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6. だれかへの問いかけ
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たとえば、『空の色』は何色かと問いかけられたら。
あけぼのの薄紫色。
夜の瑠璃色。
夕暮れの茜色。
つとめてや真昼の、透きとおった水色。
答えはきっと、人によって違う。
では『花の色』はどうだろう。
桜のピンク。
ひまわりのレモンイエロー。
キンモクセイのオレンジ。
椿のカーマイン。
もっとたくさんの答えが聞けるに違いない。
人は心の中に、自分にとっての物の『色』を持っている。
たとえば、『髪の色』。
黒、白、赤、金、茶。
たとえば、『目の色』。
ブラウン、ダークブラウン、ヘーゼル、アンバー、グリーン、グレー、ブルー、ヴァイオレット、レッド。
そして『肌の色』だって、
白、黒、黄などなどだ。
すべての人が『これはこの色だ』とひとつの色を答えるものは、実は少ない。
では最後の質問。
――『血の色』は、何色だろう?
*
「……痛っ!」
やっちゃった、と思ったときには包丁を手放していた。
もぉ、これだから家庭科の調理実習ってキライ。
料理なんかロクにしたことのないのに、案の定、にんじんではなく自分の指を切ってしまった。
「だっ、大丈夫!? 藍音ちゃん!」
同じ班の子が心配そうに聞いてくる。
家庭科担当のタカちゃん先生も、慌てた様子で駆けつけてきた。
「どうしたの、川会さん」
先生が眉を寄せて、手を伸ばしてくる。
「指を切ったの? ちょっと見せて」
「――っ!」
パン!
……思わず、
先生の手、振り払っちゃった。
音の大きさに、クラス中の注目がこっちに集まってくる。
じゃがいもの皮を剥いていた男子、たまねぎに泣かされていた女子、お肉を切っていたクラス委員、ガス式炊飯器のガスの元栓を開ける隣の班の子、カレールーの準備をしていた同じ班の子の目が、一斉に向けられる。
(しまった!)
指を切ったときより、あたしは焦った。
慌てて作り笑いをして、ことさら明るい声で先生に謝った。
「ごめーん、タカちゃん先生。びっくりしちゃった。切っちゃったけど、大したことナイよ」
「そうなの? 血は?」
……血。
その単語に、ぞくりと寒気が走った。
「ちょっと出てるみたい。保健室行ってバンソーコーもらってきてもいい?」
「それはいいけど」
「ありがとぉー。じゃー行ってくるね!」
切った方の手――左手の人差し指を布巾で覆って、あたしは急いで家庭科室を出た。
嘘だった。本当は結構、深く切ってる。
血が、ぽた、ぽた、ぽたぽたと滴り落ちるのを必死に防いでいた。
誰にも見られたくなかった。
あたしの傷、あたしの血を。
あたしの、――黄色い血を。
保健室ではなくトイレに駆け込んで、個室に入った。
トイレットペーパーをカラカラ引っ張り出す。傷を覆っていた布巾を剥がす。
ああ、
黄
色
い。
ペンキみたいな真っ黄色の血が、あたしの人差し指のぱっくり割れた切り傷から、流れている。
やっぱり深いな。
血が、ぷつ、ぷつ、ぷつぷつと溢れ出てくる。
トイレットペーパーを巻いて止血した。これならどんなに汚れてもトイレに流せば済む。
この布巾は……もう使えないな。あとで焼却炉につっこもう。
「はぁ……サイアク」
じくじくする痛みをこらえ、あたしは便座に座った。
(……たとえば)
「空の色は何色でしょう?」と問いかけられたら、あたしは水色って答える。真っ昼間の、快晴の空の色だ。
だけど、人によっては、夜の暗い色を思い浮かべるかも知れない。
「花の色は何色でしょう?」と問いかけられたら、ピンクって答える。桜とか、ガーベラとかバラとか。お花屋さんでいつも目を引く可愛い色。
でも他の人は、白とか紫とか、他の色を答えるかもしれない。
答えはきっと、バラバラだ。
(……でも)
じゃあ、『血の色は何色でしょう?』と問いかけられたら。
……赤。
大抵の人っていうか、全員がそう答える。絶対に。
だってそうでしょ。赤くない血なんてあるわけない。
「痛いなぁ……」
どんどん黄色く汚れるトイレットペーパーを見ていると、だんだん涙がにじんでいた。
もう、うんざり。
何で、あたしの血は黄色いの?
