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壱.【工藤家の怪異①】オンライン除霊の章
除霊しようにも外に出られない!?
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あたしは呼吸を整えて、
「桃吾くんのおうちは、お寺とか神社なの?」
『生家ではなく、拝み屋として修行させていただいている場所ですね。といっても『仮』の弟子ですが。鎮守の森に囲まれた神社のようなところですが、正確に言うと心霊現象を調査する相談所です。「糸杉調査事務所」と言います。霊に取り憑かれた……憑依状態と言うのですが、そういう方がよく運ばれてきます』
な、なるほど。なんかマジで漫画みたいな話だな。
ああいうのって実在するんだ、って違う!
「なんでうちにもその幽霊だかが来るの? 動画を観ただけなのに!」
『動画を観たから、でしょう』
「はあ!?」
『昔から、人々は不幸の手紙を受け取ったら、呪いのビデオを観たら、異界からのメールや着信を受け取ったら、呪われ祟られ取り憑かれてしてきました』
「いや、それは漫画とか映画とか、創作物の中での話でしょ……」
『……』
「え……違うの……?」
桃吾くんが頷く。
『心霊現象は生きている人間の生活と直結しているんです。だから、「動画を見ただけで祟られる」は成立します』
眼鏡キャラらしい理路整然っぷりだ。冷静すぎていっそ腹が立つ。
こんな理不尽なこと、ある?
あたしそこそこ真っ当に生きてきたのに。
訳分からん感染症のせいで、卒業遠足も卒業式も、友達とディズニーに行く計画も、推しアイドルのコンサートも、何より桜色の高校生活も全部なくなった。
挙句の果てに祟りだ? しかも動画を見ただけで?
ムカつく。なんかもう怖いってよりムカつく!
『工藤さん。大丈夫ですか』
大丈夫じゃねーわ。あたしは両目ににじむ涙を手で拭いた。
「どうしたらいいの、これ」
『除霊するしかありません』
うお、ますます漫画じみてきた。
私のド平凡な人生にこんなことが起こるとは。よもやよもやだ、と歩望が大好きなアニメキャラのセリフが出てきた。
『ただ……』
桃吾くんがうちに来てくれるの、と訊こうとしたら先んじられた。
『工藤さんのおうちには行けません』
「へっ?」
『除霊をする方が……僕の師匠なのですが、その方がご高齢なのです』
すぐに思い当たった。
全世界で広まっているクソ感染症は、特にお年寄りが感染すると命に関わるってお母さんが言っていた。
それを危惧して、政府は日本中に外出自粛の命令が下した。
お店も遊ぶところも軒並み休んでいて、大人も自宅で仕事できるようにして……まあ、うちの両親には関係なかったけど。
「その人しかいないの?」
『もう一人います。僕の妹です』
妹がいるんだ。兄妹で拝み屋って、なんかすごいな。
『妹は除霊の依頼を受けて、春休み中に地方の山奥に向かったのですが、外出自粛の影響でまだ戻ってきていません』
「桃吾くんは?」
『僕は、除霊は修行中の身です。正直に言いますと、幽霊を見る、いわゆる霊視の能力もロクにありません』
「はいぃ!? 幽霊見えないの!?」
『はい。場合によっては見えることもありますが、基本的には』
「そんな、高校生霊媒師って肩書きで、いかにもお札とか日本刀とか操って悪霊退散しそうな外見しておいて!?」
『どんな外見ですか。――半端者が関わると、よりひどくなる可能性が高いんです』
「じゃあどーしろって言うのよ! まさかクソ感染症が落ち着くまでガマンしろって!?」
キレるあたしとは対照的に、桃吾くんはどこまでも冷静に返した。
『いいえ。現場に行かずに、除霊します』
「へ?」
『これを使って』
桃吾くんの指が大写しになる。画面を触ったのだ。
そして彼は、こう言った。
『オンライン除霊です』
「桃吾くんのおうちは、お寺とか神社なの?」
『生家ではなく、拝み屋として修行させていただいている場所ですね。といっても『仮』の弟子ですが。鎮守の森に囲まれた神社のようなところですが、正確に言うと心霊現象を調査する相談所です。「糸杉調査事務所」と言います。霊に取り憑かれた……憑依状態と言うのですが、そういう方がよく運ばれてきます』
な、なるほど。なんかマジで漫画みたいな話だな。
ああいうのって実在するんだ、って違う!
「なんでうちにもその幽霊だかが来るの? 動画を観ただけなのに!」
『動画を観たから、でしょう』
「はあ!?」
『昔から、人々は不幸の手紙を受け取ったら、呪いのビデオを観たら、異界からのメールや着信を受け取ったら、呪われ祟られ取り憑かれてしてきました』
「いや、それは漫画とか映画とか、創作物の中での話でしょ……」
『……』
「え……違うの……?」
桃吾くんが頷く。
『心霊現象は生きている人間の生活と直結しているんです。だから、「動画を見ただけで祟られる」は成立します』
眼鏡キャラらしい理路整然っぷりだ。冷静すぎていっそ腹が立つ。
こんな理不尽なこと、ある?
あたしそこそこ真っ当に生きてきたのに。
訳分からん感染症のせいで、卒業遠足も卒業式も、友達とディズニーに行く計画も、推しアイドルのコンサートも、何より桜色の高校生活も全部なくなった。
挙句の果てに祟りだ? しかも動画を見ただけで?
ムカつく。なんかもう怖いってよりムカつく!
『工藤さん。大丈夫ですか』
大丈夫じゃねーわ。あたしは両目ににじむ涙を手で拭いた。
「どうしたらいいの、これ」
『除霊するしかありません』
うお、ますます漫画じみてきた。
私のド平凡な人生にこんなことが起こるとは。よもやよもやだ、と歩望が大好きなアニメキャラのセリフが出てきた。
『ただ……』
桃吾くんがうちに来てくれるの、と訊こうとしたら先んじられた。
『工藤さんのおうちには行けません』
「へっ?」
『除霊をする方が……僕の師匠なのですが、その方がご高齢なのです』
すぐに思い当たった。
全世界で広まっているクソ感染症は、特にお年寄りが感染すると命に関わるってお母さんが言っていた。
それを危惧して、政府は日本中に外出自粛の命令が下した。
お店も遊ぶところも軒並み休んでいて、大人も自宅で仕事できるようにして……まあ、うちの両親には関係なかったけど。
「その人しかいないの?」
『もう一人います。僕の妹です』
妹がいるんだ。兄妹で拝み屋って、なんかすごいな。
『妹は除霊の依頼を受けて、春休み中に地方の山奥に向かったのですが、外出自粛の影響でまだ戻ってきていません』
「桃吾くんは?」
『僕は、除霊は修行中の身です。正直に言いますと、幽霊を見る、いわゆる霊視の能力もロクにありません』
「はいぃ!? 幽霊見えないの!?」
『はい。場合によっては見えることもありますが、基本的には』
「そんな、高校生霊媒師って肩書きで、いかにもお札とか日本刀とか操って悪霊退散しそうな外見しておいて!?」
『どんな外見ですか。――半端者が関わると、よりひどくなる可能性が高いんです』
「じゃあどーしろって言うのよ! まさかクソ感染症が落ち着くまでガマンしろって!?」
キレるあたしとは対照的に、桃吾くんはどこまでも冷静に返した。
『いいえ。現場に行かずに、除霊します』
「へ?」
『これを使って』
桃吾くんの指が大写しになる。画面を触ったのだ。
そして彼は、こう言った。
『オンライン除霊です』
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