助けてえええ」と叫んだのにフロントの人は助けてくれず、泊まっていたシングルルームに超大きい軍人さんを連れ込むことになってしまった。
そして彼は今シングルベッドに腰掛けて、備え付けのコーヒーを飲んでいる。ボクはスーツケースを盾にして、彼を睨んだ。必死のボクの威嚇に彼は穏やかに微笑む。
いつも仏頂面のガジの超貴重な微笑みは尊いけど相手が違うのでノーカンだ。ボクはシャンルに微笑むガジを同人誌越しに眺めたいのである。
「うううううう! 帰って!」
「どうした? そんなことをしても可愛いだけだぞ」
「話が通じないの怖すぎる!!」
彼はコーヒーを飲み干すと、立ち上がった。
ボクはスーツケースに隠れて頭を抱えて小さくなる。目を閉じて怯えていると、トンと背中をつつかれた。ボクは小さく丸くなってその攻撃に耐える。
「……、……こっちを向いてくれないか」
想像していたより、小さな声だった。
「お前の顔が見たいんだ……」
その台詞は同人誌で読みたい台詞であってボクに言われたい台詞じゃない! と叫びたかったけど怖かったので耐える。
「それとも傷だらけの醜い俺の顔など見たくもないか……?」
……プツンとなにか切れた。ボクは顔を上げて叫んだ。
「そんなわけあるかい!!!! ガジ様の顔は死ぬほど見たい!!!!」
「お、おう……」
「それとこれとは話が別でしょ! ボクはシャルでシャンル様じゃないからガジ様のちゅーとか完全にダメなの! ガジ様が完全に相手を間違ってる! 完璧ハンサム超イケオジ超攻め様のガジ様が間違うとか解釈違いなんだが!?!?!? ガッデム!」
ボクは床を叩いて悔しさに嘆く。
「……ああ、そうか。……そうか、……」
トン、トン、とまた背中をつつかれた。
「……平和の中では、そんな風になるのか」
トン、トン、とつつく指があがっていく。トン、トン、と背骨を通って、トン、と彼がボクのうなじをつつく。
「くすぐったいから、やめて……」
「へえ?」
グイとその手で思い切りうなじを引き上げられた。あ、と思っている間に持ち上げられて、ヒエという間もなくベッドに転がされる。げ、と思う間もなく、僕の上に彼はまたがっていた。
ボクの腹の上で世界最強が笑っている。
「すごく重い!」
「お前が細くなっただけだ。俺は変わってない」
「いやボクは生まれたときからとても平均的な体型ですけど!?!?!?」
「なあ、……見たいんだろ、俺の顔」
彼が頭の後ろに手をもっていくと、仮面の紐を解いた。コロン、とその仮面は落とされる。
「……どうだ?」
彼はボクの手をとると、その頬に導いてくれた。ゴツゴツと顔を覆う火傷の痕は、彼の戦いの歴史だ。そしてそれはボクの大好きな彼だ。
ボクは今、英雄の顔を見ている。美しくて、綺麗で、偉大な、ボクらの英雄。
「……綺麗……ガジ、とても綺麗だ……」
彼は嬉しそうに微笑んだ。
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