この異常に初めて気づいたのは――小学生になるちょっと前だった。
目の前がまっくらになった。
赤くない血。黄色く輝く血。異形の血液。
あたしは人間じゃないのかも知れない。
そう思ったら、足元がガラガラと音を立てて崩れた。
その日の夜のことはよく覚えている。
ベッドの中で布団に包まり、ひとりぼっちでガタガタ震えた。
もしかしたら、ある日突然、あたしは恐ろしい姿の化け物になるかもしれない。
真っ黄色の化け物に。
そしたら、お父さんやお母さん、お兄ちゃんや妹、友達を食べちゃったりするのかもしれない。
そんな想像をするたびに、叫び出したくなった。
怖い。
いつ化け物になるんだろう。
明日? あさって? 一年後?
七歳になったら? 十歳になったら?
怯えるしかない毎日。
黄色い血がもたらす眠れない夜。
だけど、その日はいつまで経ってもやってこなかった。
中学生になった今でも、あたしは化け物になっていない。
見た目もそれ以外も、あたしはずーっと他の『フツウの人たち』と変わりなかった。
お父さんと同じように眠る。お母さんと同じように食べる。お兄ちゃんと同じようにトイレに行く。妹と同じように笑ったり泣いたりする。
友達と同じように恋に憧れる。先輩と同じように運動をする。先生と同じように解らない問題を考える。
蚊にだって刺されて血を吸われる。他の人たちと同じように。
平凡な中学生、川会藍音の異常はひとつだけ。
血が黄色いだけだ。
「ただそれだけだよ……」
それはあたしの、おまじないの言葉だった。
血が黄色いだけで、他はフツー。
――もし、『真っ黄の血を持つキミは何者なのでしょう?』と問いかけられたら。
こう答えてやるんだ。
川会藍音。
ただの中学生だよ。
って。
「よし! 血ィ止まった!」
自分を鼓舞するために、口に出す。
暗い気持ちになっちゃったけど、切り替えていこう。
ぐだぐだ悩むのはやめるって決めたんだ。
血が黄色くても、誰に迷惑をかけるわけじゃない。
バレないようにさえすれば、大丈夫。
山になった使用済みトイレットペーパーを、一気にトイレに流す。
生徒手帳に挟んであったバンソーコーをぴっちり貼る。備えあれば憂いってホントにナイよね。
もう大丈夫。家庭科室に戻ろう。
カレーの続きだ。
(でも包丁は持ちたくないな。配膳係やりたいなー)
ケガしたんだし、甘えさせてくんないかな、と甘いことを考える。
便器の流水音を背に、個室から出たときだった。
何の前触れも無しに、どぉおおおおおん!! と大きな音が弾けとんだ。
次に火災報知器のベル。ジリリリリと耳をつんざく。
「な、何!?」
トイレから出ると、何人もの先生が廊下を走っていた。
「家庭科室で事故だ!」
「ガス爆発のようです!」
「そういえば、炊飯器のガスの元栓が壊れていて」
「まさかそこからガスが漏れて、コンロの火が引火を」
(うそ……)
降ってわいたような災害にあたしは言葉を失った。
嘘でしょ。
(タカちゃん先生、みんな……!)
ガクガク震える足で廊下を駆け抜け、家庭科室に向かう。
ドアの前では、先生たちが慌てた様子でケータイに向かって怒鳴ってる。
家庭科室は真っ黒だった。
窓ガラスが割れ、壁は焦げ、カーテンは焼け、作業台は真っ黒になって水道がひしゃげていた。
焚き火みたいな火があちこちで燃えている。
床にはタカちゃん先生とあたしのクラスメイト、総勢三十八人が倒れていた。
……え?
