上 下
5 / 34
第1章【入社テスト編】

5話目◉手首

しおりを挟む

 実技面接という名のゲームがスタートした。

座順は

東家 マスター
南家 渡邉
西家 福島ヤシロ
北家 おれ

 渡邉さんの話だとヤシロには気をつけろということだった。あれは女の皮を被った魔物だと。とにかくヤシロさんは卓に着いたら人が変わるそうだ。
 本当だろうか。2人とも凄腕だと言うことだが、マスターはまあ、強そうな空気を醸し出してるけどヤシロさんも凄腕ってホント? と失礼ながら疑った。だっておれから見たらただの若い美女でしかないから。美人が麻雀上手くないとは言わないけど、それにしても『凄腕』というのはもっとベテランに付けられる称号のように思っていた。しかし。

「リーチ」
 渡邉さんのリーチが入る。
 全員とりあえず一歩引いて対応した、が、リーチして3巡後。

「…ふうん」とヤシロは小さく呟き。その時渡邉さんは三をツモ切る。

 そこからはヤシロの猛烈な押し返しが始まり、ついに追いつく。
「リーチよ」
打③

 おれとマスターは勝負手にならないのでオリ。するとヤシロが一発で。

「ツモ」

ヤシロ手牌
二二三四④④④⑤⑤⑤234 伍ツモ

「裏3で3000.6000の4枚」
 
 強烈! …しかし解せない。なぜ③切りリーチなんだ。二を勝負していれば②③④⑤の4面待ちで高め三色になるというのに。

「うわあ、どこで気付いたんだそれ。参ったな」と言う渡邉さん。なんのことだろう。

「少し渡邉さんの手首のスジが見えました。三をツモる時に力が入っていたのを見逃しませんでしたので、三に似ている牌は切れませんよね」

(手首の筋!!? この、まだ20代前半であろう美人ウェイトレスは牌をツモる時の手首の筋を見て危険牌を読み切ったというのか?!!)

 ゾッとした。自分の知らない次元の麻雀がそこにはあった。手首の筋なんてほとんど見えないものを一瞬見て力んでいるのを確認して待ちを一点に決めて押し返してアガリ切る。とても自分には出来ないレベルのものだ。
 たった一局で完全にわかった。
 
————力量レベルが違う。

 だがもうゲームは始まってしまったのだ。愕然としててもしょうがない。
(おれにはおれの戦い方がある。切り替えて行こう)
 そう思い、頭を切り替える椎名だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ししくらちひろの麻雀辞典【アイスありありガム多め!】

彼方
大衆娯楽
ロン!そんなションパイの字を切るのは甘いんじゃないの?  ひーん、だってアンパイもうなくて字かスジくらいしか…これでも重なるまで待って捨てたのになあ。  字よりは中スジのほうがいいんじゃない?あ、赤いのか。なるほど積んでる。  もうトンじゃうよお。  ロン!タンヤオサンショクイーペードラドラ!ラストい!!  ヴァアアン!!残り2000点しかなかったのにやりすぎだよおおおお!!!  このような会話は麻雀業界では日常的にされるものです。しかしながらここでいくつの専門用語が使われたでしょうか?カタカナは全て専門用語ですね。  麻雀の専門用語を知るには場数を踏まないと難しいので麻雀は専門知識の有無により初心者か否かを見抜けてしまいます。  昨今の麻雀配信をしている方たちも専門用語の使い方ひとつで精通している人かどうか簡単にわかりますね。まあ、使わないで済む専門用語は使わないのが一番優しいわけですが。  わかったつもりで分からない事があるのが専門用語の難しい所。ここではちひろちゃん通称『肉ちゃん』が専門用語を教えてもらいながら成長していき、それを読者も学んでいけるような作りになります。  かつて、見た事のない麻雀専門用語特化小説の始まりです!   登場人物紹介 肉倉千紘 ししくらちひろ 本編の主人公 通称『肉』 ネガ子 ねがこはねがこ 麻雀勉強中 まき 優しくてかわいい30代女性。いつも爪がキレイ。 サキちゃん まだ無名の麻雀打ち。生物学的には男性。その実力は?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

はじめましての、

MEIRO
大衆娯楽
【注意】特殊な小説を書いています。下品注意なので、タグをご確認のうえ、閲覧をよろしくお願いいたします。・・・ ちょっと変で下品な関係の話です。

手のひらサイズの…

MEIRO
大衆娯楽
【注意】特殊な小説を書いています。下品注意なので、タグをご確認のうえ、閲覧をよろしくお願いいたします。・・・ 手のひらサイズの、下品でオカルティックなお話です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

霧のように沈む

MEIRO
大衆娯楽
【注意】特殊な小説を書いています。下品注意なので、タグをご確認のうえ、閲覧をよろしくお願いいたします。・・・ 現実か、非現実か、よくわからない出来事のお話です。

処理中です...