2 / 13
第一話 地雷を踏むなと軍人に言う地雷のことをご配慮くださいってことですかとボクは叫んだ
01
しおりを挟む
シャンルは写真も映像も残っていないけど、世界で一番大きな石像になっている。以前は自由の女神像っていうのが建ってたけど、それが宇宙戦争で壊されたから代わりにシャンル像が建ったんだって。
シャンル像はとても大きく、とても偉大で、とても綺麗だ。彼の柔らかなウェーブの入った髪、奥目がちな顔立ち、優しそうな微笑み、そして筋肉質なわがままボディー。まさに『雄』。さすが星一つ壊すだけの、その圧倒的な格好よさ。
ボクは推しの御姿を拝み、涙を落とす。
「シャンル様、このアングルからも天使とか何事ぞ? このお姿を拝見できるのに、入場料なしisなに。無料コンテンツなのゴフい。はぁー、ぱねえ胸筋……ゴフみがすごしですぞー……ひぇーん……OMG……So hot……」
お土産屋さんで買った『I ♡ Sanl』Tシャツと『I ♡ Sanl』帽子と『I ♡ Sanl』トートバックを身につけたボクは、カメラ容量がなくなるまで写真を撮った。そんなボクを写真に撮る人もいたが全く気にならない。
ボクは今、自分の言いたいことを服で示しているだけ。『I ♡ Sanl』、それだけのこと。だってボクは間違いなく彼を愛している。
愛しているよ、推し、あなたの守った地球で生きているよ、推し、ありがとう、推し、愛しているよ、推し、だから誰よりもガジに愛されててくれ、推し……ぶっきらぼうな男の愛を受け入れてくれ、推し……ボクは泣きながら写真を撮った。そんなボクの姿がツブヤキッター(※SNSの一つ)でバズったそうだが、もちろんそんなこともどうでもよかった。
ボクは満足いくまで写真を撮ってから手帳を取り出す。そして手帳に書いた『死ぬまでにやりたいこと』リストの一番上にチェックをいれる。
「『シャンル像を生で観る!』、達成!」
その項目の下の『ガジ様のお姿を拝見する』を指先でこする。
最強の二人の内の一人、生き残ったガジは地球軍隊長という肩書きを持っているけど、今は完全に隠居していて表舞台には出てこない。一度でいいからチラリとでも御姿を拝見したいなあって思うけど多分これは無理だろう。彼はもう『語るべきことは全て語った。だからメディアには顔を出さない』と宣言しているからだ。とはいえ彼の姿はもう全世界の人が知っている。
ボクは手帳をめくり、挟んでいた写真を眺める。
ガジの最後の演説の時の写真だ。黒い軍服に隊長の印の金バッジをつけ、黒い杖をつき、黒い仮面で顔の上半分を隠す無表情の彼。着込んでいるけれど体のラインが引き締まっていることがわかるし、それだけ隠していても彼の体には消えない跡が残っていることもよくわかる。美しくて、綺麗で、大好きな人だ。でも、……きっとボクは彼に会えない。残念だけど、それが推しの望んだことだから仕方ない。それにボクはメディアからでなくなった彼がどこかで一人シャンルのことを思いながら心穏やかに過ごしている系の話が一番好きなので、それはむしろそっとしておきたい。
ちなみにガジは白髪で金眼の筋肉粒々のハンサムで、シャンルはプラチナブロンドに緑眼の中性的なハンサムだ。
世界最強のハンサムたち、やはりゴフい。
「……よし、じゃあ次は推しの墓に行こう」
ボクは像を拝んでから、次の目的地に向かって歩き出した。
――と歩き出して五分で判明したのだけど、観光地で観光地Tシャツを着ている子どもはあっという間に路地に連れ込まれるらしい。ボクはボクを囲むボクより少し年上っぽい複数の男性を見上げて、「ホエ……」と間抜けな言葉を吐くしか出来なかった。
シャンル像はとても大きく、とても偉大で、とても綺麗だ。彼の柔らかなウェーブの入った髪、奥目がちな顔立ち、優しそうな微笑み、そして筋肉質なわがままボディー。まさに『雄』。さすが星一つ壊すだけの、その圧倒的な格好よさ。
ボクは推しの御姿を拝み、涙を落とす。
「シャンル様、このアングルからも天使とか何事ぞ? このお姿を拝見できるのに、入場料なしisなに。無料コンテンツなのゴフい。はぁー、ぱねえ胸筋……ゴフみがすごしですぞー……ひぇーん……OMG……So hot……」
お土産屋さんで買った『I ♡ Sanl』Tシャツと『I ♡ Sanl』帽子と『I ♡ Sanl』トートバックを身につけたボクは、カメラ容量がなくなるまで写真を撮った。そんなボクを写真に撮る人もいたが全く気にならない。
ボクは今、自分の言いたいことを服で示しているだけ。『I ♡ Sanl』、それだけのこと。だってボクは間違いなく彼を愛している。
愛しているよ、推し、あなたの守った地球で生きているよ、推し、ありがとう、推し、愛しているよ、推し、だから誰よりもガジに愛されててくれ、推し……ぶっきらぼうな男の愛を受け入れてくれ、推し……ボクは泣きながら写真を撮った。そんなボクの姿がツブヤキッター(※SNSの一つ)でバズったそうだが、もちろんそんなこともどうでもよかった。