「君! 入っちゃいかん!」
教頭先生があたしを肩をつかむ。
あたしの目は、その光景に釘付けになっていた。
“ジリリリリリリ‼︎”
警報のベルと
“救急車はまだか⁉︎”
先生たちの喧噪と
“ぁあ…”
“うぅ……”
“……痛い”
“た……すけて……”
みんなのうめき声の中で
まっくろな室内ではよりいっそう目立つその、
黄
色
い
血。
「何で……!?」
何で何で何で?
みんなの、血が、黄色い。
どうして?
何で血が黄色いの!?
「かわえ、さん……」
呼ばれて、ハッとなった。
床に転がっているタカちゃん先生が、あたしの方に手を差し伸べていた。
「よかった……あなただけでも無事で……」
先生は微笑んだようだった。顔が半分真っ黒になっているので、よくわからない。
差し伸ばされた先生の手から、骨が飛び出していた。
どく、どく、どくどくと血が大量に流れ出している。
その血もやっぱり黄色かった。
オモチャみたいな色だった。
あたしとおんなじ、血の色だった!!
あれ?
何でだっけ。
どうしてなんだっけ。
呆然と立ちすくみながら、あたしは誰ともなしに問いかける。
あたしの血が何故黄色いのか。その理由はわかってしまったけれど、新しい疑問が生まれた。
だけどそれは、今までと比べようもないほど大きな疑問で、途方も途轍も無かった。
(何でなんだっけ……誰なんだっけ……)
『血は赤い』と言ったのは。
あたしにそう思い込ませたのは。
そもそも『あなたのは血は赤いですか』と誰かに尋ねたこともないのに 何故血は赤いものだと思い込んでいたのか。
血は黄色いものだと何故知らなかったのか。
ねえ、誰。
誰なの。
『血は赤い』って、あたしに言ったのは。
真っ黄色の血の海で、あたしは、影すらつかめない『誰か』に何度も何度も何度も問いかける。
あけぼのの薄紫色。
夜の瑠璃色。
夕暮れの茜色。
つとめてや真昼の、透きとおった水色。
答えはきっと、人によって違う。
では『花の色』はどうだろう。
桜のピンク。
ひまわりのレモンイエロー。
キンモクセイのオレンジ。
椿のカーマイン。
もっとたくさんの答えが聞けるに違いない。
人は心の中に、自分にとっての物の『色』を持っている。
たとえば、『髪の色』。
黒、白、赤、金、茶。
たとえば、『目の色』。
ブラウン、ダークブラウン、ヘーゼル、アンバー、グリーン、グレー、ブルー、ヴァイオレット、レッド。
そして『肌の色』だって、
白、黒、黄などなどだ。
すべての人が『これはこの色だ』とひとつの色を答えるものは、実は少ない。
では最後の質問。
――『血の色』は、何色だろう?
*
「……痛っ!」
やっちゃった、と思ったときには包丁を手放していた。
もぉ、これだから家庭科の調理実習ってキライ。
料理なんかロクにしたことのないのに、案の定、にんじんではなく自分の指を切ってしまった。
「だっ、大丈夫!? 藍音ちゃん!」
同じ班の子が心配そうに聞いてくる。
家庭科担当のタカちゃん先生も、慌てた様子で駆けつけてきた。
「どうしたの、川会さん」
先生が眉を寄せて、手を伸ばしてくる。
「指を切ったの? ちょっと見せて」
「――っ!」
パン!
……思わず、
先生の手、振り払っちゃった。
音の大きさに、クラス中の注目がこっちに集まってくる。
じゃがいもの皮を剥いていた男子、たまねぎに泣かされていた女子、お肉を切っていたクラス委員、ガス式炊飯器のガスの元栓を開ける隣の班の子、カレールーの準備をしていた同じ班の子の目が、一斉に向けられる。
(しまった!)
指を切ったときより、あたしは焦った。
慌てて作り笑いをして、ことさら明るい声で先生に謝った。
「ごめーん、タカちゃん先生。びっくりしちゃった。切っちゃったけど、大したことナイよ」
「そうなの? 血は?」
……血。
その単語に、ぞくりと寒気が走った。
「ちょっと出てるみたい。保健室行ってバンソーコーもらってきてもいい?」
「それはいいけど」
「ありがとぉー。じゃー行ってくるね!」
切った方の手――左手の人差し指を布巾で覆って、あたしは急いで家庭科室を出た。
嘘だった。本当は結構、深く切ってる。
血が、ぽた、ぽた、ぽたぽたと滴り落ちるのを必死に防いでいた。
誰にも見られたくなかった。
あたしの傷、あたしの血を。
あたしの、――黄色い血を。
保健室ではなくトイレに駆け込んで、個室に入った。
トイレットペーパーをカラカラ引っ張り出す。傷を覆っていた布巾を剥がす。
ああ、
黄
色
い。
ペンキみたいな真っ黄色の血が、あたしの人差し指のぱっくり割れた切り傷から、流れている。
やっぱり深いな。
血が、ぷつ、ぷつ、ぷつぷつと溢れ出てくる。
トイレットペーパーを巻いて止血した。これならどんなに汚れてもトイレに流せば済む。
この布巾は……もう使えないな。あとで焼却炉につっこもう。
「はぁ……サイアク」
じくじくする痛みをこらえ、あたしは便座に座った。
(……たとえば)
「空の色は何色でしょう?」と問いかけられたら、あたしは水色って答える。真っ昼間の、快晴の空の色だ。
だけど、人によっては、夜の暗い色を思い浮かべるかも知れない。
「花の色は何色でしょう?」と問いかけられたら、ピンクって答える。桜とか、ガーベラとかバラとか。お花屋さんでいつも目を引く可愛い色。
でも他の人は、白とか紫とか、他の色を答えるかもしれない。
答えはきっと、バラバラだ。
(……でも)
じゃあ、『血の色は何色でしょう?』と問いかけられたら。
……赤。
大抵の人っていうか、全員がそう答える。絶対に。
だってそうでしょ。赤くない血なんてあるわけない。
「痛いなぁ……」
どんどん黄色く汚れるトイレットペーパーを見ていると、だんだん涙がにじんでいた。
もう、うんざり。
何で、あたしの血は黄色いの?
この異常に初めて気づいたのは――小学生になるちょっと前だった。
目の前がまっくらになった。
赤くない血。黄色く輝く血。異形の血液。
あたしは人間じゃないのかも知れない。
そう思ったら、足元がガラガラと音を立てて崩れた。
その日の夜のことはよく覚えている。
ベッドの中で布団に包まり、ひとりぼっちでガタガタ震えた。
もしかしたら、ある日突然、あたしは恐ろしい姿の化け物になるかもしれない。
真っ黄色の化け物に。
そしたら、お父さんやお母さん、お兄ちゃんや妹、友達を食べちゃったりするのかもしれない。
そんな想像をするたびに、叫び出したくなった。
怖い。
いつ化け物になるんだろう。
明日? あさって? 一年後?
七歳になったら? 十歳になったら?
怯えるしかない毎日。
黄色い血がもたらす眠れない夜。
だけど、その日はいつまで経ってもやってこなかった。
中学生になった今でも、あたしは化け物になっていない。
見た目もそれ以外も、あたしはずーっと他の『フツウの人たち』と変わりなかった。
お父さんと同じように眠る。お母さんと同じように食べる。お兄ちゃんと同じようにトイレに行く。妹と同じように笑ったり泣いたりする。
友達と同じように恋に憧れる。先輩と同じように運動をする。先生と同じように解らない問題を考える。
蚊にだって刺されて血を吸われる。他の人たちと同じように。
平凡な中学生、川会藍音の異常はひとつだけ。
血が黄色いだけだ。
「ただそれだけだよ……」
それはあたしの、おまじないの言葉だった。
血が黄色いだけで、他はフツー。
――もし、『真っ黄の血を持つキミは何者なのでしょう?』と問いかけられたら。
こう答えてやるんだ。
川会藍音。
ただの中学生だよ。
って。
「よし! 血ィ止まった!」
自分を鼓舞するために、口に出す。
暗い気持ちになっちゃったけど、切り替えていこう。
ぐだぐだ悩むのはやめるって決めたんだ。
血が黄色くても、誰に迷惑をかけるわけじゃない。
バレないようにさえすれば、大丈夫。
山になった使用済みトイレットペーパーを、一気にトイレに流す。
生徒手帳に挟んであったバンソーコーをぴっちり貼る。備えあれば憂いってホントにナイよね。
もう大丈夫。家庭科室に戻ろう。
カレーの続きだ。
(でも包丁は持ちたくないな。配膳係やりたいなー)
ケガしたんだし、甘えさせてくんないかな、と甘いことを考える。
便器の流水音を背に、個室から出たときだった。
何の前触れも無しに、どぉおおおおおん!! と大きな音が弾けとんだ。
次に火災報知器のベル。ジリリリリと耳をつんざく。
「な、何!?」
トイレから出ると、何人もの先生が廊下を走っていた。
「家庭科室で事故だ!」
「ガス爆発のようです!」
「そういえば、炊飯器のガスの元栓が壊れていて」
「まさかそこからガスが漏れて、コンロの火が引火を」
(うそ……)
降ってわいたような災害にあたしは言葉を失った。
嘘でしょ。
(タカちゃん先生、みんな……!)
ガクガク震える足で廊下を駆け抜け、家庭科室に向かう。
ドアの前では、先生たちが慌てた様子でケータイに向かって怒鳴ってる。
家庭科室は真っ黒だった。
窓ガラスが割れ、壁は焦げ、カーテンは焼け、作業台は真っ黒になって水道がひしゃげていた。
焚き火みたいな火があちこちで燃えている。
床にはタカちゃん先生とあたしのクラスメイト、総勢三十八人が倒れていた。
……え?
「君! 入っちゃいかん!」
教頭先生があたしを肩をつかむ。
あたしの目は、その光景に釘付けになっていた。
“ジリリリリリリ‼︎”
警報のベルと
“救急車はまだか⁉︎”
先生たちの喧噪と
“ぁあ…”
“うぅ……”
“……痛い”
“た……すけて……”
みんなのうめき声の中で
まっくろな室内ではよりいっそう目立つその、
黄
色
い
血。
「何で……!?」
何で何で何で?
みんなの、血が、黄色い。
どうして?
何で血が黄色いの!?
「かわえ、さん……」
呼ばれて、ハッとなった。
床に転がっているタカちゃん先生が、あたしの方に手を差し伸べていた。
「よかった……あなただけでも無事で……」
先生は微笑んだようだった。顔が半分真っ黒になっているので、よくわからない。
差し伸ばされた先生の手から、骨が飛び出していた。
どく、どく、どくどくと血が大量に流れ出している。
その血もやっぱり黄色かった。
オモチャみたいな色だった。
あたしとおんなじ、血の色だった!!
あれ?
何でだっけ。
どうしてなんだっけ。
呆然と立ちすくみながら、あたしは誰ともなしに問いかける。
あたしの血が何故黄色いのか。その理由はわかってしまったけれど、新しい疑問が生まれた。
だけどそれは、今までと比べようもないほど大きな疑問で、途方も途轍も無かった。
(何でなんだっけ……誰なんだっけ……)
『血は赤い』と言ったのは。
あたしにそう思い込ませたのは。
そもそも『あなたのは血は赤いですか』と誰かに尋ねたこともないのに 何故血は赤いものだと思い込んでいたのか。
血は黄色いものだと何故知らなかったのか。
ねえ、誰。
誰なの。
『血は赤い』って、あたしに言ったのは。
真っ黄色の血の海で、あたしは、影すらつかめない『誰か』に何度も何度も何度も問いかける。
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