ボクは満足いくまで写真を撮ってから手帳を取り出す。そして手帳に書いた『死ぬまでにやりたいこと』リストの一番上にチェックをいれる。
「『シャンル像を生で観る!』、達成!」
その項目の下の『ガジ様のお姿を拝見する』を指先でこする。
最強の二人の内の一人、生き残ったガジは地球軍隊長という肩書きを持っているけど、今は完全に隠居していて表舞台には出てこない。一度でいいからチラリとでも御姿を拝見したいなあって思うけど多分これは無理だろう。彼はもう『語るべきことは全て語った。だからメディアには顔を出さない』と宣言しているからだ。とはいえ彼の姿はもう全世界の人が知っている。
ボクは手帳をめくり、挟んでいた写真を眺める。
ガジの最後の演説の時の写真だ。黒い軍服に隊長の印の金バッジをつけ、黒い杖をつき、黒い仮面で顔の上半分を隠す無表情の彼。着込んでいるけれど体のラインが引き締まっていることがわかるし、それだけ隠していても彼の体には消えない跡が残っていることもよくわかる。美しくて、綺麗で、大好きな人だ。でも、……きっとボクは彼に会えない。残念だけど、それが推しの望んだことだから仕方ない。それにボクはメディアからでなくなった彼がどこかで一人シャンルのことを思いながら心穏やかに過ごしている系の話が一番好きなので、それはむしろそっとしておきたい。
ちなみにガジは白髪で金眼の筋肉粒々のハンサムで、シャンルはプラチナブロンドに緑眼の中性的なハンサムだ。
世界最強のハンサムたち、やはりゴフい。
「……よし、じゃあ次は推しの墓に行こう」
ボクは像を拝んでから、次の目的地に向かって歩き出した。
――と歩き出して五分で判明したのだけど、観光地で観光地Tシャツを着ている子どもはあっという間に路地に連れ込まれるらしい。ボクはボクを囲むボクより少し年上っぽい複数の男性を見上げて、「ホエ……」と間抜けな言葉を吐くしか出来なかった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
片桐くんはただの幼馴染
ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。
藤白侑希
バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。
右成夕陽
バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。
片桐秀司
バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。
佐伯浩平
こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
台風の目はどこだ
あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。
政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。
そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。
✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台
✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました)
✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様
✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様
✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様
✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様
✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。
✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
アズ同盟
未瑠
BL
事故のため入学が遅れた榊漣が見たのは、透き通る美貌の水瀬和珠だった。
一目惚れした漣はさっそくアタックを開始するが、アズに惚れているのは漣だけではなかった。
アズの側にいるためにはアズ同盟に入らないといけないと連れて行かれたカラオケBOXには、アズが居て
……いや、お前は誰だ?
やはりアズに一目惚れした同級生の藤原朔に、幼馴染の水野奨まで留学から帰ってきて、アズの周りはスパダリの大渋滞。一方アズは自分への好意へは無頓着で、それにはある理由が……。
アズ同盟を結んだ彼らの恋の行方は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる